『PURPLE NIGHTMARE』  
 
「…ここ、どこや?」  
紫の満月が昇る夜の下、俺は正直混乱しとる。  
確か、自分の部屋でウトウトしとって、フッ、と気ィ付いたら何や変な部屋におる。  
足元にゃ妙な文様―魔法陣やろうな―が浮かんでるし、その真ん中にゃ祭壇よろしくデカいベッド。  
辺りには、ワケのわからん薬やら書物やらがぎょうさん詰まった棚。  
ここに魔女でもいりゃ、黒ミサでもおっ始まりそうなフインキ(何故か変換できへん)や。  
そういや、ガキの頃、バアさんとかオカンが言うとったな。  
『紫の月が昇る夜は、おっかない化け物が出るさかい、夜更かしする子は喰われるんよ』って。  
んなアホな、と全く取り合った事はあらへんけど、いざこんなトコに放り込まれたら、そんな気にもさせられてまうな。  
何たって、ここは魔法が当たり前の世界で、かく言う俺も魔法使いの端くれやしな。  
…まぁ、多分、アカデミーの外れの掘っ立て小屋の1つやろ、と見当をつけて表に出ようとした時や。  
「そう、ここは私の秘密の部屋……って、あら? タイガなの?」  
不意に背中から低い女の声がして、俺は飛び上がった。  
「おわぁっ!」  
「…煩いわね。 静かになさい」  
いや、誰もおれへん筈の空間から声掛けられたら、誰かてビビるわな。  
「…ってマラリヤやないかい、ビビらすなや」  
言うて俺は振り返って―目を見張る。  
紫の髪と瞳を持ち、どっか神秘的なフインキ(何故か(ry )のベッピン。 黒ずくめの服装はまんま『魔女』。  
…の筈なんやけど。  
今目の前のマラリヤは、赤いエナメル地のビスチェっぽい服を纏ってる。 長手袋もストッキングもガーターも赤。 赤ずくめ。  
あと、鞭でもありゃあどこぞの『女王様』か、M字開脚でも披露しそうなレスラーみたいないでたちや。  
「そんな事しないわよ…で、『フインキ』って何? ひょっとして、『雰囲気』のつもり?」  
大して面白くもなさそうに、マラリヤが肩をすくめる。  
…って、待てや。  
俺、『フインキ』ってセリフ、口にはしてへんぞ。  
ちょ、俺、心読まれてる?  
「まぁ、そんなとこね。 あなた、結構単純っぽいからこっちも楽でいいわ」  
…あー、俺も会話が楽や。  
「で、マラリヤ、そんなカッコしてこんなトコで何しとん? てか、俺、何でここにおるんや?」  
至極まともな会話を俺は試みる。  
どない考えても、このシチュエーションがありえへん。 どないして俺は自分の部屋からここに来たんや?  
「…まさかあなたが釣れるなんて、ね…」  
「釣れる?」  
「……簡単に言うと、私の能力の1つね。 眠っている男性の精神波を掴んで、自分のいる空間へ転送させるの」  
淡々と言ってのけるマラリヤ。  
…それって、かなりレベル高い術ちゃうん? やっぱし、魔女の力ってやつ?  
「で、たまたま転送してみたら、タイガ…あなただったって訳」  
「ま、まぁ、それはそれでえぇねんけど、何のためにそんな事しとんねん?」  
ブッ飛んだ能力の事についての理解を速攻で諦めた俺は、次の質問をぶつける。  
「お相手探し」  
「は? 何の?」  
まさかこんな夜に、こんな部屋でお茶や将棋って事はないやろけど。  
「馬鹿ね、決まってるでしょ…夜伽の相手よ」  
「ヨトギ?」  
「簡単に言ったら、セックスの相手、ね」  
 
