その日。
いつものように教室の片隅で話をしていた、水原可奈と取り巻きの女子二人。
ただ、その話の内容が彼女には、ちょっと問題だった。
「は、初体験?」
取り巻き一人の爆弾発言に、可奈は目を白黒させた。
「そう。昨日ね。彼氏と……」
顔を赤らめながら、取り巻きの一人、長髪ショートの少女が語る。
「それはやっぱり……なんというか、そういう、ことをしちゃったわけなんだよ
ね?……早くない?」
「早い?……きょうび、高校生で初体験なんて遅いくらいだよ?」対照的に活発
そうな茶髪ボブカットの少女がまぜっかえす。
「そ、そうなの……むぅ」
「なに、可奈ってば、マダなの?」
「……まだというか、なんというか……」
「まぁ可奈は部活一筋だし。それにあの、怖いお父さんがいるからねぇ」訳知り
に茶髪ボブカットの少女が頷く。
「あ、でも私、可奈はてっきり、燈馬君とそういう仲なんだと……」
ここで、なにかとウワサの、天才少年の名前が出ると、可奈がオーバーに慌
てる。
「燈馬君って……そういう仲じゃないし」
「はぁ……」短髪の子が溜め息。「まだそういう事を言うかな、この子は」
二人の仲の良さ……というより、可奈が一方的に世話を焼いてるようにも見え
るが、そのあたりのことはクラスすべての人間が知っているわけで。半ば公認カ
ップルみたいなものだ。黒髪ショートの少女に限らず、多くの生徒が二人にはそ
ういう関係があるもんだと邪推していたりもする。
しかしその実、どちらのオクテのせいか、二人の仲は友達関係から、ほとんど
進んでなかったりした。可奈自身、燈馬に抱く感情が、世話焼きの延長なのか、
それとも恋心なのか、判断つかず戸惑う部分がある。それに、さばけた性格の可
奈は、この異性との友達関係を抵抗なく受け入れている。
のだが、
(あいつは、どう思ってるのかなぁ……)
そう考えることもあった。
オトコである燈馬が、自分の中にある異性を意識することはないだろうか?
無ければ無いで、それなりにショックだ。でも、魅力云々は置いて、この年の男
の子が甲斐甲斐しく世話を焼く女の子に惹かれていくと考えるのは、ごく普通の
こと。
ただ、可奈はそれを意識することで、今の関係が壊れるのが怖かった。だから、
絶対に、自分からは口にしなかった。
「MIT出の秀才で、なおかつあの二枚目よ?彼氏にするのに何の不都合がある
っての?」
「でもあいつ、私には生意気なこと言うし……」
「……いい、世間一般では、それはノロケと言う」心底呆れる茶髪ボブカットの子。
「……そうなの」
「自覚なしかよ!」
若干しらけ顔で、やれやれといったポーズの二人。
「可奈自身がどう思っても、周りから見たら、アンタ達二人はお似合いのカップ
ルよ。これ以上ないくらいの。互いが好きあってるなら、何の問題も無いでしょ?」
「……うーん。燈馬君はどうだろ……」
可奈の心に残っているのは、初めて会った時の、燈馬の表情だった。あの、だ
れも信じていないような、孤独な顔。最近はあの顔を垣間見せることは無くなっ
たものの、彼の深部にはまだ、あの人を拒む仮面が残っているのではないだろうか。
「魅力に自信が無いなら、自分から動いて虜にしちゃえばいいのよ」
「え、それって……」
「抱かれなさい!いや、むしろ抱く勢いで迫りなさい!」
びし、茶髪ボブカットの子が可奈を指差し、言い放つ。
「冗談……よね?」
「いいえ。これが友達としての最良のアドバイス」
「……ほら、でもあいつ、わりとオクテだから……」
「大丈夫、大丈夫。作戦があるのよ。これで彼も可奈の魅力にイチコロになるわ」
そういって茶髪ボブカットの子はニマリと笑ったのだった……
その夜。ところ変わって、水原家にて。
「はい、燈馬君。こっちも料理できたよ」
このところ、燈馬はときおり水原家に夕食をご馳走になりに来ていた。
そして今日も、リビングのテーブルで大人しく料理を待っている燈馬。
「やぁ、今日は和食ですか」屈託の無い笑顔で、テーブルに並ぶ料理を前に、
