朝だ。アタシは目を覚ます。
時間は…7時を指している。いつもより早い。
昨夜(ゆうべ)の快楽の余韻で体がだるい。
隣から、アイツの小憎らしいくらいの安らかな寝息が聞こえる。
「…ふぇ? もぉ朝か…」
今日はみんなと下界のテーマパーク(ってゆーか遊園地)に行く約束だ。休みのうちにみんなで行くと決めていた。
「うーん…」
と、アイツを起こさないように静かに伸びをして、アイツの匂いがまだこもるベッドに正直未練を残しながらも、シャワーを浴びようと全裸のままベッドを抜け出し…
「きゃ!?」
いきなり後ろから大きい手がアタシを羽交い締める。
「…おーす、ユリぃ、どこ行くんや〜?」
「こら〜! ちょっと、朝からおっぱい触るな〜!」
アタシは胸に巻きついた手をほどいて、枕を手に振り返りざまに、アイツの頭にたたきつける。
「うわっぷ!い、痛いがな…起き抜けやねんから、優しくしてぇな…」
珍妙な訛りでボヤきながら、アイツも体をのろのろと起こす。
「うるさーい!アンタ、朝起きるなりそれはありえないでしょ!」
アタシは呆れてため息が出る。ほんと、スケベなんだから。
「とにかく、今日はみんなと一緒に出かけるんだから、さっさと起きて、着替えてよ」
「冷たいのぉ…」
「とにかく、シャワー浴びてくるからね」
アタシはバスルームへ向かう。
寮の部屋の備え付けにしては十分広いバスルームに入る。
ノズルを捻ると、勢いよく温水が噴き出す。軽く疲れの残る肌に心地よい。
汗を流し落とすと、バスチェアに座り、髪を洗う。
「む〜、枝毛増えてきたかなぁ?」
なんてことを鏡にむかってつぶやいていると。
「一緒にシャワー浴びようや〜」
いきなりバスルームの扉が開き、アイツが入ってくる。
「タ、タイガ!? な、何やってんの!」
さすがに驚いてアタシは声を荒げる。
「えぇやん、俺かて汗流したいし…」
「アタシが出るまで待ちなさいよ!」
「カタい事言わんと…な?」
アタシの抗議を無視して、アイツはアタシの肩に優しげに手を置く。そして、濡れた髪を梳きよせ、耳に吐息をぶつけてアタシのうなじにキスをする。
「あ、ありえない…よぉ」
抗議を続けるが、うなじを攻められるのには弱い。アイツもそれを知っている。…ズルい。
「な、えぇやろ…?」
キスを続けながら、こんなことを囁く。
…いや、アタシだって、ぶっちゃけエッチは好きだよ。てか、よく飽きもせずやってるよなぁ〜、ってくらい。それくらいタイガと相性いいのも事実だし。でもねえ…
「…んっ、遅れちゃうよぉ…」
「大丈夫やって。な?」
ふと、視線を落とす。…タイガのアレ、もう臨戦態勢。やっぱ、そっち目的か。
「しょうがないなあ。じゃ、ちゃっちゃとシャワー浴びちゃお」
期待しながらも、あえて無視。タイガに少し熱くした温水をぶつける。
「うわ、あちあちあちっ!」
タイガが悲鳴をあげる。またたく間にずぶ濡れになりのたうつ様子にアタシは笑う。
そーだ、とふと閃く。
「ほらほら、タイガ、そこのマットに横になってよ」
タイガが言われるまま、ごろりと仰向けに寝転がる。黄色の瞳に不思議そうな表情が浮かんでいる。
「ちっがーう!うつぶせ、うつぶせ」
「何やねんな…勃ってるから寝にくいんやけど…」
「知らないよ!体、洗ったげるんだから、文句言わない」
アタシは海綿にボディソープを泡立て、シャワーで濡れたタイガの首から背中、腰へとこする。
大柄で引き締まったタイガの体が瞬く間に泡まみれになる。
「気分えぇのぉ…ユリ、おおきに」
お礼を言われる。素直すぎて、なんか照れくさい。
「…よっし、じゃあ、もっと丁寧に洗ったげるわ」
「? どないするんや?」
アタシも体にボディソープをこすりつけ、泡を纏った。で、かなり恥ずかしいんだけど、覚悟決めて、
