陽も完全に落ち、夕食時になると寮の食堂も混み始める。  
そのごった返す生徒達のなかにいつものルキアの姿が見当たらない。  
それもそのはず、用心のあまりルキアは部屋から出ようとしないのだ。  
「うー……お腹空いた……」  
空腹と恥辱を天秤にかけた所今のところは恥辱には耐えられないという結論に至っている。  
空腹は寝てごまかしてしまおうと先程から布団に潜っている。  
「ダイエットだと思えばへーきへーき……」  
ぐぐぅ〜……  
「……うぅ。」  
身体は正直。  
そんな所に誘惑が迫ってくる。  
ドンドンっ!  
「るーきーあーっ!ご飯いこーっ!!」  
「うぅ、ユリ……」  
いつもの呼び声が今日は妙に煩わしい。  
布団を被り知らんぷりを決め込むが、ユリに呼応するように腹の虫が激しくなる。  
「ねぇーっ!はやくいこーよぉーっ!メニュー減っちゃうよぉーっ!?おなか空いたよーっ!!ねーえーっ!!」  
ドンドンッ!ドンドンッ!  
「…………………………」  
ぐきゅるるるるる……  
「………はぁ。」  
ガチャッ  
「はいはいわかったから廊下で叫ばないの。さ、いこっ。」  
結局成長期。  
食欲の前には羞恥心さえもあえなく陥落したのだった。  
 
「ふーん、じゃあ今日もダメだったんだ?」  
「うん、嫌味まで言われちゃったよ……」  
テーブルを挟み食事を取りながら今日の補習の話題に至る。  
ユリはエビフライをかじりながら話を続ける。  
「マロンせんせあれでいて厳しいもんねそーゆうとこ。お仕置き痛かったでしょ?」  
「そっ、そんなことなかったよ。実は今日のお仕置き……」  
雷じゃなくてエッチになっちゃう魔法だったんだ。  
そう続くはずの言葉は口から出てこなかった。  
(あれ?何でだろ?)  
「へ?今日のお仕置きが?」  
「あ……えっと、手加減してもらったんだ!アハハハ!」  
不思議に思ったが会話の流れを優先して適当につないだ。  
やはりお仕置きの事は他言無用な仕様になっているのだろうか。  
「へーっ、よかったじゃん!」  
「うん、おかげで助かっ……」  
デザートのリンゴに手を伸ばしたそのとき。  
「く、ぁ………っ!?」  
(そんな!こんなところで!?)  
ルキアに三度目のあの感覚が沸き上がってきた。  
みるみるうちに顔が火照り体温が上がり始める。  
自然と息まで荒くなってきた。  
「ん?ルキアどしたの?」  
その異変にユリが気付いた。  
「何でもない……なんでも……」(みんないるのに……変になっちゃうぅ……)  
「でもどう見ても何でもなくないじゃん!誰か来て!ルキアが変なの!」  
心配してユリが人を呼び始めた。  
普通ならありがたいのだが今は逆に状況を悪くされているようにしか感じられない。  
「お、おい大丈夫かよ?」  
「何があったんだ?」  
「大変!先生呼んできたほうよくない!?」  
「だいじょうぶ……だよぉ……だいじょうぶだから……っ!」  
(ふえーん!男の子まで来ちゃダメぇっ!)  
騒ぎが大きくなるにつれルキアの興奮も高まっていく。  
前の二回に比べ今回はずいぶん意識がはっきりとする。  
しかし意識はあっても身体の反応が今までよりも随分強い。  
公衆の面前で、理性がより強い本能に陥落して自発的に性欲を貪る。  
そんな危険を感じた。  
 
