「ふぅ、後は飾りつけをきれいにしたら出来上がりですぅ」  
ホッと一息、私はそう呟く。  
明日は、寮でのクリスマスパーティー。  
私は、お菓子作りを任されている。  
もともと、お菓子作りは大好きだから、ついつい張り切っちゃって、ケーキもクッキーも盛りだくさんになっちゃった。  
「ちょっと休憩っと」  
エプロンを外して、キッチンから部屋に戻る。  
「あ、そうだ」  
またキッチンに取って返して、ミルクティーを淹れる。  
「…ふぅ、おいしい」  
私の少し疲れた体に染み込むようで、心地いい。  
しばらくゆっくりしながら、明日の段取りを思い浮かべる。  
お菓子はほぼ仕上がったし、お料理はシャロンさんが用意するそうだし、  
会場の飾りつけはルキアさんたちがして、ゲームやプレゼントはミランダ先生が用意して…  
「あ、そうそう、お洋服!」  
私はクローゼットから服を取り出す。  
勿論、サンタクロースの衣装。  
女の子用に作っておいたもので、赤と白の基本的な組み合わせだけど、少しデザインを変えている。  
購買部のリエルさんの衣装を参考にした、長めの袖をセパレートにしたメイド調のアレンジ。  
ちょっと人を選ぶようなデザインだけど、なかなか可愛らしい出来かな、と思う。  
鏡の前で合わせてみる。 …似合うかなあ?  
ちょっと着てみないとわからないなあ。  
「ちょっと着てみちゃおうっと」  
私はそう言って、―お料理で手や体が汚れている事に気付く。  
「いけない! 一旦、お風呂に入らなきゃ」  
私はベッドの上にサンタの衣装を置くと、バスルームに向かいシャワーを浴びる。  
「ふぅ…」  
少し冷えた肌に気持ちいい。 手と体の汗や汚れを軽く洗い流すだけにして、私はバスルームから出る。  
濡れた体を拭い、ふと鏡を見る。  
小柄で、まだまだ発育途上の体。  
「うーん、やっぱりあの衣装、自信ないですぅ…」  
自分で作っておいて何だけど、やっぱりあの服って、スタイルのいい女の子に似合うのよねぇ。  
私は、ルキアさんみたいにグラマーでもないし、シャロンさんみたいなモデル体型でもない。  
ユリさんやヤンヤンさんみたいに引き締まった躍動感もなければ、マラリヤさんのような妖艶さもない。  
ごくごく普通の少女体型。  
「でも、私だって…」  
いつかは、魅力のある女性の体型になるはずだよね。  
なんて事を考えながら、裸のまま自分の部屋へ戻る。  
 
自分の部屋へ戻り、改めて鏡の前でサンタさんの服を合わせてみる。  
「ふふ、可愛く…見えるよね」  
彼はこれを見たら、どんな顔をするかしら?  
『綺麗ですよ』とか、『クララさん、一段と可愛いですよ』とか言ってくれるかしら?  
「…ね、カイルくん」  
頭の中で、はにかみながらそう言う恋人の図を思い浮かべて、思わず目の前にいない彼に声を掛けてしまう。  
それとも、大胆なデザインにドギマギしてしまうかなぁ?  
彼の反応をいろいろ勝手に想像しながら、私は上の空で衣装を着ける。  
スカートを穿き、上着を付け、それからセパレートの袖を通す。  
鏡の前に現れる、即席の女の子サンタ。  
「ヘン…じゃないですよね」  
そしてストールに腰掛け、これまた赤と白のブーツをつけて、サンタ帽をちょこん、と乗せる。  
「ふふ、なかなか可愛くできました」  
誰もいないから、自画自賛。  
私は鏡の前でサンタ姿の自分自身を見つめる。  
うん、サイズは大丈夫だし、背中とかお尻のあたりもほつれとかはない。  
クルリ、と一回転してみて、私は悦に入る。  
またストールに腰掛けて、明日の事をいろいろ想像してみる。  
『メリー・クリスマス!』  
『ク、クララさん!?』  
やっぱりドギマギしている彼。   
『ほら、カイルくんも一緒に!』  
彼の手を引っ張って、シャンパンのグラスを持って、  
『乾杯!』  
なんて言って、2人で盛り上がって、それでもやっぱりカイルくんは目のやり場に困ってて…  
『カイルくん』  
『な、何ですか?』  
『私のこの衣装、似合ってます?』  
『あ…その……えーっと…』  
『……私なんかじゃ、ダメですか?』  
『っと、とんでもない! すごく……可愛いです』  
『…ありがとうございますぅ』  
なんて言って、ピッタリ彼に寄り添えば、また彼は顔を赤くして、誤魔化すように頭をポリポリ掻いて…  
そんな事を考えつつ、私は何とはなしに部屋を出て歩く。 想像はまだ続く。  
それから、2人で部屋に戻って、  
『カイルくん、ちょっとそこで待っててくれます?』  
『は、はい…』  
で、私は部屋に入って、『プレゼント』を用意して、でも、わざと少しじらして時間かけて。  
恋人同士の時間も期待しながら服を緩めて…  
コンコン。  
「クララさん、入っていいですか…?」  
 『ふふ…どうぞ…』  
 精一杯、色気を持たせた返事をして。  
ガチャリ。  
ドアが開き、カイルくんが私の部屋に入ってくると同時に、私は現実に引き戻される。  
「キャッ!」  
思いっきり驚いて、足が滑り、彼に足を開く形でしりもちをついてしまう。  
 
