目を覚ましたらどんな顔をするだろうか。
隣には静かに寝息をたてるマラリヤがいる。真っ白な肌が長い紫色の髪に映えて美しい。彼女が呼吸する度に肩や乳房がわずかに上下する。
どれくらいから僕はこんなにマラリヤに夢中になってしまったのだろう。最初はこんな気持ちは微塵も無かったのに、今はこうして同じベッドで朝を迎えている。
顔を寄せて口づけると、瞼が少し揺れ、髪の色と同じ鮮やかな紫の瞳が眼前に現れた。
「おはよう」
「おはよう…」
挨拶を交わすと、彼女はすぐに自分の身体の異変に気がついたらしい。困惑しているのが、泳いでいる視線を見てすぐに感じられた。
「セリオス?どうして…」
彼女が驚くのも無理はなかった。ベッドの支柱に彼女の両腕をタオルで縛り付けたのだった。脚はそのままなので完全に無抵抗というわけにはいかないだろうが、その場から動けなくさせるには充分だろう。
紫色の髪に指を差し入れ掬い上げると、さらさらと指の隙間からこぼれ落ちていった。
「君は狡いよ」
「え…?」
「いつも君のことばかり考えてる。恋愛感情なんて無いと思っていた僕が、だ。僕をこんな風にしたのは君だ。だからお仕置するのさ」
随分勝手な言い分だ。でも、事実なのだ。僕が君にこんなに夢中になっていることが。
「セリオス、おねが…んぅ…」
薄い、桃色の唇に自分の唇を重ねた。一瞬マラリヤは抵抗したが無駄だとわかったらしくすぐに諦めた。口の中へ自分の舌を差し入れ、彼女の舌と絡ませる。甘くとろけあう舌先に気持ちが高揚する。丁寧に口腔を舐めてやると、次第に彼女の吐息は熱を帯びてゆく。
「嫌なら舌を噛み切ればいいじゃないか」
「意地悪…」
勿論、マラリヤにそんなこと出来るはずもない。予想通りの反応だった。いつも無意識に僕を振り回している彼女が、今は自分の思うがままという状況に強い征服感を得た。
形の良い乳房に触れる。マラリヤの胸は制服越しに見るより大きく、そして柔らかい。ゆるゆると揉みしだくと、彼女は切なさそうな顔をした。
愛撫を続けながら小さな乳首に人差し指を伸ばすと、そこは少し硬くなっていた。こりこりと指先で弄ぶと、敏感な種子は更に立ち上がる。
充分に成長した乳首を口に含む。乳房を噛むようにし、飴玉のように舌でゆっくりと味わう。一舐めする毎に跳ね返ってくる感触が愛撫を夢中にさせた。
「ふはぁ…うぅん…」
喘ぎ声を愉しみながら項やお腹、真っ白な身体の節々に指を走らせる。無駄毛がほとんど無い滑らかな脇へ触れると、マラリヤはぴくんと大きく震えた。そういえば、マラリヤのここを見るのも触るのも初めてだ。
口を離して顔を彼女の脇に近寄せると、
「いやっ、そこは、だめ…よぉ…」
首を振って抵抗する彼女を無視し、甘い香りが強く立ちこめる脇に口づけた。
「あっ…!」
甲高い声が上がる。思った以上の反応だった。やっぱり、普段触れない所だからか。満足した僕は左手を反対の脇に伸ばし、脇腹と何度も往復させる。
「はぁっ!だ…だめ…」
右手を彼女の下半身に伸ばすと、そこは既に濡れており、シーツにも染みが付いていた。
マラリヤの表情に視線を移すと、頬は紅潮し、瞳は今にも泣き出しそうに潤んでいた。あまりの儚さに気圧されそうになる。
「…愉しんでるみたいだな」
「だって…あなたになら何をされてもいいのよ。こんなに恥ずかしいのに…感じてるわ。だから…もっと虐めて…」
弱々しく微笑しながら嘆願するマラリヤは艶めかしくそれでいて少女のような美しさで、冷静を保った自分が不思議なくらいだった。なぜか胸のあたりが締め付けられるような感覚に陥る。
「…ふん、淫乱な女だな」
「嫌いになった…?」
そんなはずない。そんなことは自分が一番良くわかっているのに、僕は素直になれない。
白魚のような脚を横に広げ、熱く成熟した秘所を露わにした。官能的な雌の香りが鼻を突く。肉壁の中へと人差し指を侵入させた。熱い。心なしかいつもより潤っている感じもする。
「あぅ…」
