『STARMINE』
「おーい、ユリ、まだかいな?」
「えー、もーちょっとだから、待ってよー!」
「早よ行かんと、屋台とか終わってまうぞ」
「あーん、もう! 帯がうまく結べなーい!」
「着付けくらい、誰かに手伝ってもらう段取り取っとかんかい!」
「だってー」
「大体、祭りの直前まで寝とるとか、ありえへんぞ」
「うー」
「…しゃあないのう、部屋入るぞ、手伝うたるわ」
「…うぅ、お願い」
ガチャリ、とドアを開けて俺は目を丸くする。
「…お前なぁ、帯がどうとか以前の問題やんけ! 何やねん、そのムチャクチャな着方は!」
「え、こうじゃないの?」
キョトンとユリが自分の姿を見下ろす。
濃い目の水色地に、カラフルな水玉模様の浴衣。
本来やったら、ユリをもっとコケティッシュに見せるはずなんやけど。
「何で、右前やねんな! そんなん、どう考えてもヘンやろ!」
ありえへん。 コイツ、ホンマに着付け覚えて来たんか?
「えー、違うのー?」
「……着直しや、一旦脱がすぞ」
しゃあない。 俺は手を伸ばす。
「キャ! エッチ! スケベー!」
「アホ! 祭りに出かける前に、んなことするか!」
問答無用で浴衣を解く。 …コイツ、バンドも紐留めもいい加減なあしらいしとる…
「暴れんと、ジッとせぇ。 …上前はここでええか…ほれ、ユリ、自分で押さえろ」
「うぅ…はーい」
キッチリ左前に合わせて、腰紐を結わえる。 で、次は『おはしょり』。
身八つ口から手を入れると、
「キャ! やっぱりエッチな事するんでしょ! セクハラー!」
………このどアホ。
「ほな、自分で整えや! できるんか!」
「あぅ…」
何とか、しわを取って、衣紋を抜いて、伊達締めを巻くところまで漕ぎつけた。
あー、しんど。
次は帯や。 もう、めんどいから文庫結びにしよ。
「普通、一人結びやったら、体の前で結び目作んねんで。 何教わったんや?」
「ゴメン、ちょっとナメてた…」
帯の長さ合わせにやっぱり悪戦苦闘しながら、ユリがしょげる。
それでも何とか結び目が完成。
「あとは結び目を背中に廻し…って、おい! 右廻しや!」
着付けの苦労が水の泡になるやろ。
「ふー、何とかなったな」
着付けが整ったユリは、なかなかサマになっている。
「ありがと、タイガ」
小首を傾げてお礼を言い、少し背伸びをして俺の頬にキスをよこす。
「遅うなったし、早よ行くぞ」
…照れくさいマネすんな。
カラン、コロン。
てこてこてこてこ。
2人の足音が夜道に心地よく響く。
「でもタイガさぁ、何であんなに着付け詳しいの?」
ユリが尋ねる。
「地元は祭り多かったさかい、ガキの頃からよぉ着てたからな」
めっちゃ普通やな、この返事。
「ふーん、そーなんだ…道理でタイガの浴衣姿似合ってるわけだ」
「ホンマやったら、下も何も穿かんかフンドシ締めんねんけどな」
「なにそれ」
「元々、浴衣って風呂入る時のモンやしな。 ヘンに下に付けたら下着の線出るしな」
「え」
慌てて自分のラインを確認してるユリに半ば呆れてまうけど、
「ま、別に今はそんなん気にせぇへんけどな」
「へー」
「…つーかユリ、お前もめかしこむんやったら、それ位知っとけや、一応女やろ」
「一応って何よ!」
ユリが持ってる巾着で俺をシバく。
コイツ、格闘学科やからか、何かと言えば手が出る。 今は巾着やから痛くも痒くもないけどな。
「暴れんな! シワシワんなって浴衣台無しやろ!」
普段の制服ならまだしも、浴衣はだけさせるつもりか。
「うー、ムカつく!」
「少しは女らしい事してから物言えや」
「例えば何よ! こうすればいいっての!?」
言って、いきなり衿をはだけて胸元を見せようとする。
「……アホ。 素でやってんのか? 料理とかオシャレの事とかいろいろあるやろ」
ユリはいわゆる「女の子の趣味・特技」に弱い。
特に料理は壊滅的だ。 一度得体の知れんモン(本人は『カレー』と言っていた)食わされて死にかけた。
「…そんなのこれから覚えるもん」
「そうしてくれや」
やっと収まった。
…ようやく、祭り囃子が聞こえてくる。
「ほれ、やっぱり始まってもうてるがな」
「あーん、タイガ、急ぐよ! 屋台、屋台!」
「おい、走るな!」
俺を置いて、サッサと急ぐユリ。
…やっぱ、『花より団子』ってとこか?
