ばたーん、と授業中に大きな音がした。  
クラスメイト11人がそちらを向くと、サンダースが椅子から落ちていた。  
 
・・OK。  
 
で、あまりにサンダースの顔色が悪いから(顔が悪いとは言っちゃダメ)、彼の部屋までレオンとタイガが運んだ。  
 
・・OK。  
 
「で、何で私が面倒みなくちゃいけないのよ・・」  
 
アメリアがぽつりと呟いた言葉は、誰の耳にも入らず虚空に消える。  
こういう面倒を見るのは同僚のリディアや、彼のクラスメイトのクララが最適じゃあないのか。  
アメリアはそう思ったが、自分も面倒見がいいのだと思われているということで相殺しておいた。  
 
問題は相手だ。  
無愛想で冷血なサンダースの面倒を見たってロクなものじゃあない。  
・・ならばどうするか。  
答えは一つだ。  
 
 
「ね、ミランダ。お願い、サンダース君の看病変わって?」  
「構わないけど・・」  
「ホント?ありがと!」  
 
アメリアの狙いはズバリミランダだった。  
元来お人好しのミランダのこと、頼めば断られることの方が少ないと踏んでいたのだが、まさに計画通り彼女は変わってくれた。  
仕方ないわねと苦笑しながら、ミランダは氷を数十個カゴに入れ、サンダースの部屋へと出向いた。  
 
サンダースの部屋へと来たミランダは、とりあえず落ち着いているであろうサンダースの顔を覗き込んだ。確かに強面ではあるが、精悍さと逞しさではアカデミー生の中でもトップだ。  
しかも倒れるほど熱が出るまで勉強に励むなど真面目だし、スポーツもこなせるし。  
 
 
「よくよく考えたら万能よねー・・・」  
 
キッチンで時折料理していたり色々万能な彼の弱点に、人付き合いが苦手というのがあがるだろう。  
あとは高慢さぐらいか。  
 
 
「あ、汗拭いてあげないと・・・・」  
 
制服は脱がせてあったらしく、彼の着ているものはシャツ一枚で、それでもサンダースに近付くと雄の匂いがしてミランダはドキっとする。  
 
(年下相手に何ときめいてるのよ・・・)  
 
やっぱり苦笑しながら、氷水に浸けていたタオルを絞るミランダ。  
サンダースの額、首、顔の汗を拭き終ったあと、体も拭こうとして・・・汗で濡れたシャツに気付く。  
 
(すごい寝汗・・・それにこの臭い・・・)  
 
サンダースの体から発せられる汗の臭いと雄の臭いが、ミランダの鼻をつく。  
その強い雄の臭いは、ミランダの雌の本能にも強く強く影響して・・・。  
 
(体がうずいちゃう・・・欲情してるの・・・?)  
 
ミランダはその美貌から、いいよる男が後を絶たなかった。  
しかし体目当てというのが見え見えなことが大多数だったため、付き合うつもりは欠片もなく。  
結局恋人の一人も出来ずに学生生活を終え、アカデミーの教師になった。  
 
溜った性欲はオナニーで発散し、処女膜は箒に乗る特訓の時に破れてしまい。  
美貌故に、男を知らずに今まで生きてきたのだ。  
その彼女が、強い雄の臭いを・・・雄を眼前にして。  
 
 
本能が、叫び声をあげた。  
 
「ん・・・はぅ・・も・・・濡れちゃってる・・」  
 
部屋の鍵をかけ窓もカーテンも閉めきった密室で、ミランダは自分の股間に手をさしこむ。  
人指し指の指先をワレメに触れさせると、既にそこはびしょびしょに濡れており、全く抵抗なく指を受け入れる。  
 
「私ぃ・・生徒をみてオナニーしてる・・・変態・・変態よぉぅ・・・」  
 
口からつむがれる淫語が、否が応でも彼女のココロを、体を高ぶらせる。  
涎が垂れる。  
息が乱れる。  
密室に、サンダースの穏やかな寝息とミランダのあえぎ声、ワレメから漏れる愛液をかき回す音が響く。  
 
