「やーっぱコタツはあったまるね〜」  
いきなり私室にマロンが訪ねてくるなんて想像もつかなかった。  
カイルは驚きはしたものの、自動的に紅茶の支度をこなす四肢には抗えなかった。  
「勝手知ったる他人の家ってヤツだね〜」  
「この場合は部屋ですけどね」  
マグカップに注いで、彼女に手渡す。気が利くにゃーとマロンは鳴いた。  
向かい合わせの位置にカイルは座り、腰から下をすっぽりと入れる。  
小さな台座に毛布を敷き、適当に金具で固定した後内部に印を刻んだ魔法石を少量入れるのだ。  
思った以上にうまくいき、今ではこうして暖を取りに客が訪れるようにもなった。  
 
「でも、先生の方から来て頂いて助かりましたよ」  
「ん?あたしに何か用?」  
「ええ、まあ、つまらないことなんですけど」  
「そっかぁ♪」  
カイルは驚愕した。  
少し目を離した隙に、マロンが隣りにいるではないか。  
思わず後ずさりをしようとしたものの、体が動かない。ゆっくりと、肢体が床に引き寄せられる―――  
「あたしもカイル君に用があるんだ」  
そう言うと、マロンは彼の口をガムテープでぴったりと塞いだ。  
上から戸惑いと怯えの混じった表情を見下ろすと、得体の知れないなにかが、ぞくぞくと少女の背中を上がる。  
 
「なんかむしょーにエッチしたくなっちゃったのだ」  
悪戯っぽく笑うと、よいしょと彼の体をコタツ布団から引きずり出し、ベルトを外しにかかる。  
カイルは精一杯抵抗を試みるものの、全身が石のように動かない。  
「んー!!!」  
「あ、大丈夫。後でちゃんと記憶は消しとくし」  
そんな事を気にかけているのではないと、カイルは尚も叫ぶ。  
「ホント真面目だね〜」  
萎えたるそれを取り出すと、はむ。とくわえられる。湿り気を帯びていて…あたたかい。  
未だ女を知らない青年にとって、あまりに刺激的だった。  
彼の意とは正反対に、ペニスは敏感に反応する。  
 
「んっ…」  
小さな舌で幹を愛撫され、息が洩れ出る。  
彼女が果たして幾年生きているのかは知らないが、姿は幼い少女のものだ。  
その少女が、こんなにふしだらなことを――  
屈曲した状況に、不覚にも性的興奮を感じた。陰茎がびくびくとうねる。「だーめっ」  
急に、解放される。  
口からカイル自身を放したマロンは、名残惜しそうに舌でなぞると囁くように言った。  
「あたしはカイル君とエッチしに来たのに」  
くすくす、と笑う彼女に、カイルは涙目で許しを請う。無駄だと解っているけれども。  
「…かわいーっ」  
マロンはショーツを片足に残したまま、彼に跨った。  
 
「ん!!んーっんー!!」  
「なによう、そんなに童貞奪われたくないの?」  
ひたすら拒否の意を示すカイルに頬を膨らませる彼女だが、あまりにも涙を溜めて懇願するので、渋々了承した。  
久々に膣内で味わいたかったのだが、可愛い生徒の頼みならば仕方ない。  
「ホントに挿れないってばー…ん」  
ふるふると子犬の眼差しで見られる。  
マロンは、やっぱりかわいーなーとにやけながら、腰を下ろした。  
柔らかな秘部が、触れる。そのまま彼女は、ゆるゆると腰を動かす。  
ん、と甘い吐息がカイルの耳に入る。…感じているのか、彼女が。  
 
「んっ、あ…」  
ぬる、と大陰唇でカリをはさまれる。  
(ああ、それ、ダメですっ…)  
ひぅひぅと弱く鼻で息をする。たまらない。どうにかなってしまいそうだ。  
ここが学生寮で、自室で、彼女は教師で自分は生徒で、バレたら即退学ものだというのに。  
腰の動きが早くなる。にちゅ、と水音。見上げると、彼女の顔に赤みがさしている。  
(気持ち、いいんですか…先生)  
「きもちい…はぅ、あ」  
とろんとした目はどこともつかぬ虚空をさまよったいたが、カイルの視線に気付くと淫らに笑う。  
「イキそ?…いいよ」  
にゅるにゅると強めに押しつけると、彼は眉間にしわを寄せて目をつぶる。なんて愛くるしい。  
 
「あたしも、もぉ…」  
擦りあわせるたびに、クリトリスが血管に当たる。やわやわとした快感は寄せてはかえすさざ波のよう。  
貪るように腰をくねらすと、先端が彼女の入り口を掠めた。  
「挿れたいよぉ…」  
カイルは本能に流されながらも、なけなしの理性を振り絞って低く呻く。  
そんな彼はやはり優等生なのだなとマロンは腹の中で皮肉ると、これでとどめだとばかりに、くちゅくちゅ音をたてて責め立てる。  
きもちいい。とろけてしまう。  
「んうっ…!!」  
カイルの吐精ののち、マロンは大きく震え、意識が白むのを感じた。  
 
 
*  
 
 
「おきろーっバカイルー」  
ぺしぺしと軽く頬を叩かれ、カイルはようやく目を覚ました。  
マロンが心配そうに覗きこんでいる。  
「あ、あれ、僕は…」  
「コタツに入ってから即爆睡しちゃったんだよっ」  
せっかくマロン先生が来てあげたのにぃ、と彼女はごねる。  
そうか。言われてみれば、紅茶を出してからの記憶がない。  
自分はそんなに疲労がたまっていたのだろうか。  
「でも、先生の方から来て頂いて助かりましたよ」  
「ん?あたしに何か用?」  
「ええ、まあ、つまらないことなんですけど」  
そう言うと、カイルはおもむろに台所へ行くと、箱を持ってきた。  
 
白い箱が、カラフルなリボンで簡単に包装されている。  
「開けていいですよ」  
ほわ、と彼の笑みに促され、マロンはそろそろと手を伸ばした。  
するりとリボンを解き、箱を開ける。  
「…誕生日おめでとうございます、先生」  
「これ、あたしに…?」  
中にはワンホール型のショートケーキが入っていた。  
赤いイチゴは品よく盛られ、艶を入れるためにシロップも塗られている。  
「職員室まで持っていくのも、何だか変な気がしまして…」  
照れ笑いをする彼をまじまじと見るマロン。  
もう一度、ケーキを見る。甘いものは、好きだ。とても。  
 
 
 
 
「…ありがと」  
 
彼女の、困ったような苦笑いの意味を、カイルは知る由もない。  
 

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