「…こうするのよ」
言って、タイガの体の上に乗り、アタシの体を直接こすりつける。
「ぅうわっ!? な、何や、この感触?」
「どぉ?」
タイガの広い背中を、アタシの体が滑る。上から下へ、下から上へ。
そしてアタシは、おっぱいを使って、さらに動きを細やかにする。二の腕を挟んでこすってみたり、背骨をトレースしてみたり…
そして、下半身も使ってスムースに梳く。
タイガはといえば、力の抜けたような吐息をつくばかり。
へっへーん、だ。
…実は、アタシもかなり敏感になってしまってたりするんだけど。
「な、なあ、前も…洗て(あろて)くれへん…か?」
うつぶせのまま、器用にアタシの下腹部に手を伸ばしながら言ってくる。
「ちょーしに乗らない!」
アタシはくるりと反転して避け、タイガの右足を持ち上げ引き寄せた。いわゆる格闘技の『片エビ固め』状態。
「あだぁっ!」
「どうだ、参ったか!?」
「違う(ちゃう)って! ケツに乗られたら…いて、つ、潰れる!」
…しまった。もう勃ってたんだよね。そこに体重かけたら…
「ごめんごめん…はい、おしまいっ」
アタシは体から離れた。シャワーを捻り、泡を洗いながす。タイガは顔をしかめながら、
「…どこでそんなん覚えたんや?」
だって。
いや、思いついただけなんだけど。
うん、気持ちよさそうだから、やってみたかっただけ。本当に。
「ある意味才能やな…おおきにな」
才能? …そうなのかな? 好きだから勝手に反応しただけなんだけど。
アタシの手からシャワーを取ると、アタシの体のボディソープを流してくれた。
シャワーを止めると、
「…ほな、お礼返しや」
抱きすくめられ、マットに押し倒される。
「ち、ちょっとぉ…ぅむ」
アタシの抗議は、唇の中に押し込められた。
舌が入り込み、絡み付いてくる。
「…ん、はぁん…」
我ながら、ヘンな声をあげている。しかも、バスルームだから響くこと、響くこと。
「…もう感じてるんか?そんな声出して」
言ってタイガの唇が、首筋を経て、アタシの胸に辿り着く。
さっきの洗いっこのせいか、すっごく敏感になっているみたい。触られてもいない乳首がもう尖っている。
「そ、そんなこと…は、はぁうっ!」
乳首を強く吸われて、アタシは鋭くはしたない声をあげてしまう。
タイガの手がアタシのおっぱいを揉みしだき、重点的に乳首を吸い、捏ねて、摘まみ、噛む。
「あっ、あっ、あぁん…や、やだぁ…あん!」
何かもう、普段以上に敏感に、快感が押し寄せてきて、アタシは悶えるだけ。
「もう、こんなになってしもて…」
「だって、あん、気持ち…いいんだもん…うぅっ…もっと、お願い…!」
…さっきまで『ありえない』とか拒んどいて何だけど、我ながら呆れる程、欲情してしまっている。
「エッチな事言うんやなぁ」
「ア、アンタがそんなに攻めるからだ…よぉっ」
「…かわいいわぁ、ユリ。ほな、二人してもっとエッチになろうや」
言って、タイガの体がアタシの下半身へとシフトする。
アタシの両脚を押し開かれる。先ほどからの快感で力が入らない。もっとも拒む気もないけど。
「…すごいな、もうこんなに濡れてるやんか…」
…確かに。自覚できるくらい、普段以上に濡れている。
「言わないでよ、もう…って、やぁあん!?」
いきなりアタシのアソコに口づけられ、はしたない声をあげてしまう。
「もっとかわいい声、聞かせてや」
そして、タイガの唇と舌が激しく甘く、アタシのソコで暴れ回る。ひたすら快感を送り込むために。
「…んっ、やだ、タイガ、ダメぇ…」
そんな事を言いながらも、アタシの腰はとめどない快感に跳ね、より深く求めるかのようにタイガに体を押し付けてしまう。
「そんなん言うとるけど、体は正直やん…エッチやなあ」
