ずかずか。  
 
シャロンがアカデミーの石造なのか鉄筋なのか良くわからない通路を歩く。  
ロマネスクなんだかロマノフなんだかやっぱり良くわからない様式の柱の間を歩く。  
今シャロンは機嫌が悪い。  
「あ、シャロ…ンさ……………」  
声をかけようとしたリエルが思わず途中で止めるくらい機嫌が悪い。  
 
ホールから正面玄関へ出る。目に飛び込んでくるのはよく手入れされた広大な庭園。  
リディア先生が刀持って二百由なんたらとかいう技で手入れしてるらしい。  
ちなみに今シャロンさんはかなり機嫌が悪い。  
「よぉ、シャ……わ、わりぃ……」  
シャロンの眼光がレオンを貫いた!くらい機嫌が悪い。  
 
庭園を抜けると道が続いていく。木々の向こうには町が広がる。  
晴れた日の木漏れ日の中を歩くのは心地よいが朝散歩すると熱血鳥教師がランニングしている。  
玄人にこそ、お勧め出来ない。  
ついでに今シャロン様はとても機嫌が悪い。  
「……………不近寄危君子」  
ヤンヤンが距離を置いて避けたくらい機嫌が悪い。  
 
町には様々な人が行き交う。雑踏の中、南を見上げれば大聖堂。  
遠めからでも見える聖堂の広場にある巨乳な女神像。ミランダ先生と良い勝負だ。  
さてお胸が少々平らにございまする我らがシャロン様は今ご機嫌が優れない御様子でして  
「…ままー、あのお姉さん怖いよ………」  
「見ちゃいけませんよ。お互いのためにも」  
シャロン様を中心に半径1M。ぽっかり避けられているくらい機嫌が悪い。  
 
 
大聖堂の裏手から森を抜け更に進む。  
「………………」  
夕日に煌く水面の美しい海が一望出来る切り立った崖がある。  
「…綺麗」  
崖は数十メートルにも及び、見下ろす景色は圧巻である。  
吹き付ける潮風は暖かくなってきた空気より少し肌寒い。  
雲が織りなすグラデーション。遙か先に微かに見える向こう岸。  
茜に染まり始めた空を見上げながらふと想う。  
 
 
 
 
 
 
「鬱ね、死のうかしら?」  
 
シャロンは今機嫌が悪かった。  
哀しい顔をして涙を零すくらい。  
 
---------------------  
 
(購買部放り出して来て大正解でしたっ!)  
呟きが聴こえたと同時に私は茂みから飛び出しました。  
どうか間に合って欲しい。早まった事はしないで欲しい。  
 
トッ……  
 
しかし足は間に合わず、シャロンさんの足は既に地に無く落ちて行きます。  
(諦めない!)  
「…………Les Sylphes!!」  
箒を足下に敷き、迷わず崖から飛び降ります。  
自由落下をするシャロンさんを全力で追いかける。  
 
コォォォォォ……  
 
身を切る風が全ての音を消していきます。  
目をつぶりたくなる風圧に負けず、只シャロンさん一点を見つめる。  
 
ザパーン……  
 
あと少し。  
音が届く程に眼下に迫る海。時間が無い。  
「届きました!!」  
「!?亜wせdrftgyふじこlp;@」  
私より長身のシャロンさんを抱きかかえ、今度は全力で箒にブレーキを掛けます。  
「おおおおおっ、はいだらぁぁぁぁぁ!!!!」  
「何語!?重圧で身体がぐぇぇぇぇええ!!?」  
 
ビュゴォォォォォォ!!  
 
水面スレスレで何とか踏みとどまる事には成功。セフセフです。  
「ケホッ、ケホッ…ちょ……リエル、あなたっ、どうしましたの?!」  
「…す、すみません。あんまり沈んだ顔をしていらっしゃったものですから…」  
シャロンさんは不味い物を見られたと言う顔でこちらを見つめます。  
「と、とりあえず、近くの入り江に、行きましょう…ちょっと苦しいので」  
「それは私が重いということですの!?」  
「違います!ぅぁああ、暴れないでくださいー!」  
箒が限界なだけです。  
 
