「ふぅ」  
 白磁のカップから唇を離し、牧村由香里は吐息をこぼした。  
 まだ夜も明けぬ早朝。夜勤シフトの彼女の顔には、微かに疲れの色が漂う。十数時間  
の連続勤務もようやっと落ち着き、ナースセンターをほかのナースに任せて、一人休憩  
室で一息入れているところだった。  
(いつものことだけど・・・この仕事って大変だわ)  
 不規則な勤務時間に重労働、加えて責任重大。世のヒトには天使と映るその実、勤務  
内容は体力と精神すり減らす大変なもので、疲労の募る夜勤終わりは、こんな風に少し  
だけアンニュイな気持ちになることもある。  
(次のオフの日には、何しようかしら・・・フリルの生地でも見回ろうかな・・・)  
 ぼぅっと考えながら、お茶をもう一口。  
(それにしても・・・)  
 マイカップに注がれた茶色い液体に目を落とす。  
・・・何のお茶なんだろう。  
 ハーブティ、なのだと思うのだが、未体験の味と香りだった。  
 おそらく師長が趣味のNGO活動で、海外からお土産として持ってきたものなのだろう。  
包装もされていない茶葉になんとなく興味を覚えて淹れてみたのだが、  
(マテ茶とかなのかしら)  
 紅茶に慣れ親しんだ彼女には、ちょっと新鮮な味だった。燻されたような香りも一緒  
に味わいながら、カップを開けると、  
「う〜ん!」  
 伸びを一つ。  
「さて、もう一頑張りしましょう」  
 自分自身に気合を入れる意味で小声で呟いたとき、  
 
「おっと・・・マッキー?」  
「榊先生・・・と、景山先生?」  
 休憩室のドアを開けて入ってきたのは、私服姿の外科医師二人。  
「どうしたんですか、何かあったんですか!」  
 榊の肩にぐったりと寄りかかっている景山。その様子に、ナースの本能が反応して真剣  
な声で由香里が駆け寄る。  
「いや、別にたいしたことじゃないんだがなぁ」  
 心配そうな由香里とは反対に、のんきな榊の声。景山をソファに横にすると、  
「しばらくここでコイツ寝かしといてくれや。今日の午前外来だから、家まで帰すと、い  
くらも寝れんだろうから」  
 寝息を立てている景山。何もないことにすこし安心すると同時に、由香里は呆れてしま  
う。  
「というか、榊先生?景山先生が日勤って知ってて、無理やり連れまわしたんですね?」  
「いや、チガウって。どっちかっていうと連れまわされたのは俺のほうっていうか・・・  
コイツ、日頃いろいろ溜まってんのか、しゃべりだすと長くてなぁ・・・まぁ、とにかく、  
景山のことは頼んだわ、マッキー俺は帰るから」  
「あ、ちょ、榊先生!」  
 言うなりさっさと退出していく榊。取り残された由香里と、ソファの上の景山。  
「まったく!」腰に手を当て、憤慨する由香里。  
「医者がこんな時間まで不養生するなんて。何を考えているのかしら・・・」  
「う・・・ん・・・」そんな由香里の様子のせいか、眠ったまま顔をしかめる景山。  
「ふぅ・・・」  
 とりあえず、ソファの上で仰向けの景山をこのままにしては置けないと、タオルケット  
を持ってきて体の上に掛ける。  
(眼鏡も外してあげたほうがいいかしら?)  
 そんな風に彼女が迷っていた時、体の上にかかったタオルケットを、景山が寝返りと一  
緒にタオルケットを引っ張った。  
 
