コンコン。
「どちら様? ………あら、珍しいわね。 こんな時間に何の用かしら、レオン?」
ドアを開け、いつもの平板な口調に多分に毒を込めたマラリヤの姿に俺はドギマギする。
「わ、悪い、出直そうか?」
「…無粋なのは今更だからいいわよ…用件を、手短にお願い」
「すまねぇ」
俺はとりあえず謝る。
無理もないよな。 夜の10時過ぎ。 恋人でもない女の子の部屋を訪ねる時間とは言えねえし。
当然、マラリヤも就寝前ということで、薄手のガウンを羽織っている。 緩く合わせた隙間から艶っぽい胸の谷間が覗いて、俺は視線のやり場に困る。
本人は全く意にも介してないけど。
それはさておき、訪れたのにはワケがあって。
「…まずは、これやるよ」
俺は持ってきた籠をマラリヤに渡す。
「…へえ、珍しいキノコじゃない」
マラリヤの紫の瞳が興味深そうに、少し大きく見開かれている。
「確か、実験に使いたいって言ってたよな? たまたま実家から送られてきてさ、俺じゃ持て余すし、と思って…」
「ありがたく受け取るわ………なんて言うと思う? 代わりに何かお願いがあるんでしょう?」
やっぱ、お見通しか。
「ああ。 ひとつ、頼まれて欲しいことがあるんだよ」
「中身によるわ」
俺は軽く咳払いすると、
「実は………ある薬が欲しいんだけどさ」
「どんな?」
「ほら、アレだよ、飲むと気持ちよくなるさあ…」
直接言いにくくて、表現が回りくどくなってしまう。
「…媚薬?」
マラリヤがそのものズバリの名称を口にする。 俺は頷く。
「あなた達、そんなの必要なの?」
俺の反応にマラリヤは軽く呆れる。
「…入りなさい。 少し話を聞かせて…レオン」
マラリヤに促され、俺は彼女の部屋に入る。
入り口すぐのダイニングの椅子に座り、俺は出された茶を飲みながら、一通り話す。
「…ってわけでさ。 男の勝手、と言われるのは承知の上なんだけどさ…」
「…まったく。 なんで男ってそうなのかしら? 普段のルキアじゃ満足いかないってわけ?」
「違うって。 不満じゃなくってさ、願望だよ。 たまには恋人が乱れる図、ってのも見てみたいわけさ」
「本当に勝手ね…ちなみに訊くけど、この事、ルキアは知っているの?」
そう問われて、俺は一瞬返事に詰まる。 知らず頬をポリポリ掻きながら、
「…あ、ああ」
と返す。
「嘘おっしゃい。 あなた単純だからすぐわかるわよ。 でも…」
俺の出まかせをアッサリと見破りながら、溜息と共に一包みの薬包紙を取り出す。
「…これなら、あなたが満足する結果が出るはずよ」
「効き目とかは?」
「飲んで10分もあれば効果が現れるわ。 人によるけど大体2時間効果は継続するの」
「反応は?」
「覿面よ。 人によるけど概ねマゾっぽくなるかしら…でも、レオン…」
「何だよ?」
マラリヤは少し緩んだ俺の顔を凝視して、
「ルキアには、ちゃんと媚薬を飲ませる事を必ず伝えて。 私が調合した薬で、親友が騙し討ちで雌扱いされるのは許せないから…」
「わ、わかってるさ。 別にムチャさせるとかそんな事考えてるわけじゃねぇよ」
俺は咳払いしながら弁明する。
「遅い時間に済まなかったな、じゃあな、お邪魔さま」
俺はそう言って、差し出された薬包紙を受け取り、軽く礼を言うと、そそくさとマラリヤの部屋を後にした。
「…やれやれ。 闖客乱入、ってとこね…」
マラリヤがボソリと呟く。 そして、ゆっくりと寝室へ向かう。 『彼』の待つ寝室へ。
コンコン。
さっきより遠慮がちな音だが、またドアのノック音が聞こえる。
「………何なの、今日は…」
踵を返し、不機嫌そうにドアを開ける。