「ク、クララさん! 大丈夫ですかっ!? …………!」  
カイルくんが慌てて私の体を起こそうと手を差しのべ、―その姿勢のまま凍りついている。  
そりゃあ、そうよね。  
私はといえば、サンタさんの恰好してはしゃいで、挙句、本当に彼が来たことにパニックになってコケちゃってるし。  
しかも、想像…っていうより妄想が暴走して、現実に全く気付いてなかったし。  
「ご、ごめんなさいっ…!」  
私にできるのは、顔を赤らめて謝るだけ。 姿勢を直す余裕もない。  
「本当に何でもないです、ないですから!」  
自分でも何を言っているのかわからない。  
「あ…いえ…その…」  
カイルくんもようやく我に返ったみたいだけど、ひどく慌てて瞳を反らす。 彼も顔が真っ赤だ。  
「その……姿勢を正していただけると…えー……ありがたく…」  
たどたどしく彼が指摘する。  
言われてやっと私は、彼に向かってスカートの奥を見せてしまっていることに気付く。  
慌てて脚を閉じ―ようとして、とんでもないことに気が付いた。  
 
スカートの下に、 何 も 穿 い て い な い ことを。  
 
「……………っ!」  
声にならない悲鳴をあげて私は縮こまる。  
バカバカ、私ったら本当にバカ。  
ヘンなこと考えて有頂天になったまま着替えたりするから、こんなドジをしてしまうんだ。  
恥ずかしい、恥ずかしい。 消えてしまいたい。  
顔を真っ赤にして、涙目になって私は頭を振る。  
「ご、ご、ごめんなさい! で、出直しますから!」  
カイルくんがアタフタしながら踵を返す。  
「ま、待って!」  
反射的に私は彼を呼び止める。  
彼は恐る恐る振り返る。  
「……ごめんなさい、カイルくん…ヘンな所見せちゃって…」  
本当に泣きそうになりながら私は謝る。  
「い、いえ、僕が悪いんです、声がしたからといって、勝手にドアを開けてしまって…」  
カイルくんもしどろもどろに謝る。  
「…ほんと、私、バカですね…」  
「そ、そんなことないですよ」  
「明日、カイルくんと過ごす事ばっかり考えてて…でも、こんなとこ見せちゃって…私、ただのバカで変態みたい…」  
涙がこぼれる。  
「…クララさん」  
カイルくんがそっと私の両肩に手を置いて、屈みこんで私を見つめる。  
「そんな事を言わないで。 た、確かに驚きましたけど…僕は、そんなクララさんも好きなんですから」  
「カイルくん…!」  
「だから、泣かないで。 折角の可愛い顔も衣装も台無しですよ」  
「…!」  
私は思わず彼の胸にすがり、声をあげて泣く。 彼は何も言わずにそっと私の体を抱き締めてくれる。  
「…落ち着きましたか?」  
少しの間をおいて、彼の優しい声が届く。  
「…はい」  
私は顔を上げる。 −そしてそのまま優しいキスを受ける。  
カイルくんは、唇を離すと、何も言わずに私を抱き上げ、入り口のドアを施錠して、私を部屋の奥へ連れて行った。  
 
