「よーし、今日の授業はここまでだ」  
灼熱のグラウンドにて、授業終了のベルが鳴り響くと共に、ガルーダは生徒を集合させて授業終了の号令をかけた。  
猛暑の中、体育で体力を消耗しきった生徒達は、とぼとぼとアカデミーへ戻っていく。9月の新学期を迎えてなお、マジックアカデミーにまだ残暑は続いていた。  
こんな中、体育で体を動かして、その次の授業のやる気がなくなる者が続出し、放課後職員室で各教師のおしおきを受ける生徒が最近増えていっている様な気もする。  
しかしそれは教師であるガルーダも同じ事だった。  
朝から半日スポーツ担当教師として、焼けるように熱い太陽の下で僅かな時間を見つけ休息を取りつつ、何時間も次から次へと各クラスの授業を受け持たなければならない。  
それが毎日続くとなると、アカデミー一熱血教師を称される彼ですら、流石に後々辛くなっていく。  
秋に開催される運動会すら今の心境では何だか面倒になってきた。  
「さぁて…」  
今日の授業はこれで全て終わりだ。後はさっさと明日の予定を立てて早く寝てしまおう。そう思いながら、ガルーダはアカデミーに戻った。  
 ・  
その夜、ガルーダは残業の後に夕食と沐浴を済ませ、部屋に戻って柔軟体操ををした後、そのまま仰向けにベッドに倒れる。  
「ふぅ……」  
いつもは風呂上りにすぐ筋肉トレーニングをするのが日課なのだが、  
今日はこの気温と疲労の為か、そんな気分にはなれず、すぐにでも安眠に浸りたい……と思ったのだが、急にガルーダ自身の中で胸騒ぎがした。  
「………」  
疲れているのに目がさえてしまう。その状態のまま深呼吸を数回繰り返すが、治まらない。ふと視線を切り替えると、ガルーダの目の前には、満月が映った。  
「何だか妙に…綺麗だ…な…」  
普段あまり夜空の星や月なんて気にしていなかったのに、今目の前の月が何故かいつもより美しく見え、そして心なしか落ち着きがなくなってきた。  
ガルーダがしばらく月を見つめていると、鼓動が早くなり体が火照っていく。  
 
「はぁ…はぁ……一体…これは…」  
ここでガルーダはやっと自身の違和感に気が付いた。  
そういえば一年か半年くらい前だろうか、こういう現象が前にも起こったような気がする。  
むず痒いような心地良いような、自身の中から何かを求めている様な感じがして寝付けない時期があった。風邪でも病気でもない。これはもしや…!!  
「ん…っ」  
ガルーダの脈は、下腹部や腰に集中していた。右手は知らず知らずの内に自らの股間に手が伸びて、そこを手探るように指先でなぞる。  
指には透明な粘液が絡みついた。やっぱり…これは発情期だった。どうりで興奮する訳だ。  
「半年も溜まってるから…仕方ないか…」  
ガルーダはこの現象が発情期である事を明確に解釈すると、股間のスリットに一気に指を突っ込み、くちゅくちゅと卑猥な音を立てながらかき回す。  
「うおぉ………」  
肉壁に受ける刺激に酔いしれながらガルーダは内部をこねくり回しながら、喉の奥からくぐもったうめき声が漏らした。  
刺激を与え続けた末、スリットからササミのような桃色の一物がにゅるると顔を出しスモッグを押し上げた。  
股間のスリットが棒で塞がると、今度は棒を握り大きく上下に扱く。  
「うおっ……、おお…はぁっはぁっ」  
半年御無沙汰だったのか、久々に味わう刺激に喘ぎ声を我慢することが出来ない。次第に出る声が大きくなってゆく。  
隣の部屋の生徒達や教師達に聞こえていないか。そんな危うい状況が、ガルーダの理性を気付かせるが、一度刺激を与えた手は止めることができない。  
腰の奥からふつふつと沸き上がって来るものを感じる。ガルーダの手は上下させるスピードが次第に速くなっていく。  
強く握りしめた手の隙間から、先走りが溢れ出す。  
「ぶるぁぁぁっ…」  
絶頂はすぐそこまで迫っていた。ガルーダは耐えられないところまで上り詰める……寸前だった。  
 