「どなた………あら……」
ノックの主に、マラリヤの瞳が大きく見開かれる。
「はい、レオン、ご飯用意できたよ♪」
「サンキュー」
あれから約2週間後の週末。
俺の部屋で久しぶりにルキアと二人で授業の復習を済ませて、『腹減った』の俺の言葉で晩メシを食うことになった。
「ごめんな、冷蔵庫の中ロクなものなかったろ」
「だろうと思ってたから、ちゃーんと材料とかも持ってきてたし、大丈夫」
俺の言い訳にルキアは屈託のない笑顔で返す。
「…うまいな」
「クス、ありがと、クララにいろいろ教えてもらってたんだ〜♪」
それでか、先週からやたらクララやマラリヤと一緒に家庭科教室にいたのは。
それで誘えなかったんだよな、と思いつつ、手料理を食べながらとりとめのない時間を過ごす。
「…ふー、ごちそうさま、腹一杯になっちまった」
「食べすぎだよ、レオン」
満腹して腹を撫でる俺をたしなめるように、でも、嬉しそうにルキアが言う。
ここからだな…と、俺はおもむろに、薬包紙を取り出す。
「なーに、そのお薬?」
ルキアが少し首をかしげて俺を見つめる。
「手料理がうまくて、ついつい食っちまったからな。 ちょっと腹ごなし用の薬だよ」
「そんなの飲むくらい食べなくたっていいのにー」
「残せるワケないだろ。 ルキアも飲むか?」
と、不自然にならないよう水を向けてみる。
ルキアはジト、と俺を睨む。
「いらないよーだ。 そんな事言って、ホントはエッチになる薬とかなんでしょ?」
「ん、んなわけねぇだろ、何言ってんだよ」
(バ、バレてんのか? …いや、単に言ってみただけだろ…)
内心俺は焦ったが、気を取り直し、指で頬をポリポリ掻きながら、
「お茶もらっていいか? この薬飲むから」
と話を進める。
新しいお茶を注いでもらい、俺は薬をサラサラと口に流し込み、お茶と一緒に飲み干す。
「…ふう……って、まだ疑ってんのか?」
「ううん、冗談に決まってるじゃない」
俺が飲み干してからも、しばらくじっと俺を見つめたままのルキアに訝しげに問いかけるが、あっさりしたものだ。
(俺の気のせいだな…)
「…レオン、私にもちょうだい。 ちょっと私も食べすぎちゃったみたい」
「人のこと言えねえなあ」
「フン、だ」
軽くすねて見せる彼女に俺は薬包紙を渡す。
「ありがと。 ねえレオン、歯磨いてきたら?」
「そうだな」
俺は席を立って、洗面所に向かう。
(…うまくいったかな…)
歯を磨きながら、俺は思う。
俺が飲んだのは、ダミーの薬。 中身はただの砂糖に男用の強精剤を混ぜたものだ。
薬を飲んで見せる伏線で、いつもより多目にメシを掻きこんだ甲斐もあったってもんかな。
これで、ルキアも警戒心を緩めて薬―そっちがマラリヤにもらった媚薬だ―を飲んでくれるかな。
淡い期待を抱いて戻ってみると、ルキアの前には広がったままの薬包紙がある。 中身は飲んでしまったようだ。 よし。
「私も、歯磨いてくるね」
軽やかな足取りで、洗面所に向かう。
(すまね、ルキア…)
でも、やっぱりちょっと気が引けて俺は内心で謝る。
…いや、別にアイツとのセックスに不満があるってわけじゃないんだ。
けど、俺が少しでも激しめの行為を要求すると、決まって困ったような表情で、やんわりと拒絶される。
無理強いさせるわけにもいかないから、そのまま普通に抱き締めあうんだけど、やっぱ、あるだろ。
好きな娘と、普段以上に気持ちいいことしてみたい、って気持ち。
野郎の身勝手だけど、いろいろ気持ちいいことして、アイツが快感で悦ぶ姿ってのも見たいんだ。
ルキアが戻ってきた。 …ん?