ベッドの上に横たえられる。  
「…大丈夫ですか?」  
「…はい。 でも…」  
私は口ごもる。 こんな子でも、彼はそのまま愛してくれるのか。  
彼は自分の眼鏡を外し、私の眼鏡も外すと、  
「何も言わないで、クララさん」  
言って、そのまま深いキスを浴びせてくれる。  
私は、彼の頭に腕を優しく廻して抱き寄せる。 また涙がこぼれる。  
………こんなバカな子で、ごめんなさい。 でも、私もカイルくんが、大好きです。  
「…んぅ、ふぅ…」  
彼のキスがどんどん甘くなり、私の声も比例して甘くなる。  
ゆっくりとカイルくんの唇が離れる。  
そして、私のブーツを脱がせる。  
私はドキドキしたまま、されるがままになっている。  
彼とこんなことするのは初めてじゃない。  
告白したその日に最後までねだって結ばれて、彼の誕生日の時など、私の暴挙ともいえる『プレゼント』に応えてもらったり…  
逢うたびに毎回、というわけではないけど、彼は私を愛してくれる。  
でも、正直、今日のこの流れは自分でも情けない。  
「……こっちも脱がせていいですか?」  
カイルくんの声に、私は意識を戻す。  
「…はい。 で、でも…わ、笑わないで…」  
そう。 私はもう全て気付いている。 ショーツもそうだけど、ブラもつけるのも忘れている。  
「?」  
カイルくんは、少し不思議そうな顔をしながらも、私の上着をはだけさせて―やっぱり、一瞬手が止まる。  
サンタの衣装からダイレクトにのぞく、私の肌。  
まじまじと見下ろされ、私はまた赤面する。  
優しい言葉を掛けてくれてはいても、やっぱり呆れられてしまっただろう…  
いたたまれなくて、また体を縮めて大事なところを隠そうとする私に、  
「…いや、ごめんなさい、思わず…見蕩れてしまいました…」  
え?  
「衣装との対比があまりに可愛らしくて…何も恥ずかしくなんかないですよ」  
う、嘘? てっきり『退かれる』と思ってたのに。  
軽く呆然とする私に、いつもと変わらない微笑を湛えて、カイルくんはそう言ってくれる。  
「そ、そんな…可愛くなんて…」  
と首を振る私に、  
「本当に可愛いですよ、クララさん。 だから…」  
言って、私の両の鎖骨あたりに優しく手を置く。  
「そんなに恥ずかしそうに、隠れようとしないでください」  
置かれた手が優しく肌を滑る。  
「………はい」  
私は、強張らせていた体を緩め、彼のリードに体を委ねる。  
私の服をはだけた後、カイルくんが服を脱ぐ衣擦れ音が聞こえる。  
 