「ガルーダせんせー!おきてるー?」  
突然ドアの方からノックの音が響く。ガルーダは思わずハツが飛び出しそうになった。  
「だ、誰だ!?」  
「あたしだよ。マロンちゃんなのだ」  
「え、あ、ま、マロン先生?」  
ガルーダは快感でがくつく足腰に力を入れベッドから立ち上がり、絶頂を寸止めした状態の逸物をスモッグで覆い隠し、やや引き腰になりながら部屋のドアを開けた。  
そこには、マロンが立っていた。  
「おいっす。ちょっとお邪魔していいかな?」  
「え、えぇ…構いませんが…」  
ガルーダは予想外の展開に少々戸惑ったが、何の疑いもなくマロンを自分の部屋に招いた。  
テントを張っているスモッグを見られないようにやや前屈みに歩きながら。  
 
 ・  
「いやぁ、いきなり押し掛けてごめんね〜。もしかして今から寝るところだった?」  
「え、ええまぁ…今日も一段と暑かったですし、早めに仕事を終わらせて休もうかと」  
ガルーダは自分の部屋に招いたマロンに、粗茶…の代わりとして、自分専用の小型冷蔵庫の中にある手製のスポーツドリンクを差し出した。  
一応味にも気を使っているので、マロン先生でも概ね満足するだろう。  
ガルーダはベッドに腰を下ろし、自分のテントに手を覆い妙な行動が怪しまれないように彼女に振舞った。  
「…ところでマロン先生、私に何か様でも?」  
「あ、そうそう忘れるとこだったのだ。えっと、あれはこないだ、あたしが珍しく時報ニュース見てた時ね…」  
 
 ・  
「うわぁ〜お。これはひどい」  
夏休みのある日、マロンは部屋で栗羊羹とジュースを飲みながらパソコンから映るテレビのニュースを見ていた。  
そのニュースの内容は、現在インフルエンザが原因で死亡者も続出している。  
更にその原因が主に街等で見かける野鳥や、鶏など家畜の病原体であり、各地で家畜ごと焼却処理が行われている。  
その影響で、将来精肉工場や各家庭の消費者に被害が推測されるだろう──そんな内容だった。  
「これは一大事だあね、リエルちゃんが泣いちゃうよ」  
口の周りに羊羹をくっつけながらマロンは目を丸くして呟いた。  
ここ半年、魔法省では大規模な不景気が起こり、世界各地であれこれ高価化している上に、  
各業界に派遣された若い賢者や魔導師は次々に無条件解約され、飢えに耐えつつ荒地を彷徨うというニュースが報道され、  
マジックアカデミーにもその影響が受けつつある状態になっていたのだ。  
更に数ヶ月前のある日、マロンは珍しくケーキ作りに目覚めさっそく材料を調達している中、  
肝心の牛乳とバターが手に入れられなかったことがあり、新作のゲームや劇場化されるアニメの情報収集に没頭しすぎていた為か、  
何かの影響で乳製品が生産が出来なくなってしまっている事を知らずに、全国を飛び回ったことがあることもあった。  
「アカデミーの購買部の唐揚弁当も一番人気だから、リエルちゃん大丈夫かなぁ。  
私だってコミケに行ったりする時に小遣い節約の為に自分で唐揚弁当を作ったりするのに、唐揚の入ってない弁当なんか唐揚弁当じゃな〜い!  
せっかく人がたまにお菓子作りの腕を揮おうと思ってたのに牛乳やバターがなくなった事があるって言うのに…今度は鶏肉かよ!ああぁ〜もう思い出すだけでム・カ・ツ・ク!!」  
マロンはモニターの前でぶつぶつと腹を立てている。今にもどこかにこのモヤモヤをぶつけたいが為に、最初に見た生徒や先生に無差別に雷を落とす勢いだった。  
「ん…唐揚…牛乳……?」  
突然マロンは、今の怒りを忘れたかの様に二つの単語を復唱した。そしてそこかた脳内で次々と連想する言葉を繋げていった。  
唐揚、鶏肉、鳥、先生…牛乳、白い、蛋白質、ネバネバ…その末にマロンは頭上に豆電球の灯が点いた様に閃いた。ジュースを喉に流し込んで頭を冷やすことを忘れずに。  
「そうか、ベタだけどその手があったのだ!うん、これなら私にもできそう。いける、イケるのだ!」  
 