「………なんか、暑くない? ヘンだなあ…」
そういうルキアの顔が赤い。 少し汗ばんでもいる。
効いてきたかな、とそう思い、俺は席を立つ。
「冷房弱いか? ちょっと下げてみるよ」
「うん、お願い…」
エアコンのスイッチを操作して、俺はルキアに目を向ける。
少ししんどそうに椅子に腰掛けて、冷たいお茶を飲んでいる。 顔ばかりでなく、服から覗く汗ばんだ肌もピンク色に染まってきている。
(ホント、覿面だな)
俺はマラリヤの薬の確かさに内心舌を巻く。 彼女との約束を反故にはしてるけど、それは俺たちの問題だ。
「本当に暑そうだな。 大丈夫か?」
俺はルキアの席の後ろに立ち、額に手を当てる。
「熱とかはないみたいだな」
「うん……でもなんか、ヘン、体の奥が熱いの…」
吐息混じりのセリフが少し色っぽく聞こえて俺はドキリとする。
「おかしいな?」
俺はとぼけながら、額に当てた手を滑らせて、ルキアの耳とうなじを優しく撫でるように動かす。
「ぁん!」
ルキアの声が甘く裏返る。 かなり激しく体を震わせている。 間違いなく効いてる。
「……わかった。 カゼとか熱じゃないな。 これは…」
「何よぉ…」
切なげに問いかけるルキアに俺は一気に密着する。 そして、耳に息を吹きかけながら、普段より強めに右手で胸を揉む。
「ふやああぁぁぁん!」
また甘い悲鳴を挙げてルキアが震える。 体の力が一気に抜けていくのを俺は肌越しに感じる。
「…エッチしたくなっちゃったんだろ?」
「や、やだ! 違うもん…んんっ…!」
ルキアの抗議を俺は最後まで聞かずに、巻きつけた左手で彼女の顎を持ち上げて唇を塞ぎ、間髪入れずに舌を挿しこむ。
ルキアは軽く抵抗したけど、すぐに力を失くして、俺の舌をおずおずとつつくように動かし始める。
俺は、舌を普段より激しく動かしながら、空いた右手で乳房を強く揉みしだく。
「…はあぁぁ……ん…」
刺激に耐え切れなくなったのか、ルキアの唇が離れ、体が椅子からずり落ちる。
「…ほら、そんなになっちゃってるじゃん。 …俺もしたいから、さ」
言って、ルキアを引きずり上げるように立たせ、お姫様抱っこの要領で抱え上げる。
「やん…」
「…一緒に気持ちよくなろ」
そう言って、俺の寝室まで運ぶ。 ルキアは暴れて抵抗するわけでもなく素直に抱かれている。
ゆっくりと体を下ろして、ベッドに座らせる。 そして、何も言わずに上着を脱がせる。
「もぉ…レオンったらぁ…」
ルキアがむずがるように身をよじる。 そんな仕種も普段以上にエッチに見える。
「ほら、変な風に動くなよ。 服、破けちゃうぜ」
俺は構わず、上着を抜き取り、ブラも外してしまう。 外した拍子でルキアの大きな乳房がふるん、と揺れる。
「ほら、こっちも」
とスカートに手を伸ばす。
「や、やだよぉ……」
まだ抗議の言葉が出てくるが、そのセリフは弱々しい。
俺は、ルキアの後ろに回りこんで、両方の乳房を抱え込むように強く揉む。
「あああんっ!」
「………ほら、こんなに気持ちよさそうじゃん。 いいだろ…」
「で、でもぉ…」
「…したいんでしょ?」
俺は揉む手を休めずに、少しポイントをずらす。 そして、乳首をつまむようにしてさらに強く揉みしだく。
「はうっ! ……んう…」
「ね?」
俺の手の中で、ルキアの乳房は張り詰めて、その大きさにしては小振りに見える乳首も硬く尖り始める。
「……あっ…うん…したいの……で、でも…んぅ…」
「どうしたの?」
ようやくルキアが快感を肯定するのを確認すると、俺は言葉の続きを待つ。
「………優しく…して欲しいの…あんまり強いと…あん…い、痛いから…」
甘い吐息で、切れ切れの言葉が紡がれる。
「…わかってるさ。 ヒドい事はしないさ」
そう言って、俺は乳房から手を離して、また向かい合うように体を動かし、ルキアの唇に軽くキスを落とす。
そして、俺は一瞬ルキアの下半身に目をやり、彼女に目配せする。 紅潮し、少し緩んだ表情で彼女が頷く。
俺の手がスルリとスカートをずり下ろす。 ルキアも軽く腰を持ち上げ、スムーズに脱ぐ恰好になる。
ベッドに、ルキアがパンツ一枚の姿で横たわっている。
少し焦点をなくしたように潤むエメラルドグリーンの瞳が、普段以上に俺を魅きつける。
横になっているにもかかわらず、巨乳と呼んでも差し支えない乳房はほとんど形が崩れずに張り詰めている。
「綺麗だよ、ルキア」
俺も服を手早く脱ぎ捨てて、素直に褒める。
「んんっ、そんなキレイじゃないから、あんまり見ないで…」
俺から目を反らし、うつぶせるように体を反転させて逃げる彼女を俺は軽く押さえつける。
「隠さないでくれよ。 綺麗じゃないなんて、そんなこと言うなよ」
ルキアの体をこちらに向き直させて、俺も横になり、体を密着させながら優しく抱きとめる。
「…んん…レオン、あったかい…」
「ルキアだって…あったかくて、柔らかいよ…」
俺は耳元で囁く。 彼女の体から余分な力が完全に抜ける。 薬のせいかもしれないけど。
柔らかい感触がすげぇ心地よくって、ずっとそうしていたかったけど、
(そういや、効き目って、2時間くらいだったよな…)
それを思い出し、俺はほんの少し(言い訳くさいな)欲望を優先させることにする。
抱き締めた腕をほどいて、ルキアを仰向けにする。 そして改めて、彼女の乳房を愛撫する。
俺の手の中で、十分すぎるボリュームの乳房が弾み、掴む指の間から肉がこぼれる。
「ああっ!」
高い声を挙げて、俺の下でルキアの体が跳ねるように震える。
「ルキアのおっぱい、綺麗で、気持ちいい」
思わず、今更すぎるくらい間抜けなセリフが口をつく。
「んぅ、む、無駄におっきいだけだから…」
「だからさ、そんな事言わないでくれって。 ほんとに綺麗なんだからさ」
正直、他の女生徒(特にシャロンやアロエ)に羨ましがられてる事に気付いてないのかな?
