『Smell Like This』  
 
そろそろ春の香りが漂いだす頃。  
「あー、ヒマだな、畜生」  
平日の真っ昼間、自分の部屋のベッドに横になったままレオンがこぼす。  
別にサボっているわけじゃない。  
彼の右足には、仰々しくギプスが取り付けられている。  
週末に、とある事情でポッキリと折ってしまったのだ。  
もちろん、即、保健室でミランダ先生の治療と相成ったわけだが…  
『…はい、これで固定して、と…』  
『ちょ、ちょっとセンセ、ちゃんと治してくれよ』  
『? これじゃ不満ってわけ? …はは〜ん、レオン君ったら私と『いけない治療』を期待してるのかな〜?』  
『ち、違いますって! …アタタ…』  
『ほらほら、大声出したら足に響くわよ』  
『センセが変なこと言うからじゃんか…じゃなくって、ほら、治癒魔法でピタッ、とさ…』  
『ちゃーんと掛けてるわよ。 でも、完治するほどの効果を出すわけにはいかないの。  
患部を強制的に活性化させるわけだから、意外とあなたの体にも負荷がかかるのよ』  
『…へー、そうなんだ』  
というわけで、しばらくギプスとのお付き合いを余儀なくされているレオンであった。  
「ツイてねぇや、全く…」  
チラリと壁のカレンダーを眺めてまたこぼす。  
今日はホワイトデー。 本来なら、若いカップルの一大イベントの一つで、レオンも例に漏れず、  
期するものがあった。  
それが、このザマなのだから、ボヤきたくなる気持ちもわかる。  
「アイツにも悪いことになっちまったな…」  
そう独りごちて、傍らのサイドボードに置かれたものに目をやる。  
丁寧に包装された小さな箱がある。  
言うまでもなく、バレンタインのお礼に買ってきたものだ。  
「これじゃ、渡せねぇし…って言っても呼び出すわけにもいかねえしな」  
ふぅ、と溜息。  
…別に義理チョコをもらった女生徒相手なら、こんなボヤきも出ない。  
日を改めて、『わりぃ、遅れちまった』で済む。  
でも………本命の恋人相手には、それで済ますには、気が治まらない。  
「リエル…がっかりするだろな…」  
足を折る前に、  
『リエル、ホワイトデーのお返し、何か欲しいものあるか?』  
『え…何だっていいです、レオンさんが選んだものなら何でも…』  
『さん付けはやめてくれよ、こうして付き合ってんだしさ』  
『あ、ごめんなさい…』  
『いいよ、謝らなくても。 でも、本当に何でもいいのか? つっても、そんな気の利いたモン用意できる自信はねぇけど』  
『ええ、本当に…マシュマロでも十分ですから』  
『そんなチャチなもの買わねえって。 もっとリエルが喜びそうなもの選ぶさ』  
『…ありがとうございます。 でも、あまり無茶な買い物はしないでくださいね…』  
『商業科の生徒のセリフには聞こえねえな』  
『それとこれとは別ですぅ!』  
『そんな顔で凄んでも怖くないぞ』  
『はうぅ…』  
『…冗談さ、そんなヘコむなよ。 ま、リエルに似合うもの買ってあげるさ』  
『…その気持ちで十分です…』  
…なんてやりとりの後だけに、レオン自身も少しヘコんでしまう。  
「あーあ…」  
やるせないまま、時間が過ぎていく。  
 
コンコン。  
そろそろ夕方に近づいた頃、不意にドアをノックする音が聞こえる。  
「誰だよ、一体…」  
とボヤきながら、体を起こすレオンに通信魔法が聞こえる。  
「あ…わ、私です…」  
「リ、リエル!? 待ってろ、すぐ開けるから」  
慌てて返事をして、魔法で開錠する。  
「失礼します…」  
「そんな畏まるなって…ま、クセみたいなもんだからいーけどよ」  
「ごめんなさい」  
おずおずと入ってくるリエルが少し申し訳なさそうにする。  
「どーしたんだよ、もう購買部は店じまいか?」  
「はい、後は予約購入の配達を済ませてしまえば…」  
「じゃ、先に済ませて来いよ」  
「いえ、レオンさんの部屋で最後ですから」  
「あ? 俺、何も頼んだ覚えねぇぞ?」  
「いいえ、大切なものをお届けに来ました」  
言いながら、リエルがバッグから一包みの薬包紙とタオルを取り出す。  
「何だそれ?」  
「うちのおばあちゃんからもらった痛み止めです。 ケガによく効くそうで…」  
「いや、一応俺も薬飲んでるんだけど………あ、いや、もらっとくぜ、サンキュ」  
レオンはぶっきらぼうに言いかけて、リエルの哀しそうな表情を見てすぐに訂正する。  
「…迷惑ですか?」  
「ち、違うって! あまり予測してねえものだったから、つい…わりぃ、すぐ飲むわ」  
「あ、それ、食後に飲むのがいいそうです」  
「オーケー、晩メシの後に飲んどくぜ」  
「はい」  
少しはにかむようにリエルが笑って、スッと立ち上がる。  
「? どうした、リエル?」  
