「ダイヤモンドを構成している元素の元素記号をアルファベットで答えなさい。」  
 次々と解答していく生徒達。ちなみに殆どがCと答えているが、数名DとかGとか検討外れな解答をしている。  
「正解はC!!」  
 ここはトーナメントの予選会場の図書館、通称雑学の間である。  
 リディアが次々の問題を出題していき、生徒が解答用紙に記入して解答できた時点でボタンを押す。その瞬間、時間が記録され正解者に時間に応じて得点を配分していく。  
 ちなみに、解答ボタンを押した瞬間に解答用紙に薄い透明な板が出現して、それ以上書き込めないようになっている。その原理については生徒達には良く分かっていない。  
 それはともかく、カイルはこの予選に見事勝ち残った。  
「では今回の決勝進出者はラスク君、カイル君、シャロンちゃん、アロエちゃんです、4人とも頑張ってくださいね〜。  
 あ、もちろん残りの皆はおしおきね♪」  
 リディアのその一言に、予選敗退者は体を強張らせる。  
 予選通過者の4人は予選通過証明書を受け取って決勝の場、アカデミーコロシアムへと向かう。  
 決勝通過者が図書室を出て行くのを確認すると、残りの生徒達に向かって弓を構える。  
「それじゃ、おしおきいきま〜す!!」  
 リディアが矢を持たずに弦を引く、すると雷光を発する魔法の矢が出現する。  
 それを見て逃げ出そうとする生徒諸君。無論簡単に逃がしてはおしおきにならない。  
 リディアが弦を放す、と、弓のしなりと弦の復元力によって放たれた矢が逃げ出した生徒達の方へと曲がる。  
 バチィン!!  
「きゃ〜!!」  
「うわぁ!!」  
「いやぁ〜!!」  
「ぐわぁ!!」  
 強い光が瞬き、その光の放つ電撃に当てられ、予選敗退した生徒はおしおきを受けた。  
「ふぅ……さて、と……」  
 おしおきの済んだリディアは決勝戦の様子を見に行くため図書館を後にした。  
 
 コロシアムの観戦席には既に大勢の人が見物していた。  
 教員の場合、専用の特等席が一部に設けられているため、リディアは人ごみを掻き分けてから特等席へと向かう。  
 特等席に到着した時、決勝戦担当のミランダが壇上に上って来るところだった。  
「あ、リディアちゃん間に合った。」  
 そう声をかけてくるのは特等席に既に座っていたマロン。幼い外見の彼女も立派に教員だったりする。  
「ほんと、最終予選の担当って貧乏くじよねぇ……」  
 愚痴を呟きながらも、所定の席に着くリディア。  
「悔しい気持ちも分かりますよ、自分の寮の生徒が二人も勝ち残れば早く観戦に来たい気持ちはね。」  
 そうリディアを慰めるのがフランシス。特等席にはこの三人が座っていた。  
 シャロンはフランシス寮、アロエはマロン寮の生徒である。この二人は親のような心境で自分の寮生の成果を見届けたいのだろう。  
「ま、私の所のアロエちゃんが勝つと思いますけどね。」  
「いえいえ、私の寮のシャロンが優勝で決定ですよ。」  
「それを言うなら、私の所のラスク君やカイル君も引けを取りませんよ。何せ予選の時はワンツーフィニッシュだったんですから。」  
 と、教員三人は火花を散らせながら残りの二人を睨み付ける。寮担当の教員は大抵こんな感じらしい。  
「ふぅ……またそんなことをやってるの?寮担当してる人たちの心境が分からないわ……」  
 そう呟きながらやってきたのはアメリア、彼女はトーナメントや決勝等の受付等を主にこなしている。  
 丁度決勝の受付が終わってやってきたのだろう。愛用の眼鏡を正しつつ席に座る。  
 そんなこんなで、決勝戦が始まった。  
「問題!!」  
 