……はぁ。  
表情一つ変えずに『セックスの相手』と言い放つマラリヤの顔を俺はポカンと見ている。  
つまり、何や。  
これは夢や。 しかもエロエロモード全開の。  
俺、そんなにタマってたっけ?  
「夢、って事にしちゃうの? まあ、それでも私は一向に構わないけど」  
「現実と認識せぇ、ってのが無理ある話やろ、こんなん」  
そもそもマラリヤとの接点も薄い所に、こんなエロい展開、漫画でもあらへんわ。  
やのに、いつものペースで喋るコイツは一体何や? どう考えても夢にしか思えん。  
「理解してもらうつもりもないわ。 夢だろうが、現実だろうが、する事は同じよ」  
…さよか。  
「一応確認したいんやけど、ただの欲求不満で男連れ込んでんの?」  
「まさか」  
「新手の口説き?」  
「外れ」  
のらりくらり。 全然、話見えて来ぇへん。 俺はイライラしてきた。  
「…あなたも知っての通り、私は魔女。 私の故郷では、魔力を高める手段の一つとしてこうしてるのよ」  
…要は、男の精吸うて、より高い魔力を身につける、って寸法かい。  
「そんなん、自分の彼氏とすりゃあええんちゃうん? 何のカドも立たへんし」  
確か、彼氏持ちやった筈や。   
「色即是空、空即是色…ってね」  
ソレはソレ、コレはコレってわけかい。 すげぇ割り切り。  
「何もこっちも精気を吸いっぱなし、ってことにはしないわ。 その分の快感は約束するわ」  
「要は、そっちは魔力を高めるために男とヤる。 俺はその分気持ち良ぅなって吸われとけ、って話やな?」  
俺もええ加減、問答に疲れてきた。 話が俺の理解を超えとる。  
「…まあ、そう割り切ってくれると有難いわね」  
そう言うて、マラリヤが一歩俺に近づいてくる。  
「待ってくれや。 お前はそれでえぇか知らんけど、俺の意思はどないなんねん?」  
「あら、私じゃイヤ? …ひょっとして、あなた、童貞?」  
「違う(ちゃう)がな! 俺かて彼女(おんな)おるし、アイツ泣かす真似はでけへんだけや!」  
「大丈夫よ、ユリに言ったりしないから」  
「喋る喋らんの話やなくて! こう見えてもアイツ一筋やねんけど」  
「…見かけと違って意外と身持ちが堅いのね」  
「じゃかあしいわ! てか、マラリヤ、お前にゃ貞操とかあらへんのか!」  
「色即是空…」  
「それはもうえぇて! 何かおかしいで!」  
「概念の違いね…少なくとも心を奪ったり、奪われなければ浮気ではないでしょう?」  
「いや、普通、肉体関係持ったら浮気やろ…」  
「そこが違うのよ…私は今、あなたの心は求めないし、奪わない。 でも、魔女として高い魔力は必要なの。  
 その必要性に付随して、セックスがあるだけ。 快感とかはその代価みたいなものね」  
「艶街の『お花売り』の論理かいな!」  
「私だって、本質的には『愛のあるセックス』派よ。 でも、『目的達成のためのセックス』も必要だから求めるの」  
押し問答するうち、マラリヤが1歩、2歩と近づいてくる。 一瞬、紫の瞳が妖しく光った気がした。  
「ま、待て! こっち来んな!」  
嫌な予感がして、俺はマラリヤを押し止めようとして…俺の腕が全く動かない事に気付いた。  
後ずさろうとした足もそのままや。  
「ごめんなさいね…運動中枢を麻痺させたわ…」  
赤い手袋に覆われたマラリヤの手が、俺の頬に触れる。  
 
「おい! 早よ術を解け!」  
「ダメよ…ジタバタしないで」  
いや、術のせいで、手も足も動かへんがな。  
言いながら、マラリヤは1粒の錠剤を取り出す。  
ソレが何か…俺は一瞬で悟る。  
「ちょ、おま、それはやめ! んなもん飲ますな!」  
「ヘンな事にはならないわよ。 ほんのちょっと、気持ちよくなるだけ…」  
「勘弁せぇ! ま、待て、わ、わーった!」  
錠剤を唇に挟み、口移しに飲ませようとするマラリヤを何とか制する。  
「はぁ、はぁ…わーったわ! これは夢や! 夢ン中で誰とヤったかて浮気とちゃうやろ!」  
もうヤケクソや。   
夢なんやったら、とりあえず好きにするわ。 そうしよ、そうしよ。  
……ま、マラリヤの体に興味ない言うたら嘘やしな。  
「その気になってくれたのね?」  
「だ、だからクスリはやめてんか! そんなん飲まんでも俺勃つから!」  
「そうね。 でも、この薬、結構効くのよ…?」  
言いながらも、マラリヤは錠剤を引っ込める。  
「あと、術も解いてくれへんか?」  
「まずは、私が楽しんでから、よ…」  
そう言って、マラリヤの指が俺の服を脱がせていく。  
……女郎蜘蛛の糸に絡め取られた心境ってこんなんかもな。  
   
「なぁ、一つ聞いてええか?」  
「どうしたの? 嫌になったの?」  
俺の服を脱がせる手を休めずにマラリヤが返事をする。  
「いや、今までも、こないして男引っ張り込んで、ヤってるわけ?」  
「…紫の満月の夜だけよ。 さらに言えば、アカデミーでは初めて」  
記念すべき生贄1号かよ、俺。  
「別に、私は色情狂でも痴女ってわけでもないから。 普通に愛されるのは彼がいれば十分」  
けど、この流れでそのセリフ、俄かに信じるヤツおらんぞ。  
「せやから、さっきも聞いたけど、精気吸うのって、彼氏じゃあかんの?」  
「自分と近い人間から精気を何度も吸うと、変な癖がついて却って魔力向上の邪魔になるのよ」  
…理屈はわからんけど、難儀なんやな、魔女やるのも。  
「さ、もうそんな野暮な話はやめて」  
そのセリフと同時に、俺はほぼ素っ裸にされた。  
「…立派じゃない」  
俺のモノを掴んで、マラリヤが嘆息する。  
普通やったら男として嬉しいセリフやけど、こんなシチュじゃ複雑や。  
「いつもユリが泣いてるわけね」  
「…聞いてんのかい」  
「聞こえただけよ……あの娘の声が大きいのよ」  
「…てか、夢ン中でまで、そんな話やめにせぇへん? 気ィ殺げるわ」  
夢の中でリアルを呼び起こされるのは勘弁や。  
「…こっちも野暮だったわね…」  
そう言うて、マラリヤは俺のモノに舌を這わせる。  
 
