『Pretty Punisher』  
 
何だか俺の横がムズムズする。  
そちらを向いた途端、コツンと額に軽い衝撃。  
「んな!?」  
自分でもマヌケな声を挙げてしまう。  
「な〜にボケーっとしてんのよ?」  
そう言ってクスクスと笑う声が続く。  
俺の視界に、赤い髪の少女が映る。 少しいたずらっ気を込めた笑顔を浮かべている。  
「あぁ、ルキアか」  
そう言って俺は彼女の頭に手を回し、俺の肩に引き寄せる。  
「やだぁ」  
そうは言うものの、全く抵抗するでもなく大人しく俺の肩に頭を乗せる。  
「ルキア……好きだ…」  
俺はそう言って抱き寄せ、唇を寄せる。  
でも、彼女はスルリと体を離すと、赤い顔で俺の鼻をピンと弾いて、  
「恥ずかしいじゃん、こんなとこじゃ、や〜だよ〜」  
またクスクスと笑って、俺から離れ、小走りに立ち去る。  
「ま、待てよ!」  
「ここまでおいで〜だ」  
「逃がさないぜ」  
俺は唇をなめて、すぐさま追いかける体勢をとる。 追っかけっこで、俺に勝てるとでも…  
「おわっ!?」  
俺は不意につんのめって、バタリと倒れる。  
「何でだよ!? ………ん?」  
いきなり転ぶ理由がわからず俺は足元を確認する。  
…いつの間にか、俺の足には、ロープが絡み付いている。 もがいても取れやしねえ。  
「………」  
ルキアが戻ってくる。 先刻よりも、イタズラっぽさを増した笑顔で。  
「おい、ルキア!? 何なんだよ、これは!?」  
叫ぶ俺の耳に、何か妙な声…詠唱が聞こえた。  
「ん、何だよ、これ!? ………っ!?」  
俺の視界が歪み、崩れる。 俺の体は崩壊した地面に吸い込まれるような感覚を覚え、意識が飛ぶ。  
一瞬、俺の唇に柔らかい唇が触れたような気がした………。  
 
おはよ、レオン」  
「……………何だ、夢かよ……」  
意識が戻ると、いつも通りの俺の部屋。  
「どしたの? レオン?」  
不思議そうな笑みを浮かべて、裸のままのルキアが、顔を俺に近づける。  
「うんにゃ。 おはよ、ルキア…」  
と起きあが−ろうとして、俺は違和感に気づく。  
「あれ?」  
体が、動かねえ。 おはようのキスを返そうとした首から上も、体を起こそうとした手も、足も。  
「何で…だ?」  
全く状況が飲み込めない俺にルキアがキスをする。  
「なんでかしらね〜」  
明らかにからかうような口調と笑顔−そう、さっきの夢のような。 …まさか!?  
何とか視線を下げてみる。 俺の足には…別にロープなんか絡み付いちゃいない。  
じゃあ、何で…  
「忍法、金縛りの術〜♪」  
「っておい! ルキア! 何の冗談だよ! つーか俺たちゃ忍者じゃねーだろ!」  
魔法学校の生徒が忍術って何だよ。 ツッコミ所が違う気もするけど、今の俺にはそれしか言えなかった。  
「あれ〜、嫌なのかな〜?」  
彼女は微笑ったまま、俺の体を撫ぜる。  
少し冷えた、女の子特有の体温と肌の感触が俺の胸から全身に這い回る。  
「くっ…嫌とかそんなんより…何のマネだよっ!?」  
妙な快感に身を捩じらせて−体は全く動かないが−俺は声を張り上げる。  
「朝から声おっきいよ」  
「いいから、早くこの術を解けよ!」  
「やだ」  
身動きもできず喚くだけの俺に、目を細めたルキアがあっさりと却下する。  
その視線は、決して冷ややかではないけど、明らかに何か含んでいる眼だ。  
彼女は俺を撫でる手を休めずに、  
「思い当たるフシ、あるんじゃないの〜?」  
クスクスと喉の奥で笑いながらそう言ってくる。  
(……ひ、ひょっとして、昨夜の事か!? け、けど…)  
思い当たるフシなんて、ひとつしかない。  
昨夜(ゆうべ)のことだ。 俺はルキアに内緒で薬−当然、媚薬−を飲ませて好き放題ヤッてしまった。  
けど、コイツには気づかれてないはずだし…でも、この状況、明らかに俺、疑われてる!?  