 
「結果発表!!」  
 決勝の問題が全て終了し、集計をしていたミランダが壇上に立ち上がり、周りからはどこからともなくドラムロールが流れていた。  
「4位!!マロン寮アロエ!!」  
「ガーンッ!!」  
 この発表を聞いたマロンは真っ白になってうなだれた。  
「ほ……ほら、トーナメントなんてほぼ毎日やってるじゃない、今回ダメでも次があるわよ!!」  
 と、アメリアが落ち込んでいるマロンを宥める。マロンはそんなアメリアを見て、子供っぽい泣き顔でアメリアの胸に飛び込んだ。  
 そしてドラムロールは続く。  
「3位!!リディア寮ラスク!!」  
「あちゃ〜……まぁいっか、まだカイル君が残ってるし。」  
「おやおや、余裕ですね、さすが決勝に二人進めた寮だ、さぞかし余裕だったでしょう。」  
 なんとか強気に行こうとしたリディアをフランシスが皮肉っぽく言う。  
「そうね、そちらのシャロンさんも残っている事ですし……ねぇ?」  
 ……再び火花を散らし始めた二人は放って置き、ドラムロールはなおも続く。  
「2位!!フランシス寮シャロン!!  
 優勝!!リディア寮カイル!!」  
「やった〜♪」  
 カイルが優勝したのを良い事に、大人気なくはしゃぎだすリディア。  
 その横でフランシスが悔しがっている訳だが……  
 カイルがミランダから優勝旗を受け取ると、両手を使って頭上に高々と優勝旗を持ち上げる。  
 その瞬間、歓声がコロシアムに響き渡った。  
 
「はあぁ……」  
 長い長い溜息をつくのは自分の部屋へと戻る途中のシャロン。今日のトーナメントで準優勝終わってしまったために不満たらたらの状態である。  
 彼女自身、プライドは高い。高いからこそ、取るからには優勝のみで準優勝は最下位と同意と考えているタイプの人間である。  
「後一問……後一問正解を出せれば……」  
 そうぶつぶつと呟くシャロン。彼女はこれからリディア寮に居るマラリヤと勉強をする為にリディア寮の廊下を歩いている真っ最中だった。  
 時刻は夕方、シャロンは人が多く詰め掛ける所を歩くのは嫌だったのでマラリヤの所へ行く際は寮長室の前を良く通っていた。  
 ふと、寮長室のわずかに開いた扉から声が漏れていた。これは紛れも泣く喘ぎ声である。  
 何事だろうとシャロンは中を覗く。そこには半裸で抱き合っているリディアとカイルが居た。  
(な、何をしているんですのこの二人〜!?)  
 シャロンは二人が何をしているかを知っていた。しかし目の前に拡がる光景を自分は否定したかった。  
(き、教師と生徒が、こ、こんな事をして良いはずが……)  
 否定していけばいくほど、恥じらいからか頬を赤らめる。  
 気がつくと、シャロン本人も誰も居ない廊下に座り込んで自らの秘所に指を添えて喘ぎ声を押し殺している始末である。  
 微かに香る甘い香り、これを嗅げば嗅ぐほど股間が熱くなり、濡れて行き、そして男を欲し始める。  
「……シャロンさん?」  
 ビクッ!!  
 声を掛けられ体が緊張する。  
 顔を上げるとそこに立っていたのはミランダとラスクの二人だった。  
「み、ミランダ先生……ラスク君……」  
「どうしたのこんな所で……って……」  
 扉の方を見て納得するミランダ。ラスクの方は媚薬の存在を知らないのでまだ気づいていないようだ。  
「あれ吸っちゃったのね……なんで扉ぐらい閉めないのあの子は……」  
 顔に手を当ててあちゃーと言うポーズを取りつつ溜息をするミランダ。一方のシャロンは媚薬を嗅いで居て男であるラスクを見ている。ラスクもラスクでそんなシャロンを見てドギマギしているわけだが。  
「こんな状況を見られたらしょうがないわね……ラスク君、シャロンさんを連れて来なさい。早急に処置しちゃうわ。」  
「え……あ、はいっ!!」  
 シャロンの自慰に見とれていたラスクはミランダの言葉に我に返り、返事をする。  
 ミランダは扉を閉め、キーを使って宿直室までのゲートを開ける。  
 ラスクはシャロンの肩を担ぎ上げ、ゲートの中に連れて行き、ミランダはその後を追うように入ってからゲートを閉じた。  
 
