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…その夜、アルルは学校で出された宿題をしていた…。昼間はウィッチの家にいてサボっていたので結構まずい。
「(あ〜、めんどくさい…。まだこんなに覚えなきゃなのか…。でも宿題だし、仕方ないか…。)」
はじめはめんどくさそうにやっていたアルルだったが、次第に頭が覚めてきて、勉強にも熱が入り始めた。しかし、タイミングが遅すぎた。もう夜更け、今度は睡魔が彼女を蝕み始めた…。
「(眠い…いや、だめだめ寝ちゃあ…でも、眠い…)」
目がトロンとなって、夢うつつになっていると、ふと何か体に違和感を覚えた。
「(ん?何だろう…)」
それは、緩やかな波のようにアルルを包み込む。そして、それがどのような種類の感覚か気づくのに時間はかからなかった。
「(うわっ…この感覚、昨日のアレと同じだ…どうしよ…)」
どうやら、体が火照ってむずむずする、いわゆる「疼く」状態。その感覚はだんだんと、より具体的なものとなってゆく…。
「(えっ!?何で…あそこが…)ふぁっ…」
明らかに何かおかしいのには気づいているが、それがなぜかはまだわかっていない。しかし、間違いなく「感覚」は「快感」へと変化している。
「あ…あっ…や、だめっ…(お、おっぱいも…!?)」
布に触れている敏感な部分が甘い刺激を送り続ける。
「(い、一体どうなってるの…?)」
宿題のことなど忘れて、アルルはそっと服をめくり、ブラを外した。
「んっ!え?…う、うそでしょお!?」
思わず一人で叫ぶアルル、それもそのはず。触ってもいない乳首が昨日ウィッチにされた時のように大きく張っているのだ。
「(ち、ちょっとどうして…)」
自分の体に起きた突然の変化に驚いたアルルは、ゆっくりと、その「変化の起きた部分」を確かめるように触ってみた。
「(ちょん)はぅっ!や、やっぱりおかしいよぉ……。もしかして…」
そのとき、ふと脳裏にウィッチが別れ際に言った言葉が浮かんだ。
「(ひょっとして、『楽しいこと』って…これ…?)」
興味本位でもう一度
「(ちょん)ぁっ…、やだ…う、ウィッチ…ど、どうしよう…」
「(そういえば、ボクがご飯食べてるとき、ウィッチ、妙にそわそわしてたような…ま、まさか…ね)」
自分を落ち着かせようとするが、快感はどんどん増幅してゆく…。
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+そのころウィッチの家では…+
こちらも同じく宿題をやっているようだ。でも頭の中は、昨日のことでいっぱいだ。
「(あぁ…アルルさん、あの時は『大好き』って言ってくれたけど、嫌われてないかしら…でも、あの声…偽ものではありませんわよね…またアルルさんといっぱい「お遊び」したいですわぁぁ…)」
「…(確か昨日は…アルルさんを縛って、あれやったり…そういえば、「おしっこでちゃうぅ」とか、言ってましたわね…うふふ☆)」
ほっぺを真っ赤にして昨日のことを思い出してうっとりしているウィッチ…。ふと時計を見ると朝ご飯に入れた薬のことを思い出した。
「(あ、朝食に混ぜた薬、そろそろ効いてくる頃ですわね…アルルさんったら、何も気づかないでたべるんですものね…かわいいですわぁ♪)」
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それは「あの日」の夜のことだった…。
「zzz…(←アルルの寝息)」
「(ちょんちょん)はぁ…寝てますわね…さてと、作りましょうか…(くすくす)」
アルルに気づかれないよう、そろそろと抜け出し、2階に上がるウィッチ。なんだかよく分からない分厚い本を持ってきて、机に置いておもむろにページをめくる。