----------------------  
 
 
入り江に辿り着いたリエルとシャロン。  
シャロンは開口一番に言う。  
「た、助けて貰う必要なんか全然ございませんでしたのに……」  
「そんな分け無いじゃありませんか!  
 シャロンさん…人生どうしようと思いつめた顔をしていましたよ?」  
「何を勘違いされていらっしゃるのかは分かりませんが死にに来たわけじゃ……あ」  
「え……?」  
 
シャロンは納得したような顔を。リエルは何か違和感を感じた顔を。  
死にに来たのでは無い、だが飛び降りた。これは一体どういうことか。  
 
「数十メートル上からでは飛び込もうにも  
 水がコンクリートのような固さになりますわね…これは失敗ですわ……」  
「どこから突っ込めばいいんですか!?」  
 リエルは理解に苦しむ。  
 寧ろ突っ込み所に苦しむ。  
 このお嬢様はおっちょこちょいで死ぬ所だったらしい。  
 流石シャロンだ。持ち前の悪運でなんともないぜ。  
(し、心臓に悪すぎる……)  
 付き合わされた人間はたまったもんではない。  
 
「じゃぁさっき何で泣いてたんですか」  
「今日バスト図ったら7mmも減ってて……ぐずっ……」  
「それだけの事で泣かないで下さいよ!」  
「私の7mmとリエルさんの7mmでは割合が違いましてよ!?」  
「そういう問題じゃないでしょう!」  
 なんという事でしょう。数レス分の前フリの原因が貧相な胸かよ。  
 内心マジくだらねぇとリエルにやるせない気持ちと付き合いきれない気持ちが湧き上がる。  
 おっぱい体操でもしてて欲しい気持ちだ。  
「持って持たざる者の気持ちはわかりませんわ!!」  
「いや、否定はしませんが!!何百人にも胸を突付かれる身にもなって下さい!!」  
「この胸がイケナイのですわ!セクハラされるだけ有り難いと思いなさい!」  
 既におっぱい論争と化している。当初のシリアスなふいんき(←何故か変換できない)はどこに。  
 
「そもそも何で崖から飛び降りようなんて想ったんですか?」  
「………知りたいのなら今からやる事に誰にも言わないで下さる?」  
「………はい」  
「絶対ですのよ」  
「商売柄、口は堅い方です」  
「何だかアヤシイ表現ですわね……では少々失礼致しますわ」  
 そう言うなりシャロンは何やら呪文詠唱を始める。  
「………!」  
 言語で表そうにもフォントが無いような言葉で詠唱する。  
 空気は急に張り詰めたような、冷えたような感覚を覚えさせる。  
「………………」  
「古代呪文………」  
 魔法は学外内問わず、許可なくして使用は認められていない。  
 また効果が著しすぎる、制御が難しい、解明されていない等の理由により、  
 禁書として存在を封印されている魔法も存在する。  
 この二つの条件から考えてリエルは結論を弾き出す。  
「……実験……ですか」  
「…………………!」  
 シャロンは問いには答えない。もっとも、詠唱中に答えられはしないが。  
 シャロンの前に陣が形成されていく。  
 陣を為す色は見た事の無い限り無く透明に近いマリンブルー。  
 見た事の無い言語。聞き取れない言葉。  
 肌がちりちりする。  
「………!!!」  
 詠唱が完了し、リエルの目の前が真っ白に包まれた。  
 
「うぉ、まぶしっ」  
 
 
 光が収まる。  
「……無事成功したようですわ」  
 リエルは目を開く。  
 開いたら今度は目を見開いた。カッってくらい見開いた。  
「どうかしら?」  
「……驚きました…まさかこんな魔法があるものなのですねぇ」  
 目の前に居るのはシャロン。シャロンなのだが。  
 いやまぁ、どう見てもシャロンなのだが。  
「苦労しましたわ。禁書目録から持ち出したり  
 古い理論を組みなおしたりで丸一年も掛かったのよ」  
 このお嬢様…無茶しやがって……。  
 
