「おいしー♪」  
「口に合ったか」  
 
それは良かった、と微笑むサンダースに、ルキアは全力の笑顔を見せた。  
サンダース謹製のチャーハンを一口食べるごとにルキアは満ち足りていく。  
二人きりの食卓を何度も妄想していた分喜びもひとしおだ。  
日曜日の昼は、まだまだ長い。  
きっといいことあるはずだ、とあてのない確信を抱いたルキアのテンションは、メーターを振りきってあがる一方だ。  
 
「そういえばルキア嬢、あんな小さなパジャマでいいのか?」  
「へへ、欲情しちゃった?」  
「・・・私も男だ。君を襲わないとは限らんのだぞ」  
まるで親が子に言うようなことを苦笑しながら説くサンダース。  
だがルキアは、少しも躊躇わずに反論した。  
 
「ん〜、むしろ襲ってほしいんだけどな?」  
 
ルキアがいやらしい笑顔を浮かべる。  
サンダースは嫌な予感がして、でもルキアの笑みの深さに見いられてか、動けない。  
 
「じょ、冗談でもそんなことは言わないで・・」  
「冗談なんかじゃないよ?」  
 
サンダースの反論を封殺。ルキアは、サンダースにぐっと顔を近付けて囁いた。  
 
「私、サンダースのことが好きだもん」  
 
 
ふわぁっとルキアの香りが風に乗せられ、サンダースの鼻孔を擽る。  
甘いようで、酸っぱいようで、何とも言えず胸に残る一陣の香り。  
サンダースはルキアをベッドに寝かせて、尋ねる。  
 
「本当にいいのだな?」  
「うん。ちょっと怖いけど、サンダースになら滅茶苦茶にされてもいいから」  
 
目尻に薄く涙を浮かべ、ルキアは気丈に答えた。  
だが身はこわばり、顔のそこかしこに脅えの色が濃く出ている。  
ありていに言って、ルキアは今サンダースを恐れているのだ。  
サンダースとてそんな彼女を抱きたくはなかった。  
 
「やめよう」  
 
サンダースはそう言うと、ルキアから手を離す。  
ルキアの表情に、安堵と落胆が混じる。  
 
「ど・・どうして?」  
「そんなに怖がっている君を今力ずくで抱いたとしても、残るのは悲しみだけだ・・それは嫌だろう」  
 
サンダースが表情を崩す。普段の彼からは考えられない穏やかな表情に、ルキアはやっと緊張を解いた。  
 
「まだ始まったばかりなんだ。急ぐ必要もない」  
「・・・うん」  
「まだ時間はたっぷりある・・・・ゆっくり積み重ねて行こうじゃないか」  
 
優しく優しくルキアの頭を撫でるサンダース。  
その優しさが心に大きく響いた気がして、ルキアはサンダースの胸の中で思いきり泣きじゃくった。  
 
 
さて、数十分後。  
ルキアは泣き疲れたのか、穏やかな寝息をたてはじめ。  
サンダースはルキアに布団をかけてやると、優しく愛でるように髪を撫であげてやる。  
彼女の告白(誘惑?)を受けたのは、本心が七割と興味が三割だったが。  
強がって、誘惑して、でも恐怖に負けて泣き出すルキアの姿は、紛れもなくサンダースの心になにかを与えていて。  
 
ありふれた感情だけど、彼女を守りたいと願いだしていた。  
 
 
 
 
サンダースとルキアが、まぁ色々やってる一方で、シャロンは。  
 
「どの参考書を使おうかと思ってるのに・・」  
 
参考書選びの意見を聞きにクラスメイト達の部屋を回ったが、ろくな意見を聞けなかった。  
しかもレオンに至ってはゲームの攻略本を奨める始末だ。  
全く人を馬鹿にしている。こうなると頼れるのはサンダースだ。  
部屋にいなかったルキアも一緒にいるのだろうし。  
そうと決まれば行動あるのみと、シャロンは早速サンダースの部屋を襲撃した。  
 
コンコン、と軽くノックすると、部屋から返事。  
とりあえずいることを確認したシャロンは、室内に押し入った。  
 
「シャロン嬢か。どうしたのだ?」  
「参考書を買いたいのですが、皆さんあまり良い意見がないみたいなので」  
「ふむ。まぁいいさ、私のモノでよければやろう」  
 
では魔法学辞典をお願いしますわ、とシャロンが言うと、サンダースは椅子から腰をあげ、机の本棚から一冊の本を取り出す。  
日焼けや折れ曲がりが多いが、それはそれだけ彼がこれを使ったと言うことだろう。  
 
「本当にこんなものをいただいてよろしいんですの?」  
「構わんさ。君には必要なのだろう?」  
「サンダースぅ・・?」  
 
サンダースがシャロンに魔法学辞典を渡した直後。  
ベッドから顔を起こし、肩口が胸元までだれさがったバジャマを着たままのルキアが声をあげた。  
さんざっぱら泣いたせいだろう、眼が兎のように赤い。  
 
「休みだからといってだらしなくはありませんこと?」  
 
シャロンがルキアに注意する。  
確かに間もなく時計が正午をさすというのにだらけているんじゃないか、とサンダースも思ったが。  
 
 
「何でシャロンがここにいるのー?」  
 
寝惚け眼を擦り擦り、ルキアはシャロンをじっと見ている。  
さらさらの金髪にすらっとしたスレンダーな肢体は、ルキアにないものだ。  
もしもサンダースが金髪でスレンダーな女の子の方が好きだと言えば、ルキアの惨敗は明らか。  
そこまで考えたルキアは、一気にテンションが下がり再び涙目になる。  
 
「・・やだ・・やだぁ・・・シャロンじゃなくって・・・・私を見てよぉ・・・・」  
「・・・物凄い勘違いをしてますわね」  
「全くだ。私はシャロン嬢に魔法学辞典をやっただけだというのに」  
「・・・ふぇ?」  
 

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