 シャロンをミランダの寝室へ連れて行ったラスクはシャロンを横にする。  
「それで先生、どうやって処置をするんです?」  
「それなんだけど……ラスク君、シャロンさんが求めるままに抱かれてあげてもらえる?」  
「はっ!?」  
 ミランダがバツの悪そうに言うと、ラスクは驚く。  
「抱かれるって……なんでです!?」  
「え〜っとね……今リディア達はあの部屋で媚薬を使ってるのね、香りに効果のある私特性の。  
 それをあの扉の隙間からシャロンさんが嗅いで、今非常に興奮しちゃってるの。  
 それを鎮めるためにはセックスを思う存分やらせてあげる必要があるの。  
 そうなると適任は君だけ、良いわね?」  
 そう捲くし立て、ミランダはシャロンのおでこに軽く頭突きをする。  
「……って、先生は何をするんです!?」  
「私はこの子が本来やろうとしていた事をしてくるわ。  
 この子はどうやら、リディア寮のマラリヤと勉強をしようと来ていたようね。事前に約束していたならそろそろ行かないと怪しまれるしね……っと。」  
 そう言いながら、ミランダの体が光に包まれ、光が収まった所に居たのはシャロンだった。  
「質問される前に言うけど、これは光の反射を調節して変身しているだけだから。  
 それじゃちょっと行って来るね、それまでの間その子よろしく。あ、コンドーム忘れないでね、そこにおいてあるから。」  
 慌ててシャロンの持っていた勉強道具を持ち出しゲートを開くシャロン……いやいや、シャロンに変身したミランダ。  
 なんでコンドームなんて物がここにあるんだろうか?と言う疑問もそこそこに、それを見送った後、ラスクは目の前の、なおも喘ぎ声を発するシャロンの対処について悩んでいた。  
 仕方なくベッドに横になってシャロンに口付けをする。以前ミランダにやられたキスを思い出しつつ舌をシャロンの口内へ出し入れする。  
 シャロンもそれに応じるように舌を繰り出し、お互いを高めあっていく。  
 唇が離れると、二人の口の間にツツーっと唾液が糸を引く。  
 互いに荒い息をつきつつ、どちらからともなく互いの服を脱がし始める。  
 自然な流れでそのままいきり立ったモノを挿入しようとして、ラスクはハタと気づく。慌ててコンドームの使い方を調べ装着する。  
 コンドームを装着するや否や、シャロンはもう我慢できないとばかりに抱きつき、挿入しようとする。  
 ぶちっ!!という感触がラスクのモノから伝わったと思うと、シャロンの股間から血が垂れ始める。  
(あ、シャロンさんて処女だったのか……)  
 悪い事をしちゃったな、と思いつつ、ラスクはシャロンの乳首を吸い始める。身長差から、ラスクの頭は挿入時丁度シャロンの胸の所に当たるのだ。  
 シャロンは乳を吸われる快感で腔を思いっきり締め付け、更に腰を激しく動かしていく。自ら快楽におぼれるように。  
「あっ…ぁん…ラスク、君…私、もう……!!」  
「シャロンさん…僕もそろそろ…限界……!!」  
 以前のミランダ先生のパイズリとは比較にならない程の締め付けに、我を忘れて自らのモノをシャロンの中にぶつけるラスク。  
 互いが互いを高め合い、理性という歯止めを外していき、二人とも絶頂に達して、二人の意識は闇に沈んだ……  
 
「あらら、二人とも気絶しちゃったか……」  
 マライヤへのアリバイ(?)工作を終えたミランダが戻ってきた時には、二人とも絶頂に達して気絶していた。  
「ま、処女と経験の少ない男じゃしょうがないか。」  
 ラスクを揺らして起こしつつ、呟く。  
「んっ……あ、先生。」  
「おはよう、お疲れ様ね。とりあえずこれで体を拭いて、それと自分の服も直してて。」  
 ラスクにタオルを渡すと早口にそう伝え、ラスクは言うとおりにした。  
 一方シャロンの方もミランダの手によってやさしく体を拭かれ、着衣を正されていた。  
 無論のこと、ミランダはラスクを隣の部屋に追い出しているのでその辺はお構いなく作業を進めた。  
「これでよし……と、後は……」  
 シャロンのおでこに軽く頭突きをしながらそう呟く。  
 この頭突きであるが、ミランダが使う魔法の一種でシャロンの記憶を一部出したり入れたりしているのだ。最初の頭突きからこの頭突きまでの間の記憶が上書きされるのである。  
 おでこの痛みによってシャロンは目が覚めた。  
「んっ……あら?私は一体……?」  
 辺りをキョロキョロと見回すシャロン。ふとベッドを見ると赤い液体……シャロンの血がべったりと布団に付いていた。  
「ひっ……」  
「落ち着きなさい。」  
 ミランダがシャロンの視線を自分の視線に合わせつつ力強く言う。  
 するとシャロンは不思議と気持ちが落ち着き、ゆっくりと記憶を引き出していった。  
「いい?思い出した?」  
 無言でこくりとうなずくシャロン。  
「それじゃ、一応説明しておくわね。実は……」  
 
