「最近、シャロンさんって成績落ちました?」  
「悪いって程じゃないけど、平均ぐらいしか取ってないってい  
うのも珍しいよね」  
「賢者になったから気が抜けてしまったのではないですか?」  
「そう? むしろいっつも勉強してる姿しか見ないけど……遊  
ぶ事も減ったし」  
「だったらもうちょい成績いい筈やろ」  
 
「賢者だし」  
 
 食堂の前まで来た時、こんな会話が漏れ聞こえてきた事に気  
付いたシャロンはくるりと背を向けた。  
「……おや、食べないのか?」  
「あまり減ってませんわ」  
 ちょうど同じように来ていたセリオスの問い掛けにそう答え  
、シャロンは廊下を歩いていく。  
 解っている。自分でも成績が明らかに落ちたという事を。  
 落第点こそ取ってないが優でも良でも無く可の成績。シャロ  
ンにとって合格ギリギリのラインというのは不合格も同然であ  
った。  
 それなのに、賢者になって以来、そんな成績を取り続ける自  
分。それが、堪らない程嫌になる。  
「……嫌になりますわね」  
 賢者になったとはいえ、それだけで真の賢者とは言えない。  
もっと精進しなければならない。  
 それなのに精進どころか停滞してしまっているのだ。  
「どうしてかしら?」  
 そう自問しても自答出来ない。解らないのだから。  
 
 シャロンの足は廊下から、自分の部屋では無く、既に夕方よ  
り夜に近いというのに学校の外へと向かい始めていた。  
 
いっぽうのセリオスは食堂で食事を追えた後、誰が見ても不  
機嫌そうな顔をしていた。  
 カイルと並ぶ勉強家で自分の才能に絶対に自信を持つセリオ  
スはクララやカイルに抜かれたどころかシャロンにまで先に賢  
者になられた事に実は苛立ちを覚えていた。  
 カイルやクララが賢者となった後も精進を続けるのはセリオ  
スにとってまだ許せるし尊敬も出来る。しかしシャロンは精進  
どころか完全に停滞している。  
 口にこそ出さないが、シャロンに対して半ば苛立ちを覚えて  
いたのだ。  
 その挙げ句、先ほどの話を聞いたら聞いたで逃げるように立  
ち去ったシャロンの事が気になっていた。  
「くそ、不愉快だ」  
 誰にも聞こえずに呟いたつもりだったが後ろで普通に話して  
いた飛び級三人を沈黙させるには充分過ぎる程の効果があった  
。もちろん、セリオスはその事実に気付かずにトレイを持ち上  
げると、シャロンの部屋へと向かうべく食堂を出ていった。  
「さて、シャロンは何処に行ったか……」  
 
夜の帳が下りた草原は暗かった。  
 月明かりだけが道を照らし、遠くの方にアカデミーの明かり  
が見える。  
 冷たい風が少しだけ吹き付け、シャロンは顔にかかった髪を  
払い、自分が今どこにいるかという事に気付いた。  
「……寒いですわね」  
 草原の中を進み、少なくとも風が直接吹き付ける事の無い、  
風よけになりそうな岩を見つけると、その陰に寄り掛かった。  
 星一つ見えない、月しか見えない雲ばかりの空。  
 今の自分のような心境だな、とシャロンは思った。もっとも  
、今は月すらも見えてないのかも知れない。  
 もしかしたら、このままずっとこのままなのだろうか。  
 カタチだけの賢者になっても意味なんかない。それは解って  
る。もしかすると、これが自分の限界なのだろうか。でも、そ  
れでも。  
「そんなのは……嫌………」  
 もっと上へ。もっともっと、更なる高みへ。  
 父親を見返したくて賢者を目指した。だけど何時の頃からか  
、それだけが目的ではなくなっていた。  
 賢者より更に上へ、上へ。  
 でも、今のままでは。そんな事は出来ない。  
 
