エメラルドと同じ色のショートヘアに、普段とは全く違う洋服。  
今日のリエルは、ついぞ最近恋人になったばかりのサンダースとのデートのために御洒落をしていた。  
購買部での制服の印象が強い彼女だが、サンダースと二人っきりの時には、全く別の顔も見せる。  
明るい笑顔の可愛いお姉さんは、購買部での姿。  
そして、サンダースの前での姿は。  
 
「む、来ていたか。遅かったか?」  
「いえ、私が早く来過ぎちゃったんです。楽しみで楽しみで仕方なかったですから」  
「そう言われると悪い気はせんな。・・では、行くぞ」  
 
ずいっと差し出された、サンダースの無骨な左手。  
感情表現が未だに苦手なサンダースだが、ふとした仕草に優しさを感じさせる。  
リエルは彼の左手に右手を差し出し、手と手を繋ぐ。  
ぎゅっと握り締められた手の温もりを感じながら、リエルはサンダースの隣を歩き出した。  
 
 
「今日は普通に遊園地にでも行こうと思うのだが。リエルはどうだ?」  
「はい、私は大丈夫ですよ?」  
「では行くぞ。わがは・・・私は不慣れだからな。色々教えてもらうことがあるかも知れんが」  
 
今日は、箒で空を飛ぶのも禁止だと二人で決めている。  
公共の交通施設を使って、歩いて、同じ時間を共有しようと、そう決めている。  
歩幅を合わせながらぎこちなく歩くサンダースと、そのサンダースの横顔に愛しさを感じるリエル。  
少し変わった二人の物語は、ここから始まる。  
 

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