今、僕は女の子と一緒にふたりきりで勉強をしている。まだ少ししか人生を過ごしてない僕にとっては今までになかった体験だ。
シャロンと恋人になってから、こうしてふたりで勉強するようになった。彼女は知識は十分にあるけれど、基礎的なことがぽっかりと抜け落ちている。アロエやクララなど上位陣に一歩踏み込めていない理由が一緒にいてはっきりとわかった。
ペンを走らせるシャロンの手が止まった。僕は彼女のテキストに目を落とした。
「シャロン、それ“かえりみる”って読むんだよ」
「か、漢字は苦手なのよ!」
顔を真っ赤にして書き直すところが可愛らしい。前のページの“購う”なんかは読めてるのに。本当に変わってる。
恋人っていいものだなぁ。レオンやタイガが恋人達と一緒にいるのも、少しわかる気がした。
小さく笑いながら、クッキーをひとつ摘んで口に運んだ。チョコレートの風味が口中に広がる。なんでも、実家から送ってきたものだとか。確かに、彼女が購買部で何か買っている姿はあまり見ない。牛乳以外は。
シャロンの部屋はあまり飾り気がなかった。紙幣やコインなどのインテリアのお陰で、僕の部屋のほうが賑やかなくらいだった。目立ったことといえば、台所が異様に綺麗なくらいだった。
「塩を送って頂いてありがとう。これで、わたくしに抜かれてしまいますわよ」
試験の成績はシャロンより僕の方が少し上だった。
「ていうか、常識なんだけど…」
「うるさいわね!」
「あ…じゃあ僕そろそろ部屋に戻るよ。コーヒーとクッキー、ごちそうさま」
時間は9時を過ぎていた。
シャロンのカップにはまだ半分ほどミルクティーが残っていた。
ノートと筆記用具をしまって、鞄を抱えて立ち上がったその時、空いている方の手にシャロンの指が絡んだ。
「待ちなさい」
小さかったが凛とした彼女の声が静かに響き渡った。
振り返るとシャロンの顔が驚くほど近くにあった。声が出るよりも早く、シャロンの唇と僕の唇が重なり合った。不意打ちに、鞄が手から滑り落ちていった。
彼女の顔は美しかった。形の整った鼻に、閉じられた切れ長の目。心臓が高鳴っていた。どうしていいかわからず、自由になった片腕をおずおずと彼女の背中に回した。
やがて開いた水色の瞳は穏やかだった。さっきまで狼狽えていたのが嘘のように。なんだか悔しかった。こちらは今にも心臓が張り裂けそうなのに。
「恋人同士なら、こうゆうこともするんじゃなくて?」
「あ…うん」
「お気に召さなかったかしら」
「そ、そんなことないよ!」
今度はこちらから彼女の顔を引き寄せて、唇を押しつけた。瞬間彼女の瞳が大きく開かれたが、すぐに先程のように閉じられた。
芸能の勉強のために見た映画でカップルがしていた口付けを思い出して、おそるおそる舌を差しだしてみた。シャロンの唇に舌が当たると、彼女も舌を差しだしてきた。ミルクティーの味と相まった、温かく、とろけるような感触が口内を埋め尽くした。
「う…ん…はぁ…」
時折唇から零れる甘い吐息に下半身が勝手に反応する。僕も官能的な口付けに夢中になっていた。舌先をつつき合うようにして唇を離すと、彼女の頬はほんのりと桃色に染まっていた。
「可愛い…シャロン」
「…!ほら、こっちへおいでなさい!」
言われるまま手を引かれ、ベッドに座らされた。これから起こる事態を、まだ幼い自分にさえ察することが出来た。
シャロンはおもむろに制服を脱ぎ始めた。リボンを解き、ボタンを外す。制服が床に落ちた。白い素肌が顕わになった。やがてスカートにも手がかかる。僕の目に映ったのは、ほっそりとした綺麗な脚だった。
「シャロン…」
「想像よりも小さかったかしら」
シャロンはつんと上を向いた。彼女は不機嫌だったかもしれないが、僕には彼女が神々しく映った。もちろん胸は大きいとはいえないが、引き締まったウエストとすらりと伸びた脚に僕は釘付けになった。
