補習授業で残る僕らにとって、この関係は自然な成り行きだったのかもしれない―。
「あなた、名前は?」
「ユウです、トゥエットさん…ですよね?」
「トゥエット、だけで良いわ。」
僕らはいつも放課後の居残り授業を受けてた、僕は早く賢者になってお姉ちゃんを助けてあげたいから。
トゥエットさんは何だか家庭の事情?みたいな感じでずっと休んでたから、みんなに追いつかないといけないみたい。
最初は近寄りがたい人、って思ってたけどそうでもないってわかったんだ。
よくわからないけど、きっと自分の生まれだとか家柄だとかを気にしてて変なプライドがある、だからいっつも片意地張ってる。
でもそういう人はみんな孤独で、自分をわかってもらえなくて辛い思いをしてる、きっと彼女には良い所がいっぱい隠れてるよって。
お姉ちゃんがそう言ってた、女の人同士通じ合うものがあるのかな?
確かにそうだったよ、トゥエットさんは人間らしくて、優しくて、補習の時もいっつも僕を気にかけてくれる。
お昼休みの時も「こんなに食べ切れませんわ」なんて言って、いっぱい僕にご飯を分けてくれたりしてくれるし、
試験で落第しちゃった時も励ましてくれて…お姉ちゃんの言う事がわかった気がするんだ。
だから、僕はだんだんトゥエットさんに惹かれてったんだと思う。
決めたんだ、僕トゥエットさんに自分の気持ちを伝えよう!って。
お姉ちゃんビックリしてたけど、私はいつでもユウ君の味方だから応援してるよって、言ってくれたんだ。
だから僕は勇気を振り絞って、ありったけの力を込めてトゥエットさんに気持ちを伝えたよ。
そしたらトゥエットさん、驚いたみたいでしどろもどろになっちゃって…そりゃそうだよね、突然だったもん。
僕もマテウスって言われちゃうのかな…って思ったら少し切なくなったよ。
トゥエットさん、顔真っ赤にしちゃってた。
うーん…意外と僕、こういうところで平常心を保てちゃうんだよね、その時の事はっきり覚えてるもん。
「わ、私でよろしければ・・・よくってよ・・・。」
だって。
普段、あんなに強気なトゥエットさんだけどこういう事に弱いのかなーってちょっとおかしくなっちゃった。
それから僕たち、二人で慣れない手つきで手を繋ぎながら帰ったんだ。
何も話せなかったけど、すっごい心地良い時間だった事を覚えてるよ。
あれから一ヶ月経って、春休み。
みんな寮生活から一転して実家に帰るんだけど、トゥエットさんの家に問題発生!
トゥエットさんの家を建てた建築家さんがウソをついてたみたいで、すごい危険な状態みたい。
だから家を建て直さないといけないみたいで、家に帰れなくなっちゃったんだ。
だから、トゥエットさんが僕の家に下宿する事になったんだ―。
下宿先は僕の家。
とても人なんて呼べる状態じゃないんだけど・・・しょうがないよね。
お姉ちゃんの使ってた研究道具とか資料が家中のあちこちに転がってて、一見すると化学者の家!
さっすがお姉ちゃん!えっへん!
…うーん、それはそうとトゥエットさんの部屋はどうしよう?
いくらしばらくいないって言ってもお父さんとお母さんの部屋を使わせるわけにはいかないし、(この事は内緒だし・・・)
僕の部屋はベッドが一つしかないし・・・う、べ、ベッドなんて何を考えてるんだよぅ僕。
え、お姉ちゃんの部屋を?使って良いの?でも〜…。
あ、呼び鈴が鳴ってる、あれ?まだ早くない?あれ、はーい!!
「私をこんなに歩かせるなんて失礼にも程がありますわ」
ドアを開けると、そこにはトゥエットさん。えっと、まだ一時間くらい早いんですけど…。
「しっ、仕方ないじゃない、あなたの家がこんなに辺鄙な所にあるからあらかじめ早く出てきたのよ。」
僕らが恋人同士になってだいぶ慣れてきたのか“トゥエット節”が出てきたなぁ、ってちょっと嬉しくなっちゃう。
やっぱりトゥエットさんはこうじゃなくっちゃ。
えっと、とりあえずお上がり下さいませませ。
「失礼しますわよ」
と、靴を丁寧に揃えると静かな物腰でスリッパに履き替えるトゥエットさん。
うーん、やっぱり靴も服装もそうなんだけど、姿勢とかを見ても、さすがお嬢様なんだなー、って思っちゃう。
何かこう洗練されてる言うか、気品漂ってるって言うか…。
「あ、あんまり見つめないで下さるかしら?」
ジロジロ見てたら、注意されちゃったけど何かカワイイよトゥエットさん。
あ、えっとねトゥエットさんはこの部屋を使って良いですよ、ここはお姉ちゃんの部屋…
あ・・・言っちゃった、そうだトゥエットさんはお姉ちゃんの事知らないんだった…。
「お姉さんがいらっしゃるの?初めて聞きますわね」
あ、えっと、うーん、今はいないんだけど、いや、いるんだけど…えっと、そのー。
お姉ちゃんがクスクス笑ってるのがわかるんだけど…わ、笑わないでよぅ…。
と、とにかく!トゥエットさんの部屋はココ!