ここは、慎重に言葉を選んで謝ろう…  
「い、いや、昨日は激しくシ過ぎて……イヤだった…よな…」  
でも、ルキアは聞こえてないかのように、さっきからの表情を変えることなく、撫でる指を俺の乳首に当てる。  
そして触れるか触れないかの絶妙の位置で細かく指で愛撫を始める。  
「うわっ! くっ…や、やめろ、ルキ…」  
情けない声を挙げて俺は悶える。 体が動くのなら、間違いなくのけぞっている。  
少しの間をおいてようやく彼女の指が止まる。  
「そんなことじゃなくってさ〜、他に何かあるんじゃな〜い?」  
さっきからおんなじ表情のまま。 …なんか怖ぇえぞ。  
(やっぱ、薬飲ませた事言わねえと、収まりそうもねぇ…)  
全身に嫌な汗を掻きながら、俺は観念して本当の事を言おうと口を開きかけた。  
その前に、ルキアが、手を俺の体の上から下へ滑らしながら、こう言った。  
「2週間くらい前、あんな遅い時間に、マラリヤの所に行っていたのは何でかなぁ〜?」  
…げ。 そっちか。 少し斜め上だった。  
不意を衝かれて、俺の表情が変わったのを見て、ルキアがさらに薄笑い。  
「…浮気したなあ〜っ!?」  
「ちょ、違えよ! 浮気じゃないって! …うっ!」  
慌てて抗弁する俺を無視して、ルキアはいきなり俺の勃起したペニスを掴む。 俺は息が詰まる。  
「ま〜た、他の女の子のこと考えてこんなにおっきくして。 えっちねえ〜」  
「ち、違うって! 浮気とかそんなんで行ったんじゃねえよ! …って、さするの止めてく…れ…」  
「どーだか。 これは……お仕置きかな〜?」  
そう言ったルキアの表情は、満面の笑み。 …でも普段の明るい笑顔じゃない。 何か企んでる。  
 
「き、聞いてくれって! ルキア!」  
俺はといえば、狼狽えきって必死に弁解を試みる他はない。  
「言ってみたら? 聞いてあげるわよ」  
ペニスをさする手を止めずに、俺に顔を向けたまま、ルキアが促す。  
「だから、その手、やめてくれって! あ、あれは…うっ…その、た、頼みごとが…あったから邪魔しただけだって!」  
気持ちよくって、声が震える。 いや、そんな場合じゃあないんだけどさ。  
「頼みごとって、な〜にかなぁ〜?」  
相変わらず笑みを浮かべたまま問い返してくる。 全く俺のペニスをしごく手を休めもせずに。  
「くあっ! …し、喋るから、マジ…勘弁してくれって…」  
こんなシチュエーションじゃなきゃ歓迎だけど、これは色んな意味でヤバすぎる。  
「…く、薬を…ううっ…貰いに行っただけだって…」  
「何の?」  
「…エ、エロくなる薬…」  
「あっ、だから、今こんなになっちゃってんだ〜」  
「違うって! それはお前がさすってるから…ぐあっ!!」  
俺の弁解に茶々を入れるかのように、ルキアは空いた側の手で、俺の乳首を軽く摘む。  
「ほ〜んと、えっちだよね〜、そんな声出しちゃって」  
「や、やめ…ろって!」  
身動きもままならない俺は必死に止めようとする。  
「だ、だから、俺が飲んでるんじゃなくて…うあ…ルキアに…飲ませて…」  
もう、観念して言うしかなかった。  
ピタリ、とルキアの手の動きが止まる。  
「私に?」  
「ゆ、昨夜(ゆうべ)のメシの後のお茶の時に…」  
「あれ、胃薬でしょ?」  
「いや、一芝居したんだよ、そうでもしないと、飲んでくんねえと思ったし…」  
「ふーん………ま〜た、嘘ついてるな〜?」  
「ホ、ホントだって! い、いや、悪かったと思ってるけど…」  
「浮気の言い訳がそれ〜?」  
「だから、浮気から離れてくれって! 誓ってマラリヤと、そんなコトしてねえって!」  