ま、ええわ。
囃子の音がやかましい位に鳴り響く。
その音に負けない位に賑やかな人の群れ。
「たこ焼き、たこ焼き〜!」
臆面もなくそんな事を叫びながら屋台に突撃するユリ。
…どんなガキやねん。
そう思いつつ俺はついてゆく。
「…おいし〜い!」
満面の笑みでたこ焼きを頬張るユリ。
確かにうまい。 どうやら、俺の故郷からやって来た連中の屋台らしい。
「なかなかダシ利かせて、ソースもほんまもんやし、うまいな」
「…何、その中途半端な美食マンガみたいなセリフ」
「やかまし、黙って食え」
ホンマ、思ったまんまが顔に出て、口に出る奴や。
しばらくブラブラ歩いていると、
「あ、タイガ、あれやろーよー!」
…金魚すくいか。
「勝負すっか?」
「へっへ〜ん、負けるもんか!」
金払て、それぞれポイをもらって、金魚を狙う。
「…あっちゃー…」
ユリがガッカリした声をあげる。 いきなりポイを破られたらしい。
「何や、もう終わりかいな」
俺は手際よく金魚を追い込んで立て続けに掬い上げる。
「うそー、そんなに取れたの?」
「ま、コツがあんねや」
ポイに限界が見えたんで、一旦切り上げて金魚をもらう。
「あぅ、金魚さん、取れないよぉ…」
「ボクもダメだよ…」
少し離れた水槽から少しヘコんだ幼い声が聞こえる。 2つとも聞き覚えのある声や。
「あれ? ラスク君とアロエちゃんじゃない?」
ユリが言うまでもなく、ラスクとアロエや。
かわいらしいデザインの浴衣姿が似合っている。
「2人とも、どないや?」
「あ、タイガ兄ちゃん! ユリ姉ちゃんも!」
「お兄ちゃん、すごーい!」
俺たちに気付いた2人の視線は、俺が獲った金魚に釘付けになっている。
「……おっちゃん、この金魚、この子らに分けてやったって」
俺はその視線の意図を察して、屋台のオヤジに言う。
「「お兄ちゃん、ありがとー!」」
ハモりながら、嬉しそうにお礼を言う2人。
「…優しいんだね、タイガ」
「何をいまさらな事言うてんねん。 俺はいつでも優しいで」
「………そうだね」
ふと、俺に寄り添うユリ。
「…歩きにくいやろ」
思わず毒づくが、そのままにしておいた。
遅く来たせいもあって、そろそろ祭りも酣、という時間になった。
「そろそろやな…」
「え、何が?」
俺のつぶやきにユリが問い返す。
「こっちや、ユリ」
俺はユリの手を引いて、この場を離れる。
祭りの会場から一旦出ると、俺は魔法で縮めていた箒を取り出し、ぼそりと詠唱する。
瞬く間に、元の大きさに戻る箒。
すかさず跨り、
「さ、早よ後ろに乗れや」
とユリを促す。
「どこ行くのよ?」
「えぇから、早よ。 『特等席』へご案内、ってな」
「?」
首を傾げながらも俺の後ろに横掛けする。
ユリが乗ったのを確認すると、俺は箒を空へ浮かせる。
夜の闇を縫って箒が滑る。
「ねぇ、どこ行くの?」
まだわからんか。
「祭りのシメって言うたら何や?」
「…あ、花火!」
「いちいち人多い所で見てもしゃあないしな」
「…まさか、空中じゃないよね?」
「そんなん、俺がしんどいわな」
そんな事を言うてるうちに、目当ての場所が見えてきた。
俺はゆっくりと高度を下げて、小高い丘に降りる。
俺が短く呪文を唱えると、薄明かりを発する球体ができる。
「へー、こんな場所あったんだ…このあたり結構来るのに気がつかなかった…」
「歩きやと木と川がジャマでよぉここには来んからな」
