【異世界住民〜オニオン編・改〜】  
鬱蒼と生い茂る夜の森をブルーの瞳に肩で切り揃えた茶髪をした少女アルルは歩いていた。  
時間軸で言うとアミティと出会った日の夜。  
土地勘も無いのにほっつき歩いているうちに森に迷い込んでしまったのがこの状況の大まかな顛末である。  
「ふぅ、お腹すいたよぉ〜。」  
アルルのお腹から何とも恥ずかしい音が先ほどから鳴りっぱなしである、  
先ほど森で採取した木の実も小一時間前に食べ尽くしている。  
 
ガサガサ!!  
突然後ろの茂みから音がする、アルルはすぐに魔導力を練り上げると神経を研ぎ澄ませる。  
「オオーン!!」  
茂みから雄たけびを上げながら玉ねぎ頭の鬼オニオンが金棒をブンブンと振り回しながら飛び出して来た。  
ガサガサ、ガサガサ!!  
他の茂みからも次々とオニオンが飛び出してきて、あっと言う間にアルルはオニオンに取り囲まれた。  
「オーン!!」「ドォーン!!」  
四方八方からオニオン達がアルルに飛び掛り金棒を繰り出すが、  
アルルは次々と避けると大きくジャンプし魔法を撃つ為の距離を取ると両手をオニオンの群れに向けた。  
「へブンレイ!!」  
拡散する光魔法をアルルは唱える、が、アルルの呪文が森に木霊するだけで何も起こらなかった。  
 
「あれぇ〜。」  
アルルは素っ頓狂な声を上げる、魔導力のコントロールに失敗したのだろうか。  
しかし、失敗現象である魔導力の逆流も暴発も起きていない。  
この事からアルルは魔導力の制御事態は失敗していないと結論するが、それなら何故失敗したのだろう。  
「オオーン!!」  
オニオン達は金棒でアルルに殴りかかる、考えている暇は無い、アルルは次の魔法を放つべく魔導力を練る。  
「ホーリーレーザー!!」  
へブンレイよりも下位に位置する光魔法を唱えるが、やはりアルルの呪文が森に反響するだけで何も起こらなかった。  
 
アルルは大きな木の枝から両手を縄で縛られ吊るされていた。  
目の前には大きく開けた広場と先ほどまでいた森、それに焚き火と言う光景が広がる。  
あの後アルルは魔法が使えないならと素手で殴りかかったのだが結局金棒で頭を殴られ気絶させられたのだった。  
しばらくしてガサガサ、茂みを掻き分ける音がするとオニオン達が広場にやってきた。  
 
「オオーン!!」  
オニオン達が広場にあらかた集まると、オニオン達の中でも一回り大きいオニオンがアルルに近づいた。  
恐らくこの群れの長なのだろう、  
アルルがそんな意味の無いことを考えていると一回り大きいオニオンはアルルの服に手を掛ける。  
ビリビリ!!  
「いやぁー、やめてぇー!!」  
激しく服を破られアルルは一糸纏わぬ姿にされてしまう、  
恥ずかしい所まで見られていると言う恥辱からかアルルの顔は真っ赤になっている。  
 
「オーン!!」  
「がほっ!!」  
一回り大きいオニオンは金棒を振り上げると勢いよくアルルのお腹を殴り付ける。  
アルルは胃の中のものを吐き出しそうな衝撃に激しく咳き込んだ。  
「オーン!!オオーン!!」  
容赦なく一回り大きいオニオンは金棒でアルルの身体を殴り、  
その度にアルルの白い肌には金棒の側面の針によって蚯蚓腫れができる。  
「ゲホッ、ゲホッ、お願い・・・もう、許してぇ・・。」  
アルルの口からは力なくこんな言葉が漏れた。  
 
「オーン!!」  
一体どれぐらい殴られたのだろう、アルルの口から血が垂れて足元に血溜りを作る。  
一回り大きいオニオンはようやくアルルを金棒で殴るのを止めた。  
「ほっ・・・。」  
アルルは安堵した、終わったのかと思うと自然と安心した顔になる、根拠は何も無いがアルルはそう思いたかった。  
 
当然終わりな訳もなく、群れからオニオンが2匹出てきた。  
1匹は鋭く磨かれた切れ味の良さそうな石包丁を手にし、もう1匹はイバラの枝を持っていた。  
何をされるのかアルルは想像すると恐怖に震えながら叫んだ。  
「いやだぁー、やめてぇー。」  
アルルの叫びも虚しくオニオンの1匹は石包丁をアルルのお腹に当ててお腹の肉を切り裂く。  
もう1匹は鞭の要領でアルルの身体をイバラの枝で打った。  
「きゃぁー、痛い、痛いー!!」  
アルルはあまりの痛さに足をバタつかせる。  
 
「オーン!!」  
石包丁を持ったオニオンは今度はアルルの足に刀身を当てて、足を切り刻む。  
足から鮮血が吹き、アルルの足元の血溜りはより一層大きさを増していく。  
「お願い、やめてぇー、許してぇー、痛いよぉー!!」  
石包丁で切り刻まれイバラの枝で身体を鞭打たれ、アルルはすすり泣きながら懇願した。  
 
「痛いよぉー!!誰か助けてー!!」  
オニオン達はそれぞれ手に松明を持ち、代わる代わるアルルの身体を火炙りにする。  
アルルはもう痛みに泣き叫んでいる自分さえも他人事のように感じていた。  
殆ど無意識にアルルは魔導力を練り上げ、ジュゲムの呪文を唱える。  
「ジュゲム!!」  
アルルの最強魔法が発動し、視界が激しい光に包まれるとアルルは気を失った。  
 
しばらくして、意識を取り戻したアルルは森の外に倒れていた。  
先ほどオニオン達によって与えられたダメージも回復している。  
「夢だったのかなぁ。」  
アルルはそう思ったが、服は着ておらず全裸だった。  
「さ、寒いよぉ〜。」  
時期はこれから春を迎えようという2月末、冷たい風に服を着ていないアルルは震える。  
それからしばらく歩くと幸運にも街が見つかった。  
ラッキーな事に自分の世界とこの世界の通貨は共通であった為に服も買えたし宿に泊まる事もできた。  
 
「元の世界に帰るためにもまずカー君を探さなくっちゃ。」  
アルルは道具屋によって地図や魔導酒など最低限のアイテムを購入すると、  
カー君ことカーバンクルを探し、元の世界に戻る方法を探すために旅立った。  
 
終わり  
 
 

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