 目の前に居たのはシャロンだがスカートから出ているのは魚の鱗。尾鰭。  
 早い話が人魚である。マーメイド。  
 元々質の良い、艶のある金髪、スラっとした体系。  
 胸が俎板な事と、アカデミーの制服が不釣合いなことさえ気にしなければ  
 美しい人魚姫がそこに居たわけである。服も一緒に変身しろよと言いたいが、  
 これはこれでたまらん人にはたまらん仕様である。ピチピチってレベルじゃ…いや、ガチでピチピチ。  
 リエルも思わず見入ってしまう。  
 そんな様子に気がつくこともなく、シャロンは続ける。  
 
「小さい頃から魚のように水の中を泳ぎ回るのが夢でしたの。  
 ほら、私カナヅチでしょう?皆さん泳ぎもお上手で恥ずかしいったら…  
 あ、戻る方法とかもしっかりございましてよ?  
 というより今回の理論で組んだのは時限式でして……」  
 禁呪に関して賢明に取り組んできた事を、やはり誰かに聞いて欲しかったのか  
 シャロンは饒舌に喋り、説明する。  
 しかし、リエルは話を聞きながら、ある疑問を抱く。  
 
「シャロンさん」  
「はい?」  
 話が一区切りした所でリエルは頼む事にした。  
「誰にも喋りませんから、代わりに一つお願いしてもいいですか?」  
「え、ええ……命の恩人でもありますし、出来うる範囲で協力しますわ」  
「今泣いて貰えませんか?」  
「あぁ……それくらいならお安い御用……なんですって?」  
「今のシャロンさんならきっと人魚の涙が出せるはずですっ!」  
 無茶を言うな。  
 人魚の涙と言えばご存知、人魚の涙から生まれるとされる美しい宝石である。  
 ン百万の価値が付いているモノがそんな怪しげな魔法実験如きで易々と手に入るものではない。  
 リエルがそれを望んだのは商売根性なのか、女の子としての欲なのかは分からないが  
 シャロンは今洗い浚い自分の所業を話してしまったことを想うとこれはお願いではない。  
 どうみても脅迫です。本当にありがとうございました。  
「な、泣くのは構いませんけれど、ど、どうやって」  
「そこをなんかとして」  
「む、無理ですわ!やろうと思ってやれるものじゃ……」  
 どうやらシャロンは女としての武器に涙がある事を知らないらしい。  
 そんな純真なお嬢様にリエルの悪戯心が…こう、ふつふつとわき上がる。ふっつふっつ。  
「こうなったら泣かせるまでです!」  
 まさに外道。  
 
 
「ちょ、ちょっと、何をなさいますの!?」  
 ふにふに。  
 リエルの手がシャロンの胸を揉みしだく。  
 揉みしだいて居るのだが  
「ひゃ…!?」  
 ふにふに。  
 シャロンの胸ではもみもみと言う筈も無く。  
「こ、これが泣くこと…何の関係が…!あ……あぁ…」  
 二つの丘というには控え目というか役不足な胸。ぺたーん。  
 ふにふに。  
 
「服の上からでは苦しいですね…」  
 リエルはシャロンの制服を肌蹴させ、今度は直接胸を揉みしだく。  
 エロさの微塵も無いような顔で、しかし容赦なく胸を揉む様はシュールだ。  
 戸惑い恥じらうシャロンも何のその、揉む。ふにふに。くにゅくにゅ。  
「うっ……あぁ……」  
 思いの他感度が良いのか吐く息に色っぽさが混じる。  
 シャロンは下半身が上手く馴染まず抵抗らしい抵抗が出来ずに居る。  
「セクハラされる側の気持ちを十分に堪能させてあげますっ」  
 実は目的はそれだろう。根に持って居たな貴様。  
「って堪能って何……ひゃぁやん!」  
 と思いながらもつい甘い声が出てしまう。  
「いやっ、そんな…揉まないで……や…」  
 もみもみ…しゅにしゅに……ぴんっ  
「うぅん!はぁ…!」  
 リエルは手のひら全体を使って乳首と一緒に弄ったり、爪弾いたり、  
 テンポの良い愛撫をする。  
 メイド服もどきが学生人魚を陵辱する様は先のシュールさを超えて異常である。  
「や、やめなさいよ…ヘンな気持ちに……なっちゃうじゃない…」  
「同じ性の友人に揉まれてですか?大した変態ですね」  
 段々と言葉に熱が入ってくるリエル。  
 
