「ねえ…見ても良い?」  
「ああ。良いよ」  
結婚記念日に書いた妻と愛娘の絵。今しがた完成したばかりのそれを恵は食い入る様に見つめていた。  
「どう…かな?」  
「やっぱり…上手いね、綾人」  
その出来に満足した様に恵は嘆息する。  
…上手いのは当然。嘗て彼は画家志望だったのだから。  
「まあね」  
「ありがとう、綾人。最高の…贈り物だわ」  
柔らかな微笑みを讃える恵の表情に自然と綾人の顔も綻ぶ。  
恵が居て、望が居て。これ以上望むモノなど無い幸せ。確かに、彼はそれを感じていた。  
 
「思えば…随分と遠くに来た気がするな」  
ふと、昔を懐かしむ。過去の思い出に想いを馳せる等、自分も老け込んだと笑いたくなる。  
未だに色褪せぬ、忘れえぬ思い出。  
恵との思いが結実したあの…  
 
男女の仲がどう転ぶか。それは人によりけりであり、中々進展しない者もあれば至極あっさりと至ってしまう者もある。綾人と恵の場合はどうであったのか。  
 
最終決戦から数ヶ月後。二人はニライカナイに居た。決戦の折にジュピターシステムにより壊滅した島の復興作業に従事していたからだ。  
この時点での二人の仲は周囲の人間にもそれと分かるほどに良かった。限りなく友達以上、恋人未満。  
が、それぞれにあてがわれた作業区分や担当地区の違いから二人だけの時間がどうにも取り難い。そんな背景もあってか、二人はそれ以上の関係に進展出来ないでいた。それ所か、徐々に疎遠になっていく自分達の関係に綾人はいざ知らず、恵は相当に焦っていた。  
一部の人間にはそんな二人の関係に一喜一憂し、隙あらば…とそんな二人の間に割って入ろうとする猛者も居た程である。  
二人がどうなるか…事情を知る現地職員には、それは格好の娯楽であり、応援する者、妨害する者、傍観する者…種々雑多な人間模様を垣間見せていた。  
そして、そんな現状にとうとう痺れを切らした恵は一世一代の勝負に出る。  
復興作業従事者の居住スペース…綾人の部屋に特攻をかけたのである。  
 
 
(トン、トン)  
「…ん?」  
綾人は自室のドアがノックされている事に気付いた。  
一体誰だろうか?宵の口に自分を訪ねる人間なぞ限られる。  
(トン、トン)  
再び、ノック。鍵は開いている、と声を張り上げたくなったが、ノックの主は誰なのか直接確かめたい気持ちに何故か駆られた。  
「…はいはい。今、出ますよ」  
のそのそと立ち上がりドアの前へ。そしておもむろに開け放つ。  
「あ……」  
「えっ」  
そこに居たのは予想しなかった人物。  
「め、恵?」  
紫東恵その人であった。  
 
「恵……ど、どうしたんだ?こんな時間に」  
「あ…うん。…お散歩がてらに寄ってみたんだけど」  
玄関先に立つ恵はいつもと変わらない様子で綾人の目に映る。  
「散歩の?…今日は随分冷えるのに?」  
外からは肌寒い空気が部屋の中に流れ込む。  
こんな夜は沖縄では珍しいが、そんな中で散歩を?  
「うーん…」  
「な、何よ…」  
そんな薄着で?風邪をひくぞ。  
「いや…恵の部屋ってここから逆方向だろ?こんな遠くまで散歩を…」  
「べ、別に良いでしょ!?あ、あたしだって…偶にはお星様を見上げて…色々考えたい時もあるの!」  
「空…曇ってるけど」  
本日のニライカナイの天気は曇天。夜には雨の模様。月明かりはおろか、星明りすら無い。  
「あ…さ、さっきは晴れてたのよ!」  
「そうなの?…まぁ、良いけど」  
くしゅん!恵が可愛らしいくしゃみ一発。その様を見て綾人が笑みを漏らした。  
「ぐす…うぅ。何よ、失礼ね」  
「あはは…ゴメン。…中に入る?」  
「切り出すの遅い!…すっかり冷えちゃったじゃないの」  
「はいはい…」  
何時までも玄関先での立ち話も悪いと判断した綾人は恵を自室へ招き入れた。  
訪ねてきた人間を追い返す真似はしない。しかも、彼にとって彼女は意中の存在だ。  
その恵にさっきは感じなかったいつもと違う何かをひしひし感じながら、近況報告や雑談に華を咲かせる。  
笑い話や愚痴でも何でも良かった。こうして顔を付き合わせる機会は作業に従事してからはとんと少なくなってしまっていたから。  
 