手袋越しにも、マラリヤの指は冷たい。  
少しザラリとした感触のマラリヤの舌は熱い。  
一緒くたの感覚を受けて、俺のモノはあっさり勃起している。  
舌が先っちょから根元まで丹念に動いてる感触がゾクリとする。  
恐らく、俺のナニは唾液まみれになっとるんやろう。  
…えらい抽象的やけど、立ったまま麻痺させられて、全然様子が見えへんさかい、触覚で想像するしかあらへん。  
「…せめて、首から上は動けるようにでけへんの?」  
「流石にそんな器用な術は無理よ」  
ペロペロ舐めながら、返事してくる。  
いや、俺をこんな所に飛ばしてくるんやから、それくらい楽勝な気ィするけど。  
「……たまには、為す術なく翻弄されてみなさいな」  
いや、こんな状況やなかったら歓迎するんやけど。  
と、半ばシラけた俺の思考を吹っ飛ばすような快感が、亀頭に集中する。  
「うおっ!」  
いきなり、暖かい粘膜に吸い付かれる感覚。  
俺はのけぞる。 …いや、体は全く動かんから、そんな感じ。  
マラリヤは、飴玉をねぶるように俺の亀頭を集中的に愛撫している。  
…やば、めっちゃ気持ちえぇ…  
視界に入らないのも手伝って、相当感覚が鋭くなっとるようや。  
柔らかい口内の粘膜がくすぐり、絡みつく唾液が熱く表面を灼き、傍若無人な舌が容赦なく快感のツボを嬲る。  
俺のナニが、ますます硬く反り返るのがわかる。  
「…あ、あかん、ヤバいわ…」  
思わず声にしてまう。  
俺も、長持ちする方やと勝手に思っとるけど、これを食らったらさすがにこみ上げてくる。  
ナニの周りの血管と神経がドクン、と弾けるような感覚を覚える。  
「…フフ、気持ちいい?」  
今さら訊かんといて。 わかるやん。  
「ちゃんと口で言いなさい…気持ちいいかしら?」  
「ごっつぅ、気持ちえぇ…」  
はい、素直に言うたったよ。  
「……こんなにドロドロに濡らして…いやらしいのね…」  
いや、アンタがしたんやろが。  
「ほら、こんなに先から垂らしてるわよ…」  
実況されると、こんなに恥ずかしいもんなんか。 できりゃ、もぉ言わんといて欲しいんやけど。  
「ぐぅっ!?」  
いきなりナニを握り締められる。  
「さあ、言ってごらんなさい。 『イカせてください』って」  
「ちょっ…おい…」  
「イキたいんでしょ? やせ我慢せずに、ねだってみなさいな…」  
言いながらゆるゆるとしごいてくる。 唾液と俺の先走り液で濡れたナニがニチャリと音を立てる。  
あーあ、なんか『モード』に入ってもうたみたいやな。  
せやけど、俺もこの生殺しに耐えるのは限界や。  
「…あ、姐さんの口の中で、イカせて欲しいんやけど…」  
あれ?  
自然と、この言葉が俺の口から滑り落ちとる。  
「『姐さん』ねぇ…ま、貴方らしい呼び方ね…いいわ、出させてあげる…」  
そのセリフと共に、俺のナニは熱い粘膜に包み込まれる。  
亀頭からサオの半ばまで激しく粘膜が往復する感触。  
空いた手が、タマをいじる感触。  
それらが、快感という凶器に変わって、俺の背筋から頭へと突き抜ける。  
「で、出る…!」  
一瞬、俺のナニが膨れ上がって、口内で暴れる。  
頭ン中が白くなったと同時に、俺はありったけの量の精液をぶちまける。  
「……んん…んぐ…」  
白くトビかけた俺の耳に、少し鼻にかかったようなくぐもった声が艶っぽく聞こえる。  
 