「・・・? お言葉に甘えさせていただくわ。」
そうして夜になり夕飯を買い置きの材料ですませた僕らは、少しだけ一緒に勉強をして眠ることにした。
考えてみたら、僕らが初めて一緒に過ごす夜だと言う事、学校以外でこんなに一緒にいるのも初めてかもしれない。
学校でクラスメートとして一緒にいた時間は長かったけど、恋人同士として過ごす時間は…初めてなのかもしれない。
あーもう・・・勉強に身が入らないよ・・・。
ねえ、トゥエットさん。
「はい?」
大好きだよ、愛してるよ。
大好きだよ、愛してるよ。
言いたくても言えなかった言葉が、今やっと言えたんだ。
「わ、私も・・・好き・・・ですわ」
トゥエットさんはうつむきながらも囁くように、でも確かにはっきりとその言葉を言ってくれた。
トゥエットさん・・・今日は一緒に寝てもいいよね?
(お姉ちゃん・・・許してくれるかな?)
「・・・」
トゥエットさんは顔を真っ赤にしながらコクリと静かに頷いた。
お姉ちゃんの声は聞こえなかったけどでも肩をそっと叩いてくれた。
(ありがとう・・・お姉ちゃん。)
僕は念入りに体の垢を落とすと、これから使うだろう大事な部分に健闘を祈った、頑張れ僕Jr!
今はトゥエットさんの部屋になってるお姉ちゃんの部屋のドアを静かに開けると、ベッドの上にトゥエットさんがちょこんと座っていた。
僕はその横にそっと座って、一回ため息をついた。
(どうすればいいんだろう…。)
その様子を悟ったのか、トゥエットさんもモジモジしてる、そりゃそうだよね…。
あ、そうだ僕、トゥエットさんに話さなきゃいけない事があるんだ、誰にも話してない秘密の話。
みんなには黙ってたけど、トゥエットさんには話せるよ、お姉ちゃんの事、そして僕のこと。
「・・・そうでしたの、そんな事が。」
一通り僕の話を聞いてくれたトゥエットさんは神妙な面持ちでそう言った。
一転、笑顔になって
「あなたを見てると何故か心が落ち着いた、辛いことがあってもあなたを見てると誰かに応援されてる気がしてた。」
「…それは、ユウ君のお姉さんが私を応援してくれてたのかもしれませんわね。」
「ありがとう、サツキさん・・・それから、これからもよろしくお願いしますわ。」
お姉ちゃんが後ろで微笑んでる気がした、声は聞こえないけど僕にはわかるんだ。
きっと、お姉ちゃんは僕らを応援してくれてるんだ。
不思議とそんな話をしたら気分が落ち着いてきた。
僕は静かにトゥエットさんとの距離を狭めて唇を合わせた―。
この瞬間(とき)が終わる事なく続けばいいのに―
そう思いながら―。
交わした唇を離してはくちづけ、離してはくちづけ…。
次第に僕のテンションも上がってきて沸騰したヤカンみたいになってきてた。
トゥエットさんの口の中に自分の舌を這わせて、また同じようにトゥエットさんもそうした。
お互いの気持ちを接吻で表現した後、僕はそっとトゥエットさんを横に倒した。
「・・・」
言葉こそないけどトゥエットさんは確実に動揺してた、もちろん僕も。
そういう表情を今まで見たことがなかったから。だから余計によくわかった。
そうすると静かに僕はトゥエットさんのパジャマのボタンを一つ一つ外していく。
誰に教わったわけでもない本能的な動きだった、人間ってスゴい。
そんなどうでも良いことでいちいち感心してしまう内にトゥエットさんを下着だけの姿にさせた。
何かとんでもない事をしてるんじゃないのかな!って、テンションが妙に上がってる僕。
対してトゥエットさんはどことなく冷静な気がした。
「あ…あんまり見ないで下さるかしら・・・」
ささやかなトゥエットさん的要求に耳を傾ける間もなく、僕は行動でそれを否定した。
下着の上から、胸に耳を押し当ててトゥエットさんの鼓動を感じる、