後ろは茂った木々で人は来ない、正面には川が走る、小さな秘境みたいな場所。
「そんなことより、そっちや」
俺が指し示す方向をユリが見ると同時に、空が明るく輝く。
「…すごーい」
ユリが呆けたように眺める。
空には赤、青、緑…とにかく華やかな牡丹玉が連続して咲いている。
少し遅れて、花火の爆ぜる音が届く。
いきなりスターマインとは豪勢やな。
「どや?」
「すごく綺麗。 しかも、こんないい場所で…」
視線は空へ釘付けのまま、ユリが目を輝かせる。
ひとしきり派手な華を咲かせた空は、単発ながら落ち着いた菊花模様になっている。
俺たちは何もしゃべらずに見入っている。
花火の合間に俺は横目にユリを見る。
快活な顔に見え隠れする幼い表情、そして…女の表情。
いつも見ているはずやのに。
こそばゆくなってきて、俺は空に視線を戻す。
「…ねぇ、タイガ」
ふと話しかけられる。
「何や?」
「一つ聞いていい?」
何かユリらしくない言い回しや。 普段ならストレートにぶつかってくる筈やのに。
「…どないしたんや?」
とりあえず促す。
「花火とアタシ、どっちが綺麗?」
……何やいきなり。
「ね、答えて」
その表情は柔らかいけど、真剣に聞いているのがわかる。
「…そんなん比較にもならんわ。 お前に決まってるやろ、ユリ」
言うててこっちが恥ずかしいわ。
「…ありがと、タイガ」
頬を染めて俺にしがみついてくる。
……そら、恋人がそうするんやから、嬉しいのは当たり前やけど、一体どないしたんや?
「当たり前の事言わせて何やねんな」
俺の胸に体を預けて、上目遣いに俺の顔を覗きこみ、
「ううん、普通、女の子ってこういう反応するんだよね、と思って」
「………」
「アタシ、そーいうとこ、あんまりわかんないから…何となく不安になっちゃって…」
「不安?」
「うん、アタシなんかよりもっと女の子らしい娘のほうが、タイガの好みなのかな、とか
ふと思っちゃって…」
…行きしなのやり取りが気になってるんか。
せやけど、こんなユリ見るのは初めてや。
いつもは見せない表情。
俺は知らず、ユリを強くかき抱く。
「何言うとんねん…俺、お前やなかったらあかんねんで…」
「……!」
「別にヘンに女らしゅうなることあらへん。 いっつも元気に笑いかけてくれてたら、それでえぇねん」
息を呑んでいたユリの目から一粒の涙が零れる。
「何で泣くんや、初めてこんな事言うたわけやないのに…」
ユリは微笑んで、
「そうだよね…何か安心しちゃった…」
その表情のまま、また俺の胸に顔を預ける。
俺はユリの顔を起こすと、そのまま口付ける。
ユリも瞳を閉じて、キスに応える。
花火の音が遠くなった。
甘い味。
薄明かりの中、俺はユリを唇で知覚する。
普段、さんざんしている筈のキスがなぜか新鮮に感じる。
もっとこの感触を味わいたくて、俺は舌を挿し入れる。
ユリもそれに応えながら、胸を前に突き出す。
俺の体にぎゅっ、と柔らかい感触。
俺はその感触を支えようと足を一歩後ろに擦らせて、―草に足を取られて、バランスを崩す。
「うぉわっ!」
「きゃっ!」
抱き締めた姿勢でまともに後ろに倒れてしもた。 背中に衝撃が走る。
「あだだ…悪い…大丈夫か?」
「うー、ありえなーい…」
ユリを地面にぶつけんように庇った分だけ、俺の体に顔がぶつかったようや。
少し鼻声になってる。
マヌケな俺らを笑うように、また花火の音がする。
2人して、同時に笑い出す。
「あーあ、たまにマジになるとこうやな」