頭がクラクラする。  
半ば呆けた状態の俺を後目に、姐さん(あ、もうこの呼び方になってしもた)はゆっくりと立ち上がる。  
口許から、俺の出した精液が一筋零れていて、その図にまた頭がクラクラする。  
そして、姐さんは顎を軽く反らして…口の中のモノを飲み干しよった。  
「……フフ、濃いわね」  
艶然と笑みを浮かべ、飲み残しの液を舌ですくう。  
一瞬、何かの力を感じる。  
と、目の前の姐さんから何かのオーラが出た―ように見えた。  
瞳は輝きを増して、白い肌もますます白く輝いとる。 …闇夜に輝く類いの白さやけどな。  
ふ、と姐さんが俺の前に来て、軽く背伸びして触れるだけの口付けを落とす。  
…つい今の今まで、俺のナニ咥えてた口、と考えるとちょっとアレやな…  
と考えた瞬間、俺の体の戒めが解かれる。  
手足が動く、と思ったのも束の間、足をとられて床に尻餅ついてしもた。  
「どうだったかしら?」  
「あない気持ち良かったん、初めてですわ…」  
なぜか口調が敬語モードに入ってる俺。 正直、姐さんに呑まれとる。  
「フフ、言ったでしょう? ただ吸い取るだけじゃないって…」  
「確かに……で、姐さん」  
とりあえず、俺としては、これを確認したい。  
「これで終い…でっか?」  
只管吸い取られるのも勘弁やけど、コレだけで終わられてもやるせないさかいな。 夢なんやし。  
「まさか、夜は長いわよ…それに、回復してきたでしょ? 口移しに力を送ったから」  
言われて気ィ付いた。 体の疲労感が吹っ飛んでる。 で、下もビンビンに復活。  
「ホンマや…ほな…」  
と、俺が手ェ伸ばそうとしたら、  
「まだよ…もう一回飲ませて」  
姐さんに制される。 また、マグロかよ。 いや、それはそれで決して悪ゥないんやけど。  
そんな事思っとる間もなく、へたりこんだ姿勢のままの俺の股座に姐さんの頭が潜り込む。  
はも。  
ノーモーションで俺のナニを深く咥えこんでますよ。  
でもって、舌を巻きつけるように絡ませながら、激しく頭を上下させとります。  
俺、あまりの気持ちよさに腰が震えとる。  
「うわ、あ、姐さん、激しすぎやって…!」  
さっきは触覚のみやったけど、今度はキッチリ視覚でも感じる。  
妖しい美貌の魔女が、ホンマ美味そうにフェラチオしてる図ってのは、なかなかないさかいな。  
ぴちゃ、ぺちゃ、ずず。  
俺の声など聞こえてへんかの様に、姐さんは音立ててしゃぶり続けとる。  
思わず腰が跳ねて、喉の奥を突き上げてしもた。  
「んくぅ! ぐぐ…」  
「あだぁっ!」  
ナニがブチ当たった衝撃で姐さんがむせて、その拍子に歯を立てられた俺は激痛に悲鳴をあげてまう。  
「けほけほ…暴れん坊さんね…」  
むせて涙目になった姐さんが軽く睨む。 いや、俺もナニを噛まれたんですけど。  
「いや、すんまへん、気持ち良かったさかい、つい…」  
せやけどなぜか謝ってもうてる俺。 完全に主従の「従」やな…  
「どうしようかしら………お仕置きかしら?」  
言ってる姐さんの顔、ごっつぅ楽しそうやねんけど。  
これ、ホンマに夢やんな? 自信のうなってきた…  
 