そんな感想を言う。「水原さんは中華も洋食も美味しいですけど、やっぱり和食
が一番ですね」
会話だけ取ればごく普通の食卓風景なのだが……
可奈は自分の身につけているものを改めて見、そして赤面した。
下着に、エプロンのみ。後ろから見れば、露出した背中が丸見えの、なんとも
扇情的な格好だった。もちろん、茶髪ボブカットの子の入れ知恵。本当は全裸に
エプロンということだったのだが、さすがにそれは恥ずかしすぎた。
調理の最中、可愛らしく揺れるショーツに包まれたヒップを、おそらく燈馬は
みていた……はず。不確かな視線に、身悶えしたりしたものだった。このままキ
ッチンで襲われるかも?けれど、可奈のそんな心配は杞憂に終わった。
ごく普通に料理に箸をつけ、舌鼓を打つ燈馬。
「……燈馬、君?」
「なにか?」
「なにか?じゃなくて……ほら、なんか言うことがあるんじゃないかな」
「ん……夏とはいえ、まだ結構、寒くありませんか」いけしゃあしゃあと、そん
なことを言う。
「……そうじゃないでしょう」
「わかった!可奈さん、洋服みんな洗濯機に入れてしまったんですね!僕も時々、
制服を全部クリーニングに出してしまって、途方に暮れることがあるんですよ」
「って、違う!そんなわけないでしょうが!」
「………?」
なんだか、自分の一人相撲だったようで、途端に脱力してしまう可奈。勇気を振
り絞ったセクシーアピールも、彼の目には洋服を洗濯機にすべて入れてしまった、
間抜けにしか映らなかったわけで。
(……なにが、これでイチコロ!よ……)
いじけ顔で、役に立たない助言者な友人を、心の中で詰ってみる。
マイペースに食事を進める燈馬。しばらくすると、出された皿と茶碗の中身は空に。
「ごちそうさまでした」
丁寧に箸を置くと、几帳面なお辞儀を一つ。
「……はい、お粗末様でした」
食器を片づけようと可奈がテーブルに寄ったときだった。
「きゃ!」
立ち上がった燈馬が、食器に手を伸ばす可奈の後ろに立つ。抱くように後ろ
から、その手を、エプロンの中に回した。
「ちょ、ちょっと、燈馬君!」
その急な行動に、可奈が焦りの声を出す。
「何ですか」
「どうして、こういう事に……ん!」
器用にまさぐる燈馬の手が、可奈のブラのフロントホックを外した。エプロン
越しに、形良い乳房が姿を現す。
「どうしても何も、水原さん、最初からこういうつもりだったんじゃないんですか。
こんな格好して」
「……たしかに、そうだけど……さっきまで全然そういう素振り無くて、なんで急に」
燈馬の指が、可奈の胸を弄る。張りのある双房は指が押すのに答えるように、柔
らかに凹んだ。乳頭を避けた、解すような指運び。快感よりも、掻痒感に近いもの
が可奈の官能を刺激する。
「僕はですね、食欲と性欲が両立しない性質なんですよ」何故かきっぱりとそんな
風に言う燈馬。
「そんなの知らな……はぅ」
燈馬の指先が、すうっと可奈の背中を滑った。不意打ちに近い、可奈自身知らな
い、弱点への刺激だった。窪みに沿って進む指先が、全身にぴりぴりとした刺激。
「水原さん結構敏感ですね。じゃ、こういうのは……」
背後の燈馬が可奈の耳に、舌を這わせる。
「んぅ……」これたま予想外の場所への刺激に、可奈がびくびくと背中を伸ばした。
耐えるように、右手の人差し指を口許に持っていくと、その中程を軽く咥える可奈。
燈馬は首筋にライトキス。
「……ん、はぅ……く」
抑えた快感の声が漏れる。
指先が乳首を責める。
くるくると乳輪をいじった後に、硬く立ったそこに指腹があてがわれた。
「……ん!」
「うん、結構エッチな体ですね」
可奈の反応を伺いながら、密着したまま燈馬が片手をゆっくり、下半身に伸ばす。
ショーツの上から、弾力のあるヒップを弄る。
「……!」
悪戯な指が、ショーツをするすると降ろしていく。
「と、燈馬君……そこは……」
活発ないつも彼女からは考えられない、恥じらった顔での力無い抗議の声。その
様子がとてつもなく、扇情的だ。
露になった淫裂は、あざやかな色。燈馬の責めのせいか、それとも下着姿で調理
