ビーチチェアに寝そべるサングラスを掛けたサンダース。
半袖のシャツに短パン姿ではあるが、周りが水着姿なのを考えると、どう見ても浮いている。
「……泳がないの?」
不意に、マラリヤに声を掛けられる。
今年流行りの白を基調にした艶やかなビキニ姿だ。
「構うな。 これでいい」
「いつも夏場はそうなのね…どうして?」
小首を傾げて尋ねるマラリヤ。
「…お前たちも、眼に不愉快なものを見たくはなかろう」
全く姿勢を変えず応えるサンダース。
「変な水着でも着けてるの?」
少しからかい気味の声。
「馬鹿を言え。 …こういう事だ」
サンダースがシャツのボタンを半ばまで外すと、鍛え上げられた肉体と共に現れる…傷跡。
「…確かに、知らない子が見たら、退くかもね」
「そういう事だ。 無駄に他人を怖がらせる必要もない」
そう言って再びボタンを掛けるサンダースの手を止めるマラリヤ。
「…何の真似だ?」
言いながら、彼女の反応が他人と違うことに気付く。
「怖くはないのか?」
「どうして? 貴方が今まで誇りを持って生きてきた証でしょう? 怖がる理由なんてないわ」
薄く微笑みながら、傷跡を撫でる。 好奇心などではない。 純粋な優しさに溢れた感触。
「…よせ」
この感覚は何なのだ、と戸惑うサンダース。 ささくれた傷が癒えるような…
「…フフ、私でよければ…」
発した言葉を途中で飲み込み、マラリヤが立ち上がる。
「何かドリンクを買ってくるわね」
そのままスルリと立ち去るマラリヤの対応に、初めて味わう感覚。
「………」
「……あら?」
しばらく後、ドリンクを2つ手にしたマラリヤの眼に、シャツをはだけて下もビキニになったサンダースの姿が映る。
「…たまには、日に焼けてみるか、と思ってな」
サングラスに隠れてはいるが、少し顔の赤いサンダース。
「…様になってるわよ」
そう言い、クスリと笑って寄り添うマラリヤの存在が、なぜか眩しく、優しく感じた。