アルルは自分がかわいいということを自分でよく理解している。
とくにシェゾに対してそれがすごい武器になるということを、よ〜く自覚している。
「ね〜シェゾ〜」
ある日の週末、例によってシェゾの家に転がり込んで、夜になってカーバンクルが寝付いて
二人きりになったとたんに、アルルは猫なで声を出して彼にじゃれつきだした。
「あー」
「今日さ、ドラコと北町のほうまで行ってみたの」
「んー」
「で、エーエーショップ行ってみたらさ、すごいかわいいスカート売ってたの〜」
「へー」
「デニムのひらミニでさ、すごくかわいいんだよ」
「ほー」
お気に入りの洋服店でかわいいスカートを見つけたことを報告する。
そのとたんにシェゾはこっちを見なくなったけど、かまわず続けた。
「ね、買って♪」
単刀直入に。
「…………」
「おねがい〜」
「…………」
彼の反応はあまりに鈍い。
やっぱ、こないだサンダルを買ってもらったところだからさすがにきびしいか?
でも、女子高生(?)の自分が社会人のシェゾと付き合ってるんだから、
そんな高い買い物でもないんだしこれくらいの役得はあってもいいと
アルルは常々思っているのだ。
だからアルルはけっこうよくシェゾにかわいくおねだり攻撃をする。
そしてシェゾもわりと聞いてくれたりしてるのである。
が、今日のシェゾはどうもガードが堅い。
アルルは負けじとさらにシェゾに擦り寄って色仕掛けで甘えてみる。
「ね、買ってくれたらう〜んとサービスしてあげるっ」
もちろんえっちなサービスのことだ。
「…………あのな」
そこでようやく彼が反応してきた。
「うんうん?」
「そういう、色仕掛けでせびるのはやめてくれ」
「え〜なんで〜?」
「金品でやらせてもらってるみたいで嫌なんだよ。それじゃ売春とか援交じゃないか」
「え〜全然違うよ〜」
「どこが」
「だって売春とか援交はお金のためだけに好きでもない人とえっちするんでしょ。
ボクはキミのこと大好きなんだから、全然違うよ」
「…………」
シェゾの表情がちょっと緩んだ。
「ほんとに大好き。将来はお嫁さんになりたいって、本気で思ってるくらいだよ?」
彼のハートを直撃しそうな健気なセリフを吐いて一気にたたみかける。
言ってることは本心でもあるのだから、これが効かない筈はない。
「ア、アルル」
その通り、効果テキメンの様子。
「ねっ、シェゾ♪」
「……負けたよ」
「お」
「わかったよ、そのスカートも買ってやるよ」
「おー」
「ただし!」
「おー?」
「今日はう〜んとサービスしてもらおうじゃないか」
彼の目がちょっとヘンタイの目になったのを感じた。
「俺の言うとおりにしてもらおうか!」
一度開き直ったらシェゾのほうが積極的だった。
「う、うん、じゃあ、えと、どうしたらいい?」
アルルとシェゾは、なにか趣向をこらしたセックスも時々している。
彼のヘンタイ性に半ば呆れたり、あるいは自分がノリノリになったりしながら
アルルは猫になったり妹になったりして変わったえっちも楽しんでいる。
なんていうか、イメージプレイ?
ときには拘束されて辱められたり、すぐそばで人が通る路地裏で犯されたり、
乱暴にされることもあるんだけど、シェゾはアルルが嫌だって感じるギリギリのラインを
分かってくれてて、決して傷つけられることはないから、けっこう信頼して身を任せられる。
で、今日はどんな要望をされるのだろうか。ちょっとどきどき。
「今日は娼婦になったつもりで客の俺に奉仕してくれよ」
「はあ?」
「だから、今日はお前は金でカラダを売ってる娼婦で、俺はそれを買った客」
「……なにそれ〜。なんかさっきまで言ってたことと違くない?」
「まあそれはそれだ(きっぱり)」
「で、でもボク、ショウフなんてわかんないよ」
「お前なりのイメージでいいよ。とにかくやらないとなんも買ってやらねえ」
「…………わ、わかったよ」
「よーし」
「…………キミは、ほんとに、ヘンタイだねえ」
というわけで、今夜は売春ごっこなんてのをすることになった。
アルルも売春とか援交というものに好奇心はあったし(実際やりたいとはもちろん思わないが)
そういうプレイをするのに異論はないんだけど、いかんせんどうしたらいいかよくわからない。
シャワーを浴びながら、そのあとシェゾがシャワー終わるのを待ちながら、漠然と考えてみた。
うふ〜ん、いらっしゃ〜い、とか言えばいいのかな?ちょっと違うかな。
キスもセックスもシェゾとしか経験がないアルルには不特定の男にカラダを売る感覚がわからない。
逆に言えばわからないから好奇心があるともいえるんだけど。