「だよねー」
「…場所変えるか、起きる…」
体を起こそうと促した瞬間、俺のセリフはユリに飲み込まれる。
ユリの唇が、舌が俺の腔内で踊り、俺の官能とやらを刺激する。
ユリの唇が離れたんは、たっぷり1分以上経ってからやった。
「おい、ユリ…」
面食らった表情の俺に、悪戯っぽい笑みに少し潤んだ瞳で、
「ダメだよ…今日はここでするんだから…」
言うが早いか、俺の浴衣の胸元を軽くはだけ、右手を俺の股間に伸ばす。
「お、おい…」
「…ホントに穿いてないんだ」
少しひんやりとしたユリの細い指が俺のペニスを直に捉えている。
「…言うたやろ? 浴衣にゃ下着は着けへん、って」
そんなマヌケな事を言いながら、俺のペニスは刺激に対して正直に反応している。
「ふふ、おっきくなったね…」
ユリの笑みが妖しくなる。
そして、ユリの顔が視界から俺の下半身側へ退いていく。
「待った」
俺はユリを一旦制する。
「え? 口でされるの、イヤ?」
訝しげなユリの声。 眉が八の字に下がる。
「違う、違う! その前に…」
俺はユリににじり寄り、上半身を抱き寄せる。 そして、帯の隙間に手を差し込む。
「……んっ」
俺は手をまさぐり、伊達締めとバンドを外して、スルリと抜き取った。
「…こんなん、ジャマなだけやしな」
見かけ上は変わらんけど、これで、衿元もはだけやすくなる。
「…だね」
ユリはそれだけ言うと、俺の体を滑り降りるように、股座に顔を移した。
「…良かったら、そのまま出してね」
そんな事を言って、ユリは少し顔を強張らせながらも俺の膨れ上がった亀頭に口を近づける。
…お前、フェラするのは初めてやろ。
「…じゃ、行くよ」
俺に言うたのか自分に言い聞かせたんかそう呟き、ユリの舌が俺のペニスを這う。
先端から根元、そしてまた先端と往復しながら唾液をまぶす。
正直動きはぎこちない感じや。
くすぐったさだけが先行している状況だったが、
「うっ!」
不意に、エラとくびれの敏感な部分に舌が集中して、声を漏らす。
「また固くなってきたね」
一旦舌を離すと、細い指でペニスを握りこむ。
早くも俺の先端からは、透明の粘液が滲む。
ユリはその粘液をチロリと舌先で舐め取ると、軽く口を開いてゆっくりと俺のペニスを飲み込む。
「うおっ」
亀頭全体が温かい粘膜に包まれる感触に俺はのけぞる。
俺の反応を見て取ったのか、ユリはそこで咥え込むのを止め、丹念に愛撫を始める。
まるで飴玉をしゃぶるかのように、亀頭を舌で転がし、時には粘膜ではさんで吸い上げる。
ぎこちなさはあるけど、とにかく丁寧だ。
ユリの口から唾液がこぼれて粘った音が聞こえる。
唾液が垂れて伝う感覚にも、俺のペニスは反応して、ビクビクと脈動する。
「ふぉう? ふぃもふぃいい(どう、気持ちいい)?」
ペニスから口を離さずに上目遣いにユリが聞いてくる。
「ああ、ごっつ…えぇわ…」
俺はやっとのことでそう答える。
「じゃ…」
とだけ言うと、ユリは一息に俺のペニスを深く飲み込む。
俺の腰が震える。
「ん…むぅ……」
かなり奥まで飲み込んだんやろう、少し苦しそうな声を漏らしながらユリが頭を上下させる。
頭に合わせて、トレードマークのポニーテールもふさふさと揺れ、時折乱れた動きで俺の肌をくすぐる。
また、花火の打ち上げが始まったのか、空が断続的に明滅し、その姿を淫靡に照らす。
激しい刺激とその光景に俺はこみ上げてきた。