姐さんが棚からビンを取り出す。  
蓋を取ると、甘い香りがあふれてくる。  
「それ、何でっか?」  
「安心なさい…ハチミツよ」  
確かに、黄金色の蜜の香りや。 一さじ掬って舐めさせてもらう。 …確かにハチミツや。  
「で、それでどないするつもりでっか?」  
「こうするのよ」  
刷毛を取り出す。 あ。 なるほど。  
俺が思うた通り、刷毛でハチミツを掬い取り、俺のナニに塗りたくる。  
ぺたぺた、ぬりぬり。  
「うは、こそばい(くすぐったい)!」  
刺激に俺のナニが跳ね上がる。 …節操のない暴れん「棒」やな、我ながら。  
「フフ、上手いこと言うわね…」  
いや、親父ギャグの類いやと思うねんけど。  
「…できたわ」  
ハチミツでテラテラ光った肉の棒。 なんか、アホみたいな図や…  
「…で、そのままパクリ、といくんでっか?」  
姐さんは応えずに薄く笑って、再び頭を下げる。  
「くはっ!」  
俺のセリフは裏切られた。 いや、いい意味で。  
姐さんはしゃぶっている。 俺のナニの付け根を円柱に沿うように、ハチミツを舌で掬っている。  
それも確かに気持ちええねんけど、問題はそこやない。  
根本をペロペロやりながら、さっきの刷毛で、亀頭をくすぐってくる。  
粘膜にくるまれる刺激とは違う、ピンポイントな刺激と、異質な蜜にまみれる図に俺のナニはますます硬くなる。  
姐さんは、刷毛の手を休めず、丹念に蜜を舐め取る。 根本から裏スジ、と思えばタマにまで。  
時折刷毛からハチミツが垂れ落ちて尿道口を叩く。  
俺の先っぽから、白っぽい先走り液が吐き出されて、ハチミツとブレンドされてる。  
シュールな絵図と、舌の刺激と、ハチミツの甘い香りにアテられて、俺の意識が絶頂を求めだす。  
つ、と刷毛がどけられる。  
「いい感じ…じゃ、そろそろ本格的にいただくわ…」  
え? 今ので前菜かいな!?  
俺がうろたえる間もなく、暖かい感触に支配される。  
「うぉわあああっ!?」  
いや、別段、激しく動かされとるわけやない。  
せやけど、姐さんの口の粘膜が細かく蠕動して、俺のナニをくすぐる。  
そして、粘膜の襞に合わせて、舌がリズミカルに、ザラリと蜜をこそげ取る。  
何か、木の蜜に群がる虫に這われてるような、恐怖心と快楽を同時に味あわされてる。  
「あ、あかん…!」  
俺の腰が浮く。 もう、出したい。  
ぎゅ。  
「ぐえっ!?」  
「…まだイっちゃダメよ…我慢なさい…」  
思いっきしナニの根本を握り締めて、姐さんが俺の射精を阻止。  
そいで、またもや咥え直して、根本を握り締めたまま俺を責める。  
「んむ…はむっ…」  
…なんか、ごっつ美味そうに食べとる。 ホンマに魔力向上のためなんやろか?  
普通に「好き」なだけちゃうんかいな。  
…いや、少しでもシラけた事考えとかんと、すぐイってまうねん。  
姐さんの口の動きがさらに激しくなってきた。 マジ、ヤバいって、この快感。  
俺、歯ァ食いしばって、少し涙目になりながら耐えてるような有様や。  
つ、と姐さんの空いた手がスルリと俺のタマを越えて、その奥のケツの穴に伸びる。  
え、と考える間もなく、細い指が容赦なく挿れられ、俺は悲鳴をあげる。  
「そこ、アカンて…!」  
俺の情けない声を無視して、姐さんは指を深く潜りこませる。 そして、ある一点で止まると、グイッ、とそこを刺激する。  
明らかに「イカせる」攻撃に、俺は限界を超えた。  
俺がのけぞるのと同時に、ナニの根本の手がパッと離れる。 で、せき止められてた精液が一気に噴き出す。  
さっきよりも明らかに大量のものを、ホント美味しそうに飲み干してるのを俺は掠れた意識で感じていた。  
 
ほけーっとアホ面晒してる俺に構うことなく、姐さんはまだ口を離さへん。  
舌が残りカスを掃除するように蠢いている。  
くったりしてしもた俺をよそに、顔を上げた姐さんは、ますます絶好調モードみたいや。  
ますます、その美貌に磨きがかかっとる。 何か背徳的なモンをくすぐられるような美貌。  
紅色の舌がチロリと姐さん本人の唇を舐めとる絵は、そらぁ「エロい」の一言じゃ片付かへん。  
で、また軽い口付け。  
一瞬で俺の体が回復する。  
「まだ大丈夫ね……いくわよ…」  
とまたしても俺を吸い取ろうとする。  
「ちょ、待ってぇな、姐さん!」  
慌てて俺は制する。  
「あら、もうお腹いっぱいなの?」  
「違うって! そら、まだまだイけるけど…その、少し休ませてくれまへん?」  
「回復したでしょ? ほら、ここだって…」  
と、カチカチに勃起してるナニを掴まれる。  
「いや、体やなくて、精神疲労が激しいんでっけど」  
そらそうや。  
こんだけ深くて激しい快感を立て続けに喰らってたら、気持ちの疲労も出るわ。  
しかも、なんぼ気持ちえぇ言うたかて、一方的にヤられてるってのも、俺としては微妙なストレスなわけよ。  
「…なるほどね。 私もイカせたい、って事?」  
「そら、吸われてるんも悪ぅないんでっけど、やっぱしヤるんやったら、お互いにギブ・アンド・テイクと洒落込みたいんですけど…」  
(恐らく)リアルで俺の精神から魔力を吸い上げてる姐さんは実利あるけど、俺は夢の中の快楽だけ。  
しかも、折角の姐さんの体を何一つ楽しめないのは、俺が消耗するばかりで正直不公平感あるで。  
「…残念だけど、それはまだまだ先よ」  
せ、殺生や。  
「ちゃんとセックスはさせてあげるわ。 でも、まだ、お・あ・ず・け」  
「……何か俺イジって楽しんでまへんか?」  
「それは否定しないけど…」  
一瞬言いよどむ。 ま、何か理由があるんやろな。  
しゃあない。 夢の中とはいえ、ここは姐さんが圧倒的に有利な場のようやし、変に機嫌損ねていらんトバッチリ喰らうんもシャレにならんし…  
「へいへい、しばらく気ィ済むようにしたってください」  
決めた。 俺はしばらく、マナ板の上の鯉になったる。  
それで姐さんの気ィ済むんやったら安いモンや。  
「…ありがとう、タイガ」  
…こんなんで礼言われるなんて、思いもせぇへん。  
で。  
小一時間、俺はとことん吸われる、気持ち良ぅなって出す、回復する、でまた…を繰り返す。  
…端折り過ぎやて?  
実際、徹底的に「ヌカ六」状態になってみぃ。 途中から「気持ちええ」しかわからんようになるんや。  
小一時間問い詰めるんは、それからにしてや。  
 