とりあえず、彼があがってくるまでに、一番色っぽい下着を身につけてみる。
ピンクのレースのブラとパンツとガーターストッキング。黒はもってない。
メイクは……もう夜だしパスで。それにもともとアルルは化粧がうまくない。
「ま、これでいっか〜」
あとはもうアドリブまかせでベッドにぺたんと座ってシェゾを待った。
わかんなくても、彼がリードしてくれるかもしれないし。
……そう思ったところで、ちょっと不安なことが思い当たった。
シェゾがシャワーを終えてきた。
「あ、ねえシェゾ、始める前にちょっと聞きたいんだけど!」
「ん?」
「キミ、売春とか援交とか、ほんとに買ったこと、あるの?」
「ないぞ」
「ほんと?」
「ああ。ないからこそちょっとしてみたいんだ」
「そっかあ」
「ちなみに浮気だってしたことないさ。我ながら真面目だぞ。だから安心して始めてくれよ」
「……うんっ」
安心したら楽しくなってきて、アルルはさっそく始めることにした。
「えとえと、い、いらっしゃいませ〜」
「ああ、今日はよろしくな」
「はい、ご奉仕いたしますっ」
「名前は?」
「アルルです」
「……って、違うだろー」
「ありゃ?」
と思ったらしょっぱなでいきなりつまづいた。
「娼婦は普通客に本名なんて名乗らないんじゃないか」
「あ、そ、そうかも」
やりなおし。
「名前は?」
「あー、あー……アリスですぅ……お客さんのお名前は?」
「俺のことはお客さんでいいよ」
「ずるい」
「ずるくない」
シェゾは苦笑しながらベッドにアルルと隣同士に腰掛ける。
「…………」
「…………」
そしてちょっと沈黙のまま間があいた。
アルルはどうしたらいいか分からず戸惑ってるとシェゾのほうから話しかけてくれた。
「アリスは何歳?」
「あ、18です」
「じゃあさ、アリスは初体験は何歳のとき?」
と、その初体験の相手本人が質問してくる。
でもこういう会話ってしてそうな感じがするので、ちゃんと答えてみる。
「16のときですー」
「へえ〜」
バスローブ姿のシェゾが楽しそうに下着姿のアルルにえっちっぽく触れてくる。
肩を抱き寄せられて、太ももを指で撫でられた。
「んっ…」
つい吐息をもらしてしまうアルルだったけど、慌てて持ち直す。
ここで気持ちよくなるのはなんかくやしいから。
「今まで客何人くらいとった?」
「……100人くらいかな〜」
ここはアルルの完全な創作で答えていく。
「聞いてくださいお客さん〜ボクね、その初体験の相手にこの店に売られちゃったんです〜」
「……ほほ〜!」
「ひどい男だったんですよう。そいつの多額の借金をボクがカラダで返さなくちゃいけないんですぅ」
のってきた。
スラスラとそれっぽいヘビーな身の上話をでっちあげた。
「あはは〜♪」
「ははは……」
「さて、じゃあそろそろ始めようぜ」
「あ、はい……」
うまく彼をからかうことができたのに、早々に切り上げられてしまった。
あ、そういえば今日はボクがシェゾにご奉仕するんだったっけ。
「じゃあ、まずどうしたらいいですか、お客さんっ」
「そうだな、キスしてくれよ」
「え、あ、はい」
いつも二人でしてるみたいに普通にキスから始まった。
てっきりいきなりフェラチオしろとか言われると思ったけど。
(でもって言われたらしようと思ってた)
「ちゅ、ん、ん……」
シェゾと手を握り合いながら深くキスをする。
まずシェゾが舌をのばしてきて、唇や口の中を嘗め回されて、
交代してアルルが同じことをシェゾにしてあげる。
唇を離して舌だけを絡ませあう。
二人のキスは文字通り呼吸がばっちり合っていて、
はっきりいって初対面の娼婦と客って雰囲気はゼロだ。
アルルも、おそらくシェゾもそれに気付かず夢中でキスを楽しんだ。
「ん、んちゅ、く……んうぅ……」
いつものように、濃厚なキスをしてくうちにえっちな気分になってくる。
全員が火照ってきて、ブラの中の乳首が疼いてきた。
「……アリスはかわいいな」
いー気分になってるところにシェゾに囁かれた。
「……あ、ありがと、です……お客さんも、すてきです……」
呼び方こそアリスとお客さんだけど、囁き合いもいつもとあんまり変わらない。
そこでやっといつもと変わんないじゃんと気付いたアルル。
なんか娼婦らしく振舞わなきゃ!
「あ、あの、えと、今日は全部ボクに任せてください……。
お客さんのこと、たくさん、気持ちよくしてあげますから〜」
「そうだな……でも今は好きなようにさせろよ」
「でもぉ」
「今夜は俺が買ったんだから、客の要望に応えろよな」
「は、はい……」
そ、それでいいのかなあ……?
