風呂の湯を全身に浴び、リエルはほうっと息をついた。
アカデミーの風呂は、成程魔法を応用して温度が変わらないようになっているらしい。
二回目に入った今でも、三時間前と同じ温度のままだ。
「一日の疲れが落ちるようです〜・・・」
婆くさいかな、と首を傾げて、でも誰にも見られていないし、いいかなと思った。
・・・ドラゴンの子と眼が合った。
「ド、ド、ドラゴン〜!?」
「♪」
ぴちゃぴちゃと風呂桶のなかで水浴びをしていたドラゴンの子が、リエルを確認したとばかりにリエルに向かって飛んで来る。
「はわぁ!?」
後ずさろうとして、リエルは浴槽に頭から横転してしまう。
取り合えず呼吸の為に頭だけ出すと、ドラゴンの子がリエルの頭に着地する。
頭の上の微かな重みが、なんだか微笑ましくて、リエルは小さく笑みを漏らした。
小さな小さな珍入者を丁寧に洗ってやったリエルは、風呂を上がった後、飼い主探しをしようと考えていた。
このドラゴン、幼いゆえかひどく人懐っこいが、それでもリエルが飼える代物ではない。
ただ、一つ問題が。
(持ち主の検討が付きません・・・)
アカデミーの生徒は、基本的に常時ペットを引き連れているが、真紅のドラゴンなど珍しいもの、購買部にいる自分でも見たことがない。
誰だろう、と考えて、十数分考え込んだ後、サンダースと言う人物に思い当たった。
アロエやらルキアやらと同期の、人。
アロエが言うには「優しいお兄ちゃんみたいな人」、ルキアが言うには「何でもそこそこ出来る人」、マラリヤと夫婦漫才をしていた不良が言うには「極道や。あんだけキツい目つきは極道以外にあらへんわ。むしろ閻魔やろな」。
つまり、
(優しいお兄ちゃんで、何でもそこそこ出来て、それでいて極道みたいな閻魔様〜!?)
リエルの頭が限界を越えた。