「ユリ……そろそろ…あかん…」
俺はユリの頭に軽く手を添えながら限界を告げる。
「いいよ…そのままイッて…」
やや掠れた声でユリがフェラチオを続ける。
往復するペースを変えずに、舌が複雑に絡み、竿の根元に指が添えられ、口に合わせてしごきあげる。
俺の睾丸が収縮する。
そして、一際深く飲み込まれた瞬間、俺のペニスはユリの喉元で体積を増した。
「う…うおっ!」
俺は呻き声と共に達して、そのままユリの口に射精した。
「む、むぐぅ……」
初めて味わう感触に戸惑いながらも、ユリは全て受け止めた。
長い射精が終わってから、ユリはゆっくりと口を離し、眉根をよせながらも、そのまま精液を飲み干した。
その姿がまた花火の明かりに照らされる。
「よかった…?」
顔を上気させ、口元を唾液と粘液で光らせたまま、ユリが聞いてくる。
その表情が、今までになくエロい…いや、淫靡って言うんか。
「……ああ」
「あんまり、よくなさそうなんだけど…」
声と表情が少し沈む。
「何言うてんねん。 好きな娘にそこまでしてもろて、良くないわけがないやんけ」
俺のセリフにユリは目を見開き表情を綻ばせる。
俺は荒々しくユリを抱き寄せ、帯の結び目を前になるように廻す。
そしてそのまま体を廻して、座ったまま後ろを向かせ、両脚を掴んで開かせる。
「あっ、な、何よ…」
ユリは驚いた風に大声をあげるが、俺は構わず、はだけた足の付け根に右手を挿し込む。
「…もうこんなに濡らしてるんか…」
後ろからなんで見えやしないが、ショーツのクロッチどころか、内腿まで愛液を溢れさせてるのが判る。
「んっ、やだ、言わないでよ…」
「別に誰にも聞かれへんって」
言って、ショーツ越しに指でスリットを撫で上げると、
「ふあっ…あぁ…」
力なく啼いて、ゴトリ、と体の力が抜けていく。
右手でゆるゆると撫で上げたまま、両衿を完全にはだけさせる。
肌理の細かい白い肌が薄く染まっている。
左手でブラジャーのホックを外そうと手を泳がせると、
「ホック、前…」
フロントかよ。
変に捩っていた左手を戻し、もどかしげにホックを外し、カップをどける。
ふるん、とボリュームのあるユリの乳房が外気に晒される。
既にツン、と尖って、重力に逆らうように上を向いている。
「艶っぽい図やで、ユリ…」
俺は囁き、左手でゆっくりボリュームを味わう。
そして、右手でクロッチをずらして、直接クリトリスをこする。
「きゃうっ!」
同時に愛撫されて、刺激が大きかったのか背筋を突っ張らせ、腰が跳ねる。
「…どない?」
愛撫を続けながら、ユリの顔に俺の顔を近づけて聞いてみる。
「…あん、き、聞かなくたって、わ、わかるでしょ…んぅ!」
「言葉にして言うて欲しいんや」
ユリは潤んだ瞳で俺を軽くにらんで、
「もぉ、バカぁ…」
弱々しく抗議しながらも、俺が再び乳首とクリトリスを同時に強くこねると、
「ああんっ! …き、気持ちい、いいのっ…! タイガにされて、すごく…気持ちいい…!」
と、叫ぶように応える。
そのセリフに俺は満足感を得る。
「ねぇ、タイガ…そろそろ…ちょうだい…」
湿った声でユリがねだる。
俺は一旦右手を退き、ショーツに手を掛けてずらすように脱がせる。
ユリも腰を浮かせ、自分の手も添えて脚からショーツを抜き去る。
「…立ってもらえんか?」
「立ってするの…?」
言いながらも、ユリは素直に立ち上がる。
俺は、傍に置いていた浴衣止めのバンドを手に取る。
「捲るで」