「…あ、姐さん…さすがに俺、キツいんやけど…」  
ホンマ、もう何回射精したかわからへん。 このトシで赤玉出るんちゃうやろな。  
「もうギブアップ?」  
「いや、せやから、体は姐さんが回復してくれとるからナンボか持つけど、その…」  
その体に触れたい、いや押し倒し…いやストレートにヤりたい。  
「まだ、もう少し吸いたいのに…」  
「せやけど、これ以上は俺も気持ちが惰性になってまうだけやし…」  
夢でここまで精神消耗したぁないで。  
「……しょうがないわね」  
姐さんが肩をすくめて立ち上がる。 「OK」のサイン。  
スタスタと、部屋の中央のベッドの縁に立つ。 …やっとベッドが本来の役割果たすな。  
俺も立ち上がり、姐さんに寄り添う。  
「…さあ、いらっしゃい…」  
艶めかしく誘いがかかる。  
俺は手を伸ばし―惑う。  
このビスチェ、どないして脱がすんや? …何でこういうエロい服って機能的やないんやろ?  
「…後ろよ」  
俺の戸惑いを察して、姐さんがレクチャー。  
背中側に手を回すと、なるほど、細いファスナーがある。  
ファスナーを下ろすと、固く守られていた姐さんの体が解放される。  
ビスチェを下まで下ろして、脚のエナメルブーツも脱がす。  
残るは、手のロンググローブとガーター、ストッキングだけや。  
…けど、俺はここで脱がすのをやめる。  
いや、抜けるような白い肌に赤いアクセントの組み合わせ、男のフェティズムをそそるやん。  
姐さんは当然、下にランジェリーとか着けてないから、またエロい眺めなんや。  
「…あまりジロジロ見ないでよ」  
姐さんの決まり悪そうな表情も、ええもんやね。  
「ほな、優しくいきまっせ…」  
と俺はキスを試みる。 さんざんしゃぶられてから、ってのはアレやけど、つかみとして、これは譲られへん。  
「…ストップ」  
いきなり止められた。  
「…今さらそれはあらへんで、姐さん」  
「違うの…ディープキスはあげられないわ」  
…なんでここだけ、乙女の貞操観念が働くんやろ? ま、でも、気持ちはわからないでもないな。  
「わかりましたよ、ほな」  
「きゃっ!」  
言って俺はいきなり姐さんをお姫様抱っこにして、少し手荒くベッドに落とすように横たえる。  
「へぇ、ただしゃぶってたってワケでもあらへんようでんな」  
無防備に横たわる姐さんを見下ろしながら、俺は言う。  
細い体に絶妙のバランスで実っている乳は、横になっても見事な形を保ってるし、内腿には愛液の筋が零れているのが見て取れる。  
「…煩いわね…あ、あんっ!」  
俺に目を合わせず姐さんが憮然と返すが、俺がお腹の辺りをサッと撫でると色っぽい声が上がる。  
「感じやすいんやねぇ、姐さん」  
俺は姐さんに覆いかぶさると、たわわな乳に口を寄せ―ると見せかけて、綺麗な形をした耳たぶを甘く噛む。  
「きゃあうっ!?」  
予測をしてへんかったんか、想像以上の反応や。  
「ここ、弱いんでっか?」  
俺は耳を重点的に噛み、舌でつつき、時には吐息を当てて攻めてみる。  
「くぅっ、そ、そんなこと…ああっ!」  
「せやけど、体は正直みたいでっせ」  
耳への攻めを止めずに、俺は内腿をスッ、と掃く。  
「あん! …は、初めてよ、そこを触られるのは…んっ…」  
へえ。 意外とオーソドックスなセックスしかしてへんのやな。  
俺は反対側の耳も同じように攻める。  
「変態扱いは、や…ん…やめて…うう!」  
さんざフェラチオしてるだけやと思ってたけど、相当昂ぶらせてたんやな、もう反応が激しい。  
俺の手が、脇腹をくすぐるように撫ぜると、  
「…んっ、くうううぅぅっ!」  
堪えるような声をあげて、姐さんは軽く達したようや。  
…一瞬、俺の視界がブレたような気がした。 …俺も昂ぶってきたみたいや。  
 