「あら、わっ」  
 急に動かれて、端を持ったままの由香里が思わず、バランスを崩す。そしてそのまま、  
タオルごとソファに倒れこんだ。景山の体を踏みつけることも、ソファの外に落ちること  
もなく、あろうことかソファの背と景山のちょうど間に、すっぽりと小柄な体が収まって  
しまう。  
「ちょちょ・・・」  
 じたばたともがく由香里。しかし、踏ん張れない体勢のせいか、体を起こせない。  
 それに加えて、  
「・・・んっ」  
 寝惚けているのか、景山が由香里の体にぐっと抱きついてきた。伝わってくる体温と、  
力強く腰に巻きついた腕。  
「景山先生・・・」  
 止めてください、そう言おうとしたはずだった。でもなぜか、上気する頬。心臓の鼓動  
が早まる。  
(そんな、相手だったかしら?)  
 赤らめた頬のまま、由香里は戸惑う。生真面目で、仕事は信用できるけれど、あくまで  
看護婦と医者という関係だと思っていた。なのに沸いてくるこの感覚。確かに・・・他は  
既婚者と若すぎと論外な外科医師の中では、一番な相手かもしれないけど・・・  
 ほんのすぐそばに景山の顔がある。こんなに近くでまじまじと見たことはなかった。眼  
鏡の隙間から、奥の瞳が直に伺い知れるくらいの距離、目にしているとなおさらに感情が  
高ぶってくる。  
(どうしたっていうの、由香里・・・)  
 制御不能な自分の感情。それは夜勤で鈍った判断力ゆえのものなのか、あるいは・・・  
 気が付けば抱かれたまま、由香里は景山の唇に、自分の唇を重ねていた。  
「ん・・・」  
 合わせるだけの軽いキス。そして、  
「んっ・・・」  
 重ねて押し付ける、長いくちづけ。いつの間にか、彼女自身も、景山の背に手を伸ばし  
ていた。キスごとに昂ぶりは高まっていく。  
 そんな中、僅かずつ景山の瞳が開く。  
 
 寝ぼけ眼に映る、目と鼻の先の由香里の顔。何が起きたか分からずで、しばしの思考停  
止の後、さぁっと顔色が青ざめる。  
「ま、牧村さん!ボ、ボクはっ!」  
 慌てて飛び起きようとする景山。しかし、腰に回された腕がそれを許さない。  
「まって、下さい・・・景山先生」瞳を潤ませる由香里。「こんな、こんなふしだらな女は、  
嫌いですか?」  
「いや、好きとか嫌いとか・・・」二の句が告げず、真っ赤になったままに口をパクパク  
させるしかない景山。  
「・・・ごめんなさい、景山先生、でも私、もう我慢できないんです」  
 三度目のキス。覚醒している景山にするそれは、唇を合わせるだけではない。由香里の  
小さな舌は、緊張に閉じた景山の唇を割って入り、口内に侵入する。  
「ん・・・くちゅ」  
 唾液の絡まる水音。そのまま、彼女の手は景山のワイシャツに伸びる。ネクタイを緩め  
ると、片手でワイシャツのボタンを上から外していく。手馴れた手つきなのは日ごろの介  
助の経験ゆえか。  
「じゅ・・・れる、ちゅ」  
 ワイシャツを脱がすと、今度はベルト、そしてズボン。情熱的なくちづけと平行して、  
景山は身軽にされていく。ファスナーを下ろされた後、ようやく長いキスが終わる。  
 離された二人の唇の間には、てろりと銀糸が伸びていた。  
「その、本当に、ボクでいいんですか?」  
 照れくさいのか、その問いかけに答えず、由香里は半身を起こすと、まだ反応している  
とはいえない景山のパンツの下のものに、手を伸ばした。くにくとと人差し指と親指の腹  
で刺激する。  
「くっ・・・」その刺激に景山の口から、抑えた声がもれた。  
 横になったままの景山のパンツを下ろすと、ぴんと屹立して反り返るものが由香里の眼  
前に現れる。  
(これは・・・意外に、顔に似合わずといいますか・・・)  
 大きさに少し驚く。ちなみに比較できるほど彼女が『知ってる』のは、あくまで仕事上  
の経験からであって、プライベートでは経験豊富というわけではなかった。  
 細く白い由香里の指が景山のモノに添えられる。軽く握る、そんな刺激だけでピクン、  
ピクンと反応する。  
 しゅに、ゆっくりと、微かに上下に手を動かす。手のひらに力を入れ、そして抜くを繰  
り返しながら。  
 
