虫も獣も、無論人間も寝静まるほどの深夜。
サンダースとマラリヤは、並んで風呂場に続く廊下を歩いていた。
「いい月・・・。今晩はいいお風呂になりそうね・・・」
「あぁ、そうだな。月見風呂か・・風流だな」
「二人きり、静かで良いわね・・・」
マラリヤの頬は心なしか紅く染まり、サンダースの隣から全く離れない。
一時は薬を使ってでも一緒にいようとしたマラリヤだが、時がたつにつれ想いを強くして、薬に頼らずに自分の力で一緒にいられるように考えて。
気付けば、恋人になっていた。
言うほど容易いことではなかった。
サンダースと仲良くなるのに一苦労、サンダースに頼られるようになるまでまた苦労。
変わり者と言われるサンダースは、しかしながら存外純情で。
初めてのエッチの時はリンゴもかくやと言うほど顔を赤くしていた。
最初は、満月の夜に寮の屋根の上で偶然会っただけで。
何度か会って、たまに話すようになって。
サンダースが人々を守るために賢者を目指すと聞いて、心が揺れた。
普段のサンダースからは見られない、優しくて、暖かい目。
その目に惹かれて、いつしか一緒にいる時間が増えていって。
気付いたら恋人同士になっていて。
「いい湯ね・・」
「本来は混浴など良いはずない、と言うのだが。私も甘くなったな」
「あら、私と一緒なのが気に入らないのかしら」
「・・・最低限のルール、だな」
「あなたはいつも自分に厳しいのね・・・」
「自分に厳しくあるべき立場だからな、軍人というものは」
そうやりとりするのも何回目だろうか。
呆れたようなマラリヤを横目に、腰にタオルを巻いたサンダースは体を洗うべく湯船から出る。