・  
「――とゆーことで、身近な所で有力的な人を思い付いたのが、ガルーダ先生ってワケ。  
ここはさぁ、魔導社会貢献とアカデミーの人気メニュー持続の為に一つ力を貸してくれない?お・ね・が・い♪」  
マロンは掌を合わせてウインクをしながら可愛い子ぶる様にガルーダへ願掛けをする。言葉では表しにくいオーラを放つ眼差し彼女の仕草に一歩引くガルーダ。  
「はぁ…。し、しかし…いきなりそんな事言われましても…」  
「だってだって、これじゃリエルちゃんも商売上がったりだよ?全国の鶏肉ファンの皆が混乱するんだよ?  
最悪ケンタッキーも潰れちゃうかもしれないんだよ?ガルーダ先生だって、よくお昼で唐揚定食とかデザートのメロンと一緒に頼んで食べてるじゃない?  
あたしだって、コミケに行くとき唐揚げがなかったら、なぁんか戦う気がしなくなるのよね〜」  
「むぅ…そ、それは…」  
ガルーダが答えに躊躇っていると、マロンはずいっと彼の近くへ寄り、顔に穴が開く程に見つめる。  
互いの鼻先と嘴が触れるすれすれである。確かにガルーダ自身も唐揚は好物のメニューの一つである。  
きっと彼女の事なので、このまま引き受けて自分が肉にされて食われることになるのだろうか。  
かと言ってこのまま容易に断ったら後で何をされるかは経験上大体予想が付く。  
どちらにしても自分に良からぬ事を避けては通れない事を悟ったガルーダは彼女の言動に引き気味になりつつも答えた。  
「わ、分かりました。…私の力で良ければ協力致しましょう」  
「やった!流石ガルーダ先生、頼り甲斐あるぅ♪」  
マロンはニコリと微笑んだ。もうどうにでもなれと思いながら、彼女の希望にしぶしぶと肯定したガルーダ。二人は気を取り直して早速本題へ入る。  
「それで、私はどうすれば宜しいのでしょうか?」  
「うん。今日のところは簡単な事だよ。ただ抜くだけでいいから」  
「ぬく…?何をですか?」  
「え?ほら、抜くって言ったらアレしかないじゃない。ガルーダ先生ったら純情だなぁ」  
「…?」  
「もうしょうがないなぁ。要するに、鳥のDNAを各養鶏所に届けて、鶏を殖やすって言う計画。その為には鳥であるガルーダ先生のエキスが必要なの。  
それに鳥人だと、普通の鳥より成長速度や肉質が高級な物になるって言うしね」  
 
「わ、私のエキス?………なっ、ま、マロン先生…!!まさかそのエキスとは…」  
「そっ。セ・イ・エ・キ♪」  
話から予想はしていたが、彼女の口から公では言ってはならぬ単語を聞いた途端、ガルーダの中でピアノを乱暴に叩いたような低い音が響いた。  
まさかここで彼女もとい女教師の目の前で、大の男が性に善がり狂うシーンを見られてしまうのか。  
マロンが任意としてそうしろとは言うものの、ガルーダ自身は男としてのプライドが許さなかった。  
「ガルーダ先生、さっきから息荒いし顔も赤いよ?もしかして、今の聞いて興奮しちゃった?もう万事おっけーじゃない」  
「…!?」  
マロンはニヤニヤと微笑みながら俯いた。彼女の視線の先には、ガルーダの下腹部…胴着のスモッグの膨らみだった。  
先程の自慰行為の際ハプニングが起こり、イキそびれたモノを…ついに見られてしまったのだ。ガルーダの体が羞恥に火照ってきた。  
「そ、そんな…別にそういう訳では…実は、発情期になってしまって…」  
「発情期?ちょうどいいじゃん!ガルーダ先生も出したいんじゃないの?何ならあたしが扱いてあげよっか、これ?」  
「い、いやっ、け、結構です。ま、マロン先生、分かりました。分かりましたからっ、自分でやりますっ…」  
「あっそ」  
彼女の冗談交じりの発言にガルーダは更にかぁぁっと赤面する。  
これ以上羞恥心を煽ってプライドを傷付けまいと、ガルーダは彼女の補助を断り、せめて自分自身の手で抜く事にした。  
マロンは杖を一振りすると魔法陣と共に瓶を出し、ガルーダに手渡す。  
「じゃあガルーダ先生、この中にお願いね」  
「…は、はぁ……。で、ではマロン先生、今から出しますが、少し離れて後ろ向いてて下さい」  
「えー、何で?」  
「何でって…こ、こんな事見られたら、誰だって恥ずかしいじゃないですか」  
「んー…まぁいいけどさ」  
身近にいる女性陣どころか、同僚の教師や生徒にもまともに見せた事がないのに。  
マロンは素直に彼に背を向け視界から消した。彼女が自分を見ていないことを確認すると、ガルーダは胴着のスモッグを捲り、再び硬直している肉棒を外気に曝け出す。  
それは更に寸止めされ、先走りが止め処なく溢れ、内股の回りはぐしょぐしょに濡れ、スモッグの内側は糸を引いた。  
これでやっと思い切って抜ける。ただ、彼女がいなければ更に心置きなくできたのだが。ガルーダは先程と同じように肉棒を掴み上下に扱き出した。  
 