当然、タイガはアタシを攻め続ける。タイガの舌が、アタシの奥に挿し込まれた。
「あんっ!」
一際高い声がバスルームに響く。
「や、やだ! き、気持ち…よすぎるよぉっ…! あん、あん、あぁんっ!」
アタシは悶えるだけ。…やっぱり好きなんだろうね、タイガも、タイガとのエッチも、両方。
だから、
「タイガ…好きだよぉ…あん…」
なんてコトを無意識に口走っている。
「…俺も、ごっつ好きやで…かわいくて、こないにエッチなユリが…」
タイガが応え、愛撫の標的を変える。既に尖っているアタシのクリに。
強く吸い付かれ、あまりの快感に腰が浮く。
「あふんっ!あっ、あっ、あ…も、もう…ダメだ…よぉ…」
執拗にクリを責められて、アタシは息絶え絶え。本当にそろそろ限界がきている。
「ね、ねぇ、もう…イカせて?」
喘ぎながら、甘いおねだり。
「…気分ようイってや」
口を離し、タイガが言う。そして、キスをアタシの臍あたりに落とし、胸の谷間から首筋まで上に遡る。
「んぅ…早くぅ…」
焦れて、アタシは催促する。…はしたないけど、この快楽の前には現金だ。
「…ほな」
と、タイガが唇を強く吸ってから、再び首筋を攻める。左手がアタシの右の乳首を捏ねまわし、右手は下半身に伸びる。
そして、親指で押し潰すようにクリを捏ねながら、中指を侵入させ、内襞の敏感な部分を擦る。
敏感な箇所を同時に刺激され、半ば暴力的なまでの快感が一挙にアタシを襲う。
臨界点を一瞬で突き抜け、頭の中が白く弾けた。
「ダ、ダメ! イ、イっちゃうっ! あん、あああああっ…!」
バスルームに、アタシの絶頂を告げる嬌声がこだました。
息が整わない。視界もぼんやりしてる。快感に蝕まれ、手足の動きがひどくスローモーだ。
「…気持ち良かった?」
「…わかるでしょ…腹立つなぁ…」
判りきった問いを投げるタイガに毒づいてみる。…けど、ここまで激しくイッたのは初めて。
のろのろと体を起こす。アタシの顔にタイガの笑顔が近づき、キスされる。
「じゃ、そろそろ…」
と再び押し倒される…が、アタシは押し止める。
「ま、待ってよ」
「? ええやろ? 俺、もう我慢できへんねんけど…」
不平を漏らすタイガに、
「違うの…横になって。 アタシが…動いたげるから…」
言って、逆にアタシがタイガを仰向けに押し倒した。
先刻(さっき)から大きく膨れあがったタイガのアレが、高く天を衝いている。
アタシは両手でさすりながら、躊躇う事なく先端にキスをしてあげた。
「うっ!」
感じるのか、体をビクッと震わせタイガが呻く。
少しジラしてやろっと。
アタシは一息に咥えこんだ。そして、舌をアレの円周に沿うように這わせる。
正直、大きすぎて口の中で持て余す(だって初めてするし)が、仰向けのタイガは気持ちいいのか上半身がのたうっている。
「あ、アカンて! 気持ち…よすぎや!」
なんかこう、喘いでいる顔って、結構かわいいな、と思った。
しばらく執拗に亀頭とサオのくびれに舌を集中させていると、さらに硬く反り返り、脈動が激しくなるのがわかった。
(もう、いいよね…)
アタシは口を離した。
「いきなりかいな…もうイッてまいそうやったでぇ…」
「ヤだった?」
「いや、気持ちよかったんやけど…なぁ、もぉ挿れたいんやけど…」
アタシは頷いて、タイガの腰に跨る。アレを優しく掴み、下半身にあてがう。
先ほどの愛撫の余韻が続くアタシのアソコは十分濡れていて、アレを迎え入れる期待に疼く。
「じゃ、行くね…」
狙いを定めて、アタシは腰を沈めた。
粘った水音を立てて、タイガのアレを飲み込む。十分濡れているのに、張り裂けそう。
「うぐっ、熱っ…!」
「あうんっ!」
おさまったのを確認するかのように腰を前後に少し揺すった後、貪るように上下に動き出す。