やっぱり、胸が大きい人よりシャロンみたいな体型の人が綺麗だ。
「綺麗だよ。すごく」
「…ありがとう」
隣に腰を下ろしたシャロンと再び濃厚なキスを交わした。お互いに慣れてきたのか、行為は徐々に激しくなっていった。シャロンの歯をなぞるように舐めてやると、彼女も僕の舌の裏を舐めてくれた。
長い口付けを続けていると、膨張した下半身に彼女の指が触れた。思わず身体が震える。
「興奮、してくれてるのね」
「そりゃあ…僕だって男だし。そんなに自信無かったの?」
シャロンは黙って頷く。
普段からルキアやユリ(稀にマラリヤやヤンヤンにも)に高慢な態度をとっているが、彼女にとって胸の大きさは相当なコンプレックスだったようだ。
自分は服を着ていることに気がついて、僕も慌てて制服を脱いで筋肉のついていない細い体をシャロンの前に晒した。
「ごめん、僕もこんな体だけどさ」
「あら、痩せてて羨ましい限りですわ」
別に、シャロンだって太ってるわけじゃないのに。女性って体重に敏感だ。
どちらからともなく、再び唇が重なる。僕はキスの感触にすっかりと夢中になってしまった。肌が直に触れ合っていて、温かい。シャロンの甘い匂いが強く鼻を突いた。鼻一杯に吸い込むと気持ちがとても安らいだ。
お互いに唇と舌を追いかけ合った。僕が少し唇をずらして重ねると、シャロンもそれに合わせる。元のように重なると、舌が深く甘くとろけ合う。
突然シャロンの唇がずれて僕の喉元あたりを這い回った。
「あ…シャロン…?」
「年上だから…わたくしがリードしてさしあげますわ」
「あり…がとう」
襲ってくる緩慢な快感のお陰でそう返事するしかなかった。腕に鳥肌が立つ。シャロンは飴を舐めるように丁寧に丁寧に僕の首筋を愛でてくれた。こうゆうことは男性が女性にするものだと思っていた僕には少し恥ずかしかった。
「あぁ…」
シャロンの頭が僕の胸のところへと動いた。彼女の唇が乳首に触れ、ほどなく温かな感触に包まれる。上目遣いの彼女と目があってドキッとした。
「シャロン、なんだか…上手。本当に初めて?」
「…これぐらいは、知識として本で読んだことがあるのよ」
乳首を優しく舐め回され、時折甘噛みをもらう。彼女の愛撫に反応した乳首が恥ずかしかった。
僕は普段まったく見たことの無い献身的な彼女に心を打たれた。鮮やかな金髪に指を通してそっと撫でた。すると彼女は僕の下半身に顔を近づける。
「あっ!だめだよぉ…」
「先端が…敏感なんでしょう?大丈夫、優しくするから」
亀頭部分をシャロンの舌が妖しく動き回る。初めてのフェラチオの経験に体中が震えた。逃れられない快感が後から後から押し寄せてくる。と同時にとても優しい温かさにも包まれ、僕は茫然としてシャロンの愛撫を受けた。
しばらくするとシャロンは口にペニスを含んで、ゆっくりと上下に動かし始めた。包み込まれるような感覚に僕は射精を怺えきれなくなっていた。
「そんなに、しちゃうと…で、出ちゃうよぉ…!」
とうとう僕の我慢は限界を越え、シャロンの顔に濁った精液を噴き出してしまった。
「ごめん…」
「気にしないで」
頬のあたりについた精液を指で掬ってぺろりと舐めた。サイドテーブルに置いてあったティッシュに手を伸ばし、残った精液を拭き取る。僕にはその動作がひどく優雅に見えた。
顔を拭い終わると、シャロンは僕の肩に手を置いて、向き合ったままお尻を僕の下半身へと近づけていった。僕は寸前のところでシャロンのお尻に手をあてて彼女を制した。
「待って。初めてでこの格好って、女の人はすごく痛むんじゃないの?」
「関係、無いわ。正常位だって痛いことには変わりませんわ」