…ふと、外の様子に耳をやる。聞こえてくるのは屋根に打ち付ける雨音。しとしと降る。  
「…降って来たね」  
「うん…」  
それきり、恵は押し黙る。綾人も言葉が続かない。沈黙が少し痛い。  
こう言う時は…どう切り出せば良いのか?微妙に気まずい雰囲気を打破しようと綾人も持ちうる限りの話題を恵に振るが、帰ってくる答えは「うん」、「そうだね」等が大半だった。  
恵の目は伏せられ、決して綾人を見ようとはしない。  
何だ?一体何々だ?この空気は?  
そもそも、彼女は何故自分を訪ねてきたのか。散歩がてらと言ったが、恐らくはこじつけだろう。ならば、真の目的がある筈。それは一体…。  
色々と思案してみるが、鈍感の代名詞の神名綾人。真実には辿り着けない。  
まさか…俺に会いに来た?否。そんな馬鹿な事が。  
…こんな調子である。  
 
「雨…止まないな」  
「うん…帰るタイミング、逃しちゃったかな」  
降り止まない雨。雨足は強まり、ざあざあと屋根を壁を殴りつける。  
もう少し早く言ってくれれば…ここまで大降りになってしまえば、送っていくとは流石に言えない。送り届け、帰って来る頃には下着まで水浸しになるのは目に見えている。  
「あのさ…綾人」  
「うん?何?」  
「今日…泊まってって良い?」  
…やはり、そうなるか。雨が降って来た時点でそう言う可能性もありえるかな?位の覚悟はしていた。していたが…それが実際のものになるとは。  
いざ言われると非常に心に重いものがある。  
「別に…構わないけど」  
だが、こうなってしまった以上、放り出す訳にはいくまい。了承。  
「本当?」  
「ああ」  
「…ありがとう」  
淡白な受け答え。別に同衾する訳でも無し、そもそも間違いは起こりえないだろう。  
布団は恵に譲ろう。自分は床にごろ寝。何も起こらない…何も。  
勝手に自己完結。これ以上の思案はあらぬ妄想を掻きたてる故に。  
 
欲しかったカードは揃った。これ以上の手は望めない。  
チップは全賭け。後戻りも後悔もしない。…ぶつけるだけだ。  
そうして、恵が動いた。  
「綾人」  
「うん?」  
布団を敷いている綾人の手が止まる。  
 
「あたし…綾人の事、好き」  
 
「あー、そう。俺も恵の事は好………え」  
はい?今…何か聞こえたな。綾人がす……酢ダコ?  
…って!後半、何を言おうとした!?  
「……」  
視線が交差する。そして、襲ってきたのは怖気であった。汗ばみ、紅潮した彼女の肌。目は既に潤んで、唇は濡れていて…  
「き、気のせい、だよな。はは」  
自己完結。この期に及んで綾人は逃げの一手を打とうとする。恐るべき屁垂れ。  
敵前逃亡は軍法会議モノである。当然、それを許す恵では無かった。  
「んぐっ!?」  
強引に綾人の口が塞がれる。塞いだのは恵の唇だ。  
柔らかい感触と共に、口腔に侵入する異物。こちらの舌を絡めとり、歯茎を舐め上げる。恵の舌。一瞬、何が起きたのか理解が出来なかったが、理解した時点で彼は恵から離れる。  
チュポ。空気が抜ける音がした。  
「あたしは!綾人が好き!」  
「ぁ……っ」  
続いて駄目押し。その気迫に気圧された綾人はだらしなく壁際まで後退する。  
目の前には紫東恵。後ろには壁。当然、逃げ場など無い。進退、ここに窮まった。  
 