片腕でヘソや腰のあたりを手のひらで掻き回しながら僕はもう片腕で自分の衣服を剥ぎ取った。
お互いに隠すものはほとんどない状態で体温を感じあった、そしてもう一度接吻を交わすとトゥエットさんの下着のホックに手をかけた。
「や・・・ぁ」
声にならない声というか何と言うかトゥエットさんの声に耳を傾ける事無く僕はホックを外した。
下着の圧力に押しつぶされていた胸が露になると、トゥエットさんは恥ずかしそうに顔を横に向けてしまう。
ふっくらと盛り上がった胸の隆起の中に薄い茶色の乳房、僕を興奮させる材料がそこにあった。
「小さくて…ごめんなさい」
自らを責めるような口調のトゥエットさん、胸の大きさなんて関係ないよっ。
僕はトゥエットさんの体に馬乗りになると、自分の指に唾液の水分を含ませ乳房を弄んだ。
「や、ひやあ・・・」
聞いた事のない声だった、徐々にトゥエットさんの本性が露になっていくようで、それを楽しむ僕がいた。
指だけでなく自らの口で舌で、その隆起を攻め始めると声にならない声で首を左右に振り回すトゥエットさん。
左手と口で両方の胸を攻略している間に、右腕はへそをなぞり、下腹部をなぞり、女性器の上へと到達した。
下着ごしでも分かる、「濡れ」ている状態だった、僕は少しの満足感を得ながら下着の中に手を潜入させた。
「や、やああああ」
うっすらと毛の生えている部分をかきわけ、女性器の割れ目の部分に到達した。
右手は秘部を左手は左胸を、口で右胸を、これぞ3ヶ所同時攻め!
そんなどうでも良いことを考えながらトゥエットさんのイヤイヤしている様子を楽しむ僕。
トゥエットさんの息が荒いできている、自分が彼女を満足させられているんだ。
そう思うと無駄に力んでしまい、乳房をくわえる歯が立ってしまう。
そして右腕をいよいよ内部へと侵入させようとしていた。
右手をそっと割れ目に侵入させると、トゥエットさんは身をよじらせた。
「あぁぁ・・・」
・・・不思議な感触だった、この世で感じたことのない不思議な感触に僕は指を出し入れするのに夢中だった。
その度にトゥエットさんは大声で喘ぎ、身をよじらせている。
「ダメダメダメダメだめっ・・・やああ」
汗が二人の体を蝕み始めると、そこにはなんとも言えない卑猥な香りが立ち込めていた。
指を動かせば動かすほど、中から愛液が溢れ出してくる。
1本、2本と指を挿入させる多さを変えつつ、楽しむ僕に形勢逆転の時が訪れた。
「ユウ君ばかりズルいですわ・・・はぁ・・・はぁ・・・私も・・・ユウ君を気持ちよくさせ・・・」
う、うわっ、ちょっと待ってよぅ、僕まだ心の準備がっ・・・ああ・・・。
今まで寝ていた体をゆっくり起こすと、すかさず僕は寝かされる。
トランクスを脱がされると、僕の恥部が明らかになった。
まだ未発達の体にあって大事なモノを守るかのように覆いかぶさった皮、それに包まれる僕の大事なトコ。
「ここをこうすればいいのかしら?」
ひゃっ、や、やだ、くすぐったいかも・・・
トゥエットさんの温かい手が僕の恥部を包み込むとその隆起した僕の恥部を揺らしてみたり、弾いてみたりして僕を刺激した。
トゥエットさんに握られている僕のアソコ・・・そう考えるだけで爆発しそうになる、でも今は耐えるしかないんだ。
「知ってますわよ、こうすれば良い事を・・・。」
トゥエットさんは僕の恥部をくわえると舌で刺激し始めた。
うぁ、トゥエットさん汚いから・・・ダメ・・・ダメだよぉ・・・ひゃあああ。
くすぐったさと気持ちのよさが同居するその快楽にすっかり僕は溺れていた。
な、何でそんな事知ってるの・・・?
「そ、そへは、ひみつれふわ・・・」
しかし、僕の我慢ももう限界に達しようとしていた。
このままではトゥエットさんの口の中に発射してしまうことになってしまう。
トゥエットさん、もうダメだよぅ!トゥエットさん!!