指を動かすとそぷちゅぷちゅという音に合わせてまとわりつくように彼女の中身が絡みついてくる。
「はぁん…セリオス、もう…欲しいの…」
僕はそっと秘所の上部にある小さな蕾に口を寄せた。ぺろりと舌で一舐めするとマラリヤは敏感に反応した。両手で彼女の美しい脚を大きく広げ、ほんの少し顔を出した蕾を舌で優しく包み込む。
最早マラリヤを嬲ることなど忘れていた。彼女と一つになって、共に絶頂を迎えたかった。すべてを吐き出してしまいたかった。
「あっ…だ…だめぇ、そんなに…しちゃ…イッちゃう…。入れて…」
「…何を入れて欲しいのか、言ってごらんよ」
少し間が空いた。やがて彼女は自ら脚を開き、消え入りそうな声で懇願した。
「あなたのおちんちん…を、ください…」
僕の前では普段の寡黙な雰囲気はやや薄れはするが、こんなにも従順なマラリヤは初めてだった。
本能をかき立てられた僕は口を離して硬く反り立つ肉棒を彼女の中へとねじ込んだ。指で触れた以上に熱く、そして柔らかかった。腰を掴んで奥まで押し入り、彼女を壊してしまいそうなくらいに突き上げた。
「あぁっ!そん…な、んっ、あぁんっ…!」
襞が甘く絡みつき、すぐにでも射精してしまいそうな程の刺激が襲ってくる。その衝動を必死に怺えてマラリヤの中で暴れ回った。気が付けば、僕の方がマラリヤを求めている。腰に彼女の両脚が絡められた。…マラリヤも、僕を欲している。
「どうだ…気分は…」
「すごく、いい…!う…あぁ、セリオス…愛してる…」
彼女の頬を涙が伝う。マラリヤに覆い被さり、きつく抱きしめて腰を激しく彼女に叩きつけた。自分から淫らに腰を揺らすマラリヤは、妖しい魅力を僕に焼き付けた。
必死で息をつなぎ、一つになりたくて、彼女の深くを何度も何度も抉る。
「ふあっ!わたし、もう…あんっ、イッ…イッちゃう…!」
直前まで登り詰めたマラリヤの顔を見て、抑えていた力を全て放す。彼女の膣を埋めるかのように精液を迸らせた。
「うぐっ…!」
「来てぇ…!あっ!はあぁぁぁ…!」
彼女の身体の上で僕は達した。ふたりとも荒い呼吸のまま、暫く柔らかく温かいぬくもりに身を預ける。その心地よさにすっかり夢中になっていた僕は彼女に声を掛けられるまで例のことに気が付かなかった。
「あの、セリオス…。タオルを…」
「…すまない」
慌てて腕を縛っていたタオルを解く。うっすらと赤く跡が残ってしまっていた。それが酷く残酷に見え、僕は今更ながら後悔した。
解放されたマラリヤは子猫のように胸に飛び込んできた。
「悪かったよ」
「いいのよ。私こそ、はしたなくて…」
腕の中の恋人は怒りの感情など微塵も見せない。あんなに酷いことをしたのに。
「許してくれるのか」
「さっきも言ったけど…好きだから」
恥ずかしそうに笑いながら彼女は僕に触れるだけのキスをした。唇が離れると僕はそっと彼女を抱き寄せた。
「僕もだ。…マラリヤ、君が好きだ」
自分から初めて言った、そしてずっと言えないでいた言葉だった。
恋人になった時、思いを告げたのは彼女だった。その時は断ったのだが身体だけでも構わない、側にいさせてと彼女に言われたのが始まりだった。
すぐに終わることだと思っていた。彼女は僕のことなんて何も知らない。好きと言われても何も感じない。しばらくは本当に身体を重ねるだけの関係だった。
それが今までずっと続いてきた。やがて試験の前は一緒に勉強をしたり部屋で食事をすることも増えた。マラリヤが、僕の全てを受入れてくれるから。
気付くのが遅かったのかもしれない。けれど、マラリヤへの想いは確かなものだ。
「ありがとう…」
嗚咽を混じりの声でマラリヤは言った。胸に温かいものが流れてゆく。
涙で濡れた顔を指先でそっと拭うと、吸い込まれそうな紫色の瞳と目が合った。
「…女の子を、泣かすなんて。責任持って愛して」
その涙に言葉が出なかった僕は返事の代わりにキスをした。次第に濃厚なディープキスへと変わり、僕達は二人だけの時間へと墜ちていった。