暫くオナニーに浸ったミランダだが、流石に指程度では満足出来ない。  
家にいれば道具なり野菜なりを使うことも出来るが、サンダースの私物を使うことは出来ない。  
 
「・・・そうだ♪」  
 
ミランダはイタズラな笑顔を浮かべ、サンダースを見る。  
彼は熟睡している。  
しかし睡眠状態でも生理現象は起こる。  
 
「いただいちゃおぅっと・・・・♪」  
 
サンダースから布団を剥ぎ取り、ズボンとトランクスをずりおろす。  
 
「ふわぁ、こんなのなのね・・」  
 
黒くもなければ白すぎもしない、サンダースのペニスを前に、ミランダは感嘆の声をあげる。  
顔を近付けると、先程までとは比べものにならない臭いが鼻にささる。  
 
「・・これを舐めてあげると大きくなるのよね」  
 
本で得た知識を精一杯引き出しながら、ミランダはそうっとソレをくわえた。  
 
最初は恐る恐るくわえたミランダだが、サンダースのペニスの先走りを舌で味わい、苦味としょっぱさと体をさらに熱くする媚薬のような感覚を得て、喉元までペニスを頬張った。  
声は出せない。  
ただミランダの唾液がサンダースのペニスを濡らし、ミランダが彼のペニスから先程の液体を絞りとろうと吸い、舌で舐めるだけだ。  
 
自身の体の変調を察知したサンダースは、未だに熱で朧気な意識をフル回転させ、虚ろな目で前を見てみる。  
いくらかして、自分の股ぐらに金髪の美女がいるということを知覚したサンダースは。  
 
(美・・し・・女神・・なのか・・・・)  
 
彼女がミランダとは気付かず、再び意識を闇に落とした。  
 
さて、サンダースが僅ながら意識を取り戻したとは知らないミランダは、立派に天高く勃起したペニスを見て、恋する少女のような顔をしていた。  
自分に快楽を与えてくれる、自分を満足させてくれる、自分の初めてを奪うペニス。  
 
「それじゃ・・頂きまーすっ♪」  
 
サンダースのペニスを軽く握り、自分のワレメに導き入れるミランダ。  
ふとワレメに異物感を感じて、一気に腰を落とすと。  
 
「・・・・っ?!はぁぁぁぁっ!?お腹・・!?」  
 
サンダースの剛直が一気にミランダの体を貫く。  
子宮にまで届くような錯覚がミランダを襲う。  
息が出来ない。  
快楽が間断なく彼女を攻め立てる。  
 
処女膜が破れていたことは、ミランダにとっては良かったかも知れない。  
破れていなければ、快楽どころか激痛で悲鳴をあげていた所だ。  
指でのオナニーが下らないと思える程の快楽にトンでいたミランダの意識は、すぐに回復した。  
そうしてミランダは、よりいっそうの快楽を得ろという本能に従うままに、腰を上下しはじめる。  
 
「は・・すごぉ・・いやらし・・音ぅ・・私・・・変態ぃ・・・変態女教師なのぉ・・・・」  
 
完全に快楽に陶酔しているミランダは、普段の理性的な姿が嘘のように悶え、乱れ、狂い、呟く。  
サンダースは意識を深い闇にやっていたが、それでも締め付けるミランダのワレメに、剛直全体を擦り、吸い付かれるような錯覚を感じ、顔をしかめる。  
 
