クララと実習授業を行なうはずだった俺は、あぶれていたタイガと組む事になった。
薬草を探すふりをしながら取り止めのない話をしていたのだが、どうしても気になることがあったので聞いてみることにした。
「なあ、タイガ」
「ん、何や?」
「お前ひょっとして、クララの事好きだったりする?」
「なっ、何やねんいきなり」
「お前が貸してくれるDVD、全部眼鏡っ娘物なんだよな……」
「いや、そ、それはやな」タイガが突然マジな顔になって話しはじめた。
「実は、オレの生まれたミナミの国は、AVは眼鏡物しか売ってへんのや」
「……うそつけ」
「嘘ちゃうわ! ほら、顔にぶっ掛けた時に目に入ったら女優さんかわいそやろ? せやから眼鏡掛けてへんDVDは違法やねん」
「俺もそうかもしれないと思ってマロン先生に聞いた事があるんだよ。そしたら大笑いされたよ」
「ちょ、おま、先生に聞くな、そんなん」もっともなツッコミだ。「せやかてお前、マロンセンセがそんなん知ってるわけあれへんやんか」
「ちっちっち。甘いねえタイガ君。マロン先生はああ見えてアニゲランダム6の第一人者だ。おまけに電気街のことにかけちゃ東西問わず詳しいときてる」
人差し指をタイガに突きつける。
「もちろん、お前がDVDを仕入れたミナミの電気街のこともな。……西の方にはもう一つ、テラマチって所もあるって言ってたかな……ていうか、モザイクもボカシも入ってないDVDを売るやつが眼鏡がないと違法とか気にしねぇだろ」
「寺町通りなんか俺かて行ったことないわ」タイガは観念したようだ。「……へいへい、その通りでごぜえます」
「そうか、やっぱりクララが好きか……」
「ちゃうがな。西に眼鏡っ娘AVしかないのは嘘や言うてんねん。眼鏡っ娘言うたら別にクララだけちゃうやんか」
「んー」俺は頷いた。「眼鏡物って言うと女教師やOL物なんかもあると思うんだが、タイガのDVDは全部女子生徒の制服ものなんだよな。しかも童顔ばっかり」
「ぐっ」
「そして例外なく貧乳」
「クララは貧乳ちゃうわ! 他がデカ過ぎやねん」
「しっ、声がでかい」
そう言って俺は周囲を見回す。幸い、誰も気付いていないようだ。
「まあこの事は黙っとくから。―――かわりにお願いがある」
「なっ、何や」狼狽するタイガ。
「眼鏡っ娘で三つ編みのいいDVDがあったら貸してくれ」
ごめん、クララ。―――煩悩を持てあます。