二次会も終わり、気がつけばマリアは既に姿を消していた。  
「もう一軒行くぞ〜!!」と騒ぐヨッパーとあきらから逃れるのに、オレはかなり労力を使った。  
だって本来なら、コイツらと飲みに行くのを断る理由がオレには全くないはずなのだ。  
それでも何とか酔っ払いから逃れ、オレは再びホテルへ向かっていた。  
 
途中にドラッグストアがある。  
オレはいろいろ考えて、コンドームを買ってみた。  
…バカだよなーオレ。何を一人で盛り上がってるんだ。ただ二人で飲むだけだろ。  
…いや、何があるかわからないし、どうせ引き出物の荷物だってある。  
こんな小さな箱一つ増えたくらい、どうってことないさ。  
今日使わなくても、そのうち使うこともある(はず)。  
我ながら子供みたいだな、とオレは自分自身を笑った。  
確かに、オレはマリアと二人で会うことを楽しみにしている。  
その気持ちだけはとりあえず認めることにした。  
 
午後10時半。ホテルのラウンジには一人でカクテルを傾けるマリアがいた。  
「おっそーい!!レディーをどれだけ待たせるつもり?」  
「うっせーなー。他の連中を撒くのが大変だったんだよ」  
「もう、どんくさいわねー仁」  
「…お前、変わんねーな。ってか、昔よりきつくなっただろ?」  
「…言ったわね。ちょっとアンタ、覚悟しなさいよ」  
「何を覚悟するんだよ、この酔っ払いめ」  
…コイツ、結構酔ってるんじゃないか?  
とりあえず、オレはマリアの隣に座ってジントニックを注文した。  
 
「それでは、久しぶりの再会にかんぱーい!!」  
「へいへい、乾杯」  
「何よー仁、テンション低いわねー。元カノとの再会をもうちょっと喜びなさいよ」  
そう言って、マリアは昔とあまり変わらない笑顔でカラカラと笑った。  
確かにキレイになったけど、こういうさっぱりしたところは昔のままだな。  
「お前、笑い上戸だったのか?なんでそんなにテンション高いんだよ?」  
「そんなに飲んでないわよぉ。ただ今日は、ゆうと大介くんの結婚式という  
おめでたい日を楽しんでるだけじゃない」  
「…なんでわざわざオレを呼び出したんだ?」  
あぁぁぁ。何を焦ってるんだオレ。  
「…もう、ほんっとに仁ってば昔からデリカシーないわねー。もうちょっと  
乙女心というものを理解してほしいわ」  
「絶対無理。っていうかお前に乙女心があるのが信じられねー」  
「こんないい女捕まえて、なんてこと言うのよこのバカ男!そんなんだから  
仕事もサッカーも全部中途半端に終わったんじゃないの?」  
「お前、本気でいい加減にしろよ!!」  
…さすがに言い過ぎたか。マリアの顔が少し曇った。  
でも最初に言い過ぎたのはアイツの方だ。オレはだんだん腹が立ってきた。  
「お前、今更オレに何が言いたいんだ?」  
…少しの沈黙の後、ポツリとマリアはつぶやいた。  
「ほんとに、仁と昔話がしたかったの。それだけ。ちょっと現実に疲れちゃって」  
そう言って、マリアは少しずつ自分のことを話し始めた。  
 
まずは近況報告から。今は美術品を扱う貿易会社の役員秘書をしていて、  
フランス語の通訳の勉強もしているらしい。大学の時に1年間、祖父を頼って  
留学していたとのこと。そういやコイツ、フランス人の血が混じってたんだっけ。  
…コイツと比べて、今のオレの状況はなんて情けないんだろう。  
オレは心の中で泣きたくなった。絶対オレとマリアじゃ釣り合いが取れない。  
どうせオレなんて、夢も希望も才能もない、しがない酒屋の息子だよ。  
 
