『中国4000年の技』  
あの日からヤンヤンは心の奥底で今までとは違う感情が湧き上がりつつある事を感じていた。  
クラスメイトであるクララからあの日与えられた喩えようのない悦楽  
そしてその悦楽を求め、自分で自分を慰める毎日が続いていたのである  
 
「ああっん…くふぅ…胸の先っぽをコリコリすると気持ち良いアルぅぅああん」  
「クララ〜私も好きアルよぉぉまた気持ち良くイカせて欲しいアルぅ」  
 
あの日からクララが部屋を訪れることはなかった  
あの気持ち良さがどうしても忘れらないヤンヤンはクララを度々部屋へ誘った  
だがどれだけ誘いの言葉を投げ掛けてみても返ってくる返事はいつも同じだった。  
 
「クララ美味しいお菓子が手に入ったアルよ、一緒に私の部屋で食べるアルね」  
「ごめんなさい〜今日も用事があって〜また今度誘ってくださいね」  
「そうアルか…それはとても残念アル…」  
 
「ぁぁあああっぃぃぃぃ気持ち良いアルよぉぉ、クリぃ…クリをこぉうやってぇぇこ、こすっているぅくはぁと…」  
「ぅあああぁ駄目アルぅぅイっちゃうアルぅぁぁぁあぁぁあああああああぁイっちゃうアルぅぅぅんんっ」  
「…ま、また慰めてしまたアル…」  
 
ある日、いつもの様に自分で自分を慰めていたヤンヤンは本棚に見慣れない本があることに気が付いた  
 
「ん?こんな本あったアルか?」  
ふいにその本の事が気になって、手に取ってページをパラパラ捲っているとふと手が止まった  
 
「こっこれは!本当の事アルか?本当なら凄いアル…」  
 
どうすれば切ない気持ちがクララに届くのか?  
悶々とした気持ちを持て余していたヤンヤンは藁にもすがる気持ちでページを読み進めた  
 
「これは凄い奥義アル…如何考えても本物アルね!早速試してみるしかないアルよ」  
 
「コンコンッ!」  
部屋のドアがノックされる音にクララは反応した  
「いま空けます〜あら…ヤンヤンさんどうなさったんですか?」  
クララからの問いかけにドアの前で少しはにかんだ笑顔を見せながらヤンヤンは答えた  
 
「少しお話しがアルねっ!お部屋に入っていいアルか?」  
クララはヤンヤンからの問いかけを気に掛ける事もなく、快く部屋へと迎え入れた。  
 
「紅茶飲みます?あっキーマンがいいですよね?」  
「うっ、うんアルね」  
紅茶に馴染みがないからか、考え事でもしているのかヤンヤンは生返事をしてしまった  
だがクララはそんな事を全く気にすることもなく紅茶の用意を始めたのである  
 
「ふぅふふ〜ん♪」  
カップ・ティーポットをテーブルに用意し、お湯を沸かす間に棚からお茶を探すその様子を見て  
チャンスアルね…お茶の準備の為に背中を見せるクララを見て、ヤンヤンは素早く行動に出たのである  
気配を感じさせる事なく背後に立ったヤンヤンの両手から渾身の力で放たれた奥義がクララの上半身を的確に捉える  
 
「きゃっ!?…」  
「…クララどうアルか?気持ち良いアルか?」  
「…ぁぅ」  
「私の事好きになったアルか!ここのツボを押しながらここを刺激したアル」  
「クララはもう私の事しか考えられないはずアルよ!」  
 
「…っもう!ヤンヤンさんまだ昼間ですよっ!」  
 
「!?おっおかしいアルぅぅ…中国4000年を誇る秘、秘技が効かないアルょぉぉ…」  
 
羽意蛇通痴(ぱいたつち)  
中国三国志の時代に誕生した幻の拳法「誇羽梅武」の奥義の一つとされる  
当時の中国国土の3分の2を支配していた魏王曹操が  
敵国から送り込まれた女刺客「李絵琉」からその身を守る為に用いたとされる  
この技を受けた刺客はその任務を忘れ曹操の寵愛を求め続けたという  
そのあまりの危険さ故に悪用を恐れた曹操の子、魏皇帝曹丕によって禁止令が発布されている  
 
ちなみに現代に伝わる「パイタッチ」という言葉は  
この奥義がシルクロードを通ってヨーロッパに伝わった際の名残である  
 
民明書房刊  
『三国志の時代と幻の拳法−その奥義を探る−』より  
 
 
「もぅっ(笑)購買部のリエルさんだったら大変な事になっていましたよ(笑)」  
 
 

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