(・・・まだ、大っきくなっていく)  
 眼前に突きつけられる肉竿、その根元に片手を添えさせたまま、朱色の先端に唇を近づ  
ける。  
「あ、む・・・」  
 くぷぷぷ、それがゆっくり、口腔に飲み込まれていく。小さな由香里の口には、収まり  
きれない大きさの景山のモノ。  
じゅ、ずぞ・・・ちゅぷ、  
 まとわされた唾液で、てらてら光る肉槍が由香里が頭を動かすたびに、出たり入ったり  
を繰り返す。  
 唇から零れた泡だった唾液が、彼女の頬を、顎を伝って落ちていく。  
「はぁっ・・・はぁっ」景山の呼吸が早まる。  
 日すら昇らない時間、静かな室内。吐息と、淫らな水音だけが響く。  
れる、くちゅ・・・ず、ぐぽ、ん、ぐっ、っぐっぐっぐっぐ  
 ストロークが早まる。景山の腰が浮き、背筋が張り詰めていく。限界が近いのを察知す  
ると、さらに勢いをつけてナースキャップを前後に振り、なおかつ舌を動かす。  
「で、出るよ、牧村さんっ!」  
「んっ!!」どくん、どくん。喉奥まで飲み込んだそれが、白濁を吐き出す。  
(凄い、勢いと量で・・・)  
 くっ、んっく。小さな喉を動かして、必死に嚥下するが、追いつかない分が口元から零  
れて由香里の顔を汚す。  
 放出が終わり、ようやく由香里が肉竿から口を離す。頬に付いた白濁を人差し指でかき  
集めると、  
ちゅぽっ  
 それすらも口に運んだ。  
「はあっー、はあぁー・・・」  
 一方、駆け抜けたエクスタシーのせいで、とろけた瞳で、荒い息の景山。  
「景山先生・・・」吐息掛かった由香里の声。「まだ、大丈夫ですよね・・・」  
 これ見よがしに白衣の裾を持ち上げると、景山の眼前に晒す。白いストッキングの奥に、  
微かに見える下着。  
 スカートの端を自分で口にくわえると、ゆっくりとストッキングを下ろす。ひざ下まで  
ずり下げると、もう一方の手をショーツに伸ばした。そして、まるで景山に意識して見せ  
るように、ショーツを引き下げる。  
 秘貝からつぅっと愛液が糸をたらしていた。  
「まだ私、満足してないんです・・・」  
 
 眼前ストリップのせいか、すっかり硬さを取り戻した景山のモノに片手を添えると、彼  
女自ら、膣内に導きいれていく。  
ぐぐぐ、  
「っつ、キツ・・・」  
 十分に潤っているながらも、それは由香里には大きすぎるらしく、強い抵抗感があった。  
 体重を乗せてゆっくり飲み込んでいくと、  
「うあっ!」  
 一番キツイ入り口を通り抜けたせいか、ストン、と体が落ちて一気に最奥まで飲み込む。  
「凄っ、お腹の中が、一杯に・・・」下腹部のあたりに手を伸ばす、まるでそこが出っ張っ  
てしまうかというくらい、大きなモノを詰め込んで、由香里が体を振るわせる。  
「熱っ・・・」うねる膣内の熱さに景山が小さく呻いた。  
「動き、ますね・・・景山、先生・・・由香里を、由香里を感じてくださいっ」  
じゅぷ、ぱん、ぐじゅ、・・・  
 騎乗位の上下動。細い腰をくねらせて、ナース服が踊る。  
「ま、牧村さんっ!」景山が体を起こす。腰を動かす由香里の上着を脱がしにかかる。すこ  
し乱暴にはだけられた上半身、まろびやかに女性らしい曲線を備えた肩のライン、そしてブ  
ラジャーに包まれた小ぶりだが形の良い胸が晒される。仕事以外では初めてフロントホック  
をはずした景山は、現れた双丘の先端の桃色に舌を這わせた。  
「あっ・・・胸ダメっ!くっつ!!」  
「牧村さんっ!」  
 胸と胎内からの同時刺激から生まれる快感に由香里が戦慄く。腰を浮かせ、そして一気に  
飲み込む。  
 最奥を先端が叩くたびに、快楽が脊椎を通り抜け、頭の先っぽでスパークする。  
「景山先生っ!私、わたしっ!」  
 昂ぶりが最頂点で弾ける。小さな体をしならせて、由香里がエクスタシーに飲み込まれる。  
 快楽で意識が一瞬ブラックアウトする寸前、意図せず彼女の膣内が収縮する。  
 そしてそれは同時に景山の二度目の絶頂をも引き起こした。  
・・・どくん、どくん。  
 二度目とは思えない大量の白濁が、震える由香里の膣内を満たしていった・・・  
 
(後日)  
 
「あら、こんなところに」  
 休憩室。テーブルの上においてある茶葉の包みを師長がひょいと持ち上げる。  
「ん、なにそれ?紅茶?」  
 ソファにふんぞり返った榊が尋ねる。  
「これね、昔、(検閲)に行ったときにね、記念にもらったお茶。なんでも子作り、多産に  
効果があって、現地の秘祭に使われるとか・・・」  
「いや、そんなヤバいもの持ってきちゃだめでしょ」  
「封が開いてるわね。誰か飲んだのかしら・・・」  
 
 

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