「えーと、レオンさん、洗面器はお風呂場ですね?」  
「そーだけど?」  
「わかりました、じゃ、ちょっと取ってきます」  
「?」  
怪訝そうな表情のレオンを残して、リエルが一旦部屋を出る。  
「……いつになったら、俺を呼び捨てるんだろな…」  
もう付き合いだして半年くらい経つけど、相も変わらずこの調子だ。  
レオンから告白して、リエルが想いに応えて始まった恋人関係。  
人並みに会話もして、年齢相応にデートもして、もちろんキスもセックスも体験済みだったりするが、  
彼女の言葉遣いはさして変わらない。  
レオンとしては、もっとフランクな恋人同士でありたいから、事あるごとにリエルに指摘するが、  
彼女の言葉は普段と変わらず丁寧なまま。  
ちょっと前に喫茶店で話を聞いたところによると、実家も商売をしている傍ら、母は富豪の屋敷の給仕もしているそうだ。  
リエル自身もその屋敷で給仕をしていた経験もあるそうで、それが今の彼女を形成しているのかな、と勝手に解釈しているのだが。  
「…ま、気長にいくか」  
元来、楽観的に気を遣うタチのレオンは、あっさりそう切り替える。  
「…よいしょ、っと」  
と声と共に、リエルが洗面器を持って部屋に入ってくる。 どうやら水を入れて持ってきたようだ。  
「足元、気をつけろよ」  
「は、はい、大丈夫です……はわわっ!?」  
レオンが注意を促した矢先、リエルは  何 も な い  床に足を取られて前のめりに躓く。  
―洗面器が宙を舞い、正確にレオンの体に中身をぶちまけながら着地する。  
部屋一面に水の饐(す)えた匂いが漂う。  
 
「ごめんなさい、ごめんなさいっ! 本当にごめんなさい!」  
目に涙を浮かべてリエルが必死に謝る。  
「…いいから、謝ることねぇって」  
頭からズブ濡れのレオンがリエルを止める。  
「でも、でも、私……!」  
泣きながらリエルがかぶりを振る。  
「泣くなよ…気にしてねぇから」  
レオンがとりなすが、リエルはへたりこんだまま泣いている。  
「…てかリエル、その洗面器で何をしようとしてたんだ?」  
「…レオンさんの…体を……拭いてあげようと思って、それで…でも…」  
「別にそんなに気を回さなくても…ハックション!」  
「あ! た、大変! 冷えちゃう!」  
「やべ、とりあえず脱ぐか…って、おい、リエル!?」  
とりあえず濡れた服を脱ごうとボタンに手を掛けたレオンだったが、いきなりリエルが半ば強引に制する。  
「わ、私がやります!」  
言うが早いか、手際よくレオンの上着のボタンを外し、シャツも脱がせる。  
先程のドジっぽい行動が嘘のようだ。  
「ちょ、ま、待て……」  
レオンが目を白黒させている間に、リエルはズボンにも手を掛け、膝下までずり下ろす。  
そして、ギプスに注意を払いながらゆっくりとズボンを抜き取る。  
瞬く間にボクサーブリーフ1枚の姿になるレオン。  
「おい、リエル! いいって! 自分で…」  
「ジッとしててください!」  
突如、ビシリと言われてレオンが黙る。  
「……ごめんなさい、でも、私にはこんな事しかお世話できないから…」  
伏し目がちにリエルが呟く。  
そして、傍らの乾いたタオルを取り、レオンの頭をゴシゴシと拭く。  
「………」  
レオンも半ば諦めて、彼女の気の済むようにさせる事にした。  
頭から腕、上半身と、丁寧に拭き取る。  
(やっぱり、逞しいです…)  
拭きながら、リエルはそんな事を考える。  
両脚を拭いて、一旦リエルは立ち上がる。 もう1枚のタオルを手にまた部屋を出る。  
洗面所の方から水音が聞こえ、しばらくしてからリエルが固く絞ったタオルを手に戻ってくる。  
「さあ、横になってください」  
「もういいって、リエル。 十分だって」  
「まだです。 少し汗臭いですよ」  
「うわっぷ!」  
いきなり顔を拭われてレオンがむせる。  
顔から首筋、肩から腕へと心地よい湿気が滑る。  
「悪いな、なんか…」  
「いいんです…ほら、やっぱり体汚れてる…」  
タオルが汗と垢を吸って、軽く変色している。 半ば寝たきりなため、まともに体を洗えていないのは確かだ。  
リエルはまた立ち上がり洗面所に向かい、再度タオルを絞って戻ってくる。  
「体…起こしますよ」  
「ん…」  
体を起こしたレオンの胸から腹を丁寧に擦る。 感触が少しこそばゆい。  
そして、背中。  
……レオンの体を丁寧に拭きながら、リエルはふと、ボーッとなる。  
(レオンさん…やっぱり逞しくって…それに…この香り…)  
そう、汗臭さと水分の匂いに混じってほのかに香る『雄』の香り。  
リエルの女の部分が、その美酒を求め始める。  
 
「…じゃあ、こちらも拭きますよ」  
とリエルが太腿に手を添える。  
