「レオン、いい加減にして下さらないかしら?」
シャロンの静かで唸るような声が響き、シャロンの両腕はレオンの両肩をモアイの頬の部分に押し付けている。
「ちょっ、タンマタンマ! 何をそんなに怒ってんだよ? 病み上がりで呼び出されて、その上怒ってる意味が分からねぇ」
「言うことはそれだけかしら!? 私は見ていましたのよ、公園でレオンとルキアが抱き合っている瞬間を!」
レオンは本当に一瞬だけビクッとしたが、シャロンはその反応を見逃さずにさらに問い詰めていく。
「明らかに焦ってますわねぇ、レオン。大方痛いところを突かれた感じかしら?」
「待てよ、それシャロンが一回休んだときの話だろ? あの日はルキアとたまたま公園で会って、ルキアがコケかけたから助けただけだ」
その瞬間、シャロンの平手打ちがレオンを襲った。乾いた音を響かせて、レオンの頬が鳴る。
「言い訳なんか聞きたくありませんわ! あなた、私の事が本当に好きだと言い切れますの!?」
「シャロン……」
「レオンはいつもそうですわ、クラスの中でもいつも周りに人がいて楽しそうにして……中には女子もいますわ。時に手も繋いだりして……」
レオンの視線は、知らない内に地に落ちていた。驚くほどに色白なシャロンの顔は、真っ赤に染まっていて目は怒りに震えながらもどこか助けを求める捨て猫のようで見ていられなかった。
そこへ……
「あれ? レオンにシャロン、こんなところで何してんの?」
良いか悪いか、ルキアがやって来た。
シャロンは振り向き様に、すぐにルキアに尋ねた。
「ルキア、あなた公園でレオンと抱き合った事はあるかしら?」
「あ、見てたの? 何言ってんのよ、あれは私が倒れ掛けたのをレオンが助けてくれただけよ。変な誤解しないでよね」
ルキアは少し不満げに、モアイの丘から降りていった。レオンは胸を撫で下ろした。そして言った。
「な? これで誤解も解けただろ、ルキアは助けただけさ。まぁ納得しねぇってんなら……」
「えっ? ちょっ、レオ……」
シャロンに最後まで言わさず、レオンは右手でシャロンの顎を持ち上げて唇を重ねた。驚いたシャロンは目を見開いき固まっていたが、少し落ち着くとレオンを突き放した。
「と、突然何しますの!?」
「シャロンが俺を疑うからだぜ? 俺はシャロンが好きだから、別にキスするのに抵抗なんかないからな。むしろ、これで少しは認めてくれたか?」
「ば、バカ……ぁ……」
「シャロン!?」
シャロンは急に目が座り、その場にへたり込んでしまった。顔は赤く紅潮し、寒いのか体が震えている。レオンは自分の制服をシャロンに掛けると、背中に背負って寮に向かった。
「はっ! ここ……は?」
「目ぇ覚めたかよ、シャロンの部屋だよ。俺に怒鳴り付けたせいで、風邪が振り返したんだろうな。悪かったよ」
レオンはシャロンの額に乗せる濡れタオルを代えているところで、シャロンはボンヤリする視界にレオンを捉えていた。
「レオン、ちょっと……」
シャロンはちょいちょいとレオンを手招きした、レオンもそれに従いシャロンに近づく。
「なんだ?」
「レオン、好き」
シャロンはそれだけ言うと、レオンの首に腕を回してキスをした。レオンはすぐにシャロンを引き剥がして言った。
「誘ってんのかよ?」
「うっ……」
「良いぜ、風邪が治ったらいくらでもしてやるよ。移されちゃたまらねぇ、安心しな。俺はもう、シャロンを離さねぇ」
レオンはそう言ってシャロンの額を濡れタオルの上から撫でた。シャロンはそのまま眠りにつき、今までにない安堵の表情を浮かべていた。