「お、俺の事が好きって…」  
「…(コクン)」  
彼女が無言で、頷く。その仕草が何よりも力を感じさせる。つまり…本気。  
「そっか…」  
綾人はただそうとしか言えなかった。  
「綾人は…?」  
「ん…」  
「綾人はどう…なの?私の…事」  
伝わってくる無言のプレッシャー。催促されている…と考えて間違いは無い。つまり、この場で答えろと。  
「俺は…」  
「俺は?」  
正座した恵の視線が容赦なく眼前の彼に突き刺さる。痛い。目を背けるが…  
「俺は…その…」  
視線を背けた先にも恵の顔があった。逃げられない。  
「あたしは…伝えたよ?自分の気持ち。じゃあ…綾人は?」  
もう完全に詰んでいた。そもそもここで素直にならない意味はあるのだろうか?  
ここには恵と自分しかいないのに。それならば…素直に伝えれば良いだけだ。  
綾人もここに至ってようやく本心を吐露する。  
 
「俺も好きだよ。恵を」  
 
「…本当?」  
「ああ…」  
「本当に…あたしが、好き?」  
「ああ」  
「ほんとにホント?」  
「しつこいな!俺は恵が好きだよ!」  
何度もオウム返しに聞く彼女に綾人も照れ怒る。何度も聞かれても本人としては困る。  
「あ〜やと〜♪」  
「うわっ!?」  
ドサッ!突然抱きつかれ、後頭部から床に倒れ込んだ。自分の体重+恵の体重のおまけ付き。  
「い、痛…っ」  
「えへへ♪あたしも…綾人が大好き」  
「…さいですか」  
「ねぇ…もう一回言ってよ…」  
「っ!勘弁してくれよ!!」  
未だに雨は止まない。外気温もかなり低い筈だが、この部屋の温度がとびぬけて高いのは錯覚ではあるまい。  
 
「・・・」  
「・・・」  
床に倒れこんで数分。不意に会話が途切れた。感じるのは互いの体温と鼓動のみだ。  
「…っ」  
「…?」  
否…それだけでは無い。彼は感じ取っていた。  
「…ねぇ、綾人ってば」  
「な、何だよ」  
彼女から流れて来るもの。これは…苛立ちか?  
「それで終わり?」  
「お、終わりって何が」  
激しさが増した。恵の不機嫌に更なる拍車が…  
「続きはしてくれないの?ねえ!」  
「つ、続き!?何のだよ!」  
「な、何って…い、言わせる気!?私の口から!!?」  
「言ってくれなきゃ分からないだろ!」  
綾人が上体を起こして恵を睨む。彼女が何を言っているのか分からない。  
「こ、この……っ!」  
「うわ!」  
今度は押し倒された。両肩に体重を掛けて押さえつけられる。綾人は跳ね除ける事が出来ない。一瞬だけ認めた恵の顔は真っ赤で、目は何か決意で満たされていた。  
そうして、彼女は綾人の耳元で囁く。  
 
「…抱いてよ」  
 
「!」  
そうして、彼も漸く現状を理解した。密室、抱き合った男女、二人は両思い、事ここに至ってどちらも正常な理性は半分も機能しないだろう…  
「あたし…もう、我慢出来ない。…おかしく、なっちゃうよ」  
「恵」  
チュク…重なる唇。軽い、触れ合う様な口付け。それがとてつもなく甘く感じられる。  
唇の感触、舌の歯ざわり、唾液の味…もっと欲しくて。気が付けば、互いを貪っていた。  
どちらともなく自然と唇が離れる。互いを繋ぐ唾液の糸。綾人は恵を掻き抱いた。  
もう、互いを縛るものはいらない。  
 
