とある日曜日の朝。
普段よりも多くの人が行き交いする駅前で、しかしサンダースは一切迷うことなく、その女性の元へと向かう。
エメラルドカラーのロングヘアーに、普段よりも露出を抑えた清楚さを感じる衣服。
そのうえに、人目を惹きつける美貌。
「全く。リディア教官と待ち合わせをすると、必ず注目されるな」
「約束の五分前ね、いつもどおり。それより教官っていうのは、無しって言ったわよね?」
「すまんな。恋人となっても癖が抜けん」
「もう、いけない子」
では行くぞ、とサンダースが話を切る。
厳しさだけが前面に出ていたその横顔は、今は精悍さと柔らかさが同居し。
リディアはその横顔を眺めながら、サンダースと腕を組んで、歩き出す。
「腕を組むのが好きなのか?」
「えぇ。腕を組んでいると、貴方の温もりも感じるもの。 何よりも・・」
自慢できるから、この人が私の大切な人だって。
そう言いそうになって、リディアは慌てて口を噤んだ。
そんな恥ずかしいこと、言えない。
愛情表現が真っ直ぐなサンダースは、そんなことを感じたりはしないのだろうが。
「・・・?どうした?」
「ううん、何でもないわ。行きましょっ♪」
恥ずかしいとか、そんな些細なことは置いておこう。
今日は久しぶりのデートなんだ、思い切り甘えてしまおう。
そう決めたリディアは、アカデミーでは見せないような甘えた笑顔で、サンダースの隣を歩き出した。