「ちょ、そっちは俺が拭くって!」  
「ケガをされてる方は、じっとしていただきますよう」  
慌てて手を伸ばすレオンを、静かながら、どこか丁寧な看護師っぽい口調で制する。   
リエルの顔は薄く朱がさし、その表情は心なしか陶然としている。  
「………」  
何か憑かれたように一心に拭き続けている。  
レオンも半ば諦めてなすがままになっている。  
太腿からふくらはぎへと進み、ギプスのはめられた足をそっと持ち上げられる。  
「………痛そう」  
リエルがこぼす。  
「もうほとんど大丈夫さ。 大袈裟なんだよ、こんなの」  
レオンの言葉に優しい視線だけを返して、リエルはそっとふくらはぎを摩る。  
そして、また足をゆっくりとベッドに戻して、再びタオルを洗いに立つ。  
「おーい、もう十分だって」  
レオンが暢気な口調で投げかける。  
「…まだです、よ」  
リエルが微笑み、レオンのギプス側の足を軽く持ち上げる。  
「さ、うつ伏せになっていただけます?」  
「……わかったよ」  
ギプスに気を付けながら、レオンが体をよじってうつ伏せになる。  
「じゃ…」  
リエルがレオンの脚をゆっくり下ろして、太腿を拭く。  
そして、少し躊躇うような間の後、  
「えいっ!」  
ボクサーブリーフに手を掛け、一息にずりおろす。  
「おわっ! それは待て、リエル!」  
さすがにレオンが慌てて止めようとするが、うつ伏せのままでは何もできない。  
体をよじったところで、ブリーフが脱げるのを手伝う結果になっただけだった。  
「ここも…綺麗にしましょうね…」  
「お…おい、や、止め…」  
むき出しの臀部に手を置かれたのと、リエルの口調の妖しさにレオンは抵抗を続けるが、  
「あだぁっ!」  
ギプスの上から少し体重が掛かり、痛みに悲鳴をあげる。  
「ダメですよ、暴れたら…」  
愉しそうな口調でリエルは臀部をさする。  
そして、ゆっくりとゆっくりと、他の部位と比べても丁寧に拭いていく。  
「つつ…リ、リエル…マジ勘弁…」  
レオンが情けない声をあげる。  
「………はい、きれいになりましたね…」  
やっとのことでリエルの手が止まる。  
リエルの手が、膝のあたりで半端に引っ掛かっているブリーフのあたりに掛かり、レオンはホッとする。  
…のも束の間、リエルは信じられない程の力と素早さで、レオンの両膝を掴み、仰向けに転がす。  
「なっ!」  
素っ頓狂な悲鳴をレオンがあげた時にはもう完全に仰向けにされていた。  
もちろん、無防備にむき出しにされた下半身もそのままだ。  
「バ、バカ! 止めろ、リエル!」  
さすがに声を荒げたが、リエルの表情を見て、レオンは言葉を失い固まる。  
リエルの視線は、レオンの下半身に注がれている。 今までは暗がりでしか晒したことのない部分。  
少し傾きだした日の光に染まったリエルの顔は、まさしく初めて見る表情。  
瞳を潤ませ、どこか緩んだ印象を受ける表情。  
(や、やべ…リエルって、こんなエロい表情…するんだ…)  
自分の体臭に混じって、リエルの香りがようやくレオンの鼻腔を擽り出す。  
 
(………す、すごいです……)  
リエルはリエルで、実質初めて目にするレオンの男の部分に知らず釘付けになっている。  
今まで、ほんの数回自分の中で受け入れたものが目の前にある。  
それが、日の光の中でゆっくりと脈打ちながら大きさを増していくのがわかる。  
しばらく息を呑んでジッと見つめていたが、不意にリエルの五感に強烈に届く、レオンの『雄』の香り。  
(…何か、変ですぅ…)  
一息に強烈な酒をあおったような感覚。 リエルの体が瞬く間に酔う。  
視線が一旦レオンの顔に向けられる。 何か恥ずかしそうな、何かを堪えるような表情。  
(……あ…あの時の表情みたい…)  
リエルの脳裏に、ある顔が浮かぶ。 そう、自分を深く貫いた時に見せる、あの表情だ。  
暗がりでしか見たことのない貌が、今はっきりと結像している。  
(………)  
「じゃ、ここもきれいにしましょうね…」  
リエルは固く絞っていたタオルをほどき、また折り返す。  
そして、優しく彼のペニスを包むと、緩やかに手を往復させる。  
「うあっ!? ま、待ってく…」  
レオンの狼狽した声が届くが、リエルは構わずに、まるで大切な彫像を磨くように丁寧にペニスをさする。  
「うあっ!」  
タオル越しの刺激にも、レオンのペニスは正直に反応し、瞬く間に硬度を増す。  
(こ、こんなに大きく、固くなって………)  
ぼんやりとそんな事を考えながらも、リエルは何かに憑かれたように手を休めない。  
「…や、やめ…ううっ!」  
レオンは何とか声を絞り出すが、その度に迫ってくる快感に体がのけぞる。  
なにしろ、骨折してから自分でもしていないから、快感が強すぎて頭がクラクラする。  