オレがだまってマリアの話を聞いていると、次に恋愛の話をし出した。  
オレと別れた後、マリアはなんと18歳年上の高校教師と付き合っていたらしい。  
こいつの頭の良さとサバサバした性格は、たぶん高校生男子には手におえない  
ものだったんだろう。なんとなくわかるような気がする。  
大学に進んだ後も、同年代の男で言い寄ってくるヤツはほとんどおらず、マリアは  
年上の男とばかり付き合っていたのだ。しかも妻子持ちとか、バツ2とか。  
「年上の男の人ってたいていお金持ってたし、私のこと可愛がってくれたけど、私は  
そういう人達に満たされることはほとんどなかった。あれは恋愛じゃなかったわ。  
そんな中で、唯一私に言い寄ってきた同年代の男がいたのよ。誰だと思う?」  
「…そんなの、知るかよ」  
「…そうよねー。仁は絶対気づかないわよねー。だって飛鳥くんだもん」  
「は?なんで飛鳥?ってか、お前らずっと連絡取ってたのか?」  
「まぁ、大学も近かったし、仕事でも会うことがあったから…」  
オレは正直、愕然とした。飛鳥…アイツ、まさか本気でマリアのこと狙ってたのか?  
 
「大学の知り合いがたくさん『月城くんのこと紹介して〜』って言ってきてね、  
仕方がないから合コンセットしてあげてたら、飛鳥くんに告白されたのよ。  
『実は僕はマリアのことが好きだった』ってね。でも速攻でふったけど」  
「そうなのか?なんで?」  
「だって、あのヘタレの飛鳥くんに恋愛感情なんて絶対ありえないし」  
…哀れ飛鳥。お前も相変わらず見掛け倒しなんだな。  
「で、それからも私は年上の人ばっかりに言い寄られてさー。最初はそういうのも  
悪くないって思ってたけど、時間が経つにつれてどんどん虚しくなってきて…  
今も本当は40代のオジサンに結婚を前提に付き合おうって言われてるんだ。  
その人、妻子持ちなんだよ。でも、もうすぐ離婚するから、その後一緒になろうって。  
ふざけないで!って言ったけど、全然本当の私を知ろうとしないの。  
勝手に『オレと一緒になったらお前はもっといい女になる』とか言ってるバカな男。  
そいつのせいで勝手に修羅場に巻き込まれて、奥さんにめちゃくちゃ言われて、  
すっごい辛かったんだ…私はそんなつもりなかったのに」  
話しているうちに、マリアは涙ぐんできた。  
 
「…やっぱり、私の中で一番楽しかったのは仁と付き合ってた時だったよ」  
そう言うと、マリアはオレの目をまっすぐ見つめてきた。  
ヤバイ。これはマジでヤバイ。落ち着けオレ。  
こういう時、男なら何て言えばいいんだ?  
これって、間違いなく「ヨリを戻そう」って意味だよな?  
 
「なぁ…それって、まさか酒の勢いで言ってるなんてことはないよな?」  
「そんなわけないでしょ!!そこまで落ちぶれてないわよ!!」  
「…言っとくけど、オレなんて今は何のとりえもない男だぞ?  
そりゃガキの頃は偉そうなこと言ってたけど、結局現実に流されて  
楽な方にばっかり生きてきたオレの姿わかって言ってんのか?」  
正直、オレは腹立たしさと情けなさでいっぱいだった。  
なんでもっと気の利いたことが言えないんだろう。  
前に別れた時だって、結局オレがアイツの強さから逃げたようなもんだ。  
しかも自分の気持ちすら素直に表現できない、こんな男のどこがいいんだ?  
 
「実はね、いろんな人から仁のことは聞いてたんだ。んで、最初は『やっぱり  
私がいないと仁はダメなのね』とか思ってた。でも、自分もいろんな経験をして、  
いっぱい壁にぶつかって大人の世界の厳しさを知ったわ。そしたら仁のことも  
もっと大切にすればよかったって後悔するようになったの。  
人間誰でも弱い心を持ってる。それをうまく補い合える相手はそんなにいない。  
結局、私が一番自分らしくいられるのは仁のそばなんだってことがわかったのよ!  
もう一度、一人の女として、仁のことを好きにならせて欲しいの」  
 
