【惚れ薬】  
「ロマノフ先生いないアルか?」  
 
昨日の理系学問試験が思いの程良くなかったらしく  
ロマノフ先生から呼び出しを受けていたヤンヤンは  
放課後に教員室へやって来ていた  
 
「とりあえず失礼するアルよ」  
部屋に入り周囲を見渡してみるがロマノフの姿は見えない  
ひょっとして奥の部屋にいるのかも?  
と更に奥へ進み辺りを探ってみたが結果は同じだった  
 
「いないアルなぁ・・・帰るアルね」  
諦めて自分の部屋に帰ろうと後ろへ振り返った時  
改めて机や棚にある様々な物がその眼に映ったのである  
 
「いろんな物があるアルね」  
つい興味本位で棚の本や薬瓶を手に取っては眺めて見た  
読めない字で書いてある物が多く何か分からない物が多かった  
 
「あれ?この棚の本の奥、なんか隙間があるような気がするアルよ」  
隙間に気が付いて不思議に思い、棚からこの分厚い本を数冊取り除いてみると少し大きめの瓶が出てきた  
「ん?この瓶、栓が少し緩いアルね。くんくん…良い匂いするアル」  
「ふむふむ、色も琥珀色で綺麗アル」  
中の液体を見、瓶を回しながら見てみると小さなラベルがある事に気がついた  
 
「ふぅ〜んっ…!!!!!!!!!!!」  
「ほ・・・ほ・・・惚れ薬って書いてアルぅぅぅぅぅぅぅぅ」  
「こ、こ、これがあれば、今度こそクララを私の物に出来るかもアル!!」  
棚の奥に隠すように置いてあった瓶  
それに加えてここが理系学問の教師であるロマノフの部屋である事を考えると  
本物の惚れ薬だとヤンヤンが理解するまでに時間はさほど必要ではなかった  
 
「この前の本には騙されたアルが、でもこれは本物に違いないアル!」  
次の瞬間、瓶を手に持ったヤンヤンは大急ぎで本を棚に戻し  
部屋のドアから顔を出して周囲を見渡し  
誰もいない事を確認して部屋から飛び出していった  
 
「はっはっ…はぁはぁ…ふぅぅ」  
廊下を誰にも見つからないように必死に走って自分の部屋に何とか辿り着き  
部屋に入ってドアを施錠し誰も入れない様にしてから瓶を取り出した  
 
「シュッポッ」  
栓を抜いて改めて匂いを嗅いで見ると結構良い匂いに感じたし  
色も本当に綺麗な琥珀色だった  
 
「これを使ってクララを惚れさせてしまうアル…」  
「あんな事とか!!アッー!!やばいアル!!鼻血出そうアルょ!」  
色々と妄想に耽っていると、ふと顔の少し熱い感じと胸がドキドキする事に気がついた  
 
「ぉぉ!匂いを嗅ぐだけでドキドキしてきたアル!これはやっぱり本物アル!」「えっちな気分になってきたアル…っん…っん…はぁぁぁぅぅ…」  
「ふぅぁぁっ…思わず気持ち良い事しそうになったアル…これは凄いパワーアル」  
「これは何としてもクララに飲ませるしかないアル!」  
この薬を使えば、クララを自分の物に出来る  
そしてあの日から続く自分で自分を慰めるだけの日々から決別できる  
そう思った時、ヤンヤンが行動に移るまでに時間はかからなかった  
 
「絶対にクララを私の物にするアルよぉぉ!」  
 

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