と、ようやく、リエルがペニスをさする…いや、拭くのを止める。  
すっかり勃起したペニスは濡れて、窓から射し込む光で奇妙な輝きを示している。  
…亀頭の先端からは、透明な液がしとどに溢れ、脈動に合わせてゆっくりとペニスの根本へと垂れていく。  
「…も、もう終わったろ…? 服、着るから…」  
何とか繕って―と言っても勃起は治まらないが―レオンがブリーフに手を伸ばすが、  
「…まだですよぉ。 最後の仕上げです」  
伸ばした手を押さえられる。  
「…?」  
訝しむレオンの目に、リエルの表情が飛び込む。 明らかに、先程以上の蕩けた表情だ。  
「ま、待てよ…」  
(待てません…)  
レオンの制止はリエルには届かない。 虚ろに潤んだリエルの瞳がレオンの視界から消える。  
次の瞬間、レオンのペニスはリエルの口腔に飲み込まれる。  
「くああっ!」  
暖かい粘膜に包まれてレオンが体を震わせのけぞる。  
「む、んんぅ…」  
リエルがくぐもった声を発する。  
(こ、これ…ちょっと苦しい…で、でも、これでお口を動かしたら男のヒトって気持ちいいんですよね…?)  
自分でも後先なしに咥えてみたものの、何しろ初めてだ、どう『動かす』のかはよくわかっていない。  
(ここを、舌を使って転がせばいいのかなぁ…?)  
深く呑み込んでいたペニスを浅く吐き出して、リエルは亀頭に集中して舌を這わせ、くびれに沿って動かしてみる。  
「ダ、ダメだっ、リエルっ! よ、よご…ううっ!」  
レオンは言葉が続かない。 リエルのたどたどしい舌の動きにも、こみ上げるものを堪えるのが精一杯だ。  
(これ…すごく難しいですぅ…うっ…むせそう…)  
そう思いながらも、リエルの口は止まらない。 舌をぎこちなく動かしながら、口を窄めて吸い上げる。  
手はペニスの根本を緩やかにしごくように動かし、時に袋に触れてみる。  
袋に触れると、キュッと縮み上がっていくのを感じる。  
レオンにとっては甘美な拷問である。 しばらく快感から離れているのも手伝い、もう限界を迎えている。  
「リ、リエル! 離せ! で…出る!」  
さすがに口腔内(なか)に出すわけにはいかないと、レオンはリエルの頭に手を掛け引き離そうとする。  
リエルは上目遣いにそれを見ると、逆に『出して』と言わんばかりに、舌を絡めて深くペニスを呑み込む。  
「う……あああっ!」  
レオンの体を強烈な快感が疾り、ペニスが跳ねる。 同時に、リエルの口腔に熱い精液が叩きつけられる。  
(あ…出てる…レオンさんの…すごく……熱い…)  
強烈に熱く、青い匂い。 リエルはレオンの味に酔う。  
 
「う……大丈夫か、リエル…?」  
ようやく射精の快感を引き剥がしたレオンがリエルに声を掛ける。  
「んん、…くんぅ…」  
まだペニスを深く咥えたままのリエルは、その声に応えずにまだ吸い上げるようにゆっくり口を動かす。  
「頼む…も、もう…離れてくれ」  
右手でリエルの頭を撫でてそう言うと、ようやくリエルが口をヌラリと滑らせるように離す。  
イッたばかりの所にまた鈍く痺れるような感覚に顔をしかめるレオンをよそに、口を閉じたままのリエルがレオンを見つめる。  
そして、細い喉を軽く反らして、口腔内(なか)の精液を飲み干す。  
眉根を寄せて苦しげな表情が妙な色気で、レオンは不覚にも見とれる。  
「はぁ…」  
瞳を陶然とさせたまま、軽く艶のある溜息が漏れる。  
「…そんな事しなくても良かったのに…」  
「けほ…ご、ごめんなさい…でも………私…こんな事しかできないから…」  
軽くむせながらリエルが応える。  
「いや、体を拭くのはともかく、ソレは…お前だって初めてだろ…」  
「………ヘタクソでごめんなさい…」  
「違うってば。 何て言うか………ごめん、って謝るのは俺の方だろ。 リエルに無理させて、そんなもん飲ませてしまって…」  
少し我に返ったのか、しょげるリエルにレオンは優しく返す。 しょげるポイントが違う気もしたが。  
「いいんです…私…レオンさんをもっと感じたかったから…」  
顔を染め、目を反らしながらリエルがポツリと呟く。  
「………ありがとうな」  
この言葉が適切かは甚だ疑問だったが、レオンはとりあえずそう礼を言う。  
「…さ、もう大丈夫だから、口すすいでこいよ」  
「…はい」  
そうリエルは返事をしたが、何故か膝立ちの姿勢のまま動こうとしない。  
「どうした? ……ん?」  
訝しげにレオンがリエルを見ると、彼女は顔をさらに赤らめている。  
よく見ると、両腿あたりをもじもじとさせている。  
(ん? ………っておい、リエル…)  
レオンは見た。 リエルの右の内腿に何か光るものが流れるのを。  
(リエル…ひょっとして…濡らしてるのか?)  