ユリの浴衣の裾を一気に尻まで捲り上げる。 そして折り返して長さを整え、腰骨あたりでバンドを上から巻いて固定する。
白く引き締まった下半身が乱れた浴衣から唐突に伸びる様子に、俺は激しくソソられる。
「やだ、こんなの恥ずかしいってば」
ユリが呟く。 けど、別に抵抗する風でもない。
「誰も来ぇへんって…しっかしすごいエロい眺めやな…」
「アンタがしてるんでしょ! …なんだか、スースーして、ヘンだよ…」
「でも、可愛いで…ほれ」
俺はユリを一本の木へと導く。 そして、木の幹にユリの背中をつける。
「こんな姿勢で?」
訝るユリに俺は、
「軽く脚、開(ひら)いてんか」
とだけ言う。 するするとユリの脚が開く。
俺はユリに軽くキスすると、―屈みこみ、ユリの草むらに顔をつけ、秘唇を舐める。
「あん! やだ、そこ、汚いよ」
快感と羞恥の混じった声でユリが抗議するけど、俺は、
「さっき、口でイカせてもろたお返しや」
取り合わずに、丹念に溢れる蜜をすする。
「はうっ!」
ユリの両腿に震えが走るのが見える。
さっきからの愛撫で、ユリの秘唇は十分感度が高まっている。 舌を這わせる度に新たな蜜が湧く。
俺は顔を上げて、舌を突き出し、秘唇に挿し込む。
「ああんっ!」
声が一段と高くなる。
「…デカい声やな、人に聞かれるで」
舌を抜き、わざと意地悪く言うてみる。
「…いじわるぅ…」
焦点を失った瞳で俺を見下ろし、ユリが泣きそうな声で抗議する。
すまんな、と軽く応じ、俺は再び舌を挿し込み、激しく動かす。
熱く溶けた襞と蜜の感触が俺の口を満たし、時に激しい締め付けで俺の舌を攻め返す。
ユリは腰をくねらせて快感の大きさを示し、堪えきれず甘い声で啼く。
腰と膝の震えを見て取って、俺は立ち上がる。
「ねぇ、もう…ちょうだいよぉ…」
「もう一回言うて欲しいんや…気持ちえぇか?」
ねだるユリの秘唇をゆっくりさすりながら俺は耳元で囁く。
顔を紅潮させ、うっすら涙を浮かべたユリが、一瞬はっきりと俺を見据える。
「……す、好きな人にこんなに弄られて、感じてるに決まってる…っ…!」
普段は聞けないユリの淫らな激情。
俺はユリの瞳を覗き込み唇を塞ぐ。 同時に、撫でる指を止め、一息に膣内に突き挿れる。
昂められた体には、それで十分だったようや。 襞の奥から熱い蜜が吐き出される。
「……ん! んんんー…っ!」
全身を激しく痙攣させ、ユリが昇天する。 その声も俺は飲み込んだ。
まだ痙攣が走る上半身を前のめりに俺に預けるように、ユリは絶頂の余韻に浸る。
脚も震え、時折思い出したように膝が笑う。
膣内に入ったままの俺の指を支点にかろうじて立っているような状態だ。
ビクビクと快感にうねる襞からゆっくりと指を抜き去ると、ガクリと体が崩れ落ちる。
俺はすかさず抱きとめる。
「大丈夫か?」
「はぁ、はぁ……う、うん…」
途切れ途切れにユリが応える。
「えぇ顔してたで、イク時の顔」
「バカ、そんな事言わないでよ…」
拗ねたような表情でユリが俺を軽く睨む。
そんな仕種のひとつひとつに俺はもう抑えきれんかった。
「…もう、挿れて…」
そう思った矢先にユリが俺のペニスを握りながらねだってくる。
「…イッたばかりで、大丈夫か?」
俺もすぐにでも挿れたかったが、体に力が入っていないユリを気遣う事は忘れない。
「いいから、して…」
「…座ってするか」
俺が先に地面に座り、ユリを導く。 ユリも倣って地面に膝をつける。