「彼女、艶っぽいもんね〜、レオンったら、私というものがありながら…」  
「いい加減にしろって! じゃなきゃ、昨夜みたいにお前に飲ませてシたりするかっ!」  
「あ、開き直り」  
「おい! …うっ!」  
しばらく言い訳だか言い争いだかワケわかんねえやり取りが続いたけど、再びペニスを握り締められて俺の言葉が途切れる。  
「…レオンの、ばか…えっち…」  
いきなりルキアに悲しそうな顔をされる。 心なしか緑色の瞳が潤んでいるようにも見える。  
「私なんか、ただのえっちの道具なんだ…」  
「ち、違うって! 何でそーなんだよっ!」  
「ヘンなお薬飲まされて、やりたい放題にされちゃって、あまつさえ浮気もされちゃって、私惨め…」  
「…浮気はないって…」  
そうツッコミは入れるけど、何か本気で俺が浮気してしまったような気分になる。  
ルキアが俺に背中を向ける。  
「かわいそうなルキアちゃん…」  
「…あーもう! 聞いてくれルキア! 俺はぜってーに浮気してねえ!」  
もう堪らない。 俺は声を限りに言う。  
「お前とたまには激しいエッチをしたかったから、あいつに協力してもらっただけだって!  
 確かに自分勝手だったからそれは謝るけど、恋人を激しく求めたい、そういう気持ちもあるんだよ!  
 ルキア、俺はそんくらいお前の事しか考えられないんだよっ!」  
朝っぱらから何言ってんだ俺。 でもそう言わずにはいられない。  
「………………」  
ルキアの肩が軽く震えているように見える。 な…泣かせてしまったか?  
 
「お、おいルキア…」  
さすがに俺も気まずくて声を掛ける。  
ルキアがクルリと向き直る。 その顔は泣いて…なんかない。 いつものような微笑みだ。  
その表情が近づき、再び唇に柔らかい感触。  
「…なーんてね、冗談だよ〜」  
唇を離し、ニッコリ笑ってる。 何なんだよ、一体?  
「…マラリヤから聞いたから、知ってるよーだ」  
「喋ったのか、あいつ…」  
思わず口にするが、俺が言えた義理じゃねえか。  
俺の考えにシンクロするように、またペニスを掴まれる。  
「うげ!」  
「喋ったのか、じゃないわよ、もう!」  
呻く俺に、ルキアが視線を下ろす。 その表情は少しムクれている。 少し機嫌が悪い証拠だ。  
「わ、わりい…」  
「全く、夜に他の女の子の部屋に行くは、ヘンなお薬貰って来るは」  
「だから、わり…いや、ゴメンって…」  
「挙句、えっちなこといっぱいして……」  
「う…」  
何も言い返せねえ。 俺は表情を曇らせる。  
「…って、もう今更だからいいけど。 ほんと、レオンらしいけど」  
ルキアが表情を戻す。  
その表情に、俺はホッとする。  
「でも…」  
「え?」  
「ちょっとだけ、仕返しっ」  
言うが早いか、ルキアは俺の脚をベッドの脇に投げ出すように押し出す。  
「な、何すんだ!?」  
いきなりの事で俺は混乱する。  
そんな俺に構わず、ルキアは俺の上体を起こし、両手を後ろにすると、何かブツブツと呟き、  
「えいっ!」  
ベッドに後ろ手に腰掛けた格好の俺の前に素早く回り込んで、軽くキスをぶつける。  
あ、あれ? 俺、金縛りにあってたはずだよな…と考えるより早く、俺の首や脚は自由に動くことに気付く。  
「術、解いてくれたのか…」  
やっと安心した俺に対して、  
「全部じゃないよ」  
サラリと言い返し、俺の部屋の椅子を運んでくる。  
首は動く。 脚も動く。 手は…動かない。  
「いや、もう全部解いてくれって!」  
「だーめ」  
俺の訴えはまたしてもあっさり却下された。  
「えっちなレオンには、ちょっと反省してもらうんだから」  