好きだった女にここまで言われて逃げられる男がどこにいるってんだ。  
オレはもう迷うことを辞めた。自分を卑下することも辞めた。  
「…わかった。マリアがそこまで言うんならオレも覚悟決める。オレもお前が必要だ。  
それは間違いない。こんなオレでもいいのならもう一度やり直そう」  
 
深夜12時前。ひっそりとしたホテルのフロントに無言で向かうオレ達。  
いつの間にか、その手は絡み合っていた。  
 
案内された部屋に入る。薄暗い照明。シンプルだけど小綺麗な部屋にセミダブルのベッド。  
ベッドの脇に立ったままどちらともなく見つめあって、やがて唇が重なった。  
最初は軽く触れるように、懐かしい感触を確かめるようなキス。  
それがだんだん深く、長くなっていく。舌をからませて、相手の吐息も飲み込んで。  
そのままベッドに押し倒したい衝動を抑え、オレはマリアをバスルームに押し込んだ。  
 
バスルームから水音が聞こえて来る。それよりも更に自分の心臓の音が大きい  
ような気がして、オレは深呼吸をした。  
まさか本当にこんなことになるなんて。この間見た夢のことが思い出された。  
ベッドの枕の下に、さっき買ったゴムを入れる。買ってきて正解じゃねーか。  
そんな自分自身をオレは笑った。マリア、今夜は覚悟しろよ。  
 
バスルームから、ローブをまとったマリアが出てくる。髪はまだ濡れたままだ。  
「シャワーお先でした。ありがとね」とささやくマリア。ローブの下に隠された肌は  
昔以上に白いような気がして、オレは焦る気持ちを抑えつつシャワーに向かった。  
大急ぎで体を流す。酔いなんてすっかり醒めきっていた。  
早くアイツを抱きたい。今のアイツをもっと知りたくてたまらない。  
オレは下半身に熱がこもるのを感じていた。  
 
バスタオルだけを巻いて出てきたオレを見て、ベッドに腰掛けていたマリアは笑った。  
「仁、もしかして太ったんじゃないの?どうせあんまり運動してないんでしょ?」  
「なんだよ、そういうお前はどうなんだよ?これからたっぷり調べてやるからな」  
「えーっ、まぁ確かに高校の時よりはすこーし丸くなったかもしれないけど、その分胸は  
おっきくなってるんだからね!そんなこと言うならHするのやめとこうか?」  
「バカヤロー。今更やめるとか絶対無理だからな。誘ったのはお前だろ」  
「その言い方はちょっとムカつくけど、でも間違ってないわね」  
 
これでお互いに少し緊張が解けたのか、顔を見合わせて笑うオレ達。  
そしてオレもマリアの隣に座る。マリアの腰を抱いて引き寄せ、唇にキスを落とす。  
そのままオレはアイツのうなじにキスマークを刻む。首筋に散る赤い所有の印。  
マリアはオレの頭を抱えて切ない声を漏らす。  
アイツのローブを脱がせて、オレ達はベッドの中に潜り込んだ。  
暗闇の中に浮かび上がる白い肌は、夢の中に出てきたのと全く同じで、オレは少し  
身震いがした。  
 
確かに、前に抱いた時よりも胸は大きくなったような気がする。  
ウエストもヒップも、前はもっと筋肉質だったのが、少し柔らかくなったんじゃないか。  
乳首を舌で転がすたびに、アイツの体が少し震える。艶めかしい声が洩れる。  
「…はぁっ、あっ、あん…」  
オレは左手でもう片方の乳房を揉みながら、右手でアイツの秘所をまさぐった。  
薄い茂みの下に隠れたソコは、既にしっとりと濡れている。  
早くアイツの中に入りたくて、オレはいきなりソコに指を入れた。  
小さな突起をこねる。その奥まで指を深く差し込む。  
「…んあっ!!やぁん!!」  
アイツの声が一段高くなる。背中がしなる。蜜が奥から滲み出てくる。  
オレの体にも汗が浮かんでくる。オレの背中に爪を立てるマリア。  
指を増やし、もっとスピードを上げてこねくり回す。暖かいアイツの中。  
オレの分身に血液が流れ込むのがよくわかる。そこだけが異常に熱い。  
アイツの太ももに大きくなったソレがこすり付けられ、マリアの体がまたビクッと震えた。  
 