そのページ一枚一枚は茶色くなっていて、古い紙のにおいが鼻を覆う。目次だけでも数10ページあるから、全部見たら相当な量であろう。指で文字をなぞって目的の薬の作り方を追ってゆく…。
「(あっ、ありましたわ。)」
そこをめくると、見たことのない道具や、記号の羅列が記載されており、その隣に詳しい作り方があった。
「(これなら全部うちにありますわね…よしっ!)」
本に書いてあった材料をメモしてから、ウィッチは怪しい雰囲気の薬品庫に向かった。数分後、変な液体をいくつか持ってきて作業をはじめた。
「(えーと、効き始めるのは夜で、その後すぐ切れる…)」
頭の中でかなり難しいことを考えているようだ。しかし、これは単なる悪知恵としか言いようがない…。
しばらく配合、調整を繰り返している間に、ついに薬が出来上がった。
「で、できましたわっ…うふふっ」
一人で声を上げるウィッチ。アルルはすっかり寝入ってる。手に持った瓶には薄い色のついた透明な液体がほんの少し入っていた。
「(これを明日の朝食に混ぜて…そうすれば…)」
ウィッチが大喜びするのも無理はない。彼女は眠いのを我慢してアルルに飲ませる媚薬を作っていたのである。その薬を棚の奥にしまいこんで、ウィッチは何事もなかったかのように朝を迎えたのだった。
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「(今頃、びっくりして困ってるでしょうね…そのあと気持ちよくなっちゃって、一人で楽しんで…はぁぁ、たまりませんわぁぁ)」
勝手に妄想を膨らませていると、ウィッチの手はいつの間にか股間を弄っていた。
「あ〜んっ、アルル…さん…(すりすり…)きゃっ…あんっ、こ、この手は…いつの間に…?」
勉強しなくてはならないはずなのに、気持ちよくなってきてしまったウィッチは、
「(まぁ、いいですわね、お勉強は後で…。きっとアルルさんも今はこうやって…)んっ…あっ…んふっ」
「(ぐちゅっ…くちゅ)んぁ…あんっ…やっぱりいいですわぁぁ…やんっ…」
パンティの上から、自らの手で慰めるウィッチ、その行為は止められるはずもない…。
「んぅ…あぁっ!…んくっ…あんっ!はぁぁ…」
「あぁっ…指が…指が止まりませんわぁぁ…あぅっ…やんっ」
パンティ越しの指の刺激に飽きてしまったウィッチは…やっぱり脱いでしまう。
「あぁぁ、もっと…もっと気持ちよくなりたいんですのぉ…(ぬぎぬぎ…)」
パンティがなくなって剥き出しになったその場所は、もう愛液でてかてかになっていて非常にいやらしい光景が広がっている。
下腹部から指をするすると下ろす。だんだんと指が隙間に飲み込まれてゆく…。
「(するするする…にゅるっ)ひぁぁっ…あっ…」
「(ちゅぷっ…ぐちゅ)んっ!あっ…やん…ぁっ」
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+んで、アルルの家+
「んぅ…はぁぁ…どうしよう…あっ!あくっ…」
本能的に、その手は乳首をついばんでいた。
「はっ…あぁぁっ、き、気持ちいよぉ…(くにくに…)」
「やっ…あんっ…あ、あぁっ…」
昨日、ウィッチにしてもらったように、指を使って先っぽを擦ってみる。
「(かりっ)きゃっ!うぅぅ…だめ…」
「あんっ…どうすればいいのぉ…んっ、やっ…」
この気持ちよさをどうすることも出来ず、ただ快感をむさぼるしか選択肢は残されていなかった。
「はぁ…あっ…お、おっぱいがぁ…んくっ(くにっ…びくびくっ)やっ…」
これが、アルルの生まれてはじめてのオ○ニーだった。ウィッチの目論見は見事に当たっていた。
「あぁぁっ…(くにゅくにゅ)はぅっ」
「あ〜ん…こ、ここも…欲しいのぉ…(ぐしゅ…くちゅ)あっ、あっやんっ」