「あ、あの…」  
私はおずおずとカイルくんに尋ねる。  
「服、着たままで……するんですか…?」  
今の私の恰好は、帽子とブーツは外されているけど、上着ははだけただけ、スリーブもスカートも着けたまま。  
微妙に気恥ずかしいんですけど。  
「…やっぱり、イヤですか…?」  
カイルくんが申し訳なさそうな表情をする。  
「あ、い、いいえ…でも、これ、明日も着るんです…」  
珍しく(というより初めて)、彼からの変化球攻め。 応えてあげたいけど、この服、替えがきかないんです…  
「無茶をして、破いたり、汚したりはしませんから」  
彼の手が私の頬に優しく触れる。  
「…ダメですか?」  
「…いえ、お願いします…」  
ほんの刹那の後、そう返事する。  
普段の顔からはまず見られない、セックスに積極的な彼。  
…ひょっとして、この恰好、意外とツボだったのかしら?  
彼の穏やかな微笑が『ありがとうございます』と応え、頬に置かれた手がゆっくりと下へ滑る。  
「あっ…」  
肌を暖かく擽る感触に、私は軽く身震いする。  
カイルくんの手が、私の乳房に辿り着く。 そして、ゆっくり、ゆっくりと上に持ち上げるように揉み始める。  
「ふぅ…」  
私は、気怠げな吐息をつく。  
彼の手は、休むことなく私の乳房を愛撫する。 決して荒ぶることなく、丁寧に揉みしだく。  
「あ……ん…」  
不意に私の口から甘い声が漏れる。  
自分でも、乳房が硬く張り詰め出して、昂ぶり始めたのがわかる。  
「ここも触りますね…」  
カイルくんがそう言って、控えめに尖った乳首に指を這わせる。  
「あっ!」  
私の体を甘い電流が疾り、高い声をあげて体をよじらせる。  
その反応を見てか、カイルくんはさらに私を昂ぶらせようと、攻めを複雑にする。  
攻められている乳首がますます固くしこり、そこから電流が幾条も私の体内を疾り、熱をもたらす。  
「カ、カイルくん…き、気持ちい…いですぅ…」  
問われもしていないのに、私の口は快感を訴える。  
カイルくんは、またにっこりと微笑み、体重を掛けないように私に覆いかぶさり、乳首に優しくキスをする。  
愛しい刺激に体がわななき、思わず両手を彼の首に廻して引き寄せる。  
「あ、あぁ……んぅ…」  
私は甘美なものに酔ったまま、吐息だけを彼に聴かせる。  
―彼が一旦顔をあげる。 一瞬、視線を私の下半身に走らせ、すぐ私の瞳をのぞく。  
瞳が『いいですか?』と問いかける。  
私は軽く頷く。  
彼の手が、スカートをまくりあげる。 そして、裾を腰のベルトの内側にたくし入れる。  
快感と期待で熱を帯びた、私の下半身が晒し出される。  
 
「……綺麗ですよ、クララさん…」  
私をまじまじと見下ろしながら、半ば呆けたようにカイルくんが声を掛ける。  
そう言われるとさすがに少し恥ずかしいです。  
「あまり見ないで…」  
身をよじって、私は脚を閉じようとして、―彼にしっかり腿を押さえられる。  
「恥ずかしがらないで…」  
珍しく強い言葉を投げかけて、彼は私の秘所へ顔を埋める。 私はさすがに少し身を固くする。  
既に濡れそぼった私の秘所に、暖かい感触。  
「あんっ!」  
さっきより強い電流が駆け抜け、私の腰が跳ね上がる。  
…やっぱり、抵抗できません。 もっと、弄られたい。 もっと愛されたいです。  
「すごく、甘いです…」  
聞いてて気恥ずかしくなるセリフを投げかけられて、私は頭を振るけど、彼の舌が再度伸びると、  
あまりの気持ち良さに、自分から腰を持ち上げ、彼に押し付けてしまう。  
「くぅ…ぅん…はぁ…」  
私の吐息が快感を訴え、浅ましくなる。  
「お、奥も…お願い…ですぅ…」  
知らず、彼に淫らなおねだりをしてしまう。  
「…じゃ、行きますね…」  
一瞬顔をあげ、視線だけを私に向けて、彼はさらに深く私を弄る。  
秘所に軽い圧迫感。 彼の舌が深く挿し込まれる。  
「ん……」  
彼の舌が私の襞の奥深くで踊る。 粘った水音が激しく響き、私の耳に届く。  
刺激の強さと、発せられる音の淫らさに、私は瞳を閉じて、体を大きくよじらせる。  
「ああっ! そ、そこぉ…! いいっ…!」  
私の喘ぎ声もますます大きくなっていく。  
「…すごい。 ますます溢れてきて…」  
カイルくんの感嘆混じりの声が聞こえる。 言われずとも、私の秘所はさらに多くの熱い蜜を吐き出し、激しく昂ぶっているのがわかる。  
「も、もっと、い、弄って…!」  
快感に翻弄されながらも、高みを求めて、私はねだる。  
彼の舌が応えるように、私のクリトリスに触れる。 私の全身が軽く痙攣する。  
「…そのまま、達しても構いませんから」  
私の絶頂の到来を感じ、そう言ってくれる。 彼の声が、興奮で掠れているのがわかる。  
「……はい…」  
私は従順なセリフを吐くのがやっとです。  
再び、彼の舌がクリトリスを攻め始める。 その刺激の強さに私は彼の頭に両手を添えて、強く押さえつけてしまう。  
熱を多量に帯びた快感が下半身を中心に広がり渡る。  
その瞬間を感じた私が、体を震わせ力を込めた瞬間、彼の唇が強くクリトリスを噛む。  
「……あああっ…!」  
短い叫びだけを発して、体が達する。  
彼の下で、弓なりになった体が震えているのをうっすらとした意識の中で感じる…  
 