俺は、木に凭れ掛かって胡坐をかく。
すかさずユリが俺を跨ぐように座り込む。
そして、ゆっくりとペニスを飲み込ませる。
「ああんっ!」
高い声で啼いて、俺にしがみつく。
「ユリ…めっちゃ熱い…!」
俺も熱すぎるくらいの感触に声が上ずる。
しとどに濡れそぼったユリの襞がねっとりと絡みついてきながら、小刻みに強く締め付けてくる。
俺は思い切り押し倒して、激しく突き上げたい衝動に駆られるが、何とかこらえる。
…浴衣やし、汚すわけにもいかん。
代わりに、膣内をこね回すように腰を揺さぶり、空いた両手で、ユリの乳房を激しく揉みしだく。
「あん、な、中が掻き回されてるよぉ!」
ユリが切なげに喘ぎ、腰をぐいぐいと押し付ける。
「あっ、あっ、タイガ、いい、よぉ!」
「今日のユリはえらいエッチやな」
「だ、だってぇ…んっ、こんなにしたの、タイガじゃないの…!」
「…お前が可愛いせいやろ…もっと可愛い貌、見せてくれよ」
「あん、あん、…んぅっ!」
ユリが顔を蕩けさせて俺にしがみつく。
「…もうダメ、もっと動きたい!」
ユリが叫ぶように言うと、無理やり体を引き離す。 擦れるようにペニスが抜ける感触に俺はのけぞる。
ユリは強引に俺の体を木の幹からずらして地面に押し倒し、俺の上から一息に腰を沈める。
「ああっ、太いのが、奥まで…!」
その感触を貪欲に味わうように、激しく腰を上下させる。
グチャ、ジュブッ、と湿った肉の擦れる音が淫らに響く。
見上げると、乱れた浴衣姿のユリが、まだ続く花火に照らされて、淫靡な舞いを演じているように見える。
堪らず、俺もユリの動きに合わせ、腰を強く突き上げる。
「あっ、イ、イク! イッちゃうううっ!」
急激な刺激に、高く叫んでユリが一気に昇りつめる。
全てを吸い上げるような膣内の締め付けに俺も釣り込まれて、
「お、俺も…!」
ユリの奥にものすごい勢いで射精してしまう。 ユリの膣内で跳ねるように長く吐き出す。
ユリの上体が脱力して、俺にかぶさった。 その表情は恍惚として、愛らしい。
「いっぱい、してくれたね…」
ユリが俺の胸に指を這わせて、満足げに言う。
「嬉しい」
ポツリ、とそう呟いて、俺の顔に自分の顔を寄せ、キスをする。
その仕種も、やっぱり可愛くて。
俺はポニーテールを撫でる。
「当たり前やろ。 お前が好きやねんから」
本心やけど、気恥ずかしくて、なんか顔みて言えんかった。
ユリが軽く微笑む。
「ありがと」
つながったまま、2人とも体を起こす。 お互い浴衣が乱れてひどい有様や。
また、夜空が明るくなる。
「あ、まだ花火やってんだ」
そろそろ花火もシメなのか、またもや派手にスターマインが夜空を彩る。
「あんまり花火見てなかったよね、2人とも」
笑いながらユリが立ち上がろうとする。
俺はユリを押さえつける。
「まだ見れるで、特等席で」
「ちょっと、タイガ、あんっ!?」
突き上げの不意打ちを食らって、ユリの顔がまた快感に歪む。
ユリの膣内で、俺のペニスがまた回復してユリを求める。
俺は座ったままユリの体を後ろ向きにして、両脚を抱えあげる。
「や、やだ、こんな恰好…ああ、あん!」
「ほれ、よう見えるやろ?」
言いながら、下から腰を上下に揺さぶる。
「バカぁ! …で、でも、いい、いいのぉ…!」
「俺も…花火よりも…ユリ、お前が一番や」
再び快楽に向かって駆け出した俺たちを、今夏最後の花火が手荒く染め上げる。
― Fin.―