ともかく、ベッドに寝かされた。
「胸触っていい?」
「はい……」
ブラの上から、両手で両胸をゆっくり揉まれる。
「んぁ……っ、んふぁ……あっ」
乳首がブラの裏地でこすれて、びくんと反応してしまう。
そのままブラ越しに乳房をやさしく愛撫されて、どんどん敏感になったところで
ブラを外されて、直接触られて、今度は強めに揉まれる。
精一杯勃起した小さな乳首にキスされて、吸われたり舐められたりする。
「んっ、んぅぅ……は、あっ」
じんじんする胸を強くやさしく愛撫されて気持ちよさがどんどん広がっていく。
すぐにそれは頭の芯や女の子の大事な部分にも伝わっていった。
「んぁ…はあぁ……」
内股をもじもじさせて悶えるアルル。
感じてくると条件反射でシェゾの名前を呼びかける癖だけは、なんとかこらえた。
「下も、触っていい?」
「はい……さ、さわってください……」
シェゾはパンツの横の結びリボンを解いた。
そしてするりと抜き取られて、ガーターを残して裸にされる。
その瞬間、アルルは顔が熱くなるのを感じた。
(は、はずかしいよう……)
シェゾとはもう長い付き合いで、例えばお風呂上りのパンツ一丁の姿とかで
彼の前に立ったところでもう全然どうってことないのに、
えっちな気分になって自分の一番大事な部分を彼に晒すときになると
羞恥心を感じてしまうことがけっこうよくある。
でもって今はそれがすごく強い。はずかしくってしかたがない。
いつもと違った趣向や話し方で触れ合っているせいだろうか。
両足を開かされてあそこを丸見えにされたときには、ちょっと涙が浮かんでしまった。
これじゃ娼婦どころか初めて男に抱かれる処女みたいだ。
「アリスのここ、すごくきれいだな」
「あ、やだぁ……は、ずかしい、です……」
ひくひくと震えているそこを指で撫でられる。
(もちろんすでにとろとろに濡れていて、それを見られることもはずかしかった)
いつもだと、こんな風にはずかしいって感じたときは、すぐにそれは愛しい男の人に
自分の全てを見せる悦びに変わって、そして快感に変わるようになる。
ということは、今はすごくはずかしいから、きっとすごく気持ちよくなるに違いない。
そう思っただけでアルルはまたはずかしくて、気持ちよくなってしまう。
「んはあっ」
シェゾが指でアルルの性器を撫でた。
膣口に溢れる愛液が尿道口やクリトリスに塗りつけられて、指が離れても糸がひく。
それだけで甘い電気がびりっと流れてアルルの心もカラダもとろけていく。
シェゾはくちゅくちゅと指先でアルルのそこをいじり続けた。
「なあ、アリスはどこが一番感じるんだ?」
「はあ、あ……あ、えと、前の、ほう……」
「それってどこだよ……ちゃんと言えよ、アリス」
「え、あ……クリトリス、です……」
普段口にしない単語も言わされてまたぽーっと火照ってくる。
アルルはなにがはずかしいのかぼんやり分かってきた。
いつものえっちならもう以心伝心で言わなくても分かり合ってることを、
シェゾが初対面の客のふりをしていちいち言葉に出して聞いたりしてくるから、
それが改まった感じがして羞恥心を煽っているようだった。
シェゾはそれを承知の上なのかどうか、さらに聞いてくる。
「じゃあクリトリスさわっていい?」
「はい……」
アルルはぽーっとしたまま答える。
「剥いていいか?」
「あ、あ、剥くのはだめぇ」
はずかしくて気持ちよくて余計な思考力が消えていきそうだった。
にゅるにゅる……くりくり……
「ふああぁ、あ、あ、ああっ、うぁ……」
シェゾがクリトリスを包皮ごとしごいていくたびに、アルルは身をよじって悶えた。
気を抜くとすぐにもいきそうというか、彼の指が動くたびにかすかにいき続けている感じ。
「気持ちいい?」
「きもちいい……きもちいいよう……」
「じゃあさ、お前がいままでとった100人の客の中では、どれくらい気持ちいい?」
そんなものいやしない。シェゾ以外の男に抱かれたことなんか一度もない。
「そんなのいない……ボク、シェゾだけ、きもちいいの……」
「こら、ちゃんと娼婦に徹しろよ」
注意しつつもシェゾはちょっと嬉しそうだった。
シェゾが右手でクリトリスをいじりながら、左手の中指を膣に差し込んできた。
「ひゃああぁ!」
そして膣内の指をかぎ型にまげて、入り口付近の気持ちいい部分をぐりぐりされる。
シェゾはアルルはどこが感じるかをもう知り尽くしているので、
