「おぉぉぉろかものぉぉぉぉぉぉ!! 」
凄まじい怒声がアカデミーのグラウンドに響き渡る
「こ、こんなのおかしいわよ!」
少女は反論するがその声は届かず真紅の雷が彼女を襲う
「わ、わたくしの実力はこんなもので無くてよ!!」
少女はそう言いまた補習を受けるが結果は・・・・・
「 きぇぇぇぇい!」
再び大きい怒声が響き雷が彼女を襲う
「な、なんてことをするんですの!? 」
彼女がようやく開放された時すでにグラウンドは夕日で紅く染まっていた・・・・・
彼女の名はシャロン、富豪の一人娘で幼いころから英才教育を受け学問の成績は優秀であったが、スポーツの成績は目も当てられないほど酷かったのである
「ま、まったく!、スポーツなど野蛮なジャンルは無くすべきですわ!!」
シャロンは今回の補習のあまりの出来なさに教科そのものより自分に腹が立っていた
「早く寮に戻り、冷たいシャワーでも浴びましょう・・・・・・」
そう思いながら寮に向かっている途中今度は美術室から声が聞こえてくる
「アレに代わって、おしおきだー!」
「うああっ、お許しをぉっ!! 」
この声はマロン先生と・・・・・・カイルですわね
シャロンはこっそりと窓を覗いた・・・・・
そこにはやはり頭に浮かんでいた1つの光景が広がっていた
「今度不合格だったら、あのスナイパーに狙撃してもらうんだらね〜!!」
相変わらず冗談なのか本気なのかわからない脅しを言ったあと、マロン先生はプリプリしながら美術室を後にした・・・
「また、不合格だぁ〜・・・・・」
カイルは自分の成績に落胆していた
「あら?、不合格?情け無いですわね・・・・・」
シャロンは思わずカイルに向け言葉を発してしまった
「え!?、あ、しゃ、シャロンさんじゃないですか、こんばんわ」
急に声をかけられ少し驚くがいつものように笑みを浮かべながらシャロンのほうを向き
「シャロンさんも予習終わったところですか?良かったらご一緒に帰りませんか?」
え?・・・・一瞬シャロンは言葉を失った、何故なら彼女はまだ男性と2人きりになどなったことは無かったからだ
(な、何を言ってるの!?、この方、そ、それは・・・・私が容姿端麗で成績優秀なのは解りますけど・・・・・)
そんなことを考えているうちにカイルはいつの間にかシャロンの横に来ていて
「さぁ、帰りましょうか」
「え、えぇ!、私と一緒に帰れることを誇りに思うことね!!」
彼女はいつもの強がりを言ってしまった
しかし、カイルは怒ることも悲しむことも無く
唯、笑顔で
「すみません、恐縮です 」
その1言で自分の本当の気持ちを表しているのだ
流石のシャロンもここまで丁寧にされると、悪く思えたのか
「べ、別に良いわよ!!、む、無理に喜ばなくても良いですわよ?」
そして、彼女はまた自分が素直になれていないことに気付いてしまう
しかし、カイルのほうは
「いえ、嬉しいですよ、シャロンさんのような方と一緒に帰れるなんて、僕はなんて幸せ者なんでしょう」
この言葉を聴いたとたんシャロンの頬はみるみる紅くなっていく
勿論、今時にしてはとても古いような言い回しを聞いて恥ずかしいのもあるが、一番の原因は自分であった
自分自身の恥に彼女は頬を紅く染めた
もやもやしながら歩きながらもシャロンとカイルは
何とか寮と学校の間まで来た
「お、お待ちなさい!!」
シャロンは少し先を歩いているカイルに話しかけた
「え?、な、なんでしょうか?」
カイルは相変わらず無垢な笑顔で返事をしてくる
「あ、あなたって人は今の時代に何ですか!!あの台詞は!!」
顔を真っ赤に染めながら彼女はカイルに詰め寄る
「え?、だ、だって、僕は本当にそう思っただけですよ?」