(ま、女の子にとっては、おっきけりゃいいってもんでもないんだろうけど)
「…俺は大好きだよ。 柔らかくってさ…」
そう言って、彼女の乳房の谷間に顔を埋める。
「あん、もう…」
ルキアの手が俺の頭に軽く添えられ、押し退けるような動きをとる。
でも、俺は構わずに顔を埋めたまま、尖った乳首に指を添えて、自分の顔を挟み込むように強く揉む。
「いやああぁぁん!」
ルキアが悲鳴のような声で喘ぐ。 その拍子に俺の頭から手も離れてしまった。
「…そんなにイヤイヤ言うなよ、ほら」
少し質感を伴った乳房の柔らかい感触を顔で受けながら、俺ももっとそれを堪能しようとさらに手を動かす。
「や、あ、あ、……んぅ……」
ルキアの吐息が切れ切れになってきた。
俺は、胸の谷間からようやく顔を上げると、次は右の乳首に吸い付いた。
「ああっ!」
俺の視線の端で、白い喉を反らして激しく反応しているのが見える。
俺は口の中で、硬く尖った乳首の感触と甘い味をひたすら求める。
同じ様に、左側の乳首も愛撫する。
「くっ、ああ…」
ルキアが途切れ途切れに声を漏らしながらも、俺の下で妖しく体をくねらせる。
俺は乳房から口を離して、蕩けて半開きの彼女の唇をまた深く貪る。
彼女の舌、上あごを強く撫でると、くぐもった音とともに、暖かい吐息が流れ込んできて、それがまた気持ちいい。
たっぷりキスに時間を掛けて、俺は空いた手でまた乳房を撫でるように愛撫する。
そうしてようやく俺は唇と手を離す。 ルキアの視線は焦点をなくして遠くを見ているみたいに見える。
「気持ちいい?」
「あ……うん…恥ずかしい…けど……」
俺の問いに、ためらい気味に肯く。
「そう言ってくれて、俺、嬉しい」
本音はチョット不満があるけど、ルキアに『気持ちいい』と言ってもらえたのが嬉しいのは本当だ。
「もっともっと、気持ちよくなってくれよ」
ニッコリ微笑みかけて、俺は彼女の下半身にチラリ、と目をやる。
「脱がせるね」
コクリ、と頷くのを確かめるより速く、俺はスルリと彼女のパンツを抜き取る。
軽く汗を吸い、そして想像以上に蜜を吸っていて、少し重みを感じる。
「すげ………」
俺は思わず嘆息する。
ルキアの秘部は、もはや濡れる、という言葉では片付かないほど愛液にまみれている。
薄く開いた膣口は鮮やかなピンク色に染まって、時折ヒクリと震えている。
素肌に張り付いている赤茶けた淡いヘアの陰から、赤く膨れたクリトリスが覗くのがわかる。
ひとりでに、新たな愛液が流れ出し、肌を伝ってシーツにこぼれる様子が見えた。
思わずしげしげと見つめていると、
「あん、そんなに見ないでぇ…」
ルキアがむずがるように身をよじり、太腿を閉じようとする。 俺はその太腿に手を掛けて止める。
「だーめ、見せて。 ルキアが感じてるとこ」
「…お願い、ホントに恥ずかしいもん…」
そういう表情は、今にも泣き出しそうな顔で、普段の元気でにこやかな顔とは無縁で。
でも、本当にイヤなのか、かなり硬い力を体に込めているのがわかったので、俺はやむなくルキアの上半身を起こして、背後に回りこむ。
「…ゴメンね、レオン…」
息を弾ませながら、済まなそうに謝られる。
「じゃ、続けるな」
俺は敢えてそう短い言葉で伝えて、抱き締めたまま、巻きつけていた右手を下半身に滑らせる。
そして濡れそぼった秘唇に中指を当て、優しくなぞるように愛撫を始める。
「んんっ…」
俺の腕の中でルキアが震える。 でも、気持ちいいのか、抵抗する風ではない。
むしろ、力を抜いて、俺に体を預けるようになっている。
俺は軽くリズミカルに彼女の秘唇をなぞり続ける。 時折大きく往復させ、クリトリスにも触れる。
その度に、ルキアは眉を顰めて、声を殺したような喘ぎを発している。