 今よりも、もっと上へ――――――。  
 
「まだ、伸ばさなきゃいけないのに」  
「伸ばす、か。そうか、君にとっては伸ばす、だろうな」  
 突如として声が掛けられ、シャロンは慌てて視線を彷徨わせ  
る。数秒彷徨い、ちょうど寄り掛かっている岩の上にセリオス  
がいる事に気付いた。  
「セリオス……」  
「やぁ、シャロン。良い夜だ」  
 セリオスはわざとらしいほど明るい口調でそう言い放つと、  
ひょいと真横に飛び降りた。  
「ここは風が当たらないな。寒い事は寒いが」  
「……追いかけてきましたの?」  
「夕食も摂らずに帰った君が部屋にも戻ってないからな。足跡  
を偶然見つけた」  
 その足跡を魔法で作った光で照らしながら追いかけてきたの  
は秘密だ。セリオスにとっては大した労力でも無いが。  
「……そう」  
「ところで」  
 シャロンが気のない返事を返した時、セリオスはシャロンに  
視線を向けた。  
「最近、成績が良くないようだが」  
「貴方には関係ありませんわ」  
「あるんだな、これが」  
「何を……ッ」  
 セリオスはシャロンが何か答えるより先に、シャロンを岩に  
押し付けるような形で顔を近づける。  
 セリオスの顔が不敵な笑みから徐々に怒りを刻みつけたもの  
へと変わっていく。  
「君より前に賢者になった二人はどうだ」  
「……カイルと、クララの事、ですの?」  
「ああ。二人は賢者となってなお精進を続けるさ。僕個人とし  
てはこの僕よりも先に賢者になられた事が腹立たしいが二人は  
まだ許せる。だけど君には許せない理由がある、シャロン。何  
だと思う?」  
「……………」  
 そんなの解る筈が無い、とシャロンが答えかけてセリオスは  
更に顔を歪めた。  
「賢者になったのに、僕より伸びないとはいい度胸だ。上なら  
ばいい。賢者である君が賢者でない僕より優れてると証明出来  
るのならいい。だけど君はそれを証明出来るか、シャロン?」  
「そ、そんな事……ッ!」  
 既に賢者となった自分が証拠、と言いかけてシャロンは黙っ  
た。今の自分が本当に賢者かどうかなんて言えなくなっている。  
 
だって今は、本当に停滞しているのだから。  
「ああ、そうさ。出来ないだろうな。今の君なら、な……そん  
な君に賢者を名乗れるのか? どうなんだ、シャロン」  
「っ………無理、ですわね。今の私には……」  
「そうか」  
 セリオスは淡々と答えると、そのままシャロンの首を掴んだ  
。そのまま締め上げた。  
「がっ……!」  
「ふざけるなよ、このアマ……! そんな単純に認めていい筈  
があるか……!」  
「……んで………セリオ……ぐっ!?」  
 セリオスはシャロンを掴んだまま岩に叩き付ける。意識を失  
いこそしなかったが、シャロンの身体から力が抜けてずるずる  
と落ちる。  
「痛っ……」  
「無様だな……この僕より先に賢者ともなったシャロンが、僕  
にそこまで言われた程度でそんな顔をするか?」  
 草原に腰を下ろし、シャロンに目を合わせながら呟く。だが  
、シャロンは目を合わせようとしない。  
 セリオスの目を、見ていられない。その責めるような、恐怖  
を、見ていられない。  
「…………しますのよ。今の私は……」  
 本当の賢者じゃない、と口だけ動かした時。セリオスの手が  
シャロンをもう一度掴み、そのまま強引に―――――唇を塞い  
だ。  
「んッ、ッ、んんっ!?」  
「んん……くだらないな、シャロン。そんなお前では、見る価  
値もないが……そんなお前を壊しても、別に構いやしないだろ  
う?」  
 セリオスが不敵に言い放ち、シャロンが何かを言うより先に。  
 シャロンは押し倒され、口を塞がれた。  
 痩躯ではあるが、それでもそこそこの力があるセリオスに対  
し、シャロンは何も出来なかった。  
「なるほど、本当に胸は無いな……嫌いではないけどな」  
 そう言われた直後、シャロンは制服のボタンが外されるのを  
感じた。  
 少しはだけられ、その下の下着が外されてシャロンの胸が夜  
の空気に露になった。刺さるような、冷たい風が吹く。  
 露になった胸の先端に手を伸ばし、そっと摘む。小さな声が  
あがった。  
「っんく………」  
 そんな小さな喘ぎでは足りないのか、セリオスはシャロンの  
唇をもう一度塞ぎながら乳首を何度も揉む。  
 もう一つの手はスカートに突っ込み、その下のショーツをゆ  
っくりと外した。スカートに隠されて見えないが、それでも秘  
部が外に晒される。  
 