カイルは笑顔でまるで挨拶でも交わすのごとくさらりと言い放つ
この言葉を聴いてシャロンの瞳からは少しずつ涙が流れ落ち
「な、何であなたはそんなにいつも真っ直ぐなんですの!?私なんて・・・・うっ・・・・ぐすっ・・・・」
カイルは突然の事態に少し驚き
「ど、どうしたんですか?シャロンさん?」
心配になり、落ち着かせるように声を掛けるがシャロンは本格的に泣いてしまう
「ひっ・・・・わたくしなんて・・・・賢者を目指している理由は唯の私怨ですのに・・・・あなたは・・・・困っている世界中の人々を助けるためという立派な目的を持って賢者を目指していますのに」
「わ、わたくし・・・・ぐすっ・・・ごときが賢者になる資格なんて無いですわ・・・・・それとあなたと帰る資格も・・・・」
そう言い走り去っていこうとする腕をカイルは掴み
「ひっ、な、何をなさるの!?、は、離しなさい!!」
シャロンは腕を振り解こうとするがいくらカイルが温和な性格でも力は男性なのでシャロンよりかはあるので一向に離れない
「お、落ち着いてください!、僕の話を聞いてください!!」
それは初めて聞く彼の大声だった
「ひっ・・・・うっ・・・・な、何ですの?」
大声に驚き力が抜けかえるのほうを振り向き
カイルはいつも通りの笑顔に戻っていて
「そんなこと言っては駄目です、お父さんを超えることが貴方の目標なんですよね?」
「ならば、その目標に価値を付けてはいけませんよ・・・・僕は世界中の困っている人を助けてあげたい」
「そして、あなたはお父さんを超えたい、それぞれ目標は違うかもしれませんが、立派な目標ではないですか」
カイルはシャロンを諭すかのようにそう言い聞かせた
「うっ・・・・で、でも、わたくしなんて・・・・スポーツは駄目ですし・・・・雑学も駄目ですし・・・・・アニメ・ゲームも・・・ぐすっ」
「出来るのは学問と芸能しかないのですわよ?」
またシャロンの瞳から涙がこぼれ始め
「ぼ、僕もスポーツとアニメ・ゲームは苦手です・・・・、それでも雑学は自信ありますよ」
「なので、苦手な所を他の人に聞くのはどうでしょう?僕も最近はレオンやラスクにスポーツやアニメ・ゲームのことを聞いてますし」
そうカイルはシャロンに提案したが
「うっ・・・・わたくしなんて・・・・ひっ・・・嫌われているから、誰も相手になんかしてくれませんわ・・・・・」
シャロンはそう言うと大粒の涙を流し続け
「うっ・・・ひっぐ・・・・わたくしみたいな者が周りの者と喋る資格なんて無いですわ・・・」
カイルはそれを聞き、励ますように
「そんなこと無いですよ、もし仮に・・・・仮にですよ?そうだとしても僕は貴方の味方です」
シャロンはそれを聞いた瞬間、カイルに抱きつきないてる顔をカイルの胸板に押し当て
「ひっ・・・・貴方って人は・・わたくしとは違って・・・本当に・・ぐすっ、真っ直ぐすぎるんだから・・・・」
カイルはそれを聞きシャロンの髪を優しく撫でながら
「そんなことないですよ?貴方も十分素直じゃないですか、こうしている以上・・・・」
そしてシャロンはそれを聞き涙を拭き、抱きついているカイルの顔を見上げながら
「ねぇ?カイル・・・・その・・・・えと・・・・き、キスを・・・・・///」
シャロンの心臓の鼓動は急激に高くなった
「え?解りました・・・・それでは・・・行きますよ?」
カイルの唇がシャロンの唇に近づき
「カイル・・・・・愛しているわ」
「僕も貴方を愛しています」
お互いが言い終えた後互いの唇が重なり合い
何時の間にか2人を包み込んでいるのは夕日ではなく
優しい月の光だった・・・・・
〜fin〜