「…どないでっか?」  
「…煩いわね…」  
姐さんが俺を潤んだ眼で睨む。 その表情もまたええわ。  
「まだ、これからでっせ」  
軽くイカせた事に満足感を得て、俺は両手でたわわな乳を強く掴む。  
「あん!」  
俺の体の下で、細身の体がしなる。  
俺は乳を中央に寄せるように揉みしだきながら、尖った乳首を舌で弾く。  
「きゃ、はうっ…!」  
「姐さん、結構スケベなんですな、どこ触ってもこんなに感じて…」  
「だ、黙って…! そんなんじゃ…」  
言葉で抗う姐さんを半ば無視して俺は右手を下へ滑らせ、下半身のうるみの中心に触れる。  
「くうっ!」  
また、姐さんの体が跳ねる。  
また、俺の視界がブレる。 …何や、一体?  
それでも俺は一瞬の疑問のことは片隅に追いやり、姐さんをイカせることに専念する。  
「ごっつ濡れてますぜ…」  
「………」  
涙目でキッと睨む姐さんを、少し可愛い、と思った。  
「ほら、内腿までこんなに…」  
言いながら、指を紅く尖ったクリトリスに擦り付ける。  
「あん!」  
姐さんは眼を閉じ、白い喉を反らす。  
「…気持ちええか?」  
口調をぞんざいに戻して、俺は問う。 指は勿論止めてへん。  
「…う……先刻の仕返しのつもり…?」  
「はて、何の事やろ? もう一度訊くで、気持ちええか?」  
「…見てわからないの?」  
「ちゃーんと口に出して言うてぇな」  
俺はクリトリスを親指に任せて、中指と薬指を膣内(なか)にくぐらせる。  
「くふぅっ!」  
「ほら、我慢せんと。 聞かせてぇな、色っぽい声を」  
膣内の敏感なスポットをゆるゆると擦りながら俺は言葉で攻めるのを止めない。  
姐さんの体に細かい震えが疾る。 また俺の視界にノイズ。  
姐さんは俺に視線を投げかける。  
その紫の瞳は潤みながらも、淫らで直情的な強さがある。  
「…き、気持ちい、いい…だから…!」  
貌を紅く染めて、雌の視線で姐さんがねだる。 瞳が妖しく光る。  
このセリフを言わせたことに俺は少し溜飲を下げ、笑みを浮かべて膣内から指を抜く。  
そして、すらりとした両足を押し開いて、いざ―  
「……あ、あれ?」  
俺は腰を突き出そうとした姿勢のまま固まる。  
「……そこまでよ…」  
姐さんが鋭くそう言うて、俺を倒す。 マヌケな姿勢のまま木偶人形のように俺は転がる。  
「あ、姐さん?」  
「調子に乗りすぎね…た、確かに貴方の愛撫は見事よ…本当にすぐイクと思えたもの…」  
そこまで言うて、姐さんは、また雌の視線で俺を見下ろす。  
「でも、ここの主人は私…主導権は渡さないわ…」  
え!? またしても、俺、マグロ!?  
「挿れてあげるんだから、感謝なさい…」  
言うて、姐さんは、膝立ちのまま固まった俺の両脚に触れる。 …あっさり自然な形に脚がほぐれる。  
……ちょ、やっぱしできるんやんか。 麻痺の一部解除。  
そんな俺をよそに、姐さんは俺に跨る。  
 
「んふぅ……あ…ん」  
俺の頭上から艶めかしい吐息が聞こえる。  
魔法で見事な「マグロ」と化した俺の上で、姐さんが悩ましく腰を振っている。  
「ああ…はぁんっ! んっ…!」  
そんな喘ぎ声の合間から、グチョグチョと粘った水音が部屋に響いとる。  
姐さんの膣内(なか)は、結構キツく締めつけてくるのと、もちっ、と吸い付いてくる感触で、ゾクリとする。  
「あ、姐さん…せめて手だけでも動かさせてんか?」  
俺は精一杯の懇願を試みるが、  
「ダメ…うん…貴方はそのまま…」  
あっさり却下。  
ぴた、と一旦動きが止まる。  
「……? どないしはったんですか?」  
姐さんは何も言わず、俺の首筋に顔を寄せる。  
一瞬、吸血鬼か女夢魔に寄られた気分になって俺はビビる。  
…かなり長いこと、俺の首にキスを落として、再び騎乗スタイルに戻る。  
「何のマネでっか?」  
「…内緒」  
…もぉええわ。  
で、姐さん、また動き始める。  
今度は角度をやや浅く変えて、スポットに擦るように細かく腰を上下させる。  
丸見えの結合部から、愛液の飛沫が跳ね、中ではぐいぐいと厳しく締め上げられとる。  
「うは、し、締まる!」  
俺はまたも情けない声で応えてしまう。  
「ああああんっ!」  
姐さんも、そこが感じるのか、一際大きい声で喘ぐ。  
…しばらく忘れてたけど、俺の体を快感が支配し始める。  
激しく突き上げたい衝動に駆られるけど、いかんせん、俺、マグロや。  
ただただ、姐さんのリードに翻弄されるしかあらへん。  
姐さんの腰の動きがますます複雑になり、快楽を深く追い求める。  
深く飲み込み、奥でグリグリとねぶる。 と思えば、浅い部分で細かく擦る。  
そのたんびに、膣内の襞は俺の亀頭やらサオやらを甘く噛み締め、震える。  
…あかん、も、もう出る。  
そう思た瞬間、さっきからチラつくノイズが一層激しくなってきた。  
同時に、姐さんの動きが激しくなり、体の震えが明らかに見て取れるようになっとる。  
「はぁ、はぁ、も、もう……!」  
どうも姐さんの絶頂も近そうや。 いや、俺も大概限界やけど。  
「ざ、残念だけど、もう…ダメ……! イッちゃう…っ!」  
残念? 何が『残念』かはよくわからへんけど、襞が激しく俺をイカせようと、痙攣しながら締め上げる。  
「あ、姐さん、で、出るっ…!」  
「はぁっ、ああああああっ!」  
2人して同時に絶頂に達する。  
激しく奥底に打ちつける感覚と共に、俺の視界が白とノイズに支配され、意識が遠くなった。  
「……術が切れたわ…今日は…あっ…これまでね……」  
遠い意識の中で、姐さんの声が甘く殷殷と響いていた…  
 