「俺も…恵を抱きたい」  
 
布団の上には恵が居る。何も着けてない、裸の恵。そしてそれを見下ろす綾人。  
「恥ずかしい…から、明かり…消して」  
無言で頷く。そして、部屋は闇に包まれた。  
「ひゃん!」  
ビク!手探りで触れた瞬間、恵の体が爆ぜた。しっとり汗ばみ、吸い付く様な肌だ。  
「そ、そんなに緊張されても困るんだけど」  
「そんな事言ったって……ん、ぅ」  
自分は今、彼女の何処に居るのか?この暗がりだから目が慣れない。頼りになるのは触覚だけだ。肌の感触を楽しみながら、現在位置の確認に勤める。  
「ふやっ!?や、そ、そこ…」  
「え?え?」  
其処とは何処なのでしょう??彼は未だに現在位置を掴みかねている。しかし、彼女の声を聞く限り敏感な場所を刺激してしまったのは間違い…無い様だ。  
「ん?えと…」  
「あん!」  
チュク。一際甲高い声と指先に感じる湿り気。ひょっとして此処は…っ!  
「お、おまん…」  
「馬鹿馬鹿!えっち!スケベ!変態!」  
「いや…そう言う事してるんだろ?」  
「あう…」  
現在位置は分かった。綾人はそのまま指先を移動させる。  
「っ…くんっ」  
臍は通過した。鳩尾…胸はこの辺り?見当を付けた当たりを重点的に探る。  
「ふあ!」  
反応は直ぐにあった。探り当てた突起を指先で転がす。  
「っ!ぁ…っく、んん!」  
ビンゴ。顔を近づけて、もう片方の突起を口に含む。痛い程尖ったそれを、だ。  
「ふあああ!!」  
「んっ…良い声」  
繰り返される旋律。恵の嬌声。嗜虐心が駆られ、一層強く弄ぶ。  
「はっ!はあぁ!!…んっ、っ」  
「はぁ…はっ…はあ…」  
自然とこちらの吐息も荒くなる。妙な高揚感。そして、不思議な安心感が綾人を包む。  
 
「ねえ…っ、綾人?」  
「…え?」  
「胸…好きなの?」  
「あ、いや…別に」  
綾人は言われてはっとした。随分…長い時間、彼女の胸に執心しているような。  
「ゴメンね……んぅ」  
「は?」  
いきなり言われても彼としても困惑するしかない。  
「おっぱい…あたし、おっきくない…」  
大きくない?胸が?だから謝った?…ぷっ。図らずも吹きだした。  
「い、痛た!」  
恵が怒りを込め綾人の二の腕を抓った。しかもかなり強く。  
「今笑ったでしょ」  
「ちょ…い、痛いって!…っ、何すんだよ」  
「だって、気になるんだもん…お姉ちゃんにだって、エルフィにだって負けてるもん」  
「あー、恵は…まだ成長段階だろ?これからの展開次第で幾らでも変わるよ」  
「でも…やっぱり、気になる。綾人だってそうでしょ?」  
「気にしない。恵のおっぱいなら俺はそれでお腹いっぱいだから」  
「でもぉ…あん!」  
「豊胸したいなら手伝うから…そんな自己卑下するなよ」  
「んぅ…えっち」  
「俺も男だから、さ。それに…恵も相当なもんだぞ?」  
「ふ、ふふ…そう、ね」  
 
「うわっ」  
滑り込ませた下腹部の状態に思わず声が上がる。しとどに濡れそぼるその場所。  
果実を潰した様に蜜に塗れる綾人の手。もう…こ、こんなに…?  
「あ、綾人ぉ…」  
蕩けた声を漏らす恵には理性が存在していない錯覚すら覚える。  
「その…さ。恵にはこれまで経験は…」  
「無い…よ?綾人で最初…」  
このまま先に進んでも…否。やる事はやっておこう。  
「恵…股、開いて」  
「え?…うん」  
拒否されると思ったが、言われるままに彼女は足を大きく広げた。  
綾人はそのまま股座に顔を近付け、秘所に口付けた。くちゅり。  
「ん…」  
「えっ…っあぁ!」  
恵の体が仰け反る。今、自分が綾人に何をされているのか?理解しているかは不明。  
「きゃふぅ!ああ!」  
柔肉を押し広げ、舌を侵入させる。直ぐに彼の顔は愛液に塗れた。  
若干、尿の香りがするが気にはならない。舌を、唇を、指を使って彼女自身を愛する。  
「かっ…はっ…っっ!!」  
「むぐ…!」  
恵の両手が綾人の頭を押さえつける。無意識の行動か、否か。今となってはどうでも良い。  
(えっと…こう言う時は…そうだ)  
勤めて冷静に。綾人は包皮に包まれた真珠を露出させる。  
「きひぃ!!?」  
捲り上げた衝撃は予想以上に恵を突き上げる。そして綾人は容赦無く彼女の硬いそれを口に含み…  
ずちゅうううう!!  
吸い上げた。  
「っああああああああああ!!!」  
悲鳴に近い絶叫。これまで無い程に恵が爆ぜた。弓形になり、びくびく痙攣を繰り返す。  
(達した!)  
「あ、あんっ!!ふあぁ♪あ、ぁ…♪」  
「はあ…はあ…ふうぅぅ」  
汁でベトベトになった顔を拭い、綾人は深呼吸する。  
その瞬間に濃密な恵の香が彼を冒す。脳内で劈く本能。彼女が欲しい、と。  
 