僕はあわててトゥエットさんの口から恥部を抜き取り、尽きてしまった。
体液はトゥエットさんの顔や体を汚してしまった。
いざ事が終わり、平静を取り戻すのにそう時間はかからなかった。
ご、ごめん、トゥエットさん・・・でもすごい・・・上手でした・・・
それを言った途端顔を真っ赤にして、布団で体を隠してしまった。
「私も・・・気持ちよかったですわ・・・」
それだけ言うと裸のままそっぽを向いてしまった。
きっと恥ずかしかったんだろうなぁ・・・。
こうして二人の「初体験」は幕を閉じた。
でも、まだこの恋物語は始まりを告げたに過ぎない―。
どれくらい寝たんだろう…ふと、眼を覚ますと隣には静かに寝息をたてて寝ているユウの姿があった。
そうだ…私は今ユウ君の家にいる+そのユウ君が隣で寝ている+何も着てない私=Hしたんだ私…。
寝起きからその事を理解するのにそう時間はかからず、トゥエットは顔を赤らめてしまった。
…そうね、まずは昨夜の汚れを洗い流さなきゃ、シャワーを浴びよう。
そう考え付くとトゥエットは横で寝ているユウを起こさないようにと、そっとベッドから降りる。
しわくちゃになってしまったパジャマを着るとユウのかわいらしい寝顔にトゥエットは手をそっと差し伸べ髪を撫でた。
「シャワーをお借りしますわよ」
そうささやいた途端、風が通るような気配を感じた。
そこにはサツキの姿があった―
トゥエットは驚いた、驚きのあまりに声が出なかった。
今まで見えていなかったサツキの姿を今自分で確認してしまっている現実にそれはもうビックリしていたのだ。
ユウと体を交わしたから?サツキが自分を認めてくれたから?それともまた別の何かか?
少し混乱するトゥエットを見てサツキも「自分が見えている」様子を理解したようで、少し微笑んだ。
サツキは今までそういう眼で自分を見てきた人間を何人も見てるだけに“慣れ”ているのだ。
自分を落ち着かせようとトゥエットは軽く咳払いをし、
「お…お風呂をお借りしますわ…。」
と、言ってみた。
するとサツキもサツキで
「ご一緒してもいい?」
と言う。
会話が成立してしまった―。
つまり私は「見える人」になってしまったんだ。
そこでまた少し混乱するトゥエットを見て、またサツキは少し微笑んだ。
バスルームに向かうトゥエットとサツキ。
色々考え事をしているうちにバスルームに到着し、トゥエットはさっき着たばかりのパジャマを再び脱ぎ始めた。
恥ずかしそうに脱衣するトゥエットを見るサツキは一足先に脱衣所から風呂場へと向かっていった。
「…不公平じゃなくって…?」
制服姿で風呂場へ入って行くサツキに対して思わずポツリとつぶやいてしまった。
風呂場へ入るとトゥエットは蛇口をひねり、シャワーを浴び始めた。
何か落ち着かない様子で足早にシャワーを浴び、湯船につかるトゥエット。
サツキが風呂場を物色しながらトゥエットに話しかけた。
「ここに来るの、何年ぶりかな?女の子と一緒にお風呂に入るのもずいぶん久しぶりな気がします。」
楽しそうにあちらこちらへとフワフワ移動するサツキを見てトゥエットもサツキに話しかけた。
「…制服は、脱げないのですか?」
何も別にそんな事を聞く必要もなかったのかもしれない、ただ気になっていたのだ。
サツキはうーん、と少し考えた後「どうなんでしょう?」とあやふやな答えを返した。
窓から差し込む朝の光が心地良い。
遅れること、数分。
ユウも目を覚ましたが、いつもと違う部屋の様子を見て姉の部屋で寝ていた事に気付いた。
昨夜の事を思い出してしまい、股間のあたりがムクムクと膨らんでしまう自分に焦ったユウはベッドから飛び起きた。
(いけない、いけない、朝からダメだよ…僕って人は!)
普段なら学校にいる時間だけど昨日から春休みなんだ!