をしていた羞恥のせいか、仄かに潤いを帯びていた。
ちゅく、
中指が淫裂の周囲に這わされる。くにくにと秘肉が動かされる。
「……はん……きゅ、ん」
くちゅり。水音と共に、その指が淫裂に飲みこまれた。
中程まで進んだ後、
「……?」その抵抗感に、燈馬が戸惑った。「……いや、まさか、初めてだとは思
いませんでしたよ。あんな積極的な誘いかたで」
「それは……その……」羞恥に顔を真っ赤にする可奈。
「……本当に、僕でいいんですか」きゅうに真顔になって、燈馬が尋ねてくる。
女の子のはじめて、その重要性を知っているのだ。そして、自身の欲望に流され
ること無く、こうやって相手を思いやってくれる。時に滅私に見える、ある種危う
い、燈馬の優しさ。何度か可奈は垣間見たことがあった。自身を軽く捉えすぎてい
る、その点が心配で、これがあるから可奈は燈馬から目が離せない。
それでいながら、おそらく可奈だけの知る、燈馬の、一番に、素敵な部分。
「うん。燈馬君になら……」
小さく可奈は頷いた。
椅子に座ったままの燈馬の体を、促されるように可奈が跨いだ。
ズボンを降ろすと、屹立した燈馬のモノが姿を現す。
(うわぁ、こういうのなんだ……)
おぼろげに記憶にある、風呂場で見た父親のモノとはすこし形が違うように見えた。
「……ホントに、これが入るの?」
「赤ん坊を生んだりもしますし。まぁ入るはずですよ」
向き合った形で、恐る恐る、腰を下ろしていく。
「入りやすいように手を添えて開いたほうがいいですよ」
「……そう、なの?」
言われるままに、可奈は片手を淫裂に伸ばすと、中指と人差し指で、くぱりとそ
こを開いた。あざやかな肉色の中身が、燈馬の眼前に晒される。
「なんか、とてもエッチな眺めですね」
そんなセリフに、可奈は頬を赤らめるしかなかった。
開いた淫裂をめがけて、自己主張する亀頭。その先がゆっくりとあてがわれる。
「……うん」
身じろぎしながら、ゆっくりと体を落としていく……
「きつ……」
先端が収まり、思わず可奈が苦悶の感想。彼女にとって、今まで感じたことの無
い類の痛覚がそこにあった。
「無理しないで下さい。ゆっくりでもいいですから……」燈馬は優しい台詞をかけ
てくれる。
「う、うん……」
そんな言葉に励まされながら、挿入を続ける。ぎちぎちと詰まった肉壁が、差し
込まれたそれにより、広げられていく。
そして、次の瞬間、
明らかに今までとは違った抵抗が。押し入れられるそれによって、そこの部分が
破られる。
じわり。結合部に純潔の証明である、赤いものが。
「……あげた、よ。燈馬君、わたしの……はじめて」
痛みのせいで泣き笑いの顔になりながらも、可奈は気丈に振る舞おうとする。
「ありがとう、いや、おめでとうかな?」
そこには、いつもと変わらない、燈馬想の笑顔があった……
「すこし、動き、ますね」
体面座位の格好のまま、燈馬がゆっくりと腰を動かす。浅い注送だった。愛
液と、純潔の証に包まれたそれが、出し入れに従い、じゅくり、じゅくりと水
音を立てる。
痛みに耐える可奈は、燈馬の背に手を伸ばし、しがみつくので精一杯だった。
「……はぁん、と、燈馬君……痛っ……」
「大丈夫ですか、水原さん……」
「うん、大丈夫、ちょっと、慣れて来た……かな」ほとんど強がりだった。それ
でも、心配そうな彼の顔を前にしたら、自然とこんなセリフが口をついてしまう。
「それより……燈馬君は……キモチイイ?」
「……はい」
「……そ、う……良かった。……好きに、動いていいんだよ……気持ち良く、なって」
「わかり、ました」
ずずず、挿入されたそれが肉壁を擦る。
先ほどよりも深部までの挿入だった。内腑をゆるやかに焼くような痛みが走る。
その痛みに耐え、一文字に結ばれた可奈の唇に、燈馬の唇が押し当てられた。
「……んぷ?」
不意打ちの接吻に、一瞬だけ痛みを忘れるほどに驚く可奈。いや、驚きだけではな
かった。体の内側から熱くなるような、火照りが生まれる。
(キスってこんなに気持ち良かったの?)