「うっ…はぁ………はぁ……おぉ…おお……」  
先程イキそびれてしまったのか、先程より感度が強い。その刺激にガルーダは甘い吐息と声を漏らしながら扱いていく。  
自分らしくない鳴き声が心なし屈辱と罪悪を感じながらも、自分の大事なものを扱く手は止まらない。そして…  
「ぶるるぁぁぁっ…!!!」  
雄叫びと共に、ガルーダはビーカーに向かって精を注ぐまでそれほど時間は掛からなかった。  
その白濁の量は普通の人間の量とは比べ者にならない程の量と濃度だ。  
発情期になるまでかなり溜まっていたのか、もしくは種族独特の特徴なのだろう。  
「はぁ…はぁ……。マ、マロン先生、終わりました……」  
ガルーダは息を切らしながら余韻に浸りつつ、マロンに報告する。  
「もう終わった?ガルーダ先生お疲れちゃん。ほぉ〜、思ったより凄い量だね。これで一回分なの?」  
「は、はぁ……」  
ガルーダは自分の種汁の入った瓶をマロンに手渡す。マロンは魔法で蓋を召喚し、瓶に栓をした。  
「んー…まぁこれだけあれば今のところ4,5社くらいは間に合うかもね。」  
「は…?今のところって…」  
「生産禁止が全国各地って事になると、これだけじゃ足りないってこと。まぁ急ぐわけでもないし、これからゆっくり採って会社に送れば、また鶏がどんどん増えるよ」  
「あの…ゆっくりと採って送るって…また明日も来るんですか…?」  
「そうだよ。だって発情期って“期”っていうくらいだし数日間続くわけでしょ。その内に出しておいた方が効率的じゃない」  
「ま、まぁ確かにそうですが……え?ちょ、ま、マロン先生!!」  
「じゃあ今日のところはもう遅いしこの位にしておいてあげる。じゃあ今日はありがとねガルーダ先生、ばいなら〜」  
「ま、待ってマロン先生、こういうの絶対まずいですって…!……ぐぉっ!?」  
マロンは礼を言い別れを告げると窓から杖に跨り飛んでいった。ガルーダは、彼女を何か言いたげに窓から見上げて手を伸ばしたが、腰に力が入らずベッドから転倒してしまう。  
「………うぅ…」  
ベッドに這い上がり、明かりを消して吐精して少し落ち着いた体を横にし毛布に潜り込んだ。  
今回の事で声だけとはいえ、これからしばらく女教師の前で自慰をすることになると思うと、ガルーダは複雑な気持ちになった。  
悩んでいても仕方がない、余計なことは考えないで今日はもう眠ってまた明日に備えなくては。  
色々な意味で肉体的精神的な疲労を取り去る為に、ガルーダは瞼を閉じる。  
 ・  
「うふふ、うまくいった。よし、明日もがんばるぞ〜♪」  
その頃マロンは、杖に乗っかり空を舞い先程彼から採った体液の入った瓶を見つめながら微笑んだ。  
彼女の今回の行為は、社会貢献の為だけではなく、その他にマロン自身の欲望を満たす為の動機がでもある事は、ガルーダは知る由もない。  
 
後半へ続く?  
 

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