椅子からずり落ちておしりを突き出すような格好になると、アルルは気持ちよさそうにあえぎながら、昨日の快感を自らの指で再現している。パンティの中に手を突っ込み、ぬるぬるの秘部をやさしく刺激する。
「あんっ…んくぅ(くちゅ…ちゅ)ひっ、あっ…指が…止まらないよぉ…(んちゅ…ぐちゅ)」
その時、小さな波が彼女を包み込んだ。
「あうぅぅっ!あっ!」
指が触れたところは、女の子の一番敏感なところ。その突起をゆっくりとつまみ上げてみる。
「(きゅ)やっ!はぅぅっ…う、ウィッチぃ…どうして…」
そこをいじること数分…大きな波が今度はやって来た。
「あっ…あんっ!!やだぁっ…(とろっ…)」
体の奥から、きゅっと搾り出されるように愛液が滴ってきた。
「はんっ、ボク…どうしたら…いいの…?あんっ!(びくびくっ)」
その快感の波に飲まれながらしばらくいじっているうちに、体が絶頂を求めていることに気づく。
「(も、もしかして…ボク…『いきたい』…の?)」
気づいたそのときに、すでに行為は始まっていた。
右手で乳首、左手でおまん○を弄くりながら、甲高い声をあげながら快感に浸るアルル。
「(くりっ…ぬちょぉぉ)あんっ…あっ!らめっ…うぅぅっ、んっ!」
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+ウィッチの家では…+
「あっ…アルルさん(ぐちゅぐちゅ…んちゅ)きゃんっ…ふぅぅ…」
ウィッチの手は無造作に股間をまさぐっていたが、そのうち「穴」に向かっていった。アルルにやったときと同様に指をぴんと立て、徐々におま○この中に収めてゆく…。
「(にちゃ…ずぶずぶ…)うっ…くぅぅぅぅっ…んぁ…ふぅ」
アルルと違って幾分スペースがあるようで、指を曲げるのもそれほど辛くない。
「(くにっ)んふっ…あんっ…もっと、もっとぉ…(くにょ…)やんっ…」
「(ずにゅずにゅっ…)はうぅっ!あっ…あ、アルルさぁん…あんっ」
アルルの事を想いながら、だんだんと指の動きを早くしてゆくウィッチ。
「あっ!あっ!…はぁっ…んくっ、やっ!んぁっ…ひゃあんっ(びくびくびくっ!!)はぁ…はぁ…」
ウィッチはあっけなく達してしまった。
「あぁぁ…今日はもう疲れましたわぁぁ…(ばたっ…zzz…)」
宿題忘れて、そのまま寝てしまった。明日はどうなることやら…。
その時、テレパシーか何かで繋がっているかのように、ほぼ同時にアルルも絶頂を迎えていた。
「あっ!やっ…あぁぁぁぁぁぁっ!!(びくっ!びくびくっ!)」
体の力が抜けたのか、少しおしっこを漏らしてしまった。
「あっ(ちょろっ…)うわぁぁっ…もれちゃった…」
薬が切れたのようで、いつの間にか快感はどこかに消えてしまっていた。ウィッチ、恐るべし。とりあえずアルルは始末をすると、宿題を中断していたことを思い出す。「(あ〜やばいよやばいよぅ…明日までに間に合わないかも…)」
疲れた体でのろのろと作業をこなしてゆく。なんとなく窓の外を見てみれば、黒かった世界が少しずつ青くなり始めている。
「(うわぁ…もう夜明けじゃん…でも、後少し。がんばるぞっ)」
もう宿題は残り僅か。しかしとうとう徹夜になってしまった。へとへとにはなったものの、なんとか課題はクリアできた。それとは逆に、眠りについていたウィッチも、昇ってきた朝日の明るさに目を覚ます。ただ、せっかく寝たのに、疲れはちっとも取れていなかった。
「ふぁぁぁぁぁ、ねむっ…って、まさか…わぁぁっ!宿題やるの忘れてしまいましたわぁっ!」
やな目覚めだ。明らかに時間が足りないのにやり始めようとしてノートをあければ、そこにはちゃんと課題がやってある。ウィッチの口から思わずこぼれた言葉は…
「あ…あれ…?お、おばあちゃん…?」
そう、ウィッチのおばあちゃんに当たるウィッシュは、とにかく親バカ。何かあればすぐに面倒を見てしまうのである。