言って、ベッドの脇に椅子を置く。 そして、立ったりひざまづいたりしながら、何かサイズの見当をつけている様子。  
「…うん、多分イケるかな、と」  
と、ルキアが納得した風に頷く。  
何をするつもりなんだ? 見当がつかない俺に対してルキアは、  
「さ、立てるよね? この椅子に座って」  
とニッコリ笑ってそんな事を言う。  
「…何するつもりなんだ? 仕返し、っつったな。 そんなのイヤだ…」  
「拒否権はレオンにはありませ〜ん。 また、金縛りの術、受けたい?」  
「……わかったよ」  
昨夜の所業を考えたら、やっぱ俺の分が悪すぎる。  
素直にゆっくりと立ち上がる。 素っ裸でマヌケ極まりないカッコなんだろうな、俺。  
「そうそう、素直でよろしい」  
ルキアに促され、俺は椅子に座る。  
 
「…で、俺はこれから、どーなんだよ?」  
椅子に浅く腰掛けた姿勢で、俺は尋ねる。  
「んー、どうしよっかな」  
ルキアは天井に視線を泳がせてそんな事を言う。  
「…やっぱ、こうしちゃおっかな」  
少しの間を置いて、ルキアはそう言うと、少し姿勢を下げて、またしても俺のペニスを右手で掴む。  
「ちょ、またかよ!」  
「レオンにも、ちょっと恥ずかしい思いしても〜らおっと」  
慌てる俺に、そう独りごちて、彼女の手が緩やかに俺のペニスをしごき始める。  
「うあっ! や、やめろ、ルキアっ!」  
「でも、またこんなにおっきくなってるよ。 ほ〜ら」  
「うっ!」  
俺の制止を完全に無視して、俺の目を見つめながらゆっくりと、ゆっくりと右手を上下に動かしている。  
先刻からの刺激に、少しひんやりとした手による愛撫で、俺は完全に勃起してしまっている。  
「…う…あ…」  
我ながら情けない喘ぎが漏れる。  
「ほ〜んと、いけない子ねぇ、レオンってば…」  
またしても、いたずらっ気を含んだ笑みを浮かべて、ルキアがペニスをしごく手を少し早める。  
「うあ! や、ヤバいって!」  
今まで、コイツがこんな事をしたことはない。 たまにはしてもらいたい、とは常々思ってたけど。  
でも、いざ実際にされてみると、ヤバすぎる。  
あまりの気持ち良さに、俺はのけぞってしまう。  
「あ、ホントだ〜、何か出てきたよ」  
好きな女の子の手でしごかれて気持ちいいんだから、我慢なんて、そうそうできるか。  
俺のペニスは、既に透明な粘液を吐き出している。  
「へ〜、男の子も、濡れるんだ」  
そんな事を、無邪気な口調で言いながら、粘液で手が汚れるのも構わず、さらにしごき上げる。  
俺の股間から、ニチャリ、ニチッとくぐもった水音が立ち始める。  
「はあ…ル、ルキ…やめ…」  
俺はもう息も絶え絶えになっていた。 早くも本能が限界を告げている。  
「ほ〜ら」  
懇願する俺に構わず、ルキアは柔らかい手つきでペニスを撫でた。  
「〜〜〜っ!」  
こみ上げる快感に俺はのけぞりながらも、歯を食いしばり、何とか射精感を堪える。  
ハアハアと息を乱す俺を見て、  
「何か、そうやって耐えてるレオンも、可愛いかな…」  
なんて笑みを浮かべたまま呟いている。  
「た、頼む、もう…」  
限界だ。 もう、出る。 ってか、射精(だ)したい。  
「頼む、って何を?」  
ルキアが首を傾げる。 本気なのか、芝居なのか、とにかくじれったい。 射精(だ)させてくれ。  
「…もう、限界…い、いく…」  
俺の声を聞いた途端、ルキアの手がピタリ、と止まり、俺のペニスから離れる。  
「え…?」  
俺はワケがわからず、再び立ち上がったルキアの顔を見上げる。  
「お、おい、どうしてだよ…?」  
「どうしよっかな〜?」  