その図にレオンはまた昂奮を覚える。  
(『お返し』だ…)  
ようやくおずおずとベッドから降りようとしたリエルの腰を抱き止め、内腿の雫を掬い上げる。  
「ひゃんっ! はわわ…」  
リエルが鋭く悲鳴をあげ、体を硬直させる。 内腿に鳥肌が立ち、細かく震えが疾る。  
「…やっぱり」  
レオンが確信したような口調で呟く。 指で掬い上げた液体は思った以上に粘り、指からこぼれて糸を垂らす。  
「ダ、ダメなんですぅ…」  
リエルの声がか細く震えているのは、羞恥心なのか、それともこみ上げた快感によるものなのか。  
レオンは微笑み―リエルにはニヤリと笑ったように見えた―、間髪入れずに右手をスカートの奥に差し入れる。  
「きゃ! だめぇ!」  
リエルがまた悲鳴をあげて、レオンの手を押さえようとするが、レオンの手が的確に濡れて膨れた部分をさすると、  
「はうううぅっ! ふぅ…」  
ゴトリ、という擬音が聞こえそうな勢いで全身から力が抜けてしまう。  
「そんなに昂奮してたのか? こんなに濡らして…」  
レオンは、少し意地悪かな、と思いながらも、それ以上的確な言葉が思いつかずにそう囁く。  
「あう………んんっ…ち、ちが…きゃん!」  
リエルは息も絶え絶えに否定しようとしたが、レオンの指がショーツをくぐり抜け、直接秘部に触れられると、ますます力が抜け上半身が前かがみになってしまう。  
レオンの指が熱いうるみに包まれる。 レオンはそのまま指を膣内(なか)に突き入れる。  
「ああんっ! だめぇ!」  
リエルの腰が跳ねる。 しかし、レオンの手を退けようとはしなかった。  
リエルの膣内も、指を拒むことなく、いやむしろ歓迎するかのように奥に吸い込むようにうねっている。  
「ここは、だめそうじゃないけど?」  
「う…うう………」  
リエルの頭を羞恥心と快感が同時に疾る。 同時に、両目から涙がこぼれる。  
荒くなった吐息から、熱っぽい『雌』の香りがした。  
(………)  
レオンは膣から指を抜いた。  
 
「………悪い、ちょっと意地悪だったな」  
涙を流すリエルにレオンは謝る。  
「…聞いてくれ。 正直、驚いた。 まさかそんなことまでしてもらうなんて、さ…」  
「…あ……あう…」  
今さらのように先程の口淫を思い出したのか、リエルはまた赤い顔をしてしょげた表情になる。  
「そんな顔しないで、最後まで聞いてくれ。 俺さ…嬉しかった」  
リエルが顔をあげてレオンを見つめる。  
「いや、見舞いに来てくれた事が、さ。 今日って大事な日だったのにこのザマでさ、気が滅入ってたんだ」  
言いながらリエルの頬に流れる涙を拭って、さらに続ける。  
「それだけじゃなくて、頼んでもないのにそこまで世話してくれて…」  
「ご、ごめんなさ…」  
「謝るとこじゃねぇよ。 済まないな、面倒掛けてしまって」  
「…いえ、私には、こんな事しかできないですから…」  
「そんな事ないって。 俺の気を晴らしてくれた事、今、それ以上の事なんてねぇよ」  
「………ありがとうございます…」  
「もう俺は大丈夫だから、ベッドから降りて身支度してくれ。 日が沈んだら一緒にメシを食おう」  
「…はい」  
レオンの言葉に、リエルは涙を拭い微笑みかける。 そしてゆっくりとベッドを降りる。  
「よいしょっと。 さて、服を取るか…」  
とレオンがベッドの脇の洋服ダンスの引き出しに手を掛けた時、スルリと布の音がした。  
「…な!?」  
音がした方を振り返り、レオンがたまげた声をあげる。 ―リエルが制服を脱ぎ捨てていた。  
「おい! もういいって!」  
レオンの声もまたも無視してリエルはブラジャーとショーツも脱ぎ捨てる。 素肌にはスリーブだけが残されただけだ。  
「リエル!」  
「………最後まで、お世話させて…」  
はにかむようにそう言って、リエルはまたベッドに上がる。 またしてもレオンを跨ぐ恰好だ。  
「バ、バカ! もう止め…うっ!?」  
レオンは気色ばむが、リエルの小さな手が彼のペニスを包み込むと、言葉が続かなくなる。  
「………熱い」  
そして、またあの顔。  
(………リエル、こんな積極的だったか? でも…これで断ったら…恥かかすな…)  