今日もどこかでウィッチのことを見守っていて、忘れた宿題をやったのだった。経験豊富そうな美しい字で綴られたノートの後ろのほうには何かが挟まっていた。
それを手に取り読み上げるウィッチ。
「えーっと…ノートは…書いておいたよ…あと、昨日やってたことは、全部、見てた…よ?えっ?(ぽっ)」
昨日の夜、ウィッチがやっていたこと、もちろんイケナイ一人遊びも、どこかでウィッシュに見られていたようだ。ただ「見てたよ」と書かれていただけで、他にコメントがないので余計パニックになるウィッチ。
「あぁぁっ、どうしましょう!?困りましたわぁぁっ。おばあちゃんに見られるなんて…恥ずかしいですわぁ」
残念ながら騒いでいるヒマはなく、さっさと用意をして学校に行かなければ…。
朝食を食べて、支度をして、重い足取りでいざ学校へ…。とりあえず、宿題は何とかなったみたい。
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学校へ行く途中、ウィッチはアルルに出会った。
「あら、アルルさんおはようございます。」
朝のことがなかなか頭から消えないが、あくまで平静を装うウィッチ。
「お、おはよう」
アルルは、何か言いたげな顔をしてウィッチを見つめている。
「…どうかなさいましたか?」
「あ、あのさぁ…昨日の夜に…」
アルルの一言で、ウィッチのスイッチが切り替わる。
「あぁ、その話ですね。それで…どうでしたか?」
「それがね…夜、宿題をやってたら、なんだか体が熱くなって、だんだん気持ちよくなってきて、んで…それで…(ぽっ)」
恥ずかしさのあまり焦っているような口調でしゃべるアルル。それを優しくかばうウィッチ。
「無理して言わなくてもいいですわよ。(ぎゅっ)あなたのことですから、どうせ最後まではいえませんわ。何をしてしまったかは察しがつきますしね…うふふっ」
「そんなぁ…(ぽっ)」
「あらあら、かわいいですわね、アルルさん…(なでなで)」
通学路だというのに、アルルをぎゅっと抱きしめて、こないだのように目をつぶってキスを迫るウィッチ。
「だ、だめだよウィッチ、誰かに見つかっちゃうって…。んっ」
「んっ…(ちゅ)…あぁ、アルルさん…あなたが好きで、幸せですわぁ。」
辺りを見回して、誰もいないことが分かると、アルルはホッとした。
「はぁ〜、ホントに誰かに見られたら大変だよウィッチぃ。」
「構いませんわ。だって、わたくし達愛し合っていますもの…」
当然というような顔でウィッチは言う。本当は手でもつないで行きたいところだが、いっくらなんでもそれはまずい。そんなこんなで、学校に着いた。
…しかし、疲れた体で授業に挑んでも頭に入るわけもなく、案の定、二人とも授業中はぐっすり眠ってしまった。お昼も、午後の授業もすっぽかして、ただひたすら。
起きた時にはもう夕方。先生もびっくりするくらいよく寝ていたそうだ。心配したから、起こさないでそっとしておいてくれたようだ。先に起きたのはアルルだった。
「あ〜、よく寝た。げっ!もう夕方…」
傍らにはウィッチの寝姿が…。教室にはだーれもいない。
「あ、ウィッチも寝てるよ。おーい、起きろ〜!!」
「うわぁっ!!(びくっ)ゆ、許してぇ!(ガッ)い、いった〜い!」
よほど驚いたのか、こけて頭をぶつけてしまった。
「あははっ、起きた起きた。ボク達、どうやら一日中寝てたみたいだね。」
「あらほんと…やってしまいましたわね。(くすっ)」
「ま、終わったことは仕方ないや。一緒に帰ろうよ。」
「そうですわね♪」
一日中寝るなんて結構なことをしてくれた割には、のんきな二人。もうみんなは帰ってしまったので、今度はちゃんと手をつないで仲良く帰る。いつもはほうきに乗って帰るウィッチも、今日はアルルが一緒なので歩いて帰る。
「今日は何しに学校いったんだろうね?」
「さぁ、わかりませんわ」
