各先生方には「寮担任じゃないと張り合いがないでしょう?」などと言われる。では、当の本人-アメリアが日々の職務を悠々とこなしているのかといえば、決してそうではない。
彼女の担当であるノンジャンルは、文字通り学園で教える全ての科目が含まれているわけで、大雑把に言ってしまえば、各教科の専任の先生の5倍は勉強しなければならないことになる。
さらに、新任の先生より馴染みがあるからなのか、新学期が開幕してからアメリアは質問攻めにあうことが多かった。
そんな新学期も一月を過ぎた五月のある日・・・
「先生ー!」
放課後のがらんとした職員室に響く元気な声。アメリアが声がした方へ見やると、やや短めの赤い髪とやや(?)大きめの胸が特徴的な少女が、息を弾ませながら駆け寄ってきた。
「あら?何かしら?ルキアさん」
ルキアと呼ばれた少女は、息を整えつつ
「マロン先生が大事な用があるそうなんで、至急自分のところに来てくださいって」
とだけ捲くし立てると、勢いそのままに職員室から出てってしまった。
そんなルキアの様子を苦笑混じりで見送りながら、大事な用事?一体何かしら?とマロン先生の部屋がある校舎に向かうのだった。
「アメリアです。マロン先生いらっしゃいますか?」
マロン先生個人の教員室(通称アニゲ部屋)の戸を叩く。
「アメリア先生ですか〜?ちょっと待ってくださいね」
と同時に、何やら派手な雪崩の音がした。あぁ〜もう!とぼやきながらマロンが部屋の戸を開ける。
「どうぞ。ちょっと散らかってますけど」
そう言って通された部屋の中は確かに散らかっていた。ただし、「ちょっと」などという可愛らしいレベルではなかったが。
いつもは彼女らしく整理整頓された部屋が、古文書の類で覆いつくされている。
しかも、古文書というだけあって、何やら黴臭い。これでは、まるでロマノフ先生の部屋といった方が通りそうだ。
呆気に取られていたアメリアに、適当に座ってくださいとマロンが椅子を勧める。
「あの・・・・先生これは?」
着席しながらようやっとアメリアが口を開く。
「ははは・・・。ちょっと調べ物をしてまして」
苦笑いするマロンにつられて、思わず自分も苦笑してしまう。
「で、私に用がおありと聞きましたが?」
その言葉を聞いて、マロンは少し驚いたように眼をクリクリさせた。
「あ。アメリア先生が協力してくださるんですね。助かります〜」
そう言うと、山の中から一冊引っ張り出して、勢いよく机に置いた。今一つ彼女の真意がわからず、今度はアメリアが眼をパチクリさせる。
「実はですね。新しいお仕置き方法を試そうと思いまして〜」
彼女が言うにはこうだ。赴任して一月、担当科目は「アニメ&ゲーム」であるが、どうも生徒達の成績が芳しくないらしい。
元々苦手意識を持ちやすい分野である上に、お仕置きの雷は実は結構痛かったりするので、余計に生徒達が予習を避ける。そして、さらに成績が悪化。という典型的な悪循環に陥っている。
で、さすがにカリキュラム変更は校長じゃないと無理なので、燃えるマロン先生は、お仕置き方法変更に活路を見出そうというらしいのだ。
一教師として、生徒達の成績向上を考えるのは当然なのだが、その方法がお仕置きの変更とは・・・。アメリアの背中を嫌な汗が流れた。
「まさか、そのお仕置きを私に試そうとしてますか?」
「正解〜。本当はルキアさんにお願いしてたんですけど、急に都合が悪くなったらしくて。アメリア先生が快諾してくださって、本当に助かります〜」
・・・!あのデカ乳!ハメたわね!