積極的なリエルに戸惑いは隠せないが、心も体も正直に反応するのがこの年頃の男の子だ。  
「…わかったよ、リエル。 でも、『お世話』ばっかりにはならないぞ」  
手を止めてリエルが戸惑った表情を見せる。  
「一緒に…気持ちよくなろう」  
リエルの頭を引き寄せ、激しくキスをする。 …自分自身の生々しい匂いも感じたが気にする程でもない。  
リエルの舌をくすぐるようになぞり、吸い上げる。 リエルも数テンポ遅れで反応し、舌を絡めてくる。  
「ん…ふぅ…」  
互いの口から甘い吐息が漏れだす。  
レオンはキスを続けながら、手をリエルの乳房に伸ばす。  
「くぅぅ……ん」  
リエルの口から悩ましい声が漏れる。 レオンが手を動かしやすいようにか、軽く胸を突き出す。  
両手が乳房を捉える。 そして優しく揉みあげる。  
リエルの舌が止まり、唇が離れる。  
リエルの均整のとれた乳房は既に張り詰めていて、レオンの手の動きに的確に反応する。  
「あ……ん…」  
リエルが眉根を寄せ、こらえるような声で応える。  
「声、出していいからな」  
レオンはそう囁くと、猫背気味に顔を屈めてリエルの乳首を咥える。  
「ああっ、んぅ!」  
リエルが快感にのけぞる。 既に彼のペニスからは手が離れ、彼の頭に両手を廻ししがみつき、快感に身を委ねる。  
「き…気持ちいいですぅ…レオン……さん…」  
(せめて、こんなとき位、『レオン』と呼んでくれよ…)  
そうも思ったが、口には出さず、レオンは優しく愛撫を続ける。  
「ああ…レオンさん……私…」  
切なく濡れたリエルの声が届く。 切れ切れの吐息に二人の熱が薫る。  
「リエル…寝かせるぞ…」  
レオンはそう言って、リエルを横たえる。 リエルはなすがままに仰向けになる。  
 
レオンは体を起こし、リエルに覆いかぶさる。 ギプスの脚が少し痛んだがそう気にはならない。  
「…すご…」  
思わず嘆息する。 リエルの秘部は先程以上に濡れて、薄く生えたヘアも重く変色して素肌に貼りついている。  
「恥ずかしい…です…」  
しげしげと眺められるのが恥ずかしく、リエルがそっと手を伸ばし隠そうとするが、レオンもまたそっとその手を制する。  
(きれいだ…)  
レオン自身も、じっくりリエルの秘部を見るのは初めてだ。  
秘唇が充血して、視られるのを恥ずかしがるように細やかに震えている。  
「ごめん、俺、もっとリエルを見たい」  
と言うと、レオンはリエルの下腹部に顔を寄せて、先程のキスと同じように秘唇に口を合わせる。  
「ひゃん!」  
リエルが嬌声をあげ、腰を上に突き出す。 まるで、もっと深く求めるように。  
「甘い…」  
レオンが呟く。 そして、ゆっくり膣内(なか)に舌を挿し入れる。  
「んん…は、入ってくるぅ…レオンさんの…」  
リエルが高く声を詰まらせる。  
(暖かくて、柔らかくて…)  
レオンは素直にそう思う。 挿入した舌を少しずつ奥へ進める。  
その刺激にリエルの襞がさらに誘うようにレオンの舌を絡め取る。  
(なんか…ほんとにキスしてるみたいだ…)  
レオンはそのまま膣内で舌を精一杯動かしてみる。 ぎこちない動きではあるが、それでもリエルには十分らしく、  
「ああ…レオンさ…ん、いい、いい、です」  
途切れ途切れの言葉で快感を訴えている。  
レオンは一旦ゆっくりと舌を抜き取る。 口はリエルがしとどに吐き出した愛液で光っている。  
「リエル…ここも…触るぞ」  
「え…」  
リエルの視線が下がる。  
レオンの舌が膨れ上がったクリトリスを捉えるのが見えるのと同時に、今まで以上の快感がリエルを貫く。  
「あんっ! レオンさん…そこぉ…っ!」  
鋭く悲鳴をあげて白い喉を反らす。  
「い、痛かったか?」  
先程までとは違う声にレオンは驚き顔を上げる。  
「は、はい…少し……で、でも、何か変ですぅ…」  
今までクリトリスに触れた事はなかったから、痛みと感じるほどの刺激だったのだろう。  
しかし、リエルの秘部はわななき、先程以上の愛液が溢れ出してきている。  
「どうする? やっぱ、止めとく?」  
レオンの声に気遣いが混ざる。 一緒に気持ちよくなりたいのに、リエルに苦痛を与えては何にもならない。  
