サンダースの初恋は、忘れもしない女医が相手だった。  
戦闘中に重症を負った彼に命の重さを教えながら、必死に治療してくれた人。  
当時のサンダースは蛮勇を振るうことしか考えていなかったからか、それを聞き流していた。  
彼の傷が癒えたときにも彼女は陣営に居て、他の怪我人や病人の面倒を見ていて。  
サンダースは、その姿を実際に疎ましく思っていたのに。  
何度もその姿を見るうちに、徐々に彼女と話したい、もっともっと一緒にいたいという欲望が芽吹いていた。  
 
それが初めての恋だと気付いたのは、ほんの二年ほど前のことである。  
 
 
「・・・まぁ、そんなのはどうでもいいがな」  
「どうでもよくないよぉ。お兄ちゃんが好きになったのってどんな人だったのか、教えて欲しいなぁ?」  
「もう覚えていないな。・・覚えているのは、初恋だったことだけだ」  
 
サンダースの懐かしむような声に、アロエは首を傾げる。  
自分の恋人で、かつ兄のような存在である彼は、そう簡単に物事を忘れたりするような人ではなかったはずだと思って。  
でも、それはアロエが嫌な思いをしないように、そして自分がアロエの恋人であるんだということを暗に示していると考えて、アロエは頬を染める。  
 
「お兄ちゃんは優しいね」  
「・・さぁな」  
「うん、やっぱりお兄ちゃんの恋人さんになれて嬉しいよぅ♪」  
 
サンダースが妙に照れ屋だとアロエが知ったのは、極々最近のことで。  
だけれども、やっぱり優しいのだ。特にアロエには、ベタ甘で。  
今も、初恋の話を聞いた自分に配慮してくれた(とアロエは思っている)。  
 
「わがは・・俺は、優しくなどない。勘違いするな」  
「もう。・・でも、そんなお兄ちゃんが大好きだよっ」  
 
ベタベタと露骨にくっ付いても、甘えても、苦笑するだけで拒否はされない。  
それが嬉しくて、たまらなくて。  
自分のことを、何よりも大事にしてくれる、やさしく守ってくれる。  
それが嬉しくて、幸せで。  
 
「ねぇ、・・お兄ちゃんと、またエッチなこと、したいなぁ」  
「っ!前に痛い思いをしたのを忘れたのか!?」  
「大丈夫だよ、本を読んで調べてみたけど、痛いのは最初だけなんだって」  
 
ゴロゴロと喉を鳴らして甘える猫のように、アロエはサンダースにしな垂れかかる。  
その小さな体を受け止めて、サンダースは溜息をつく。  
この少女、見かけや前々からの印象とは違って、積極的なのだ。  
最初の性交渉も、サンダースが尻込みし続けた結果アロエが主導権を得ての行為だったし。  
 
 
「でも、アロエのことを心配してくれたんだよね?」  
「流石にあれだけ血が出て痛がっていたんだ。心配もするさ」  
「お兄ちゃんと一緒だから、アロエは大丈夫だよ?」  
「・・・また痛がるようだったら、直ぐにやめるぞ。悲鳴を聞いて喜ぶようなサディストではないのでな」  
 
アロエの頭を撫でながら、サンダースは慣れきった苦笑を見せる。  
それじゃあシャワーを浴びてくるね、と嬉々としながらサンダースの部屋を出て行くアロエの姿が、サンダースには妙に愛おしく思えた。  
 
 
 
私服を脱いで裸になったアロエは、鏡に映る自分の体にため息をつく。  
同じクラスの友達はみんなおっぱいが大きいのに(一部例外あり)、なぜ自分はこんなにつるぺたなのだろうかと。  
それとも後何年かしたら、自分もあんなに立派になるのだろうか。  
 
「・・・でも、お兄ちゃんはアロエが可愛いって言ってくれるんだもん」  
 
妥協したわけではない。  
妥協したわけではないが、今の自分でサンダースを精一杯好きでいたいのだ。  
きっと自分が大人になれば、その好きだという思いも大きくなるはずだから。  
 
「早くシャワー浴びちゃわないと。お兄ちゃんが待ってるよぅ」  
 
とりあえず思い悩むのはやめにして、アロエは急いでシャワーを浴びることにした。  
 
 
 
「これから、お兄ちゃんにエッチなこと、されちゃうんだ・・・ぁっ♪」  
 
シャワーの音が、アロエの小さな呟きをかき消す。  
いや、アロエの声だけではない。  
シャワーを浴びながら、アロエは自分の秘部を自身の指で慰めていた。  
サンダースに愛されることを考えると、体が疼いて仕方がなかったから。  
 
「アロエ、自分で・・・エッチなこと、しちゃって・・・ぇっ♪」  
 
右手の指でくちゅくちゅと愛液が溢れるのをかき混ぜながら、左手では固く敏感になっている胸の先を摘んで。  
それだけで、もう何度も絶頂している。  
毎晩のようにサンダースのことを思って自慰していたためか、自分が気持ちよくなれる場所もはっきりとわかる。  
 
「ひにゃあ・・・・にゃああああっ♪」  
 
秘部の小さな突起を少し強く摘むと、アロエの体に電流が奔って。  
放心したように、虚ろな目のまま息だけを荒げるアロエは、自分が絶頂した瞬間から放尿していて。  
ただぼんやりと、こんな自分をサンダースは好きでいてくれるだろうかと思っていた。  
 
 
 
「・・・それで、遅くなったのか」  
「ごめんなさーい・・・」  
 
アロエは、サンダースに愛されるためと浴びにいったシャワー室で、結局彼女の帰りが遅いと心配した彼に見付けられて。  
もう一度、今度は二人でシャワーを浴びていた。  
 
「えっとぉ、お兄ちゃんは、エッチなアロエなんて嫌い・・だよね?」  
 
恐る恐る、アロエは声をかけてみる。  
隣でシャワーを浴びるサンダースは、それを聞いて仏頂面をアロエに向けて。  
 
「・・・・・・さてな。アロエが淫乱だろうがなんだろうが、俺には関係あるまい。好きになったのは、あるがままのアロエ、お前なんだ」  
「お兄ちゃん?」  
「アロエが俺を嫌いだというのなら、身を引くが。・・少なくとも、俺はお前を好きだと言っているだろう」  
「ほんと?アロエ、いっぱいいっぱい自分でエッチなこと、しちゃうんだよ?」  
「・・別に、気にせん」  
 
とうとう恥ずかしくなったのか、サンダースは顔を背ける。  
アロエはサンダースがやっぱり優しいんだ、とうれしくなって。  
サンダースに甘えるように、彼に抱きついた。  
 

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