「はぁ……やだぁ、やだよぉ……」  
かろうじてまだ自慰には至っていないが女芯はすっかり愛液でまみれていた。  
「な、なぁ本当に大丈夫かよ?」  
男子生徒が気を遣って肩に手を触れる。  
「ひゃんっ!」  
「うわっ!?わりぃっ!」  
その瞬間に快感が身体中を走り抜けた。  
(肩触られただけなのに……)  
全身の感覚が鋭敏になっている。  
まるで身体の至る部分が性感帯になったかのようだった。  
下腹部を中心に全身がじんじんと熱くなる。  
「はぁ、はぁ……」  
「ルキア……?」  
「だめぇ……恥ずかしいのにぃ……」  
(したい……もう我慢できないよぉ!)  
遂にルキアの理性は負けを認めた。  
同時にルキアの右手がスカートに潜り込む。  
「ふぁ……あっ、ぁ……」  
「えっ……ちょ、ちょっとルキア!?」  
「ダメなのぉ、ユリ、あたしぃ……」  
焦点がずれた視線でユリを見つめるルキア。  
その間も右手はスカートの中で動き続けている。  
「わっ、ちょっ……男子ダメぇっ!見ちゃダメっ!!」  
自分が集めてしまった人だかりを散らそうとユリは躍起になるが、相手が多すぎてうまく撒けない。  
思春期の少年たちの目はすべて床にへたりこみ喘ぎ続けるルキアに向けられている。  
「すげぇ……」  
「マジかよ?オナニーしてるぜ?」  
「ルキアさんってエッチな娘だったんだ……」  
「やだぁっ……みないで……」  
そのざわめきを聞きルキアは恥ずかしさを覚えながらも興奮していく自分を感じていた。  
「ふぁっ……んんっ!」  
「る、ルキア……?」  
「とまらないの……はずかしいのにきもちいいよぉ……」  
更に興奮の色が強くなっていくルキア。  
「ど、どうしよ……」  
困惑するユリをよそに事態はさらに悪化の一途を辿りはじめる。  
 
「なぁ……俺達で犯してやろうぜ!」  
「気持ち良くなりたいなら利害は合うもんな?」  
「うへへ、ルキアのあそこ……」  
一部の男子生徒がよからぬ事を企みはじめた。  
いきなり自分から自慰を始めた所為とはいえ、親友が目の前で犯されているのは見たくない。  
「………!」  
ルキアを救えるのは自分しかいない、そう思った後は早かった。  
「はいはいゴメンね〜!ルキア帰るよ〜!」  
「ひぁっ!ぁぅ……」  
ひょいとルキアを抱き上げ、人だかりから抜け出す。  
これには勿論男子生徒達が黙っていない。  
「ユリ、ルキアを返せっ!」  
「ここは通さねえぞ!」  
「うわわっ!?数が多い!」  
出口に立ちふさがられ逃げられない。  
普段ならユリパワーでサクッと片付く所だが生憎ルキアを抱いている以上動きが制限され反撃できない。  
「おいユリ!ルキアを放してもらおうか!」  
「やだ!ルキアはトモダチだもん!あんたたちなんかに渡さないよ!」  
「手荒な真似はしたくないんだけどなぁ……」  
「あぁめんどくせっ!もういっそ二人まとめて楽しませてやろうぜ!」  
「賛成!」  
「それいいな、俺も乗った!」  
「っ!?」  
ユリは彼らが冗談を言っているようには聞こえなかった。  
男子生徒達がユリとの距離を詰めてくる。  
恐怖の余り全身に冷や汗が流れているのを感じた。  
「い、いや……こないで……!くるなぁっ!」  
四面楚歌。  
周りを数人の男子に囲まれ身動きがとれない。  
そんな中でもルキアはユリの腕の中で自分を慰めている。  
「はぁ……はぁ……もっと、もっとぉ……」  
「へへっ、お望みどおりもぉっと気持ち良くしてやるぜ……お友達と一緒になぁ……!」  
「く、くるなケダモノぉっ!」  
もうダメだ。  
そう思った。  
 
バターンッ!!  
「ぶるぁぁぁぁぁぁあっ!うるせぇぞてめえらぁっ!!食堂で何騒いでやがるぅっ!!」  
「!!」  
そこへガルーダ先生降臨。  
あまりに突然のプレッシャーに皆凍りつく。  
「お前らそこに直れぃ!みっちり反省会だ!」  
「うわっ!!」  
「は、はひぃっ!?」  
(チャンス!)  
男子生徒の捕獲に乗り出したガルーダ先生の注意が逸れた一瞬を狙い食堂から脱出。  
ユリはそのまま廊下を駆けぬけ自分の部屋を目指した。  
 

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