「………いえ…でも、優しくして…」  
消え入りそうな声で、それでもレオンの言葉を打ち消して、リエルが腰をくねらせる。  
「…わかった、無理するなよ」  
そう声を掛けて、レオンは改めて愛撫を再開する。  
そっと舌を伸ばし、恐る恐るクリトリスに触れる。 リエルの体がビクリ、としなる。  
でも、体は遠ざかることなくレオンに預けたままだ。  
性急にならないよう、自分でもじれったくなる位ゆっくりとクリトリスを舌で転がす。  
「んああ…はぁ…ん」  
リエルの声が次第に甘い嬌声に変わるのがわかる。  
レオンは舌に込める力を強めて、クリトリスを押しつぶすように刺激する。  
「くううっ! いい…のぉ!」  
顔を仰け反らせ、舌を突き出しながら喘ぐリエルが淫らに映る。  
「いい…のか?」  
「はい…気持ちいい…っ! レオンさんに弄られて…気持ち…いいのっ!」  
リエルが、淫らな雌の顔を出して叫ぶ。  
…挿れたい。 レオンはリエルの淫らな姿に大きく衝き動かされる。  
「リエル…いいか?」  
「………はい。 で、でも…」  
「どうした?」  
「レオンさん…が、横になって…脚…」  
こんな状態になっても、リエルはレオンの体を気遣っている。  
「…わかった」  
 
レオンは改めて仰向けになって寝転がる。 リエルもよろよろと体を起こして、レオンの下半身に跨る。  
「脚…大丈夫です…?」  
まだリエルは気にしている。 レオンは内心苦笑しながら、  
「大丈夫さ。 …いい?」  
レオンはリエルの細い腰に左手を添え、右手で自分のペニスをコントロールしてリエルの秘部にあてがう。  
「ゆっくり…腰を下ろして…」  
「はい…」  
今までにない甘い表情で、リエルがゆっくり腰を沈めていく。  
湿った音を立てて、レオンの猛ったペニスがリエルの膣内(なか)にゆっくりと飲み込まれていく。  
「ん…ふぅぅぅ…ん…」  
快感に目を閉じたリエルの顔が悩ましく歪む。  
「くっ…!」  
(すげ…あったかくて、絡み付いてくるみたいで…)  
レオンも全身に快感が疾り、体が震える。  
リエルの膣内は、十分に濡れているとはいえかなり狭く、強く握り締められているような感触もある。  
「ううっ、リ、リエル、気持ちいい…!」  
握られている、というのはレオンの錯覚だった。  
確かに強く締め付けられているのは事実だが、熱く潤んだ襞の一枚一枚は嫋(たお)やかに絡みついてくるのだ。  
レオンは一気にこみ上げる射精感を必死にこらえた。  
「はああぁ…私も…レオンさんのが…当たって…」  
リエルも腰を震わせて、表情を蕩けさせている。  
「リ、リエル…そのまま前屈みになって…」  
「え……こう、ですか?」  
リエルが両手をレオンの肩に掛け、そろそろと前に凭れかかる。  
「ああ、………リエル、大好きだ、愛してる」  
「! …わ、私も、私も…愛してます!」  
感極まったリエルの瞳からまた涙が溢れる。 レオンは右手をそっとリエルの頬に当て涙を掬うと、  
自分の頭をゆっくりと持ち上げ、リエルの唇にキスをする。  
リエルもいとおしげにレオンの唇を貪る。  
長いキスを終えると、  
「じゃ、リエル…一緒に…」  
「…はい」  
リエルがはにかみながら体を元通りに起こして、ゆっくり腰を動かす。  
リエルが奥までレオンのペニスを飲み込み、その愛しい形を確かめるように膣内を蠢かせる。  
「ううっ、そ、そんなに締め付けると…」  
レオンはまた快感の濁流に呑まれそうになる。  
「だ、だって、あっ、わ、私…変になりそうで…あああっ!」  
リエルも快感の大きさをこらえ切れないようになっている。  
「お、俺も…我慢できない…」  
レオンが声を絞り出すと、リエルの腰を両手で掴み、下から大きく突き上げる。  
「あん! そ、そんなにされたら、私……!」  
リエルが快楽に顔を歪めながらも、レオンの動きに合わせ激しく腰をくねらせる。  
部屋に二人の吐息と淫らな水音を響かせながら、二人は絶頂に向けて激しく互いを貪る。  
「くうっ…!」  
レオンは眩暈を覚えながらも、リエルを絶頂へ導くべく、滑り込むペニスの角度を変え、何度も擦り付ける。  
