さて、ヴァレンタインに託けてシャロンと付き合うことになったサンダースだが、それについて大きな問題がひとつ。
「我々は恋人と相成ったわけであるが」
「えぇ」
「問題は、恋人がどういうことをするのか、という点にある」
パジャマ姿でサンダースの部屋のベッドに腰掛けるシャロンに、同じくパジャマ姿のサンダースが語りかける。
「普通にデートして、普通に遊んで、時折相手の部屋に泊まる、というのがアカデミーのカップルでは相場だと聞いているが、」
「だけれども、やはり、その・・・・エッチなこともするのでしょう?」
「そうらしいな。レオンとルキアは相当な回数結ばれていると聞いた」
「私は、構いませんけれども・・・」
シャロンは自信なさ気に自分の胸をさわってみる。
同年代の少女たちと比べるべくもない、皆無と言っていい隆起に、思わずため息をついてしまう。
「その、私はルキアさんやユリさんのように、肉付きが良いわけではありませんの。それだけは、知っておいて欲しいわ」
「だが、まだシャロンは成長途中なのだろう?」
制服の上からでも、胸の隆起の差は明らかである。
サンダースとて、シャロンの胸が貧しいのは承知の上なのだ。
「胸の大きさでシャロンの価値が変わるわけでもなし。・・気にするな」
「も、もう・・・こちらが恥ずかしくなってしまいますわ・・」
ぼうっと紅に染まった頬を撫でながら、シャロンはサンダースに甘い視線を寄せる。
「それにだ。・・いちいちそんなことを気にするほど我輩は狭量ではない。君は我輩を信じ、隣を誇らしく歩くだけでいいのだ。我輩もシャロンの隣を歩くことを誇ろう」
「仕方ありませんわねぇ・・。その代わり、私の隣は貴方一人だけですもの。貴方の隣も私だけですわよ?」
「無論だ」
相変わらず尊大そうな態度のサンダースだが、その頬が赤いのをシャロンは見逃さない。
少しだけうれしくなって、シャロンがくすりと笑った瞬間。
「では。・・・今宵は、そろそろ寝るか」
「え!?」
寝るという単語が耳に入った瞬間、シャロンの顔が茹蛸のようになる。
脳裏を駆けるのは、ルキアやユリと興味本位で買ったアダルトな雑誌の内容。
男女が全裸で、時には衣装に身を包んで性交をする様が鮮明に浮かぶ。
「ね、寝るって!もしかして、で、でも・・・」
「明日も早いだろう。付き合い始めた初日なのだ、二人で床を共にするのも悪くないだろう」
「あ、そういう意味ですのね・・」
相変わらずマイペースなサンダースに、シャロンはため息をつく。
これではどきどきした自分がバカみたいじゃないか、と。
しかし、真に身体同士で結ばれる日も何れ来ることは理解している。
だから、今宵は、今宵ぐらいは。
「では、ご一緒しますわ」
「うむ。では電気を消すぞ」
まずサンダースが寝転び、そしてシャロンはその隣で添い寝のようにぴたりと引っ付く。
明かりが消えた部屋で、サンダースの鼓動とシャロンの鼓動だけが激しく高鳴っている。
「お休み、シャロン」
「おやすみなさい、サンダースさん」
サンダースに優しく抱きしめられながら、シャロンはうっとりとしながら眠りに着く。
明日の朝になっても、この幸せがなくならないようにと祈りながら。