 そして――――――。  
「もう、塗れ始めたか。本当に、早いな」  
「何を………んっ……!」  
 何者の侵入をも許さなかった秘部に指が突き入れられ、ゆっ  
くりと撫で回されていく。  
 シャロンにとって初めての経験なのか、あちこちが触られる  
度に小さな声が上がった。  
「ちょっ……やめなさ……」  
「断る。ここまでさせておいて、楽しまない訳には行かないか  
らな」  
 シャロンの拒絶を無視し、セリオスは愛撫を続ける。  
 制服が更にはだけられ、肩から徐々に服が落ちていく。もう  
既に殆どはだけられてしまい、露出している部分の方が多い。  
「…………え」  
 岩に押し付けられたまま愛撫を続けられた後、それが急に止  
んだ時にシャロンは目を開けた。  
 そして、自分の秘部の前でセリオスが何かをし、そしてあて  
がわれたモノに気付く。  
「え、な、何を」  
「決まっているだろう、シャロン? 挿れるんだよ」  
「ま、待っ――――――ッッ!!!」  
 返事よりも先に、中へと挿れられた。  
 既に硬くなっていたそれはあまり大きいとは言えないシャロ  
ンの膣にはキツすぎ、赤い液体が地面へと落ちる。  
「かなりキツいな……だがやらせてもらうぞっ!」  
「いや、やめてッ、やめてぇぇぇェぇッ!」  
 シャロンが叫ぶと同時に、セリオスが腰を動かし、それが奥  
へと突き当たる。何度となく。  
 悲鳴もすぐに声にならない悲鳴へと変わり、何度も何度も突  
き入れられる度にシャロンは首を振った。意識が飛ぶ寸前だろ  
うか。  
 しかしそれでも、充分過ぎる程だった。  
 
 そして、シャロンの中で。セリオスのが放出された。  
 
 その事に気付いたのはシャロンが意識を失う直前だった。  
 熱い何かが自分の中に出され、それが彼の精液だと気付くの  
に一秒も掛からなかった。  
 純潔を奪われ、中にまで出された。今の自分の状況から。  
 
 自分が招いたといっても過言ではない、惨劇。  
「う………あ………」  
 シャロンの目が伏せられ、情けない自分の身体を見つめる。  
 セリオスは一度出した後、もう一度出そうと腰を振り、更に  
突き上げ始めた。  
 その直後、シャロンは完全に意識を失った。  
 
 ただ、自分の愚かな行動と運命を呪って。  
 
 意識を失ったシャロンを眺め、セリオスはそっと口を開いた。  
「知っているかシャロン。世の中には、追う立場と追われる立  
場がある。今までの君は追う立場だった。だが」  
 セリオスは言葉をそこで区切ると、ゆっくりと続ける。  
「今まで追っていた者が追われる側になると、ある意味戸惑う  
ものだ。そこに付け入る隙がある。今の君のように」  
 セリオスはそう言って微笑むと、シャロンの服を丁寧に直し  
始めた。  
 少なくとも今だけでなく、これからも彼女を捕えて離さぬよ  
うに。  
 
終わり  
 

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