「はぁ〜、きれいな桜だなぁ」  
 
情けないため息をつきながら窓の外の桜を眺める緑髪の少年、ラスク。  
今は明日の学問の線結びのテストに備え、熱心に勉強中……のはずだったがイマイチ身が入らずボンヤリしていた。  
 
「何やってるんだろうな〜、明日もテストがあるって言うのに……勉強に集中しなくちゃいけないのに」  
 
ラスクは自分でも驚く程に、勉強に集中できなくなっていたのだ。英語の時間にあった、注意力が散漫になる「ADHD」と言う病気かと思うくらいに。  
しかしそうでもなく、ラスクは一つ心当たりのある原因は考えていた。しかし分かったところでどうしようもなく、その日は全く勉強に身が入らず翌日のテストを迎えた。  
 
 
 
結果は予想通りボロボロで、楽々不合格になってしまった。ロマノフはテストを返す際、ラスクに尋ねた。  
 
「うぅむ、ラスクが不合格とは珍しいの。何か考え事でもあるのか? 悩みなら話してみるがいい」  
「な、何でもありません。今回は少し対策不足だっただけですから、次は問題ありませんよ」  
「そうか? まぁいつでも悩みなら聞くからの……それはそうとレオン、タイガ! お前達はまた不合格ではないか! ワシも我慢の限界じゃ、この愚か者共めがッ!」  
「「ぎゃあああああ!」」  
 
ロマノフのお仕置きを受ける二人のいつもの光景を背に、ラスクは誰にもばれないようにトボトボと校舎の屋上へ出ていった。  
 
「ラスク君?」  
 
一人の少女を除いては……。  
 
ラスクは屋上へ出てくると、手すりにもたれ掛かって眼下に広がる桜を眺めた。毎年毎年、変わることなく咲きその美しい桃色の花びらを散らす桜のように自分も変わらないまま……。  
そう望んだ事もあったが、今のラスクは今まで以上にそれを強く望んでいた。  
 
「う〜……好きなんだろうな〜。この変な気持ちも、気になる気持ちも……昨日からかな」  
 
ラスクは無意識の内に儚く散る桜の花びらに、一人の少女を重ねていた。少女の名はアロエ、自分と同じく飛び級を果たしてマジックアカデミーに入学してきた少女。  
医者になる事を願い、日々勉強に夢中になっている少女にいつしかラスクは惹かれ始めていた。  
しかしその気持ちには、ラスク自身気付かぬように、気付いても認めようとしなかった。まだ互いに11歳、そんな感情を抱くのは早すぎると言う思いと恥ずかしさから来る否定だった。  
だがその気持ちをはっきり認めたの  
ラスクはもうそこまでしか聞いていられなかった、そして気付いた。自分の力で否定できなくなった気持ち、自分がアロエを好きであると言う気持ちだった。  
 
「桜だよね、アロエちゃん」  
「アロエが桜? 何言ってるの、ラスク君」  
ラスクはもうそこまでしか聞いていられなかった、そして気付いた。自分の力で否定できなくなった気持ち、自分がアロエを好きであると言う気持ちだった。  
 
「桜だよね、アロエちゃん」  
「アロエが桜? 何言ってるの、ラスク君」  
 
「いや〜、アロエちゃんって僕からしたら桜……ゴハッ! ウエェ!」  
 
ラスクは急いで振り返ったため、手すりに背中を強打してむせた。ラスクがむせていると、アロエが背中をさすりながら尋ねた。  
 
「大丈夫、ラスク君? それとアロエが桜って?」  
「う、何でもないよ」  
「ダ〜メ、教えて」  
「何でもないって〜」  
「教えてくれないと帰さない!」  
 
こんなやり取りが数分続いた後、ようやくラスクが折れた。ラスクは意を決して喋り始めた。  
 
「あのさ、桜って春が終わると散っちゃうじゃない? 冬桜ってのは別としてだけど、とりあえず桜は散るんだ。風に舞って散り散りになる。その桜の花びらは誰の元にも戻らず、風の赴くままに舞うんだ」  
「うん、それは良く分かる。でも桜って散るからキレイって言う人もいるよ? でもアロエは咲いてる方が好きだけどなぁ〜、それで何でアロエが桜なの?」  
 
アロエがラスクに尋ねた瞬間、一陣の風が吹き抜け桜を大量に散らした。アロエは顔を伏せていたが、ラスクは微動だにせずに舞い散る桜の花びらを眺めていた。そしてラスクは舞い落ちてくる桜の花びらを掴もうと試みるも、ことごとく空振りし花びらを掴むことは出来なかった。  
ラスクは少し無理矢理だが、笑顔を見せてアロエに言った。  
 
「桜の花びらって言うのはいつも身近にあるものだけど、そんな簡単には手に入らないし今みたいに望んでも手に入らずに散ることだってある。だから……その……まぁそう言うことなんだよね」  
 
ラスクはそれだけ言うと、アロエから視線を切って桜の花びらを眺めた。  
すると、ふわり浮かび上がった桜の花びらがアロエの頭に乗った。ラスクもアロエもそれを目の当たりにし、思わずぷっと吹き出す。アロエはラスクの横に駆け寄って、同じように桜を眺めて言った。  
 
「望んでて来ない事があるんだったら、待ってたら自然に来る事だってあるんじゃないかな? アロエは今がそうだと思うよ?」  
 
そうしてラスクの腕に自分の腕を絡ませると、グッと自分の方に引き寄せた。ラスクは焦り、慌ててアロエに言う。  
 
「ちょっ、ちょっとアロエちゃん! いきなりどうしたの!?」  
「ラスク君……アロエの事嫌いなのかな? アロエは、ラスク君の事嫌いじゃない。むしろ、好きだよ」  
「ほ……本当に?」  
「不思議なこと無いでしょ? アロエの頭に乗った桜の花びらみたいに、今アロエって言う花びらがラスク君の元に舞い降りてきただけだから」  
「アロエ……ちゃん。うん、そうだよね! 僕も好き、アロエちゃんの事大好きだよ! 一緒にいてよ、これからも」  
「うん、アロエの事離さないでね? 花びらは、しっかり握ってないとすぐにどこか飛んでっちゃうんだから」  
 
二人は舞い落ちる桜の花びらを、いつまでもいつまでも眺めていた。  
 
    〜終わり〜       
 

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