僕の言葉を尻目に腰を降ろし、収まりきったところで彼女はゆっくりと腰を使い出した。シャロンは苦しそうな表情を浮かべていた。
「無理しなくていいよ?」
「はぁ…。これぐらい、何ともありませんわ」
シャロンを気遣う一方で、自分も射精を怺えるのが大変だった。女性の中というのは想像以上の感触で、彼女の動きに合わせて中もまとわりつくようにして僕のペニスに絡みついてくる。先刻のフェラチオの何倍も強い刺激だった。
彼女の動きが次第に激しくなる。結合部からはくちゅくちゅと音が漏れ、シャロンの口からは甘い吐息が零れ出る。ふと彼女を見やると、彼女は目に涙をいっぱい浮かべて僕を見つめていた。
「シャロン…?」
「わたし、嬉しかった…。わたしみたいな女を、ラスク、あなたは好きと言ってくれたから」
いつの間にか自分のことを“わたし”と呼んでいる。彼女が初めて見せた地の部分だった。僕が思っていたより、シャロンはずっとずっと繊細で、強がりだったんだ。
「シャロン、泣かないで」
シャロンの頬を涙が伝っていった。不謹慎だが、初めて見せた彼女の泣き顔が可愛いと思ってしまった。
人差し指でそっと涙を拭った。
「僕なんかでよければ、傍にいてあげるから」
「ありがとう…ラスク」
深く口付けを交わして、きつく抱き締め合った。この人の心の支えになってあげたい、と僕は思った。まだこぼれ落ちる涙を口で吸い取った。少し塩辛い味がした。
「あぅっ…!何だか、変…!中から、何かこみあげて…」
「シャロン…多分、それ…感じてるんだよ。もっともっと、声聞かせて」
腰を掴んで下から強く突き上げてみた。温かなシャロンの肉壁がまとわりついてくる。何本もの指で愛撫されているようだった。いつの間にかシャロンを思いやる気持ちを忘れ、僕は快楽を求めて何度も体を揺すぶった。
「あ、あぁっ!そ、そんな…ふあっ!だめぇ…恥ずかしい…」
次第にシャロンの呼吸は荒くなる。眉の下がった彼女の顔は紅く染まっていた。
「気持ちいい?シャロン」
「ええ…。ねぇ、ラスクも感じてよ…」
「僕、さっきからすごく気持ちいいよ…。シャロンの中、あったかくて、ぬるぬるしてて…!」
「い…言わないで…!はぁ…うぅ…」
彼女の体は汗が光っていた。艶めかしく光る形の整った乳房を掴んで揉みしだいた。小さくても確かに手応えがあって柔らかな胸だった。尖った先端をくわえて愛撫する。硬くなった乳首は転がしても転がしても返ってくる。
「んっ…くはぁっ!そんなにさわらないで…」
「シャロン、綺麗だから自信持って」
半ば朦朧としかけた意識の中で、シャロンに唇を重ねた。舌と舌とが重なり、隠った彼女の声が僕の耳に届く。
「あん…ラスク…!わたし、もう…だめぇ!」
普段のすました彼女の声ではなく、ひとりの女性としての快楽の喘ぎだった。
「僕も…!もう、出ちゃいそう…!」
「お願い、一緒に…!嫌よ、自分だけなんて…」
「うんっ!いくよっ…!」
ペニスが急激に締め付けられ、シャロンの爪が背中へ食い込むのを感じた。僕はそれに合わせて我慢していたものをすべて解放して、あらんばかりの力で自分の腰を叩きつけた。
まるで生き物のようにシャロンの肉壁が強烈に絡みつき、僕は爆発するような快感に襲われた。
「あぁっ!す、すご…あっ!あああああっ!」
「ああっ…シャロンっ!」
シャロンの中に二度目の射精をして、キスを交わした。そのまま僕たちはベッドへと崩れ落ちた。上になったシャロンを力いっぱい抱き締める。
「大好きだよ、シャロン」
彼女は何も言わなかった。ただ強く握りしめた手が彼女の返事だった。彼女の甘い匂いに包まれながら、僕は幸せな眠りについた。
翌日、手を繋いで授業に出てきたふたりを見て教室中が騒然となり、ラスクとシャロンが大いに冷やかされたのはまた別の話。