焦点を無くした私の視界。  
只でさえ、眼鏡を外しているから、ほんの目の前の事しかわからないんだけど、そんなのじゃない。  
…軽いキスの後、カイルくんの気配が離れる。 一旦、部屋を出たらしい。  
「…?」  
やっとの思いで、絶頂に達して気怠さの残る体を起こす。  
カイルくんが戻って来た。 ぼやけた視界にも、何かを持っているのがわかる。  
「それ、何ですか?」  
少し掠れた声で私が尋ねると、  
「あぁ、クリスマスですからね」  
と彼は答え、何かをベッドの脇やデスクの上に置いていく。  
そして、部屋のライトを落として、  
「…どうですか?」  
私の眼鏡を掛け直してくれながら優しく尋ねてくる。  
「…ああ、綺麗ですぅ…」  
グローランプのみの仄暗い部屋に、いくつかのキャンドルライト。  
小さな炎の灯りが、私たちを照らして、微妙な陰影を彩る。  
「気に入ってもらえましたか?」  
そう言いながら、カイルくんが寄り添って、顔を近づける。  
「はい、素敵です…」  
私ははにかみながら瞳を閉じて、−甘いキスを受け取る。  
お互いの舌を絡ませ、激しく貪る。 時折、眼鏡がぶつかりカチリと乾いたアクセントを添える。  
「いいですか…?」  
カイルくんの言葉を合図に、私は体を横たえ、−止められる。  
「え…?」  
戸惑う私に、カイルくんは、  
「これ以上、服にシワをつけたくありませんから…座ったまま…」  
と言う。  
「はい…」  
私は頷き、緩く脚を開いて座ったままの彼に向かい合う。  
そして、昂ぶった彼のペニスに手を添え、ゆっくりと私の中へ沈めていく。  
「ううっ…!」  
「あんっ!」  
彼のものが奥まで届き、彼が体を震わせ呻く。 私もゾクリとした快感が疾り、高い声をあげて彼にしがみつく。  
「クララ…さん…凄い…いいです…」  
カイルくんが私を抱き返して耳元で囁く。  
「私も…奥が…あんっ…熱くって…」  
私もそう返すのがやっと。 襞がそれに呼応して、愛おしそうに彼のペニスを包み込み、そのフォルムを確かめる。  
「う…クララさん、そ、そんなに、締めないで…」  
彼が切なく快感を訴えてくれる。  
私は、ひとりでに彼の首筋にキスを幾度も幾度も落とす。  
カイルくんは私の頭を優しく抱き寄せ、されるがままになっていたが、不意に、彼の唇と舌が私の耳を這う。  
「きゃうっ!」  
私のキスが止む。 同時に彼の両手が激しく乳房を捏ね出し、腰をねぶるように動かす。  
「あっ、ダ、ダメですぅっ…!」  
私は腰をくねらせて快感に抗うが、耳元で、  
「クララ…愛してる…」  
と囁かれた瞬間、快感と感激で脳裏が白く爆ぜる。  
「私も…愛して…ます! あああっ!」  
体がブルリ、と震え、絶頂に達する。 私の襞の奥も愛しさに痙攣する。  
 