先刻のように目を細めて、ルキアが俺を見下ろす。  
「も、もう勘弁してしてくれって、頼むから…」  
「じゃあ」  
と愉しそうにルキアが口を開く。  
「…おねだりして」  
「へ?」  
いつもより、やや掠れた低い声で言い放ったセリフの内容に俺は唖然とする。  
「レオン、もうイキたいんでしょ? だったらぁ、お・ね・だ・り」  
「おい!」  
「言わないの? じゃ、このままね」  
 
ルキアの視線が俺に刺さるような気がした。  
おねだりって、どこでそんなん覚えてきたんだよ。  
でも、コイツだって、昨夜俺に恥ずかしいマネされたワケだし、軽く嫉妬なんかもしてたわけで。  
でもって、そんな申し訳なさとは別に、俺も健全な男子なわけで。  
俺は………折れることにした。  
「ご、ごめん、ルキア…」  
俺は口を開き、はっきりこう言った。  
「…イカせてくれ。 お前に、気持ちよくしてもらって、イカせてほしいんだ」  
と。  
「よろしい。 …なんてね。 嘘よ、レオン」  
ルキアが表情を普段のそれに戻す。 そして、ゆっくりとかがみ込み、また俺の唇にキスを落とす。  
軽く痺れが疾り、柔らかく溶けていく。  
「ん…」  
「…術は解いたわ。 ゴメンね、レオン…」  
はにかんだ笑顔を見せて、ルキアは俺の正面に膝立ちでしゃがみこむ。  
「…いや、アレは俺が悪かったわけだし、なぁ…」  
術が解けてやっと自由に動けるのがわかったけど、俺は何もせずにルキアを見守る。  
「…これだけ、約束して。 他の娘と、浮気しない、って」  
いや、浮気じゃないけど、アレ。 でも、俺は、  
「…するわけないだろ、俺が夢中なのは、ルキア、お前だけだから」  
心の中のツッコミは無視してそうはっきりと言う。  
「…約束破ったら、もっとヒドい目に遭わせるんだから…」  
と言って、俺の両脚を広げ、体をその間に割り込ませる。  
「おい、何を…」  
「…イキたい、って言ったでしょ? 頑張って、気持ちよくさせてみるから…」  
言って、豊かな両方の乳房に手を添えて、その谷間あたりに俺のペニスを軽くこすりつける。  
「お、おい…」  
少しくすぐったい刺激に身を軽くよじらせて、俺はルキアを見る。  
「じっとしてて。 …うん、これでいいかな」  
ルキアの胸は、俺が吐き出した液で濡れている。  
「レオン…少しずり下がって、前に出てみて…」  
「あ、ああ…って、いいのか、そんなの…?」  
何をしようとしてるのか何となく察した俺は戸惑いながらも、言われるまま軽く腰をずり下げた形で、椅子に腰掛け直す。  
「じゃ、いくね…」  
そう言って、ルキアは自分の乳房に俺のペニスを挟み込み、ゆっくり揉みしだくように、手と体を動かす。  
「うう…」  
俺は軽く呻く。 手よりも少し上気した乳房の温度と柔らかな感触が心地よい。  
「どう?」  
「…すごく気持ちいい、ルキア。 な、なあ…もっと強く…」  
思わずありのままの欲望を吐き出す。  
「じゃ、こう?」  
ルキアの動きが激しくなる。 俺の体液で滑りの良くなった肌に刺激されて、俺はまたこみ上げてくる。  
「うあっ! す、すげえ…いい…ルキア…!」  
豊か過ぎる乳房の質感と肌理の細かい感触に俺は悶えてしまう。  
「…かわいい、レオンのその顔」  
少しうっとりした目つきでルキアが呟き、  
「良くなったら、そのまま出して…」  
と言って、俺の亀頭に軽くキスをした後、その口に含む。  
俺のペニスが一際温かい粘膜と舌にくるまれる。  
「ダ、ダメだっ、ルキアっ! もう、俺…出る…!」  
亀頭に無知の粘膜と舌、サオに乳房の刺激と、こんなの、反則だ。 保つワケない。  