「…イヤなの?」
俺は指を離す。 指にまとわりついた愛液が垂れ落ちて、シーツに新しいしみを作る。
「…………」
ルキアが目をつぶり、ゆっくりかぶりを振る。
その反応に、俺は少しイジワルに、彼女の顎を軽く持ち上げ、
「ほら、目を開けなよ。 こんなに濡らしちゃって…もっともっとして欲しいんだろ?」
言いながら、愛液に濡れた指を見せ付ける。
「やん、イジワル…」
俺の言葉にルキアが目を開け、顔ごとまた目を反らそうとする。
「言って。 『もっとして欲しい』って。 恥ずかしがらずに」
何かに耐えるように沈黙するルキアに、俺は両手を使って乳房と太腿を刷毛でくすぐるように撫でる。
「……やん…」
「ルキアの事が好きだから、俺、エッチなルキアが見たいんだ。 でも、あまり嫌がられると、これ以上何もできないぜ…」
口を彼女の耳元ギリギリまで近づけて囁く。
「……メ、……て…!」
彼女の口が何事か動く。 俺は顔を離す。
ルキアが目に涙を溜めて、鋭くこちらを振り返る。 その表情は今まで見たことないくらいに淫らに歪んでいる。
「………もうダメ、お願い、イカせて! レオンにいっぱいイカされたいのぉっ!」
部屋に大きな声を響かせて、唐突に思えるほどの勢いでルキアがついに体の本音を吐き出す。
その雰囲気に半ば圧倒されたけど、俺はどこか満足感を得た。
「…ありがとな」
とは言うものの、他に適切な言葉がまるで浮かばず、俺はそう返し、一度ギュッとルキアを強く抱き締めると、右手の中指を膣内(なか)に挿れる。
くぐもった水音を立てて、指が潜り込む。 十分に濡れた膣内は熱いくらい襞が柔らかく絡んでくる。
「ああんっ! いいっ!」
今までとは違って、ルキアがストレートに快感を訴える。
その激しさに、俺はあおられて、一瞬でも早くルキアが絶頂に達する顔が見たくなった。
「ちょっと強くいくぜ」
「あん、お願い、もっと、してぇ!」
そのセリフに導かれるように、俺は愛撫を激しくする。
指を2本に増やし、膣の浅い部分―いわゆるGスポットって言うのかな―を強く擦り、空いた左手で尖った乳首を摘む。
彼女の秘部から、ひときわ大きく粘った水音が立つ。
媚薬と長めの愛撫で十分高まっていたらしいルキアは一気に昇りつめ、体がガクガクと震える。
「あん、あん、ああ、わ、私、もう」
絶頂の到来を感じて、俺は手を休めずにクリトリスへの愛撫を追加する。
「ゃん、ダメ、イ、イッちゃうううっ! ああああああっっ……!!」
顔を蕩かせ、体を跳ね上げるようにして、ルキアが絶頂に達する嬌声が狭い部屋に響く。
俺の手に暖かい飛沫が掛かるのを感じて指を膣内から抜くと、彼女の膣から透明な液体が噴き出し、シーツを染めるのが見えた。
俺の腕の中で、ルキアが半ばグッタリと絶頂の余韻に浸っている。 時折思い出したかのように体が痙攣している。
瞳は焦点をなくして、恍惚の表情を浮かべている。
「ふあぁ…あん…」
恍惚とした表情の彼女の口から、溜息とも喘ぎともつかない声が漏れ、俺はゾクリとする。
もう潮は止まっていたけど、秘唇からはまだ透明な液と少し白っぽい愛液がこぼれるのが見えた。
(すげえ…エロくて、かわいい…)
付き合って初めて見る激しい痴態。 勝手な言い分だけど、やっぱりかわいくって。
俺は抱き留める腕に少し力を入れる。
(…けど、ゴメンな…)
でも、それもこれも、マラリヤにもらった媚薬のアシストで。
今更だけど、俺は申し訳なくなった。 もっといろんな事してルキアをイカせてやろうと思ってたけど、そんなの頭から消えてて。
「かわいかったぜ、ありがと、ルキア」
それだけ言って、抱き締める腕にもっと力を込めて、顔を近づける。