そこを集中して攻められるともうあっという間に限界がきてしまう。
「ふあ、あ、あ!ああーッ!」
全身をびくびく痙攣させてアルルはあっけなくいかされてしまった。
「ああ〜、ふあぁ、はあー、はぁ……」
荒く息をついて余韻にひたるアルル。
その間にシェゾはバスローブを脱いでアルルの上に膝立ちになった。
「はぁ、あ……」
ぎんぎんに勃起した彼のペニスが目の前につきつけられる。
ただでさえ大きいのに下から見上げるとさらに大きく見える。
「アリス」
とっさに名乗った源氏名で呼ばれる。
まだ売春ごっこは終わってない。
「あ、ごめんなさい、ボクだけ気持ちよくなっちゃって……」
「ふふ」
「ど、どうそ……きて、ください……ボクので、気持ちよくなってください……」
アルルはもう完全に演技抜きで心から彼にそう言ってる。
もうほんとにいつもみたいに、彼に気持ちよくしてもらって幸せ〜になってしまって、
そして彼にも気持ちよくなって欲しい、って思っていた。
「ああ、いくぞ、アリス」
でもアリス。
シェゾが上に覆いかぶさってきて、足を大きく開かされて、膣口に彼のペニスが触れた。
そうされながら頬にキスされたりして、アルルはうっとりしてくる。
そうするとたった今いかされたばかりなのに、またすぐカラダがうずいてくる。
シェゾといっしょに気持ちよくなりたいって気持ちでいっぱいになっていく。
なんかもうラブラブ全開。
シェゾのペニスの先端が、ゆっくりゆっくりアルルの中に沈んでいく。
「ああぁ……シェゾ、シェゾぉ……」
「シェゾじゃないだろ、アリス」
「あ、もう、無理だよう……うあ、あぁっ」
彼のペニスが一番奥にあたって、ぐちゅぐちゅと突かれていくうちに、
おへその奥のほうまで、根元まで入るようになって、子宮にずんずん響いた。
それが身持ちよくてたまらなくて、もうアリスになりきるのも無理。
シェゾが片足を抱えてきて、さらに深く深く突かれる。
一番奥まで突かれたときに、彼の先端が子宮に直接あたるような気がして、
お互いの下腹が密着して、クリトリスもぎゅっと押される。
「シェゾ、シェゾォ、シェゾ……ふああぁ、ああぁ!」
もうアリスになりきるのを放棄したら、さっきまでシェゾの名前を我慢してたぶんだけ
何度も何度も無意識のうちに彼の名前を呼んでしまう。
シェゾも夢中な様子でアルルの中を味わっているようだった。
今度は四つんばいの格好にさせられて、後ろから突かれる。シェゾが好きな格好だ。
アルルとしてはもっとカラダ同士が密着する格好が好きなんだけど
この格好だと気持ちいいところを的確に突いてくれて気持ちいいし
シェゾが喜んでくれるんだから、結局アルルもこの格好が好きかもしれない。
がっしり腰を掴まれて、激しくペニスを出し入れされるうちに、
またアルルもいきそうになってきた。
「ふぁ……あ……あぁ……」
がくがくして言葉もうまく出せないけど、シェゾにはいっしょにいきたいって気持ちが
ちゃんと伝わったようだった。
彼の動きが小刻みになって、射精が近いことを告げていた。
「い、いくぞ、アルル……」
「ひ……あ…あ………」
どくん!
シェゾが思い切りペニスを押し込んできて、一番奥で射精した。
それといっしょにアルルも2度目の絶頂に達する。
「あ……あぁ……ふあ……」
ほんとにとろけるような快感と幸せを感じながら、アルルは声にならない悲鳴をあげながら
背中をのけぞらせて何度も全身を痙攣させた。
「ふうっ」
シェゾは満足そうに大きく息をついてペニスを引き抜いた。
アルルは半分失神してて、ずっとお尻を突き出したままの姿勢で惚けている。
膣口からは、二人の体液が混ざり合って太ももに垂れてガーターストッキングに染みていった。
「…………お前さ」
「うん……」
ことは終わって、アルルはくったりと横たわりながらシェゾのつぶやきを聞いた。
「娼婦の才能ゼロだな」
「とほほ……」
確かに、娼婦らしい振る舞いは結局ろくにできなかったような気がする。
「将来娼婦になるのだけはやめといたほうがいいぞ」
「ならないっちゅーねん!」
「でもさ」
「うん?」
「かわいく悶えながらも娼婦になりきろうと必死なところはかわいかったぞ」
「………………シェゾ、もしかして、最初からそれが狙いだったとか?」
「そうかもな」
「いくらなんでもマニアックすぎるよ」
あ、欲しかったスカートはその後ちゃんと買ってもらいました。
おわり。