─終りは、突然だった。  
 
「もっとぉ・・もっと奥ぅ・・突いて・・私を滅茶苦茶にして・・コワして欲しいのぉ・・・!」  
 
ミランダが相変わらずの痴女っぷりで腰を振っていると、彼女の膣内でサンダースのペニスがビクンと震える。  
 
「は・・何・・・?」  
 
ミランダは予測していないペニスの動きに、一度腰を止める。  
しかし・・・・。  
 
ビクンビクンとサンダースの剛直が脈をうち、ミランダの膣内に灼熱の白濁をぶちまける。  
 
「な・・・熱・・たくさん出てるぅ・・!?」  
 
ミランダが欲しがったあの液体が、加速度的に彼女の腹部を満たし、焼き付けるような錯覚を持たせる。  
 
「はぁ・・イク・・熱いの一杯出されてイッちゃう・・イッちゃうのぉ!!」  
 
ミランダが叫んだ後、彼女はふっと意識を失いサンダースの上に被さるようにして倒れた。  
 
辛うじてサンダースより先に意識を取り戻したミランダは、服装を整えるとサンダースの萎えたペニスから残っていた精液を吸い取り、タオルで剛直を拭き、トランクスとズボンをはかせる。  
布団の、彼女の愛液で濡れている箇所はわざと水を溢すことでカバー。  
高ぶりを押さえ付けるように深呼吸を数度して、カーテンや窓を開けて空気を入れ換え。  
改めて、氷は溶けてしまったがタオルを念入りに洗い、サンダースの汗を拭いてやる。  
水が温くなっている―気がした―から、一度汗を拭いた後、水を入れ換えて氷も入れてやろう・・・と、サンダースの部屋から出る。  
戻った時には、幸か不幸かサンダースの意識は戻っていた。  
 
「あら、サンダース君・・・やっと起きたのね」  
「ミランダ殿・・・?何故私はここに・・・」  
「授業中に倒れたのよ」  
「・・そうでしたか」  
 
ほっと安堵の息をつくサンダース。  
ミランダもそれは同じだ。  
「・・ミランダ殿が、看病を?」  
「・・・そうよ」  
「ありがとうございます・・・・」  
 
布団のなかで頭を下げるサンダース。  
きっと彼は真面目過ぎて駄目なのだろうな、とミランダはふと思う。  
で。  
 
「・・アナタ、夕べも遅くまで勉強してたでしょ」  
「・・はい」  
「そんなのだから・・」  
 
倒れるの、と言いかけて、ミランダはそれを飲み込んだ。  
代わりに、彼を手に入れようと頭が回る。  
彼は性格の難さえ直せば、絶倫だし万能だし、彼女の理想にも匹敵するだろう。  
 
「仕方ないわねぇ・・・・」  
 
ミランダの呆れたような声に、苦笑いを浮かべるサンダース。  
まだ熱が下がりきってないのか、頬が赤い。  
苦笑する顔も重い。  
だが、そんな彼を意に介せずミランダは続ける。  
 
「これからは、私がアナタの面倒を見てあげるわ」  
「―――――は?」  
「だってアナタ、放っておいたら死ぬ手前まで頑張ってそうだもの。教師としても女としても放っておけないわよ」  
 
だから、これから私はアナタの恋人ね。  
そう言ったミランダは、不意打ち気味にサンダースにキスをして、ひまわりのような笑顔を咲かせた。  
 
 
サンダースは、ミランダの論法に頭が追い付かないでいた。  
ミランダが恋人?  
どうして──あぁ、自分は無理をしすぎるからか。  
これは熱が見せる幻覚か──それにしてはキスの感触はリアルだった。  
 
じゃあお粥を作ってくるから、とミランダが部屋を出ていった直後、サンダースは妙な疲労感に襲われて意識を闇に落とした。  
 
 
 
───数日後。  
 
熱も引き、一応授業にも復帰したサンダース。  
食事もとらずに勉強をしたりしていた彼が、毎食きちんと食べるようになり。  
時々やつれたりしたり、笑うようになり。  
 
そして、彼の部屋にはミランダが住み着いた。  
恋人同士が一緒にいるのは当然だとばかりに、彼の世話をかいがいしく焼き、布団のなかで繋がったり。  
 
 
それが、マジックアカデミー七不思議の一つに数えられるようにさえなった、サンダースの風邪事件の転末である。  
 

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