「ねぇ…今日二人で寝ちゃったけど、ウィッチはどうして寝ちゃったの?」
「えっ?(ぎくっ)そ、それは、単に疲れてたからですわよ。おほほ…(汗)」
「だからぁ、その『疲れたわけ』を聞いてるのっ」
「う〜ん、そうですねぇ〜」
もじもじしながら黙ってしまったウィッチ。
「言わなきゃ友達やめちゃおっかな〜」
「あぁぁ言います、言いますってばっ(あせあせ)それはですね…ちょっと体を動かす遊びですわ、遊び。」
「どんな遊び?(にやり)」
もうほぼ完璧にウィッチが何をやっていたか分かってしまったアルル。意地悪な質問だ。
「人には言えない遊び…ですわ。アルルさんは?」
「う〜ん、そうですねぇ〜」
ウィッチの真似をするアルル。
「こらっ、真似しない、真似っ」
「…ウィッチと、同じ…かな?多分…。」
「あ、あははっ…そう、ですか。」
変な空気になってしまった…。それを壊すようにアルルは機転を利かせてまったく別の話をする。
「そういえば、ウィッチ、今日の宿題完璧だったよね。すごいや」
「それがですねぇ、あれは、わたくしが夜寝ているときにおばあちゃんが書いてくれたみたいなんですわ。」
ちょっと恥ずかしそうに言うウィッチ。
「あ〜っ、ずる〜い!」
ポンとウィッチをたたくアルル。
「まぁまぁ、頼んだわけではないんですし…」
そんなことを話しているうちに、それそろ話のネタが尽き、ただ周りの風景を見ながら歩くようになった。
そんな中、アルルが急に立ち止まった。
「ど、どうしたんですか?アルルさん。」
ほんわかした空気は一転、重苦しくなってきてしまった。アルルはボソッと口を開く。
「…実はね、ボク…ウィッチに好きって言われたとき、すごく気持ち悪いと思ったし、やな気分でいっぱいだったんだ…。でも今は違う。よくわからないけど…ボク、今うれしいし…女の子同士でも、幸せになれるんだな…って思えてきた…。」
ウィッチも、アルルのことが大好きだが、まさかアルルがそこまで深いところまで考え込んでるとは知らなかったようで、急に自分のことを恥ずかしく思い始める。
「えっ…?何でいきなりそんなことを…」
「いやぁ…ただ何となくなんだけどね…ウィッチがボクにしてくれることとか、言ってくれる言葉一つ一つが、すごく温かくて、優しくて…。」
「あ?え?」
しかし、余りに急の事態にいまいち状況がつかめていないウィッチはなんと反応すればいいのか迷っている。
「だから…その…ボクも、ウィッチのこと、愛…してる…ってこと。」
「そ、そんな…縛ったり、苦しいこととかいっぱいしたのに…?」
「そんなの…関係ないよ。だって…好きだからこそ…出来たんでしょ?」
「うぅぅぅっ…アルル…さん(うるうる…)」
ウィッチの目頭が思わず熱くなる。
「何かがうまくいかないときとか、誰にもいえない悩みとか…ウィッチになら、言えそうな気がするんだぁ…。」
感動のあまり震える頬に一筋の涙が輝いた。
「うぅぅぅ、わたくしのこと…そこまで思ってくれていたなんて…う、うぅぅ(ぽろり…)」
「な、泣かないで…ねぇ…。」
「アルルさぁぁん(ぎゅっ!)」
「う、ウィッチぃ…(ぎゅっ)」
「アルルさん…大好きですわ…。」
「ボクも…大好き…。(うるうる…)」
アルルも涙をこらえていたが、とうとうその目から涙があふれてしまった。
二人は、心の底から湧き出てくる愛を押さえきれず、これ以上にないくらいに強く、強く抱き合った、それも、涙を流しあいながら。沈む夕日のオレンジに、固く結ばれた絆がシルエットとなって浮かび上がっていた…。
「もう…ほかの誰にも…渡しませんわ…」
「うん…っ、わかってる…。」
「一生、ついていきますわ…。」
「だめだよ、死んでも一緒だよ…」
「えぇ、そうですわね…」