そんなオレの下半身に、アイツの手が伸びてきた。  
既に勃起してしびれそうなオレのモノを握り、撫で回す。  
ヤバイ。あまりの快感に頭がクラクラする。  
でも、もう少し。もう少し、コイツを気持ちよくさせたい。  
妙な対抗心がオレの中に生まれた。たぶん、マリアもだろう。  
 
しばらくそうやってお互いに我慢比べを続けていたが、もういい加減限界だ。  
オレはあわててゴムを装着する。いつも思うけど、この時間ってすっごいマヌケだよな。  
気ばかりが焦ってうまく入らない。なんてこった。  
再びアイツの上にかぶさった時に、マリアがオレの耳元で囁いた。  
「…そんなに焦らなくてもいいよ…大丈夫だから…」  
アイツのキスがオレの耳に落とされる。オレはそこに敏感に反応してしまう。  
「いくぞ…もう待てない…」  
もう我慢できない。オレはマリアの膝を広げ、一気にアイツの中に侵入した。  
「あっっ!!はぁん!!あっ、あっ、あぁっ…」  
思いのたけを込めて、オレはアイツの体を貫く。部屋に響く水音。肌と肌がぶつかる音。  
その両足を持ち上げながら、オレはアイツの乳房に吸い付く。  
オレの頭を抱え、必死に何かに耐えるマリア。それは痛みなのか、快感なのか。  
「あっ…はぁっ…やっ、あぁ…仁…」  
見上げると、その瞳は涙でいっぱいになっている。オレはマリアの頬にキスをする。  
そして再び、深い深い口付けを交わした。  
 
オレはマリアの両腕を掴み、腰を更に激しく打ち付ける。  
「あっっ!!やっ!!…あっ、はっ、はぁっ…」  
止まらない。苦悶と快感に打ち震えるマリアの顔はたまらなく淫らで、綺麗だ。  
オレの額から滲み出た汗が、マリアの胸にいくつものしみを作る。  
とうとう我慢できなくなったオレは、自らの欲望を思いっきり吐き出した。  
「ぐっ…マリア…っ!!」  
「あぁぁぁぁ〜〜〜っ!!」  
二人の声が、暗闇に重なった。  
 
それからもしばらく、オレはマリアの中から抜け出せなかった。  
あまりの快感に、その余韻を感じていたかったから。  
マリアの目はとろんと半開きになり、口元からは一筋の唾液が流れ落ちている。  
「マリア…乱暴にしてごめん…なんか変に焦っちゃって…」  
「…ううん…大丈夫…」  
しばらくオレ達は繋がったまま、ぴったりと抱き合っていた。  
一瞬でも離れたくないような気持ちになっていた。  
何とも言えない倦怠感と充実感がオレ達の体を支配していた。  
 
その後、もう一度繋がったオレ達は、朝方になってようやくまどろんだ。  
 
 
――朝日がカーテンの隙間から差し込んでくる。  
隣には、穏やかな笑顔を浮かべて寝息を立てるマリア。  
今日ほど、コイツの名前の意味をかみしめた日はない。  
 
聖母の名を持つその女は、いつもオレのことを見ていた。  
時には手厳しく言われたこともあったし、本当にムカついた時もあった。  
だけど、結局何年経っても、オレのことを一番理解していたのはコイツだったんだ。  
何故コイツのことをずっと手放していたんだろう。  
どうして、もっとコイツのことをしっかり繋ぎ止めておけなかったのか。  
…思い出せば、後悔はきりがない。けれど、今マリアはオレの腕の中にいる。  
オレ達は今、また繋がったのだ。これからまた、新しくやり直せばいい。  
オレはぼうっとした頭で、とりあえず少年サッカーのコーチの空きがあるかどうか  
考えていた。  
 