ガバリ、と俺は体を起こす。  
「……お、俺の部屋や…な?」  
マンガやバイク雑誌なんかが雑然と放り出された、いつもの俺の部屋。  
体を見る。 …ちゃんと寝てる時の服を着ている。  
時間はもう明け方や。  
……夢、やったんやな…  
普通に考えたら、当たり前の事やけど、そんな事にも俺は内心ホッとした。  
にしても、妙な夢やったわ。  
寝汗が酷い。 ブリーフの中もイヤな感触や。 間違いのぉ汚してしもうてる。  
俺は服を脱いで、下着姿でバスルームに入る。  
頭からシャワーを叩きつけて、汗を流す。 やっと眼ェ冴えてきた。  
汗からモヤモヤから全部流して、サッパリして俺はバスルームから出る。  
体を拭い、ふと鏡を見て、―俺は凍りつく。  
首筋にキスマーク。  
な、何でや?  
確か、夢ン中であ…いや、マラリヤに口付けられた箇所やけど、なんで現実に跡ついてるんや?  
あれ、夢やろ? あれが現実とかありえへん、そや、あってたまるかいな!  
俺は蒼ざめたまま頭を振り、服を着替える。  
そして、キスマーク状の跡の上を掻き毟り、上から絆創膏を貼ってとりあえず隠す。 …古典的って言うなや。  
部屋の明かりを点けて、椅子に座って考えてみる。  
…せやけど、現実味がなさすぎる。 なんぼ魔法世界でも、同級生とこんな形でイタすのは考えられん。  
まして、いかに「魔女」と渾名されてようと、そこまでの現象は発生せんはずや。  
…とりあえず、俺の妄想バンザイ、って事にする。 もぉこの件は忘れよ。  
不意に、俺の携帯が鳴る。  
…ユリからや。  
「…何や、こんな朝早うから」  
「タイガッ! どこ行ってたのよ!?」  
「朝からワメくな! 何やねん、薮から棒に?」  
「怒鳴りたくもなるわよ! 何回電話しても出ないし、部屋にいる気配ないし!」  
「はぁ? 俺、部屋で爆睡しとったぞ!?」  
「ウソ! アタシが部屋に行ったら誰もいなかったじゃない!」  
「ま、待て! そんなアホな話が…」  
言って、俺の中である不安がもたげる。  
俺…ひょっとして、ホンマにマラリヤとヤッたのか!?  
いや、あらへんあらへん、あんなんは絶対夢の中でしかありえへん。  
「誰といたのよ! この浮気者!」  
これ、面と向かってしゃべっとったら、間違いなくユリにボコボコにシバかれてるとこや。  
「せやから、ホンマに俺寝とったがな!」  
…しばらく埒もない口論を続けて、ユリが俺の部屋に飛び込んできて、問答無用でシバかれて、(中略)、ひとまず落ち着いた。  
「……何やねん、まったく…」  
食堂で朝メシを食いながら俺はボヤく。  
夢の中から朝のここにきてまで、全く休まらない。  
「あら、おはよう、タイガ…珍しく早起きなのね…」  
いきなり背後からマラリヤに挨拶され、俺は少し固まる。  
「お、おぉ、まいど…」  
そう返す俺に、  
「…姐さん、って呼ばないの?」  
ぼそり、と耳元にそう一言残し、マラリ…姐さんは離れた席へ向かう。  
俺の手から、箸と茶碗が同時に、落ちた。  
 
続き? あってたまるかいや! いや、あらへん…よな?  
 
― 一応、終 ―  

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