俺は無意識にルキアの頭に手を掛ける。  
「んんっ……!」  
ルキアが俺のペニスを可能な限り深く吸い込んだ。  
「ああっ……!」  
俺は絶叫と共に達してしまい、腰を跳ね上げ射精した。  
「んっ、ぷはぁっ! ……ん!」  
腰を跳ね上げた拍子に、ルキアの口から俺のペニスが弾きだされ、白い精液が顔や肌にも飛び散った。  
 
「はあ、はあ、はあ………」  
俺は息が整わない。 あまりの快感で頭がボンヤリする。  
すこしボヤけた視界の先で、俺の精液で顔を汚したままのルキアが、白い喉を反らして何か嚥下しているのが見える。 …って。  
「お、おい、ルキア!?」  
俺はビックリして意識を戻す。  
「…ぷぁ…えへ…飲んじゃった…」  
少し眉を顰めながらも、軽く微笑むルキアの表情が今まで以上に淫蕩に映る。 俺は軽く息を呑む。  
「…あ。 顔にかかっちゃった…もったいない…」  
そう言って、顔に付いた俺の精液を指で掬い、紅い舌を軽く伸ばして舐め取る。  
「そ、そんなの飲むなよ…」  
俺は頭がクラクラする。 こんな図、想像してオナった事はあるけど、いざ現実になると、いろいろいたたまれない。  
「ううん…いいの。 良かった?」  
小首をかしげそう聞いてくる。  
「ああ。 すっごく…良かった」  
「ウフ、よかった。 いっぱい出してくれたね」  
「ごめんな。 顔とか汚しちまって」  
「あ、そういう意味じゃないの。 私で感じてくれたのよね、って考えたら…」  
今頃になってルキアが顔を赤らめる。  
「当たり前だろ。 こんな嬉しい事はねえよ。 …ほら、拭いてあげるよ」  
そう言って俺は立ち上がり、机からティッシュを何枚か取ると、ルキアの顔と体を拭う。  
「…あーあ、髪の毛にも飛ばしちまったな、ほんとゴメンな」  
「気にしないで」  
「とりあえず風呂入って落として来いよ」  
俺はそう促すが、ルキアは首を振る。  
「あのね…レオン…」  
顔を赤らめたままのルキアは少し躊躇していたが、立ったままの俺の正面まで膝立ちの姿勢で滑り、  
「うわっ、ル、ルキア!?」  
再び俺のペニスに手をやり、さっきよりも深く咥え込む。  
「も、もういいって! いいから離れろって!」  
そうは言うけど、俺の体も正直で、丹念に掃除するような舌の動きに、再びペニスを硬くしてしまう。  
硬くなったのを確認すると、やっとルキアは口を離す。  
「レオン…欲しいの…」  
眉を下げた潤んだ瞳でそうせがまれる。  
「いや、でも…」  
「…イヤ?」  
そう言って立ち上がり、俺の右手を取ると、自分の下腹部に導く。  
「ほら…こんなになっちゃったの…」  
俺の指先が当たるとルキアが体を震わせる。 指の先には、濡れそぼった膣口が熱く潤んでいた。  
…そうだよな。 俺を気持ちよくさせようとしてたんだから、コイツだって興奮してるに決まってる。  
「…わかった」  
俺は膣口から手を離すと、ルキアを抱きしめる。  
「ふぁ…」  
驚くほどアッサリと体から力が抜けていくのがわかる。 何か昨夜のリプレイみたいだ。  
ベッドはすぐ脇だ。 そのまま軽くルキアを引きずるようにして、抱き締め合ったままベッドに倒れこむ。  
そして俺の方から唇を激しく吸う。 そして、有無を言わさず舌を絡め取る。  
「…んくう…ふぅ…む…」  
俺の下でルキアが息を弾ませる。  
キスを休めることなく、俺は手を下に伸ばし、ルキアの膣口を探り当て、中指の腹でクリトリスを擦る。  
「…ひぁあああん…っ!」  
快感に耐え切れず、唇を離して、ルキアが高い声を挙げる。  
