「ええぃ・・・」
春の陽気がクラス中に射し、知らず知らずに皆が浮かれている真っ最中に。
サンダースは一人、憂鬱そうに外を眺めている。
窓の外、アカデミーのグラウンドでは、彼の級友たちがガルーダの指導を受けて、サッカーをやっているというのに、だ。
「暇だ・・」
参加したくても、参加出来ないのがひどくもどかしい。
先日階段で足を滑らせて、転落・骨折。
検定試験と認定試験をまとめてクリアして、浮かれていたのは否めない事実だが、実に彼らしくないミスなのは言うまでもないことだった。
サンダースが幾度目の「暇だ」を口にした時だったろうか。
教室に、誰かの足音がした。
「あらあら、サンダースくん?どうしたのかしら?」
窓辺で外を見たまま、サンダースは動かない、答えない。
もう一度同じ事を聞かれて、ようやく声の主に顔を向けると。
「ぶっっっ!!?」
サンダースは思わず噴いてしまった。
何故なら、彼の目の前にいる女教師―リディアが、メイド服を着ていたからだが。
「リ、リディア教官!?その奇妙な格好は一体!?」
「あら、変かしら?何時もの服じゃ少し寒いって思って、マロン先生に相談したらサンダースが幾度目の「暇だ」を口にした時だったろうか。
教室に、誰かの足音がした。
「あらあら、サンダースくん?どうしたのかしら?」
窓辺で外を見たまま、サンダースは動かない、答えない。
もう一度同じ事を聞かれて、ようやく声の主に顔を向けると。
「ぶっっっ!!?」
サンダースが幾度目の「暇だ」を口にした時だったろうか。
教室に、誰かの足音がした。
「あらあら、サンダースくん?どうしたのかしら?」
窓辺で外を見たまま、サンダースは動かない、答えない。
もう一度同じ事を聞かれて、ようやく声の主に顔を向けると。
「ぶっっっ!!?」
サンダースは思わず噴いてしまった。
何故なら、彼の目の前にいる女教師―リディアが、メイド服を着ていたからだが。
「リ、リディア教官!?その奇妙な格好は一体!?」
「あら、変かしら?何時もの服じゃ少し寒いって思って、マロン先生に相談したら貸してくれたの」
「変ではない、むしろ似合っているが」
サンダースは、似合うと口にした直後、猛烈に嫌な予感がした。
そして目の前のメイド服を着た女教師は、そんなサンダースの予感を裏切ることなく、首を傾げた。
「サンダースくんは―――足を折ってて運動出来ないのね。確か今日は最後までスポーツよねぇ?」
声を出さずに、小さくうなづく。
リディアの笑顔が、満開のソレになった。
「じゃあ、丁度いいわね。サンダースくん、雑学の授業に全然来ないから心配してたのよ?」
ガルーダ先生に伝えて、今から私の部屋で補習ね。
そう伝えるリディアの笑顔と、美しい笑顔に似合わぬ威圧感に押され、サンダースはただ受け入れるしか出来なかった。
さて、一応の経緯をリディアがロマノフに説明し、受け入れられてから――――。
サンダースとリディアは、リディアの部屋にいた。
元々綺麗にまとめられていた部屋は、ほんのりと甘い香りで満ち、サンダースの意識を朦朧とさせた。
サンダースとて一介の若き青年である。
極上の美女、しかもメイド仕様であるそれと二人きりという状況で、高ぶらないはずはなかった。
「り、リディア教官殿っ!」
「どうしたの?質問かしら?」
「そ、その・・二人きりというのは如何かと思うのだが!?」
「もしかして、サンダース君は私のこと、嫌いかしら?」
椅子に座っていたサンダースの背に、リディアが豊かな胸を押し付けながら、ぬっと顔を出す。
リディアが不満気な顔でサンダースの顔を見ると。
「リディア教官。やはり二人きりというのはいかがかと思うのだが・・・」
顔を真っ赤にしながら、サンダースが訴えかけてくる。
普段の傲慢な彼からは想像だに出来ないその姿に、リディアは不覚にも胸を打たれた。
「なら、勉強ではなくて、今日はお話しましょうか」
リディアの声に、サンダースは答えない。
小さく微笑みながら、リディアはサンダースにささやく。
「サンダース君は、恋愛、っていうのかな?誰かを好きになったことは、ある?」
「・・・ない。あるはずもない。軍に所属し、戦うだけの日々だったからな」
「そう・・・」
リディアは思わず胸が締め付けられる感覚に囚われた。
サンダースのその過去と、何より傷に塩を塗るような、自分の迂濶な物言いに。
「ゴメン・・ね?」
「気になどせん。取るに足らぬ、ただの与太話だ」
普段の不敵な笑みは潜んだまま。
サンダースは椅子に座ったままに伸びをすると、傍らの松葉杖をてに取り、立ち上がった。