「やあぁん! そ、そこぉ! だめぇ…っ!」  
リエルが絶叫に近い嬌声をあげる。 膣内から新たな蜜が溢れ、飛沫を立てる。  
「レオンさぁん…わ、私もう、もうだめぇ、もうらめぇ…!!」  
リエルが舌足らずに絶え絶えになりながら、絶頂の到来を知らせる。  
「うう、俺も…!」  
レオンももう限界である。 絶頂を求め、リエルの最奥を抉るように突き立てる。  
リエルも腰を大きくグラインドさせて、レオンを奥まで呑み込む。  
「あああっ! い、イク! 私、イッちゃうのぉぉぉっ!」  
リエルが法悦の表情で絶叫する。 その表情で十分だった。  
「リ、リエル、俺も…イク!」  
「レ、レオンさ……ああああっ!」  
互いに深く奥底を突いた瞬間、レオンのペニスが一気に体積を増し、激しく精液を噴き上げる。  
レオンの熱を感じた瞬間にリエルも絶頂に押し上げられる。  
リエルの体が絶頂にしばらく震えて踊り、やがて力をなくしてレオンの胸に上半身が崩れ落ちる。  
白く靄のかかったレオンの頭と五感に、リエルの甘い髪の香りが届いた…  
 
「ごめんなさい、ごめんなさいっ!」  
またリエルが半泣きでレオンに謝っている。  
ベッドの上でお互い裸のまま寄り沿っているのだが、完全に我に返ったらしいリエルが何度も謝っている。  
「何だよ、また謝りだして」  
気だるげにレオンが返す。 まだ快感の余韻が残っている。  
「だって、だって、私…!」  
顔をまた真っ赤にしてリエルが顔をレオンから反らす。  
リエルにしてみたら、自分のドジと痴態を思い出すにつけ、いたたまれないのだ。  
「…リエル」  
レオンはリエルを振り向かせて、腕枕に載せる。  
「きゃん!」  
変な声の悲鳴をリエルがあげる。  
「謝られたら、俺困っちまう。 さっきの『愛してる』って言葉も嘘っぽくなるだろ?」  
「はう…」  
「いいんだよ、あれでも。 でもビックリしたけどな、まさかリエルから…」  
「きゃーーー! 言わないでーーー!」  
また悲鳴をあげて両手で顔を隠す。  
レオンはクスリ、と微笑う。  
「笑っちゃイヤですーー!」  
リエルはもう叫んでばかり。  
痴態に対する照れ隠しだが、レオンはまだそこまで『女心の機微』はわからない。  
「……おいリエル」  
ふと、レオンが声を掛ける。  
「……やっぱり、怒ってるんデスね?」  
「何だ、その変な口調。 違うって。 ほら、こっちを向いてよ」  
「な、何デスか? …これ?」  
「何って…今日ホワイトデーだろ? さらに言えば…お前の誕生日じゃねえか。 プ・レ・ゼ・ン・ト」  
「あ」  
「何だよ、そんな気の抜けた返事して」  
「ごめんなさい、あまりに不意打ちで…」  
差し出された小振りの箱をリエルは受け取る。  
「開けてもいいデスか?」  
「だから、いい加減その口調やめろって。 どこの変態ピアニストだよ。 あ、開けてもいいぞ。 大したもんじゃないけど」  
レオンの返事にリエルはリボンと包装紙を取る。  
中からは、小さなハート型の小瓶に入ったパフューム。  
「あ、これ!」  
「女の子に今流行りのやつだろ? アイツらに訊くの、結構恥ずかしかったんだぞ」  
「これ、リディア先生の授業にも出ますよ」  
「混ぜっ返すなよ。 確か、欲しがってたよな?」  
「はい、ありがとう、…レオン」  
リエルは嬉しそうに小瓶を抱き締める。  
「…やっと、俺を呼び捨ててくれたな」  
「はわわっ!? ごめんなさい!」  
「…いや、それでいーんだよ」  
また謝るリエルにレオンは苦笑する。 先はまだまだ長そうだ。  
「そういや、リエルって同い年だよな? 結構誕生日遅いんだな」  
「え? 私…歳ですけど…」  
ボソリ、とリエルが年齢を伝える。  
「げっ! と、年上だったのかよ! 聞いてねえよ!」  
レオンが狼狽する。  
嘘だろ、とかブツブツ言っているレオンをよそに、リエルは微笑んで、パフュームを振る。  
…何となく、春の香りがした気がする。  
 
― Fin. ―  
 

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