時計を確認した後、ユウは朝食の準備にと台所へと向かった。
途中、水の流れる音を聞きトゥエットがシャワーを浴びているんだろうなと考えたユウは次に姉を捜し始めた。
「せっかくトゥエットさんがいるんだし、今日の朝ごはんはお姉ちゃんに教わろうと思ったんだけどなぁ。」
―その頃サツキ
「いいお湯ねぇ〜」
「おわかりになるの?お湯の熱さが?」
「…どうなんでしょう?」
「…」
「面白い方ですわね、サツキさんは」
トゥエットはだいぶサツキとは打ち解けた様子で談笑していた。
サツキもまた同様にトゥエットとはだいぶ打ち解けた様子。
「ねえトゥエットさん?」
サツキはトゥエットの顔をジッと見つめて呼びかけた。
「ユウ君の事、どう思います?」
そんな事を唐突に聞かれたトゥエットは思わずサツキから目を逸らしてしまった。
もちろん昨夜の事も知ってるだろうし、目の前にいるサツキの弟と体を交わしてしまった事は気まずかったから。
「…も、もちろん好きですわ。」
うつむきながら恥ずかしそうに答えるトゥエットにサツキは安心したような笑みを浮かべた。
「あなたなら大丈夫そう、うん。」
嬉しそうに話すサツキに自分が認められたような感じがしてトゥエットも安心した。
「あの子はね―」
さっきまで笑みを浮かべていたサツキは少し寂しそうな顔をして話し始めた。
それはユウの事、自分の事、過去に学園で起こった出来事―。
「お姉ちゃんにプレゼントがあるんだ!」
「あら、ユウ君が私にプレゼント?何かなぁ?」
「それは秘密だよ〜、でも、きっと驚くよ!放課後までのお楽しみ!」
「ふふ、楽しみにしてるわ」
「おや、サツキ君、弟君と一緒じゃないのかね、てっきり一緒にいるものかと…。」
「あら、ガルーダ先生…弟がどうかしましたか?」
「うむ、さっき化学実験室のカギを借りていったんだよ。君と一緒なら安心だと思ったんだがねぇ。」
「化学実験室……」
途端、爆発音が学園に響いた―
「…何だ、何があった!?」
「…化学実験室!」
サツキは走り出した、嫌な感じがする―
やはりそうだった、爆発は化学実験室からのもの―
化学実験室の前は煙が立ち込めている、爆発の衝撃からか扉やガラスが散乱している。
「ユウ君!」
自らの危険を顧みず化学実験室へと飛び込むサツキ、生徒や教師達の叫び声は聞こえるはずもなかった。
「…ユウ君、どこにいるの…?ユウ君!!」
あたりの煙が落ち着きを取り戻してきた頃、倒れているユウの姿がぼんやりとサツキの目に入った。
「お姉ちゃん…?」
「ユウ君、どうしたの!?大丈夫!?」
「大丈夫だよ…お姉ちゃん、でもごめんね…失敗しちゃったかも…。」
ユウの手に握られていたノートには「青いバラを作る方法」が何ページにも渡って書き込まれていた。
かつて自分がユウに話した事を思い出した。
「お姉ちゃん、賢者になったんだって?おめでとう!」
「ありがとう、ユウ君、でも私の研究はまだ終わってないんだよ。」
「研究?何の研究してるの?」
「ふふ、ユウ君、私青いバラを作ってみようと思ってるんだ。」
「青い…バラ?」
「今の技術じゃ、青いバラって咲かないんだよ。でも、それを私が咲かせてみたいの」
青いバラ―…
私の為にユウ君は―…
「何だか苦しいよ…お姉ちゃん…痛くて…僕死んじゃうのかな?」
「だめ!だめだよ!ユウ君!」
「…おねえちゃ…」
息絶えるユウにサツキは迷う間も悲しむ間もなく禁術を行った。
自らの命と引き換えに死者を蘇生する禁術、それは大切な人を想うサツキの決意だった。
「ユウ君は生きて―、私はずっとそばにいるから―」
「―って事があって、今私はこんな姿になってるのです、って昨日聞いたかな?」
最後にちょっとおどけてみせるサツキ、トゥエットは胸が震えた。
「そこまでは聞きませんでしたわ…サツキさん、何て言ったらいいのかわかりませんけど…」
今度はトゥエットがサツキの顔を見つめて言った
「ユウ君の事、もっと好きになってしまいましたわ。だからサツキさん…これからもよろしくお願い致します」
サツキはにっこり微笑んでトゥエットを抱きしめた。
「…うーん、トゥエットさん。もっと好きになっちゃってって事は…まさか今夜も…?」
ちょっと意地悪そうに聞くサツキにトゥエットは困惑の表情を浮かべてしまった。
「ずるいなー?ずるいなー?トゥエットさん、ずるいなー?」
「あ、愛し合う男女であれば、当然の行いですわ!」
「あら〜、トゥエットさん、そんな大胆な娘だったんですね?うらやましぃ〜。」
「ちょ、ちょっとサツキさん!」
サツキはふわふわと風呂場を後にする
「あ、お姉ちゃん!どこ行ってたのー?」
「トゥエットさんの一緒にお風呂に入ってたの、ユウ君、今夜も頑張ってね〜。」
「え…え…!?ええ!?」
わざと聞こえるような大きな声でユウにアドバイスを送るサツキ。
どことない気まずさと気恥ずかしさを感じてしばらく風呂場から出られないトゥエットでした―。