タイガもアタシの腰を両手で抱え、突き上げるように動く。
「うぉっ、し、締まる…!」
「あん、だって、気持ちいい…から…あああっ!」
二人して声をあげて一心不乱に動く。アタシもあまりの快感に目を開けていられない。
ただ、タイガのアレを、アタシの奥の襞全てで感じるだけ。
ふ、とタイガの動きが止まる。
タイガは息を弾ませながら、上体を起こす。
「…攻守交替や」
言いながら、つながったままゆっくりアタシを押し倒す。
正面を向き合っていたのは一瞬だった。片脚を持ち上げられ、体が反転する。
「ぁん、タ、タイガ?」
アタシの中でネジを回されるような動きに、妙な刺激を覚えながら、アタシはマットに四つん這いにされる。
「…いくで」
タイガは背後からアタシの腰をがっちり掴む。そして、大きく腰を打ちつけ始める。
「ぁああああっ…! お、奥にっ…! 奥に当たってるよぉっ…!」
アタシは獣のような姿勢で、初めての快感をぶつけられ、高い声をあげる。
「うぐっ、ユ、ユリ、…めっちゃ気持ちえぇわ…」
タイガも言いながら、大きなストロークでアタシの中を往復する。
「あっ、あん、あんっ! …も、もっと、激しく…シてぇっ!」
強烈な快感に、半ばうわごとのようにアタシは叫ぶ。自然と高くお尻を突き出す。
壊れそう。
でも、もっと激しく、もっと深く、もっと高みに。
アタシはこの快感と、タイガへの愛情を心と体でもっともっと悟りたい。
「くっ…!」
タイガも呻きながら、激しくピッチを早める。
アタシの奥底の敏感な箇所を激しく擦る動きに、アタシは眩暈を感じた。
「ユ…ユリ…っ! 好きや、大好きやっ…!」
「アタシもっ…あんっ…大好きっ…!」
「も、もう限界や…! い、いく…でっ!」
「ア、アタシもっ…! イッ…ちゃうっ! 来てぇっ! お願いっ!」
タイガが一際大きく突き入れた瞬間、一番激しい快感が貫く。アタシの襞はその快感を逃さないかのように、淫らに締め上げた。
頭の中が再び白に染まる。
「あああああ…んっ…!」
「ユリぃっ…!」
アタシの中で、タイガのアレが弾ける。吐き出された精液がしたたかにアタシの奥を撃つ。…感覚がリアルなのに遠く感じた。
アタシは崩れ落ち、意識がホワイト・アウトした。
甘い感覚を頬に感じ、アタシは目が覚める。
「あ、あれぇ…?」
「気ィついた?」
そ、そうか。アタシは激しくイッてしまって、そのまま…少しオチてたのか。
目の焦点がまだ合っていないけど、タイガの顔が間近にある。何か気恥ずかしそうな表情。
「朝から結局ヤッてしもて…すまん…」
「ホントだよ、いまさらさぁ」
呆れた風におどけ、アタシはタイガの顔を小突いてから、軽くキスをして体を起こす。
「あーもう、疲れたし、お腹ペッコペコだし…」
「せやけど、あんな大きな声出してたやん…」
「えーい、うるさーいっ!」
今度は頭を平手で強く叩く。
けど。
ホント、快感で壊れそうな体験は初めてだった。
そして、その快感を余す所なく貪ろうとしているアタシのホンネの部分に気づいた。
そして、タイガとだから…ここまでできる。いや、もっと深く…
これって、タイガの言う「才能」の表れ?
「悪ぃ、けど…ホンマ…あそこまでして貰て(もろて)…おおきにな。大好きや」
抱きしめられてキスを受ける。…そして、ふと、現実に返る。
「あっ!そういえば、時間!」
どう見積もっても、優に1時間は経っている。待ち合わせは9時…
「やべっ!」
慌ててバスルームから飛び出し、着替えを済ませる。
タイガも制服を着て、アタシの部屋の窓から、箒にまたがり寮の自室まで一目散に飛んで帰る。
必死に髪をドライヤーでセットしながらアタシは…笑みがこぼれた。
これからの、アイツとの愛の予感に。