<マロン先生の部屋に遊びに行こうということになったユリ、レオン、シャロンの3人。マロンの部屋の前まで来た。>
ユリがまずノックをして、
「マロンせんせー、いらっしゃいますかー」
――返事は無い。
ドアノブを回して押すと、いとも簡単に開いてしまった。セキュリティは非常に適当だ。
中の様子は「雑然」とか「混沌」とかそれっぽい漢語を当てれば何とか表現できるレベルだった。要は、ひどい。
「うっわー、もの凄いな」
誰ともなくそんな感想が漏れる。
とりあえず3人で勝手に部屋をいろいろ調べてみる。
流石アニメ・ゲーム担当教師、本棚には○十年前の名作ビデオから最新DVDまできちんと整頓されており、
机の上には任○堂が発売した歴代ゲーム機のほとんどが置いてある。
「何これ、DS?」
そう言ってユリが手にしたのは、形は確かにDSに似ているが、何やら黒い人がタルらしきものをよけながら
上画面のフックに捕まって姫を助け出すという、某コング主演のゲーム&○ォッチだった。
「あれは何かしら」
先ほどから3人の中で一番興味深げにあれこれ見ているシャロンが、部屋の片隅のパソコンに目を留めた。
「何だこりゃ、随分と古めかしいパソコンだな」
レオンが言うとおり、本体は既に黄ばんでおり、その上には大きなCRTディスプレイが偉そうにそびえている。
「ねえ、電源入れてみようよ」
言うが早いか、ユリは電源ボタンに手を伸ばしていた。
――ピポッ。
聞きなれない起動音に、3人の期待と緊張は高まる。
――MEMORY 640KB + 5120KB OK
画面にはそんな文字が表示された後、
――How many files?(0-15)
と表示された。
「……え?これで終わり?」
「壊れてるんじゃねーのか、これ」
「こ、これを使ってみたらどうですの?」
シャロンが持ってきたのは、「MS-DOS 3.3d」と(明らかにマロンの字で)書かれた四角くて黒い、紙のようなものだった。
なるほど、そういえば本体前面の挿入口にピッタリはまりそうである。
ユリは恐る恐る本体の挿入口にその物体を入れ、レオンはストッパーのようなレバーをひねった。
再度起動。先ほどと同じMEMORY表示の後、本体から何やらゴソゴソ音がして、
――NEC PC-9800 パーソナル コンピュータ
――マイクロソフト MS-DOS バージョン 3.30d
などと表示され、
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と表示されたところで止まった。
「何これ!どう使えっていうのよ!」
「やっぱり壊れているのかしら」
「いや、こういうモンなのかも知れんぞ」
3人が頭を傾げているところへ、
「こらーっ!キミたち!何先生の部屋に上がりこんでるの!」
マロンだった。
「あ、先生、これはですね」
「問答無用!お仕置きだべ〜!」
「ぎゃぼー!」
そんなわけで、PC-8001から始まる骨董PC講座&ゲー○&ウォッチに始まるゲーム史、わが国のアニメ史についての講義を
延々4時間(正座で)聞かされた3人であった。
結局のところ、3人の感想は――
(((アンタいくつだよ!)))
これに尽きるようである。