元々、内腿まで濡らすほど興奮してたからだろう、軽く優しく愛撫するだけで、俺の下で体を淫らにくねらせる。  
「もう、欲しいよう! レオンの、欲しいようっ…!」  
ルキアが無我夢中で俺に訴える。  
「わかったよ。 …いくよ」  
俺は体を起こし、ルキアの両脚を押し開く。 しとどに濡れた膣口が薄く開き息づいているのが見える。  
「ううん、違うの…」  
「え?」  
戸惑う俺を、何とか力を込めて起き上がったルキアが逆に押し倒す。  
「…私が、上に、なるの…まだ…仕返し、済んでないもん…」  
仕返しって、まだ言うか…いいけど、でも何かやっぱ、昨夜のリプレイみたいだ…  
 
「…ちょうだい、って言って」  
いや、『俺が欲しい』って言ったの、ルキアだろ。  
でも、そう言って、またムクれられたら、どんな焦らしプレイになるやら…わかったもんじゃねえ。  
「俺、ルキアが欲しい。 早く一緒になりたい」  
素直にそう言う。  
「…えっち。 でも、こうしてあげる…」  
そう言って狙いを定めるが早いか、腰を沈めてきた。  
痛いくらいに勃起した俺のペニスがルキアの膣に飲み込まれていくのが生々しく映って俺は興奮する。  
「あん…すっごく、熱いよぉ…!」  
ルキアが悶えながら腰をくねらせる。  
「ルキアの中だって、熱くって…気持ちいい…」  
熱く潤った襞は、昨夜と全く変わらず俺を甘く責め立てる。 俺は腰の震えを感じる。  
「いい、のっ! すごいのおっ!」  
激しく体を使って上下に動くルキア。 その度に、俺のペニスを伝って、白く色づいた愛液が大量に吐き出されている。  
もう、さっきの『仕返し』とやらも意識から飛んじまってるみたいだ。  
でも、これだけ激しく動かれると、俺もキツい。 すぐイッてしまいそうだ。  
俺はルキアの腰に手を当て、動きを止める。 そして、一旦膣からペニスを抜き取る。  
「あんっ、やだ…抜いちゃ…やだ…」  
虚ろな視線を俺に投げ、淫らな駄々をこねる。 俺を求めてるのか、揺れる腰が悩ましい。  
そんな姿も、やっぱり可愛くって。  
「…違うって。 今度は俺がこうしてあげる」  
俺は上体を起こすと、ルキアを抱きしめる。 そしてゆっくり彼女をベッドに押し倒す。  
もう、全く抵抗しない。  
俺は、ルキアの脚を押し開くと、ゆっくりと、ゆっくりと奥まで貫いていく。  
「ああんっ!」  
俺の下でルキアがのけぞる。 桃色に染まった肌理の細かい肌に薄く鳥肌が浮かぶのが見える。  
俺はゆっくりと挿し、ゆっくりと抜く。  
「…あん! ………あん!  ……ああんっ!」  
挿し入れの度に、ルキアが喘ぐ。 声にシンクロするように、挿れると襞が締め付け、抜くと名残惜しそうに絡み付いてくる。  
少しピッチを上げると、  
「あ……! あ……! んっ……! あっ……!」  
と俺の動きに合わせ、喘ぎ声の周期が早まる  
「好きだ、ルキア…」  
「レオン! わ、私もぉ! 大好きぃ……!」  
激しく身悶えしながら、無我夢中でそう叫び、俺に口付けてくる。  
そんな姿を見ていたら、俺はもう保たなくなってきた。  
「ルキア…俺…そろそろ…」  
「まだ、だめぇ…」  
「…無茶、言うなって…」  
「私と、私と一緒に来てえっ! 一緒に、イクのぉぉっ!」  
そんな甘い無茶を言って、両脚を俺の腰に絡みつけ、淫らに腰をくねらせる。  
「ルキア、ルキアっ……!」  
「レオン、いいっ! レオンっ……!」  
もうお互いの名前を叫ぶだけの余裕しかない。 俺はあらん限りの愛情を込め、奥まで貪る。  
「くっ、もう……!」  
俺が限界を告げる。  
「…中に、いっぱい…ちょうだい…レオンの熱いの、全部出してぇ……っ!」  