それから何分間抱き合っただろう、さっきまで半分顔を見せていた太陽はもう残すところはてっぺんのみとなり、二人は幻想的なグラデーションに包まれていた。
ゆっくりと二人は離れ、お別れの挨拶をする。二人とも後ろ髪を引かれる思いでいっぱいだ。いつでも会えるはずなのに、もう会えないような空気がそこにはあった。
「さよなら…アルル、さん。また、明日。」
「じゃあね…」
涙をぬぐい、二人はお互いの家に向かって歩いて行った…。
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夜、アルルは家の中で椅子に座ってぼんやりしながら、学校帰りに打ち明けたことについて考えていた。
「(なんでいきなりあんなこと言っちゃったんだろう…ウィッチのことが好きなのには変わりないけど、思い出せない…。)」
アルルが今日の帰りに発した言葉は、ただ何も考えずに、本心から出た言葉だった。なので、それほど記憶には残っていない。
「(なんだか、あの時不思議な気分だったなぁ…。なんていうか、もう止まらなくなって、思わず抱き合っちゃった。やっぱり、ボクにはあのひとしかいないんだ…。)」
「(最初は普通に男の子と付き合って、それからいろいろ経験していくものだと思ってたのに、一体、ウィッチのなにがボクを引きつけるんだろう…。女の子同士なのに…)」
「(顔…?それとも声?う〜ん…違う、ちょっと違う。もっと別なもの…性別も超えちゃう、何か…)」
女の子同士だというところがまだ少しは引っかかっているらしく、性別の違いを乗り越えて愛し合っている自分について考え込んでいる。
「(あの日、家に招待されたときは怖くて、すぐ逃げたかった…。でも、いつの間にかそんな気持ちは消えて、ただお互いに愛し合いたい、一緒にいたいって思えるようになった…。)」
「(あぁ…ウィッチ…なんで、なんでなの…?)」
頭に浮かぶウィッチの笑顔、しぐさ、すべてがアルルの心の隙間を満たしてくれる、彼女のためなら命も捨てられる。それくらい、今のアルルにはウィッチがなくてはならない存在になっていた。
「(ねぇ…『愛する』って…なに…?誰か…教えて…。)」
考えれば考えるほど、深い闇に飲まれていくような気がした。今夜も眠れそうにない。ただ「愛する」…その言葉に秘められた壮大な意味を理解するのには、相当な時間が要りそうだ。
+ウィッチはというと…+
ウィッチは、かなりのインパクトがあったアルルの発言がなかなか頭から消えず、なんともいえない悶々とした気分でベッドに寝そべっていた。当然、自分の体を慰める気なんて微塵もない。
「(『ボク、今うれしいし…女の子同士でも、幸せになれるんだな…って思えてきた…』)はぁぁ、アルルさん…。(わたくしは、アルルさんをあそこまで考え込ませていたなんて…自分が情けないですわぁ…)」
「(…今までずっとわたくしがリードしてきたと思っていたのに、実はアルルさんのほうがわたくしを想って、引っ張ってくれていたと知ったときには、耐えきれず…涙があふれてしまいました…)」
「(そして、ぎゅっと抱き合ったとき、アルルさんの鼓動を…いや、すべてを感じて、もう離したくないって…思えましたし、きっとアルルさんと一緒にいるのが、わたくしにとって最高なのかもしれませんわ…。でも、それでいいのかしら…?)」
「(アルルさんも、わたくしと同じ時間を過ごすまでは、きっと男性の方とお付き合いしたいと思っていたかもしれませんし、それを考えるとわたくしって、なんてザンコクなんでしょう…。でも…でも…何かが違う…「何か」が…)」
ウィッチは、自分がアルルと一緒にいるのがいいことは理解しているが、二人を引き合わせる「何か」について考えている。
「(わたくしは、あのひとと離れたくありませんし…どこまでも付いていきたい…死ぬまで、いや死んでも…。二人でいれば、どんな困難でも乗り越えられる…。しかし、なぜそこまで思えるようになるのでしょう…?)」