マリアが目を覚ます。何とも言えない気恥ずかしさに襲われる瞬間。  
「あ…仁…おはよぅ…」  
「…おお。おはよ」  
お互い、10年前に初めて繋がった時のことを思い出したのか、妙に照れくさい。  
「なんか、すっごい懐かしい…」  
「…そうだな…」  
「…ヤっちゃったね〜…あはは」  
「お前…なんつー言い方だよ…もうちょっと恥じらいってもんを見せろよ」  
「まぁまぁ。お互いもうそんな歳じゃないでしょ?」  
「確かに。お前もやっぱり太ったんじゃないか?歳のせいか?ww」  
「…うるさいわねぇもう!!」  
マリアのデコピン。オレ達は裸のままじゃれ合った。  
 
「あのさぁ、仁。小学生の時に『明日Fall In Love』って言う曲があったの覚えてる?  
ゆうのあがり症を治す!とか言って、みんなでホコ天行った時に私が歌ってたの」  
「…そういやそんなこともあったなぁ。覚えてるよ」  
懐かしい記憶が甦る。あの時の曲も思い出した。  
しばし考える。ふとオレは昨日の自分を思い出して驚いた。歌詞のまんまじゃねーか。  
「そう言えば、実は昨日の結婚式に行く前に、お前のこと駅で見かけたんだよなぁ。  
今思えば、あの瞬間は思いっきり歌の歌詞どおりだったな。マジで恥ずかしいけど  
オレ、お前に見とれてたよ、うん」  
「あらら〜?仁くんってば、いつの間にそんなロマンチストになったのかしら?」  
「…ば、バカヤロー。そんなんじゃねえよ」  
「…でも、キレイになったって思われたのよね、私?」  
「ま、まぁな」  
 
マリアの笑顔があまりにもまぶしくて、オレは思わず目を細めた。  
もう一度あの頃に戻ることはもうできないけど、これからまた新しいオレ達が始まる。  
今よりももっとコイツに似合う男になりたい。コイツの笑顔をそばで見ていたい。  
ライジンオーに乗っていた頃の、キラキラした気持ちをオレは久しぶりに感じていた。  
オレもちゃんとけじめを付けよう。久しぶりにオレは勇気を奮い起こした。  
「マリア…オレもお前のことが好きだよ。今はへタレだけど、お前ともう一度頑張りたい。  
いろいろオレも頑張るからさ、これからもよろしくな」  
「…うん…ありがとう、仁。私の方こそ、よろしくね」  
そう言って、オレ達はゆっくりとキスを交わした。  
 
 
あれからしばらく経った。オレは相変わらず家業の酒屋を手伝いつつ、陽昇小学校の  
サッカー部のコーチをすることになった。懐かしいグラウンド。昔よりも小さなゴール。  
学生辞めてからジョギングくらいしかしていなかったため、体がなまって仕方ない。  
しばらくは筋肉痛の日々だけど、オレがガキの頃抱いていた夢を、今の子供達にも  
見せてやろう。できればもうちょっと収入も増やさないと…そのためには店自体を閉めて  
オレが就職するか、家をコンビニにすることも考え始めている。  
景気は上向きと言われても、なかなか昔ながらの酒屋というのは厳しい。  
店を辞めれば両親は寂しがるだろうけど、早く楽させてやりたいしな。  
 
マリアは仕事で東京に帰った。いわゆる遠距離恋愛というやつだ。  
でも、電話やメールはまめにしている。月に一度はどちらかが会いに行く約束をした。  
結婚を言い寄ってきていた男はどうやら仕事の取引先関係者だったらしく、マリアも  
多少遠慮していた部分があったらしいのだが、上司に事情を説明して、きっちりと  
別れられるようになったようだ。  
 
どうやらマリアは、二次会の後にオレを呼び出すことを女子には言ってたらしい。  
披露宴の最後に騒がしかったのはそのせいだったようだ。  
結局その話が男子にも伝わり、オレ達がよりを戻したことはみんなに知れ渡った。  
ヨッパーやあきらからは「復縁祝いに飲みに行こうぜ〜」とか言われたけど無視。  
しばらくはオレも忙しくなる。いつまでも遊んでいられない。  
新しい自分の夢を掴むためにやらなければいけないことが山ほどある。  
配達の合間に見上げた空は、小学生の頃に教室の窓から見た時と同じように、  
どこまでも青くきらめいていた。  
 
 
 
――FIN  
 

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