風呂あがりの火照った体を持て余しながら、リエルはサンダースの部屋へと向かう。
恋人同士としての、第二歩。
他の生徒たちが泊まりだと電話を貰ったリエルは、サンダースと夜通し話していたいいと思ってそれを伝えて・・・そしてサンダースに了解を得たのだ。
「(一晩一緒にいて・・いっぱいお話して・・・・・・もしかして、それ以上も・・♪)」
耳年増というわけではないが、リエルにだって恋人の二人が一晩一緒にいたら何をするかなんて、分かっている。
即ち、性交。セックスと言った方が早いだろうか。
仲のいい女の子には、もう処女を失って長く、セックスの喜悦を話のタネにする娘だっているのだ。
リエルも自慰をすることぐらいはあるし、男女のそれぐらい知っている。
「サンダースさん、入りますね?」
「む、かまわんぞ」
「じゃあ、お邪魔します〜」
ノックも無く、ただドアの前で声をかけて、返事を待って入る。
それもサンダースに許されているから。
リエルが初めて入ったサンダースの部屋は、予想通りというか、小奇麗に片付けられていて、本棚の上には戦艦の模型が幾つか飾られていた。
「はぇ、すごく片付いてますね」
「無論だ。余分なものを持ち込みたくは無いのでな」
「きゃんっ♪」
サンダースがリエルの華奢な体を抱き寄せると、リエルは嬉しげな声を上げる。
「いい香りだ。・・・しかし、女というのは線が細いのだな・・?」
「ユリちゃんやルキアちゃんみたいに、しっかりしてる娘もいますよ?」
「まぁ奴らは運動が好きなようだしな。無駄に胸も育っているようだが」
「・・・胸が大きいほうがいいんですかー?」
リエルは、ほんの少しだけ頬を膨らませて抗議するように言ってみる。
確かにルキアとユリはリエルから見ても目を引く存在ではある。
いつも元気で、友達も多くて、おっぱいも大きくて。
そこまでリエルが思ったとき、サンダースは苦笑いを浮かべた。
「何を勘違いしている。我輩はリエル嬢の恋人なのだろう?」
「・・でも」
私はおっぱいも小さいし、と、リエルは言えなかった。
ふわりとサンダースの両腕がリエルの背中に回され、抱きすくめられてしまったから。
ほぅ、とサンダースの胸に体を委ねると、それだけで嬉しくなってしまう。
「我輩がリエル嬢以外を異性として見ることは、ないぞ」
「うん・・・わかってます」
「ならばいいのだ」
サンダースは満足そうに笑むと、リエルの髪をくしゃくしゃと撫で回す。
それがくすぐったくて、嬉しくて、またリエルは笑顔になる。
それから二人は子猫がじゃれあうように寄り添いながら、ゆっくりと、しかし多くのことは話し合って。
・・・・そして。
ほんの一瞬、盛り上がっていたはずの会話が途切れる。
たったそれだけなのに。
たったそれだけなのに、二人はこれからのことを知っているかのように抱き合い。
「あっ・・・」
リエルの体が、サンダースのベッドに押し倒される。
思わず声をあげたリエルだが、期待していなかったわけではない。
・・・否、内心は襲われたいと、犯されたいと思っていた。
「今から、君を・・・抱く。ここから先は後戻りできない一本道だ・・・・引き返すなら、ここが最後の分岐点だぞ」
「ふぇ・・・一本道・・・・・・・ですか?」
「そうだ。・・我輩の女として、この先の未来全てを奪うことになる」
「それって、」
リエルが驚き顔でサンダースを見つめるが、サンダースは視線をそらさない。
「サンダースさんのお嫁さんに・・なれってことですか?」
「あぁ。我輩とて、一度傷物にした相手に対する責任のとり方ぐらい知っている」
「・・・・嬉しい!」
リエルが予想した通りのサンダースの答えに、少女は思わず歓喜の声を漏らしていた。
実質のプロポーズだと気付いているのだろうか、彼女には分から無いが。
「リエル嬢よ、我輩に着いてきてくれるか?」
「はいっ、喜んで!・・あ、でも」
「・・なんだ?」
少しばかりリエルは考えるような仕草をする。
「リエル嬢じゃなくて、リエルって呼んで欲しいです。・・それから、自分のことは我輩じゃなくて、俺か僕って言ってくれたら、もっと嬉しいですよ?」
「あぁ、善処しよう。・・リエル」
サンダースの優しげな声に、リエルはほぅっと息を吐く。
きっとサンダースとなら幸せな初体験になるだろうと、理由も無く確信して。
「・・さぁ、サンダースさん」
「うむ。・・・では、始めよう」