「んっ………!?」
キスしようと思った矢先に、逆にルキアから唇を貪られて俺は目を白黒させる。
深く、深く、俺の吐息ごと吸い取るように吸い上げ、一旦唇を離される。
「ル、ルキア!?」
俺は驚いて声を掛けるが、彼女はスルリと俺の腕から離れ、俺と差し向かいになる。
そして、再び深いキスを仕掛ける。
舌と舌とを暖かく絡ませ、さっきより長い時間を掛けてキスを続ける。
ようやく唇が離れ、俺たちの唇の間に、唾液の細く光る橋ができる。
「レオン…欲しいの…」
妖しい表情でルキアがねだる。 手が俺のアレを不器用な手つきで柔らかくしごいてくる。
「うっ…!」
俺は思わず呻いてしまった。 愛撫することばかりに夢中になってて、自分も昂ぶっていたのをようやく思い出す。
俺が震えた拍子で、ルキアが俺を押し倒す。
「私が……上になるから…レオンも一緒に…気持ちよくなって…」
言いながら、俺を跨ぐ。
その好物を待ち焦がれたような雌の表情に、俺は思わず固唾をのみながら、
「大丈夫か? イッたばかりで…」
辛うじて、いたわりの言葉だけが口をつく。
ルキアは何も言わず、一旦俺の唇に軽くキスをすると、俺のアレを膣口にあてがい、一息に腰を沈めてきた。
「うおおっ!」
「ああん、熱いのぉ!」
互いに、思わず快楽を知らせる言葉がひとりでに出る。
正直、ルキアの膣内(なか)は普段以上に潤っていて、細かく震える襞の感触は、『気持ちいい』としか表現できない。
「レオンのが…堅くて…いっぱい…」
陶然とした表情で、ルキアが自分の中に入った俺の感触を確かめるように腰を揺する。
同時に、膣内の襞がそれぞれ独立したみたいに、俺を甘く噛むように締め付けてくる。
「うっ、そ、そんな…締められたら…」
ヤバい。 いきなり俺だけ先にイッてしまいそうだ。 思わず動きを止めるようにルキアの腰に手を掛ける。
「…いいの。 私の中で…イッていいの。 レオンの、いっぱいちょうだい…」
すぐにでも射精してしまいかねない俺に気付いているのかいないのか、ルキアはそう言って、体全体を使って腰を上下させ始めた。
「くっ…!」
「ああん、奥に、奥に当たってるぅ!」
激しく腰をくねらせて、ルキアがあけすけに快感を訴える。
俺もこみ上げる射精感を必死で堪えながら、歯を食いしばり、自分で尻をつねって気を散らす。
バカバカしいけど、このままじゃ、ルキアをイカせる前に、俺が先にアウトだ。
「あん、あん、ああ、いい、いいよぉ!」
ルキアは快楽の赴くまま、激しく腰を上下に振っている。 俺たちが繋がっている箇所がニチャ、ググチャと淫らな水音を響かせる。
そしてその度に、大きな左右の乳房が不規則に揺れていて、下から見上げると、普段以上に大きく見えるのを感じていた。
「お…俺も気持ちいい…ルキア…俺、もう…」
俺も息絶え絶えになりながら、夢中でルキアの乳房に手を伸ばし、揺れに合わせて撫でるように揉む。
「あああん! レオン、レオン…! わ、私も…!」
ルキアは上体を反らし、目を瞑りながら、絶頂の到来を告げる。
俺も限界を超えていた。 乳房から手を離し、抱え込むようにルキアの腰を深く押し付け、奥を突き上げるように貫いた。
「ああああああ…んっ…!」
後ろに倒れこむくらいに体を仰け反らせ、ルキアが達する。 そして力なく震えながら、俺の体に上体を預ける。
俺も、絶妙すぎる締め付けに耐えられず、その寸前に絶頂に達し、ルキアの奥に精液を噴き上げていた…
暖かい。 激しい快感の余韻で力が入らねぇ。
俺はルキアの体に力なく両腕を巻きつけながら、まだピクピクと痙攣しながら甘く締め付ける襞の感触と、彼女の体温を感じている。
「………ん…」