「な、な、な……」  
 ミランダの口から出た言葉は信じられない物ばかりだった。  
 リディアとカイルの事、ラスクの事、さっきまで自分が行ってきた事。  
 どれもこれも信じられない事ばかり、しかもその半分近くがミランダが仕向けた事であるからなおさら驚く。  
「……ということなの、わかったかしら?」  
「全然さっぱりですわ。」  
 きっぱりと言い放つ。まぁほとんどが信じられない……どころか突拍子のない話である。そう簡単に信じられない。  
 信じられないのであるが……自分の記憶を探ってみるとなぜか全て思い当たる節があるのである。  
 自分の知らない記憶になおパニクるシャロン。  
「とりあえず、今は信じられなくても良いわ、でも口外は決してしないで、約束よ。」  
 ミランダの何時になく真剣な眼差しで冗談でないと察したシャロンはこくりと頷く。  
「よろしい……と、そろそろ戻らないといけない時間よね。  
 ラスク君〜、そっちは終わった〜?」  
「あ、はい、終わりました。」  
「それじゃこっちいらっしゃい、寮まで送ってあげるから。」  
 
 ゲートで転送したのち、ミランダはリディアの部屋に入って扉を閉める。  
 ラスクはミランダに「レディのエスコート位はやりなさい。」と念を押された物の、廊下を歩く二人の間はしばらく気まずい空気が流れる。  
 ふと、ラスクが口を開く。  
「あの……さ、ミランダ先生が何て言ったかは知らないけど、先生は本当にリディア先生のためにあんなに頑張ってるんだよ。  
 リディア先生って気さくな人だけど、結構恥ずかしがりやだからさ、カイル君との仲がばれて噂が立とう物ならこの学校から出て行ってしまうんじゃないかと思うんだ。  
 僕にはリディア先生に去って欲しくないし、ましてやカイル君だけの力じゃそれを阻止する事なんてまず無理なんだよね。  
 その事を知っているから、ミランダ先生や僕もこうやって隠蔽工作をしているんだけど……本当にごめんね。」  
「……今謝られても、私が惨めなだけですわ。」  
 ラスクの言葉を切って返すシャロン。  
「私も、他人の事をとやかく言うほど落ちぶれては居ませんがあえて言わせていただきます。私は貴方に陵辱されました。私の不注意とは言えそれは事実です。」  
「それに関しては……とにかく、リディア先生の不注意でもあった訳だけど……」  
「それでも私を陵辱したのは貴方でしょう?  
 そうね……知ってしまったからには協力しますが、一つ条件を出させてもらえますわ。」  
「条件?」  
「そう、私の純潔を奪ったんですもの、それなりの代償は支払うべきでしょう?」  
「あ〜……確かにそうなるよね……  
 それで、その代償って何?」  
 
「……と……い…」  
「……え?」  
「私と……付き合いなさい!!」  
 恥ずかしさの余り少し大声になるシャロン。最初の方の小声で聞き取り難かったラスクはびっくりして尻餅をつく。  
「……え、そんな事で良いの?」  
「……私の純潔を奪ったんですもの、これで貴方に見捨てられては、私は……」  
 その言葉をさえぎったのはラスクの唇であった。もっとも身長差の関係でやったのは手の甲であったが。  
「………………………………」  
 シャロンは恥ずかしさの余り顔を真っ赤にして煙が噴出す始末。  
「本当にこんな事に巻き込んでごめんね。これからもよろしく、シャロンさん。」  
「……これからは私を呼ぶ時は『さん』はいりませんわ。  
 だって、私達は恋仲でしょう?」  
「あはは、確かにそうなると変だね。  
 それじゃ改めて……シャロン、そろそろ部屋に戻ろう、送るからさ。」  
「えぇラスク、エスコートお願いするわ。」  
 二人でくすくすと笑いあい、フランシス寮へと向かって歩き出した。  
 
 一方その頃……  
 リディアの部屋ではミランダにこっぴどく怒られているリディアの姿があったとかなかったとか……  
 
 ……続く?  
 

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