湧く感情に、自分自身、戸惑っていた。
両者の緋色の唇が離されると、その間に涎の銀糸がテロりと延びる。
「……もう、一回」
今度は、可奈の方から唇を合わせていった。半開きのそれから舌が伸びてくる。
ざらりとしたそれにみずからのものを絡ませる。互いの唾液が交じり合う。脳管を
蕩かす、刺激的なディープ・キスだった。
長く、長く。互いの息が続く限り、唇を貪り合う。この間、二者は、境界線を薄
めあい、互い自身に蕩けあっていく……
くちづけの高まりにあわせて、燈馬が可奈の最奥を叩いた。
きゅう。今だ感じたことの無い領域に、可奈は押し上げられつつあった。白い靄
と共に、思考力を失っていく瞬間。
「水原さん、ぼく、もう!」
唇を離した燈馬が、切羽詰まった声を出す。とろけた脳内が、そんな言葉を聞
き流す。
「抜かないと、いけないから、体を……!」
何の事を言っているのか、わからなかった。身じろぎする燈馬。しかし、
「ああ!」
甲高い声。その後、堪えきれずに燈馬は、収まったまま、白濁を放出した。
どくん、どくん。
その背を反らす動きに合わせて、白濁の塊が、可奈の膣内を叩いた。
処女の証に白濁が混じり、ピンク色になった液体が、結合部から滴り落ちた……
(ああ、膣中に出てる……って!)
「あああああああああああああ!!!!!」
「……いくらなんでも、至近距離で肘打ちは勘弁してくださいよ」
服を着た二人。燈馬の頭にぽこりと出たタンコブの上には、氷水が入ったビ
ニールが置かれている。
「仕方ないでしょうが……というか、出来ちゃったらどうすんのよ!」
まだ、恨みがましい顔の可奈。
「……あー、その時は、責任取りますよ」
「責任って。まだ学生のくせに……」
「……一応、もう大学は出てるんですけどね」
そういえばそうだった。
「それにしても、泣き笑いの水原さんは、可愛かったなぁ」
「な!」赤面。しかし次の瞬間には、電光石火の脇固め!(フジワラアームバー)
「痛い痛い痛い!!」
「恥ずかしいことを言うのはこの口か?」
「ギブ、ギブ!」
だん、だん、床を叩いてタップする燈馬。
「…そういえば」緩めること無く脇固めを続けながら、可奈が言う。「燈馬君、
随分慣れてたけど、それはどういうことなのかなぁ……」
「……いや、気のせいですって!入ってる、入ってる!ギブギブギブ!」
「こんなん、さっきの私の痛みに比べたら、軽いもんでしょうが!さぁ、言っても
らいましょうか!燈馬君の初体験!」
しばらく、タップの無いサブミッションという生き地獄を味わい続けた燈馬君で
したとさ。