少し我に戻ったのか、ルキアが体を少しずり上げ、俺にキスしてくる。
俺も甘いキスに応じて、彼女の髪をなで上げるように梳く。
「ありがとな、ルキア、大好きだ」
「私も…」
俺が言うと、ルキアははにかむように微笑むけど、少しヘンだ。
モジモジと下半身を揺すっている。 …ひょっとして。
「……まだ、したいの?」
と俺は問いかける。
「…うん。 もっと、レオンを感じたいの…」
ルキアの瞳が、優しく、そして妖しく潤む。
(効きすぎだろ、この薬…)
俺自身の所業を棚に上げて、俺は内心、マラリヤにボヤく。
でも、俺も、やっぱりルキアが欲しくて。
でも、力づくで乱してみたい、なんて気持ちはもはや消し飛んでて。
俺はゆっくりとルキアの体を下ろして、ベッドに仰向けに横たえる。
「…俺も。 ルキアがもっと欲しい。 でも、普通にエッチしよ」
「…レオンがしてくれるんなら、何されてもいいから……」
そう言って、軽く脚を開いて俺を導く。 その姿が、改めて愛おしく、淫らに感じて。
「ルキア…挿れるよ…」
彼女の脚の間に体を割り込ませて、俺はまたぞろ堅くなったアレを膣口にあてがう。
「挿れて…」
その言葉に合わせて、俺はルキアに深く入り込む。
「んんんんっ!」
俺の下でルキアが甘く悶える。 それが今まで以上に可愛らしく見えて、俺は、
「愛してる、ルキア…」
とだけ言って、ゆっくり腰を揺らしながら、彼女の首筋にキスを落とす。 何度も、何度も、赤く痕が残る程キスを落とす。
「あん、あ…私も、レオンを…愛してる…のォ……! ああっ…!」
ルキアが涙を零しながら、俺を精一杯の力でかき抱く。
俺は、首筋から鎖骨に唇を進め甘く吸い上げ、更に胸の谷間まで進めて同じように強く吸う。
桃色に染まった肌に、不規則な軌跡が描かれる。
「……あ…んぅ…お願い、レオン……」
途切れ途切れにルキアが問いかける。
「どうした? キツいのか?」
思わず心配してしまった俺にかぶりを振り、不意に両脚を俺に絡み付ける。 そして妖しく腰をくねらせながら、
「激しく…して…」
そうねだる表情は、さっきと同じくらい淫蕩で。
「わかった。 いくぞ」
俺もつり込まれてそう囁き、上体を起こすと腰を掴んで、奥まで届けとばかりに突き上げる。
「ああん、それ、いい! もっと、もっとぉ!」
やや掠れたルキアの歓喜の悲鳴が、でも甲高く部屋に響く。
合わせて、大量の愛液と俺の精液にまみれた襞が、またしても甘く俺を苛む。
「くっ……!」
また俺は一気に射精感がこみ上げてくる。
絡みつく襞を奥まで押し分け、少し固い子宮口をコツリコツリ、と叩くように俺は貫く。
「あん! お、奥にゴリゴリ当たってるよぉ! ああ、いい、気持ち、いい…!」
俺の下で体を弓なりに反らせて、ルキアが激しく悶える。
「あん、ま、またイッちゃう! イッちゃうよおお!」
全身をまた激しく震わせ、ルキアが昇りつめる。
俺は激しく突き上げながら上体を倒し、顔を近づけ、
「好きだ、ルキア…!」
とまた囁き、激しく唇を吸う。
「あっ、イッ、好……………っっっっ!」
絶頂のセリフを俺に飲み込まれながらまたルキアが達して、気を失い力を失くす。
俺もまたルキアの奥で果てた。
「……ありがと。 で、ゴメンな、ルキア…」
俺は聞こえるともなく謝る。
ルキアは絶頂に達したまま失神し、そのまま寝入ってしまっている。
(明日、謝っとくか…やっぱ、薬はやりすぎだな…)
後ろめたさを残しながらも、俺も睡魔に耐え切れず、軽くルキアの唇におやすみのキスをした。
鳥の囀りの声で、私は目を覚ます。
時間はまだ早い。 払暁…って表現でいいのかな? お日さまがまだ昇る直前くらいだ。
私は静かに伸びをして、傍らを向く。 レオンの安らかな寝息が聞こえてくる。