「さ、アメリア先生。始めましょう」
いつの間にかアメリアの背後に来ていたマロン先生は、時折見せる妖艶な表情でそう呟いた。
マロン先生は両腕をアメリアの体の両脇から前に出して、スタームーン
ワンドを立てて構えた。
「おしおきよ」
呟くように言うと、ワンドが先端からゆっくり光り輝き始める。
眩しい、と感じた筈なのだが、アメリアは吸い込まれるように
見入ってしまった。光は杖の先端から徐々に全体に広がり、さらに
輝きを増しながら周囲の光景を飲み込んでいく。
やがて視野の全てが光に覆われると、しばらくはぼんやりと白い光が
ゆらいでいたが、そのうちに奇妙なイメージが光の中に浮かび上がり
始めた。
白い、殆ど光に溶け込んでしまいそうな曲線。その曲線が立体を
形作り、ゆっくりと動き始める。滑らかに、往復するように、円を
描くように。
だんだんピントが合うみたいに曲線がはっきりとしてきて、そこで
ようやくアメリアはそれが女体であることに気がついた。一糸まとわぬ、
流れるような輪郭を持つ裸体が、光の中で動いている。最初は背中の
辺りだけだった身体は、段々見える範囲が広がっていった。
「あ……」
アメリアは思わず声を出していた。全体が明らかになるにつれて、
その動きは明らかに性交のものであることがはっきり判ったからだ。
床に両手と両膝をつき、幅の広い腰を前後左右にくねらせ、乳房が
ゆさゆさと揺れている。男の姿は無かったが、背後から突き入れられて
歓喜の中にあることはおよそ間違いない。
同時に、アメリアは奇妙な既視感を覚えていた。このイメージに、
というか裸体に、見覚えがある気がしてならなかった。いや、見覚えが
ある以上の感覚――
さらに映像が広がり、がくがくと揺さぶられる首が見えるに至って、
ようやくアメリアは全てを理解した。もちろんその身体はアメリア自身の
ものだった。微かに記憶の底に残っている、かつての恋人との激しい交わり。
これは私の記憶から掘り起こされた映像なのだろうか?
それとも今の寂しい私が作り上げた都合のいい妄想?
いずれにしても、あまりに真に迫った自分の淫らな姿は、急速に
アメリアの身体をも高めていった。
アメリアは頭を強く横に振った。
「……何を考えてるんですか、マロン先生。こんなものが生徒相手の
お仕置きに使えるとでも思ってるんですか?」
後ろに居るはずのマロン先生に言う。
「あれー、おかしいなあ。生徒の深層心理に入り込んで、反省を
促した上で、次頑張ろうっていう前向きな気持ちを起こさせる映像を
作り出す予定なんですけど」
マロン先生は悪びれる様子すらない。
「……こんなAVみたいな映像が出て来ちゃうようじゃ、確かに
使いものになりませんね」
「早く止めてください、恥ずかしい」
思わず口にしてからアメリアは激しく後悔した。なんてことを――
杖を両手で持っていたはずのマロン先生の手が、アメリアの身体に
伸びてきた。左手は胸元に、右手は下腹部に。
「ふふ……。いつからそんなに生意気になったの?アメリアったら……。」
急にマロン先生の口調が変わる。かつて自分の先生でもあったマロン
先生。子供のようなしゃべり方だが、その声を聞くと何故かアメリアは
抵抗する気力を失ってしまう。
マロン先生の小さな手が、ゆっくりと、しかし力強くアメリアの
柔らかい乳房を握ってくる。いけない、と思いながらも先ほどから
高ぶっている身体は言うことを聞いてくれない。またたく間に乳首が
固く尖り始めるのが自分でもはっきりわかった。同時に右手はスカートの
前側をまくり上げて、股の間に近付いてくる。その手がまだどこにも
触れないのに、秘部は期待に熱くなってしまう。
「ほら……」
マロンは妖しい声で囁きながら、手を動かし続ける。
「あぁ……」
アメリアはこらえ切れずに声を漏らしてから、それでも言った。
「ごめんなさい、許して下さい………。マロン先生……そんなの、
いやですっ……」
だが、言いながらもアメリアは、自分が本心では止めて欲しいなどとは
思っていないことをわかっていた。ただもっと高めて欲しいとだけ
望んでいることをわかっていた。
なのにそこでマロン先生は指の動きを止めてしまう。
「わかりました、いやなら止めるわ」
「あ………」
アメリアはどうしていいかわからなかった。熱くなった身体はもはや
抑えが利かない。このままではマロン先生にいいようにもてあそばれて
しまう。
なおも光の中の映像は動き続けていた。映像の中のアメリアは口を
はしたなく開き、快楽の叫び声をあげている。音は聞こえないが、
絶頂が近いのは口の動きだけで見てとれた。
「ま、マロン……せんせい……」
アメリアは口に出していた。
「なあに?」
「さわって……ください……」
「んー、聞こえないなー」
マロン先生が応じると同時に、映像の中のアメリアが絶頂に達した。
背中をぴんと反り返らせ、顔は苦悶に近い表情に歪んでいた。アメリアは
自分の中で何かが切れる音をはっきり聞いた。
「さわってください!」