「お師匠様、私は猫好きなので自分の生きがいから"猫"を捨てる訳にはいきません。
しかし、これをつけてくれるのなら今後はお師匠様一筋に生きるとしましょう」
そう言って、イルマは部屋の片隅から猫耳カチューシャを取り出した。
エキドナは嫌そうな顔でカチューシャについた埃を手で払ってから、しぶしぶそれを頭につける。
「なんだいなんだい、変わった趣味持ってるねぇアンタは…
こんな物つけたら、何だか自分がエルフなのか猫なのか分かんなくなっちまったよ」
「では、次に『にゃあ』と鳴いてくれますか」
「にゃあ。ほい、これで満足したかい」
次の瞬間、イルマの放った修正値−5の平手打ちがエキドナの頭部に炸裂した。
普通は師匠に手を上げたら「何をするか!」と逆に殴り返されてもおかしくないのだが、
痛い目に合った試しがほとんど無いエキドナは、苦痛に耐性が無いので、涙目になりながら情けない声をあげる。
「ひ、酷いよアンタは… ちゃ、ちゃんと言いつけ通りに猫の物真似したじゃないか〜」
「"これで満足したかい"なんて猫が喋るかっ! はい、もう一度!」
「にゃ、にゃあぁ〜」
まるで捨て猫のようにか細い声で鳴くエキドナを見て、イルマははっと我に返った。
(しまった、条件反射とは言え私はお師匠様に何て事をしてしまったのだ!
しかし涙を流すお師匠様の姿もなかなかの色気が…)