「(分からない…つかめたようでつかめない…わたくしって、バカなんでしょうか…?それともみんながわからないものなんでしょうか…?)」
「(今頃、アルルさんは何を想っているんでしょう…?はぁ、疑問は増えるばかり…困りましたわぁ…。)」
「(アルルさんに…会いたい…。)」
こちらもまた、今夜は眠れそうにない…。
考え込んでいるうちに、会いたくて会いたくてたまらなくなったウィッチは、アルルが寝てるか起きてるのかも分からないのに、とりあえず行ってみることにした。
「(もう、我慢できませんわ…)」
ほうきに乗って夜の街を見下ろしながら、あっという間にアルルの家の側まで来た。空中で静止して、バランスをとりながら中の様子をうかがう。
「あ、まだ起きてますわね…。わたくしと同じ…。」
そこには、椅子に座って何かを考え込んでいるアルルの姿が。次の瞬間、目があった。すぐさま着陸してほうきを降り、走って駆け込むウィッチ。
「アルルさん…どうしても会いたくなって、来てしまいましたわ…。」
「じ、実はボクも…なぜか眠れなくて、ウィッチに会いたかった…。」
「二人でいれば、きっと眠れますよ。」
「うん。そうかもね。」
「それにしても、どうして眠れなかったんですか?」
「う〜ん、よく分からないけど、ウィッチとボクって、ほら…その、愛し合って…る、でしょ?」
「はい…そうですね。それで?」
「その『愛し合う』っていうのが、一体何なのか気になってい…。ボク達、女の子同士なのに。何でかなぁ、と思って…。ウィッチは?」
「…大体一緒ですけど、わたくしは、アルルさんとわたくしを引きつける『何か』が何なのかということをずっとかんがえていました。」
「ふ〜ん、難しいね。」
「はい…困りましたわね。今夜は眠れそうにありませんわ…。」
「あれ?二人でいれば眠れるって、さっき言ってなかった?」
「そうですけど…実際どうなんでしょうね…?」
「さぁ…。じゃぁ、寝て…みる?一緒に。」
「えっ!?そんなぁ(もじもじ)」
女の子を縛ってあんなことやこんなことをしたウィッチでも、さすがに一緒に寝ることは恥ずかしい。
「どーしたの?照れちゃって…」
大きなひとみでウィッチの顔を覗き込む。
「え〜っ、(ぽっ)だって、本格的に寝るの、初めてなんですもの…。体が熱くなってしまいますわぁぁ。」
「まぁまぁ、そう緊張しないで…。大丈夫大丈夫。きっと寝られるよ☆」
「えぇ…それじゃぁ、ご一緒させていただきます…わ」
家にあるベッドは一人用なので、二人が寝れば自然と体が密着する。緊張したウィッチは、アルルと視線を合わせられない。
「ねぇウィッチ、こっち向いてよ。」
「やんっ、は、恥ずかしいですわぁぁ…」
一向にこっちを向かないウィッチを、アルルは強引に向かい合わせた。
「ねっ☆」
目があった。アルルのひとみは純真そのもので、ウィッチの心の奥深くまで綺麗にしてくれるような輝きだ。
「あ、アルルさん…」
「ボク達、一緒でしょ…?」
「はい…そうでしたわね」
「じゃぁ…キス、しよ…」
積極的なアルルに先導されるウィッチ。ついこないだまでとは、まるで逆の立場だ。二人はお互いの背中に腕を回し、帰り道のときのように抱き合った。
「わかりましたわ…(ぎゅっ…ちゅっ)」
「んっ…んっ…(んちゅ…くちゅ…ちゅぅ…)」
男女がそうするように、二人は狭いベッドの中で熱いディープキスをした。舌を絡ませ、お互いの唾液を混ぜ合わせながら、激しく、そして穏やかに…。
「んっ…あっ…アルルさん、わたくし、答えの手がかりが見つかったような…気がしますわ」
「ボクも…。」
その一言を最後に、二人は深い眠りに落ちた…。それぞれの思いが交錯する中、夜という世界もまた、深く、深くなってゆく…。
おっしまい!!