声を限りに、ルキアが絶叫する。 その淫らな姿に俺は限界を迎えた。 思わず彼女の肩を強く掴む。  
「うっ……!」  
「ああああぁっ…! 熱いっ……の、出てるぅ…! ああああぁああ…!」  
俺が射精するのに呼応して、ルキアも白い喉を反らせて絶頂を迎える。  
俺は堪らず、強く、強く抱きしめる。  
「んんんんっ……あああんっ! ――あ―――ああんっ…!」  
体中の息を全て吐き出すような声を上げ、ルキアが痙攣する。  
……しばらくの間、半ば意識を失った彼女を、俺も息を切らしながら愛おしく抱きしめていた。  
キスをすると、ようやく意識が戻ったのか、  
「…ウフ…大好き、レオン…」  
はにかむようにそう言って、俺にキスを返してきた。  
 
「あー、腹減ったー」  
「もうちょっと待ってねー、もう仕上がるから」  
テーブルの椅子に腰掛けた彼が、ご飯を待ちわびたように駄々をこねる。  
「はい、準備完了」  
私はレオンの前にミネストローネと、焼きたてのトーストを置く。  
「あーうまそう、じゃ、いっただき…」  
「待ってよ、レオン」  
「えー、早くメシ食おうぜ、ルキア」  
あれから約1時間後。 私たちは着替えて、朝ご飯を摂ろうとしている。  
「だーめ。 一つだけ言っとくから」  
不平を漏らす彼に、私はポケットを探り、『あるもの』を取り出し、テーブルの上に置く。  
「…げ」  
唖然とした彼の顔ったら。  
「…言ったでしょ? マラリヤから全部聞いてる、って」  
「飲んでなかったのか…」  
「当たり前。 こんなお薬、ヤだもん」  
「…悪りい…」  
やっぱり、申し訳なさそうな顔をする。  
「約束して。 もうこんなことしないって」  
「…わかったよ」  
頬をポリポリと掻きながら、レオンが素直に答える。  
(むー…)  
私は少し頬を膨らませる。  
「…疑ってんのか!? ホントにもうしないって」  
そう言って、薬をポイとゴミ箱に捨てる。  
(…気づいてないなあ、自分の癖…)  
レオンがポリポリ頬を掻いている時って、懲りずにロクでもないこと考えてる時なのよねぇ…  
「ま、いいわ」  
「…でもさあ」  
レオンが不意にニヤリと笑う。  
「何よ?」  
「でも、昨夜、薬飲んでなかったんだろ? なら、なんであんなに…」  
「…うるさいわね」  
私は思わず顔を赤くする。  
「ホントは、ああいうエッチ、興味あったんじゃ…」  
「うるさーい! もう、バカ、えっち!」  
私はブンブン首を振る。  
「そんなんじゃないもん…」  
「はいはい。 そういうことにしとくか」  
ニヤニヤ笑いながら、レオンったら愉しそうに…見てなさい…  
「…もう、スープ冷めるよ」  
「何だよ、自分で待てって言っといて…照れてんのか…やっぱルキア、可愛い」  
「いいから食べなさい!」  
多分、先刻のエッチの時よりも顔を赤くしながら、私は叫ぶ。  
「へいへい。 じゃ、いっただきまーす」  
そう言って、レオンがスープをグイッと飲む。  
…レオンが顔を真っ赤にして、ガタンと椅子を蹴って立ち上がる。  
「が、がれ〜〜〜っ! み、水〜〜っ!」  
あまりの『辛さ』にのたうってる。  
やっぱり気づいてないのよね。 まだ、『仕返し』が済んでないってことに。  
レオンのスープだけ、私の愛情と、ハバネロのたっぷり効いた特製なのよねー。  
まだのたうち回ってるレオンに、私はニッコリと笑いかける。 最高の愛情を込めて。  
―――お仕置き、完了!  
 
―Fin.―  
 

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