「やっ…そんな……」  
「私もそんな変態でして。異性同姓問わず胸を突付かれて過ぎてしまって  
 つい感じちゃうんですよ。嫌でも。  
 ちょっと突かれただけで声が出ちゃうんですよ?  
 これってもう一種の陵辱ですよね」  
「も、申し訳ありませ…ぁ…あ、謝りますからぁ…]  
「やめてなんてあげませんよ?  
 竹を割ったような性格と呼ばれるくらいなら  
 餅をついたような女と呼ばれたいくらいです。  
 シャロンさんも触られるだけで感じる淫乱変態女にしてあげますっ」  
 
 恨まれている。セクハラされるだけマシ発言を超恨んでいる。  
 しかしこの出来事の一端を読者の何割かが担っている事を忘れてはいけない。  
 セクハラ、イクナイ。  
 
「あ、ああっ!んんっ!ふぁっ…ぁ」  
 責めが一段と強くなり、シャロンは身体をよじる。  
 一緒にヒレがピチピチ音を立てて地面を叩く。  
 ビクンビクン震えるのがたまらなく淫靡である。  
 
「可愛い胸ですね?ネタでなきゃ揉まれる事もないまっっっ平らな胸ですね?」  
「う、うううっ………」  
 シャロンは感じる快楽が、リエルは手にこめる力がどんどん強くなる。  
 心なしか言葉で責めるリエルが悦に入っている。  
「羨ましい限りなのですよ。どうでしょう、感じてますか?」  
「ぅぅ…あぁ……」  
 もう既に気にしている事を散々に弄られ貶され涙目になっているシャロン。  
 しかし根が真面目なのか、自分の言葉に相手が傷ついたと思うと、  
 謝る以外、何も言う事が出来ないでいる。  
 間違う事無き生まれながらの誘い受けである。  
「下はどんな具合でしょうか」  
「きゃっ、ゃぁ!そっ、そこはっ…あん!」  
 スカートを捲ると、鱗と人の肌の境界線が見える。  
 お尻や骨盤の下辺りからが鱗となっている。  
 つまりお尻や秘所はフツーに人間の通りだった。  
「あんっ……んん!んっ!」  
「ビチョビチョじゃないですか。  
 胸だけでこんなに感じるなんて変態にも程があるのですよ」  
 実際にはリエルの手つきが慣れ過ぎなのだが、  
 シャロンに経験があるはずもなく、恥かしさで一杯になってしまう。  
 
 こりっ…  
「ふああああっ、ああっ!」  
 クリトリスに爪を立て引っかくとシャロンの鰭が面白いように  
 ビクンッと震え、身悶える。  
「な、なんですっ、あん!ヘンな感じが、ああ!!」  
 
「…うゎぁ、そう来ましたか」  
 納得しながらもリエルの手は止まらない。  
 つまるところ、シャロンはこの歳にもなってイッた事が無い。  
 恐らく、自慰もそこそこにちょっと弄った程度なのだろう。  
 それでいて、処女でありながらこの感度。言葉責めも対応。  
 万で一つよりずっと貴重な女である。極上の人魚姫というわけだ。  
 それを今犯しているという事実はリエルの手段を目的へと捻じ曲げていく。  
「シャロンさんってばエッチですねぇ。  
 違いますね。生まれながらにしての淫乱さんですね。  
初めてでこんなに喘ぐなんてありえません。  
 ご実家の資産が無くてもきっとシャロンさんは淫売だけで一財産築けますよ」  
 くちゅくちゅっ…クチュクチュグチュッ!!  
「だ、だめです…あっ!ああっ!  
ああああっ!!ああっ!んんっっ!」  
 声色は既に桃色に染まりリエルの女性的ではない欲求をそそる。  
 頭を振って既に涙を流しているが既に興味を失ったのかリエルは段々エスカレートする。  
「や……やぁ!指……入れないでぇ………!」  
 リエルはシャロンの意思などお構いなしに埋めた指先をゆっくり回し  
 快楽のポイントを探していった。  
「ああっ!はぁ!ああっ!!…んんんっ!あぁんっ…!」  
「どうでしょう?イきそうですか?」  
「わ、わかりませ…やぁん!ふぁっ、ああ!あああっ!あ………」  
 