「ふう…ふう…っ、くそ」  
思うように手が動かず、ジッパーすら満足に下げられない。  
「…っ、よし」  
…何とか、自身を解放する事は出来た。だが、限界が近い。理性が途切れそうになる。  
恵の胸に手を置いた。ドクドク脈打つ彼女の心臓。彼自身とまったく同じ。  
「良いんだな?恵」  
「ん…」  
了承。  
その手触りが、その声が、その香りが全て教えてくれる。昂ぶってる。自身も、恵もどうしようも無く。  
「分かった…」  
そして、綾人は男性自身を恵にあてがった。  
「綾人…」  
「ん?」  
「優しく…して?」  
ここに至ってかなり無理な注文。だが、綾人自身も分かっている。乱暴には抱きたくない。  
「任せて」  
理性が保つ事を祈って、彼女に頷く。そして…余計な痛みを与えないように…  
一気に貫いた。  
「ぐっ!」  
「つあ!?ぁ…はっ…つぅ」  
直に感じる彼女の温もり。締め上げる膣。舐め上げる襞。これ以上無い一体感。  
我慢など出来る筈が…  
「綾…人ぉ…」  
「っ?」  
そっと、背中に手が回された。優しく、包み込む。  
「うれしい」  
「…そっか」  
荒い吐息の恵。彼女も…また耐えている。  
「もう、ちょっとだけ…待ってね?」  
「っ…く、あ、ああ…」  
なら…耐えるしかないじゃないか。もう…言葉を発するのも彼には辛かった。  
 
「もう…良い、から。綾人の好きにして…?」  
自分は此処まで我慢強かったのかと切に思う。それとも…記憶に無いが東京に居た時に経験があったのか?  
もう…下半身の感覚が曖昧だ。だが、ゴーサインは出たのだ。最後まで…逝く!  
「恵!」  
「きゃふぅ!あ、あや…と、ぉっ!!」  
訳の分からない快感がひっきりなしに襲う。泥濘に打ち込んだ剛直がゆっくりと溶かされていく。温かく、きつく、引き込まれる。  
ぱつぱつと水音が木霊し、一層の情欲が引き出される。  
「はぁ…っは、ぐ…ぅ!」  
「あっ、はんっ…んふ…っ!」  
狭く、浅い彼女の其処を何度も往復する。入口から最奥の子宮口までの前後運動。技術も何も無い拙い情事。それがこんなにも心地良い。  
時折、背中をひっかく恵の爪。痛みと共に押し寄せる彼女への愛おしさと嗜虐心。  
 
もっと、泣かせたい。  
 
もう限界を迎えている筈なのに。それでも果てぬ自身の欲望。浅ましい事この上ない。  
だが、彼女が仰け反る度、子宮口を擦り上げる度、歓喜の声を漏らす度に射精のボルテージは上がっていく。もっと…もっと…もっと!  
そして、それは終わりを迎える。  
「あやとぉ…♪」  
不意に射した月明かりが彼女を照らす。涙と唾液でくしゃくしゃになったその顔。今、自分が抱いている小さく、華奢で、強く抱いたら折れそうな少女の身体。自身の欲望を飲み込み、しゃぶりついて離さない彼女自身。彼女の蕩けきった声。彼女の匂い。  
今迄、見えなかったものが…見えた。  
「ぐっ…づぅ!!?」  
やばい。やばい!やばいやばいやばい!!これはヤバイ!  
ゲネラルパウゼと初めて戦った時よりヤヴァイ!…初めてって何だ?  
オーバーフローだ。膣内は拙い…!  
「…って!ちょ、め、めぐ…!?」  
「あは♪…一緒に、ね♪」  
腰にガッチリと回された恵の脚。引き抜けない…!  
道は…一つだけだった。  
「恵…!」  
「綾人…好き…♪」  
最奥に亀頭を押し付け、綾人は恵に自身の欲望を注ぐ…。  
「っ!…く、ぁ…ああぁ…!」  
「ふあああああああああ!!!」  
ドクドクと大量に注がれる。自身の胎を焼く愛しい人の迸りを感じ、恵もまた達した。  
 