「…大丈夫…?」  
カイルくんの声が遠い。  
あ、そうか。 いくらも動いていないのに、『クララ』『愛してる』…と聞いた瞬間達してしまったのね…  
「はい、嬉しくって……ごめんなさい、私だけ先に達しちゃって…」  
私ばかりが快感に溺れているのが申し訳なくてつい謝ってしまう。  
「いいえ、僕だって嬉しいです。 ク…クララがそんなに感じてくれて…」  
カイルくんが照れくさそうに言う。 言い慣れていないからたどたどしいけど、確かに『クララ』と呼んでくれている。  
彼に心と体を所有され、束縛される甘い感覚に、私は涙をこぼす。  
「あ、ぼ、僕何か変なこと言っちゃいました!?」  
慌てる彼に、  
「違います…嬉し涙です…」  
と応え、唇と腰を彼に押し付ける。  
私の態度で察したのか、カイルくんもそれ以上は何も言わず、キスで応えた後、両手を私の腰に廻す。  
そして、ゆっくりと、ゆっくりと私の奥を捏ねるように動く。  
「ああん…はあ…」  
私の口からまた甘い声が漏れ、切なく腰をくねらせる。  
「くっ…!」  
彼の表情も甘く歪む。  
深くつながったまま、二人で体を貪りあう。 そんなに激しく動かせる体位じゃないけど、そんなの関係ないくらい心地いい。  
「うう、凄い…!」  
カイルくんが呻いて腰を震わせる。  
彼のペニスも震えて脈打ちながら、私の奥をコツコツ叩く。  
「あんっ、そ、そこぉ、し、痺れるぅ…!」  
奥底の敏感な部分を刺激され、私も浅ましい嬌声をあげて快感を訴える。  
その声を合図にしたのか、カイルくんの動きが激しくなる。  
私の腰を強く掴んで大きく揺さぶり、下から腰をせり上げる。  
「ああんっ! カ、カイルくぅん…いい、いい、のぉ!」  
私も全てかなぐり捨てて、彼に合わせて体をぶつける。 襞の一枚一枚で、彼を強く感じる。  
「はぁ、はぁ、し、締まる…!」  
彼も快感に溺れて、雄の言葉を発している。  
激しく揺さぶられ、快感に再び焦点を失った私の瞳に、私たちの淫らな影絵が、壁に揺らめく様子が映る。  
―このまま、蕩けてしまいたい―  
私は、彼との絶頂だけを求めて、激しく腰を絡め、彼の肌を唇で貪った。  
彼も絶頂が近いのを悟って、私の腰を持ち上げ、強く突き上げる。  
「ク、クララ…っ!」  
彼が私の名を叫び、私の唇を奪うように塞ぐ。  
同時に彼のペニスが私の奥を抉り、それに呼応して私の襞が痺れるように締め付ける。  
「んん……………っ!」  
彼の唇の奥に絶頂と愛情を込めた呻きを注ぎ込み、私は達する。  
白く灼けた意識の中で、彼の熱もまた私の奥に注ぎ込まれるのを感じていた…  
声が聞こえる。 『愛してる』と。 私も、愛して、います…  
 
「メリー・クリスマス!」  
そこかしこから、明るく弾けた声が聞こえている。  
パーティー会場は、クリスマスに相応しく賑わっている。  
私が作った衣装も概ね好評だったみたいで(シャロンさんは少し複雑そうだったけど)、会場に花を添えている。  
「…はい、どうぞ」  
部屋の隅の椅子に腰掛けている私に、カイルくんがシャンパンを持ってきてくれる。  
「ありがとうございます」  
と応え、グラスを重ねる。  
「クララさん」  
カイルくんが声を掛ける。  
…むー。 名前で呼んで欲しいのにー。  
「あ、ごめんなさい、やっぱり…恥ずかしいんですよ…」  
私がムクれた意図を察して、カイルくんがあたふたしながら言い訳する。  
「いいですよーだ。 どうせ、私なんて…」  
本当は怒ってなんかいない。 でも、困る顔も素敵で。  
「ほ、ほら、…ク、クララ、可愛い姿が台無しじゃないかい…」  
どうしようかな、もうちょっと困らせてみようかな…でも、ちゃーんと呼んでくれたから。  
「ふふ、冗談ですよ、カイルくん」  
とびっきりの笑顔で、もう一度グラスを重ねて、彼にもたれかかる。  
やっぱり、彼は赤い顔をしてて。  
…Merry Christmas for you, and forever…  
 
― Fin. ―  
 

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