 急に愛撫と止める。  
「ありがとうございました。涙が宝石になるっていうのもやっぱり都市伝説みたいですし、  
 もう十分です。ごめんなさい」  
 口元を歪めている辺り、明らかにいじめている。  
 目がどう考えても「シて欲しかったらおねだりしてください」と言っている。  
 黒リエルと呼んで差し支えない責めっぷりである。  
 是非とも犬と呼ばれてムチ打って頂きたい程である。  
 
「え……あ……」  
 急に止められて困惑するシャロンに続ける。  
「でも、禁呪目録に手を出した事を黙っていますからまぁお互い様ってことで」  
「……あ、あの……」  
 おぞおぞとシャロンは言う。  
「……もっと、して下さい……」  
 人魚が乙女座り体勢でおねだりと来た。  
 +要素として服はだけ、火照り、荒い息、上目遣いがドリームコラボレーションしていた。  
 リエルは一瞬だけ何かがおかしいと思ったが、自分の行動を止める事が出来なかった。  
 幾ら魅力的だからと言って同性に対して性欲を持て余すだろうか。  
(もしかしてこれは……オートチャームってものでしょうか…不味いのですよ)  
 魅了って同姓にも効果のあるものだっただろうか。  
 それともシャロンの魔法に問題があったのだろうか、結論付ける前にどんどん理性が流されていく。  
「あん!あああっっあっ!あっ!イイですぅ…もっとぉ!  
 もっと弄って下さい!ああぁ…!…ぁぁ」  
 気づけば手はシャロンの秘所を弄び、早く荒い手つきになっていた。  
 グチュ!グジュ!ジュポ!!  
「ひゃぁん!!あんっ!ふあああぁん!あん!!」  
(いけない、何も考えられなく…)  
「な、なにかくるっ!キます!ああっ!  
 あああああああぁっ!ああああああああ!」  
 涙と涎を垂らしながら強すぎる絶頂に絶叫するシャロン。  
 余りにも綺麗な喘ぎ声だと今更気がつく。  
(あ、なるほど。魅了の歌声………)  
 納得もそこそこに弄っているだけの筈のリエルの意識が遠のいた。  
 
 事が終わった時には夕日が完全に水平線に消えそうな頃だった。  
 結局4ラウンド程百合の花を咲かせていたらしい。  
 3ラウンドの途中で既にシャロンの脚は元に戻っていたが、リエルはそう関係ないねと言わんばかりに  
 犯し続けた。当の本人は全く覚えていないが、肉体関係がばっちり結ばれましたとさ。  
 
 帰りはリエルの箒に二人掛けである。不安定この上無いがこのお嬢様箒持ってきていないようだった。  
 一体どうやって帰るつもりだったのだろうか。流石シャロンだ。色々と足りない。常識とか頭とか胸とか。  
 こんな危ない事してないでおっぱい体操でもしてろ。  
 さて飛行中の二人はというと  
 
「あ、あの…申し訳ございませんでしたわ………」  
「あ、いえ、こちらこそ、ごめんなさい」  
「いえ、私の妙な魔法のせいでこんな……」  
「いえいえ、私の軟弱な理性で……」  
 
 キリが無いがバツが悪いのだからどうしようも無い。  
 
「……………」  
「……………」  
 
 二人ともその事に気がつくと今度は耐え難い気まずい空気が流れる。  
 申し訳無さそうにリエルに捕まるシャロンは今ちなみに穿いてない。  
 変身シーンの際に破けたようだ。流石シャロンだ。何ともあるに決まっている。  
 もう日の光も殆どの無いのが幸いした。OK、下からでも見えてなーい。  
 
 聖堂を飛び越し町を抜けた所で  
 
「「あ、あのっ……」」  
「あ、すみません、お先にどうぞです…」  
「あ、いえ、そちらが先に仰って下さいな」  
 ベッタベタである。  
 暮れゆく空をバックにさらにベタベタな会話を繰り広げながら寮へ戻るお二人さん。  
 
「良かったら………また付き合って下さいませんこと?」  
 
 
 
 
 海岸入り江の波打ち際、蒼く美しい涙粒大の宝石が一つ、  
 砂の間から夕日の残り灯に照らされキラキラと煌いていた。  
 
 

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