「フフ、おはよ、レオン…」
私は微笑んで、全裸のままベッドを抜ける。
そして、バスルームに行きシャワーを浴びる。
汗ばみ、少し疲れの残る肌に、心地良く温水が当たる。
ふと肌を見下ろすと、昨夜(ゆうべ)のレオンのキスの痕が赤黒く残ってて、少し顔が赤らむのがわかる。
シャワーを終え、体を拭い、バスタオルを巻きつけた姿で私は部屋に戻る。
そして、昨日脱がされた私のスカートのポケットをまさぐり『あるもの』を取り出す。
「残念でした」
それは、レオンが昨夜手渡した薬―マラリヤ謹製の媚薬だ。
「飲んでないもんねーだ」
悪戯っぽく微笑んで、薬包紙を軽くピン、と指で弾く。
…レオンがマラリヤに薬を受け取った後、勘繰ってマラリヤの部屋に押しかけたのは、私。
その時に聞かされたのだ。
『もう…レオンってば…』
と呆れ果ててしまったけど。
『でも、そういう男の子の気持ちもわかるわね…ルキア、セックスは苦手なの?』
『違うよぉ』
別に、エッチが嫌いだから必要以上の事を避けてたわけじゃないの。
レオンの事、大好きだから、望むんだったらできる限りの事はしてあげたい。 でも、エッチに溺れる訳にもいかないから。
私も、彼も、動機は違うけど、賢者さんを目指してる。 でも、彼が好きなあまり、溺れちゃたら賢者どころじゃない。
『だから、淡々とこなしてたのね…』
『作業みたいに言わないでよ』
『でも、どうするの? 彼、早晩アレ使ってくるわよ? 知ってて飲んでみる?』
『やだ』
薬なんか飲みたくない。 でも、レオンの性格だから、間違いなく私に黙って(後出しジャンケンで謝る事前提で)使ってくる。
…そこで、ダマされたフリしてみたって訳。
でも、ただフリだけじゃ、薬を飲んでないのがバレるから。
(レオン、気付いてないわよねぇ…昨夜の晩ごはん、レオンと私でオカズが少し違ってた事…)
そう、予め私が用意したご飯のオカズに仕掛けをしたの。
マラリヤとクララに教えてもらった、いわば『媚薬のご飯』バージョン。
魔法で効果を高めた食材とスパイスを使った作ったオカズを…私自身が食べたのだ。
(あそこまで効き目が高いなんて思わなかったけど。 2人とも悪ノリしすぎだよぉ…)
…というわけで、レオンは気付かないまま、私と激しいエッチをしたって事。
最初は少しイヤがるフリをしてたんだけど、途中から、気持ちいいのが我慢できなくなって。
自分の淫らな姿を思い出してまた顔が赤くなる。 …もう。
私は薬包紙をまたポケットにしまうと、彼を起こしてしまわないように静かにベッドに腰掛ける。
レオンは、相変わらず安らかな寝顔だ。彼の額を軽く小突く。
「ムニャ? ……スー…スー…」
一瞬起きちゃうかと思ってドキッとしたけど、彼はまた寝入ってくれた。
ばーか。
私はまた心の中で呟く。
(媚薬なんかなくたって、私…)
気付いてないのかしら?
あなたの存在が、十分すぎるくらい、私を魅きつけてるってこと。
彼の事、強く考えるだけで、カラダ、熱くなっちゃうこと。
でも、溺れちゃダメ、って押さえつけてただけなのに。
レオン、あなたの存在自体が、私にとって『媚薬』も同然なんだよ?
「…んー、ルキア、大好きだぁ……ムニャ…」
レオンがそう寝言を言って、こちらに向かって寝返りをうつ。
「…クス」
何の夢を見てるのかしら? でも、夢まででも、私を好きって言ってくれてる事実に、私のカラダは昨日に引き続いて、正直に反応してて。
「…疼いちゃう…」
私は静かにバスタオルを脱ぎ、また裸になる。
(……どうしちゃおっかな〜? おしおきかな…?)
そんな軽口めいたことを思いながらも、私は、彼を求めてベッドに再び潜り込んだ。
― Fin.―