 
時刻は深夜。既に雨は止み、仄かな月明かりが室内を照らす。  
「ゴメン…怒ってる?」  
「いや…避妊具使わなかった時点で二人共NGだろ」  
「そう…思ってくれる?」  
「そう思うしか…」  
「…多分、大丈夫な日だと思うけど、もしかしたら…」  
「…当たりを引いた?」  
何とも曖昧な。それで男を咥え込むとは……否、あまり他人の事は言えない。  
「大丈夫」  
「え?」  
「そうだったら…責任は取るから」  
「あ…」  
「その覚悟も無くて…女の子は抱けないよ」  
「ほ、本当に?あたしを…貰ってくれるの?」  
頷く。思考がガキ臭いと言われようが、これは譲れない。何故なら。  
「そんな事は無視しても…俺は恵の側に居たい」  
「…!」  
「俺が…今、一番やりたい事だ」  
「馬鹿…」  
「馬鹿で結構、だよ」  
「離しちゃ…やだよ…」  
 
後日、二人の仲の進展は大いに周囲を沸かす事となる。  
それから二人の仲はますます深まり、最終的に二人は結婚した。  
この一件から確実に言える事は、紫東恵は勝負に勝った…と言う事。  
そして、それは神名綾人の将来をも決めた…と言う二点であった。  
 
 
「綾人〜?さっきから何にやけてるのよ」  
妻の声で過去から戻された。  
「ああ…昔を思い出してた」  
「昔?…はは〜ん、あの頃の綾人、モテモテだったもんね」  
「あー、違う違う。恵と初めて事に至った時を、さ」  
「え?」  
不意を突かれた恵は一瞬にして赤くなった。  
「なっ、ば、馬鹿!」  
「あー…あの頃は俺も恵も初々しかったよなぁ」  
「ちょっと…今のあたしは不満って事ですか」  
「そ、そんな事は言ってないけど…?」  
妻の気配の変化を夫は鋭敏に感じ取る。拙い拙い。  
「コホン…でも、正直な所、あの後の展開は早かったよな」  
「そりゃあ、ね。一線超えちゃったし、綾人があたしを貰ってくれるって明言してくれたから」  
「やっぱり…そうだったのか」  
「争奪戦では有利に進められたわ」  
「え?争奪せ…」  
「細かい事は気にしちゃ駄目よ。大局を見ないとあなたの職務は務まらないでしょ?」  
「い、いや…でも」  
「この話はお終いよ。神名TERRA副司令殿」  
何とも不穏当な響き。一体、何があったのか。妻は微笑むばかりで何も言ってくれなかった。  
 
幕は下りる。時の旅人…その役を終え、黄昏に還る。  
去り往くは未知なる音、遥か久遠の彼方へと…  
 
なくしたものは…みつけられたのか?  
 
「この幸せが…ずっと続いてくれると良いな」  
「綾人?」  
「男もさ、守るべきモノが大切であればあるほど、強くなれる。俺にとって…恵も望も幸せそのものだから。…守りたい。守って…いきたい」  
「あなた…あなたなら、きっと守れる。だって…この世界を救ったのはあなたでしょう?」  
「ああ。今の俺にそこまでの力は無いけど」  
「それでも、守ってくれるんでしょう?あたしと…望を」  
「ああ…そうでありたい」  
「…何か煮え切らないわね。幸せ分が足りないのかしら」  
「そう言う訳じゃ無いんだけど…」  
「良し!じゃ、あたしが愛する旦那様をもっと幸せにしてあげましょうか!」  
「え!?な、何だよ…?」  
恵が綾人に駆け寄り、微笑みながら、妖艶に、そして心底嬉しそうに耳元で囁いた。  
 
 
 
「もう一人出来たみたい♪」  
 
 
 
寛容と調和と融合と  
そして光は無限の歓喜に包まれ  
世は音に満ちて…え?  
 
 
 

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