幼子をあやすように翔のあたまを撫でる。いまの風の表情は母親のものだ。  
乳首を含まれても、ちっともイヤラしいと感じない。もっともっと……できるならばずっとこうしていたい。  
でも至福の時間はもう終わりが近づいているみたいだ。  
「 そろそろ… 光さんが帰ってきますね 」  
 その言葉にノロノロと、翔も顔を上げて壁掛けの時計を見る。  
「 ああ… もうそんな時間かぁ… 」  
 翔は残念そうな声を出すが、風はいまの言葉だけで、心は十分満たされた。  
「 じゃあ着替え…と、その前に、お風呂入る……いっしょに 」  
「 え!? 」  
 さっきまでいた無邪気な幼子はどこかに遊びに行ってしまったようだ。残されたのはケダモノくん。  
「 光さんが、その……帰ってきますので、あの、いまは…ごめんなさい…… 」  
 股間にチラリッと視線を送る。翔と一緒に入っていたら、身体を流すだけではすまないだろう。  
「 は、ははは…はは じ、冗談だよ 」  
 すまなそうに頭を深々と下げる風。流石に翔も引き下がるしかない。冗談かどうかは股間を見ればわかるが…  
「 じゃあ一緒じゃなくていいから さっと身体だけ流してきなよ! 」  
 翔はコチコチになっているモノを、苦労してしまいながら立ち上がる。  
「 ありがとうございます いただきます 」  
 その好意は素直に受けた。やっぱりお風呂には入りたい。  
「 ん、じゃあこっち 」  
 
 
 “サァ〜〜”  
 シャワーの音が脱衣所の中、タオル手にしてを立つ翔の耳に心地よく響く。  
真剣な顔をする翔の目の前には、風の制服が脱衣籠に綺麗にたたまれて入っている。  
多分一番下には下着が隠されているんだろう。ちょっぴりだが、下着泥棒の気持ちがわからなくもなかった。  
「 …タオル、ここ置くよ 」  
「 ありがとうございます 」  
 期待していなかったと言ったら嘘になるが、扉越しにうっすらと透ける肌色が艶めかしい。  
どうして風呂場の扉はスリガラスなんだろうか?  
できる事なら、ルパン三世のようにスッポンポンになて飛び込みたい。  
そんな馬鹿な事を考えながら、名残惜しそうに脱衣所を出ると、  
“ガラ〜〜”  
『 ただいま〜〜! 』  
 いまの、もの心ついてから数十年、毎日聞いてきた元気で可愛い声は、……光。  
「 なに〜〜〜!! 」  
 いつもよりも帰ってくるのが早い。とりあえず脱衣所にとって返し、浴室の扉を開ける。  
「 きゃ!? 」  
「 ごめん! 光が帰ってきた。早く着替えて 」  
 突然の事に、風はケダモノモード全開で、翔が襲い掛かってきたのかと思った。もっとも上から下まで  
じろじろと目を這わせば、誰でもそう疑うだろうが。  
「 わ、わかりました 」  
 身体を隠しながら答え、じっと翔を見る。その視線は“出てください”と言っていた。  
「 ああ…はい、光の相手をしてきます 」  
 風に追い立てられるように脱衣所を出た翔の耳に、トテトテとこちらに向かってくる光の足音が聞こえる。  
「 おお、光! 帰ってたのか!! 」  
 翔は扉越しの風にも聞こえるように、わざとらしいほど大声でしゃべった。いきなり大声で話しかけられて、光はちょっと驚いたが、にっこり笑うと兄に帰宅の挨拶をする。  
 
「 ただいま 翔兄様♪ 」  
「 おかえり♪ 」  
 思わず立ち話で盛り上がりそうになってしまったが、この場はまずい。  
「 光、久しぶりに俺と稽古しよう 」  
「 兄様と? 」  
「 ああ 」  
 とにかく光をここから連れ出さねば。  
「 うん わかった 」  
「 よし! すぐいこう!! 」  
 光の肩を押すようにグイグイと道場に連れて行く。  
「 え!? 兄様、わたしまだ制服だよ 」  
「 大丈夫! 三十分ぐらいだから 」  
 二人が廊下の角を曲がると、“カチャッ”と後ろでドアが開く音がした。  
「 兄様 いま音がしなかった? 」  
「 い〜〜や なんも聞こえないぞ! 」  
 そう言って、顔だけ廊下の角から出すと、向かいの廊下を曲がろうとする風と目があった。  
しばし見つめあうと、二人ともにっこり微笑む。言葉はいらない。風はペコリと頭を下げ、廊下の角に消えた。  
 
 
 受話器の向こうで、相手が意外だという顔をしているのが見える。予想外の人間から、予想外の質問をされ驚いたようだ。  
「 ああ、もう一回言ってもらえるかな? 」  
「 あのですね、部長 」  
「 部長はあなたでしょ 」  
 もう何度、このセリフを聞いたかわからない。それでも海にとっては、彼女はいつまでたっても部長だった。  
「 はい、長谷川部……先輩… 」  
「 うん それでどうしたって? 」  
 このやりとりはいつもの事なので、長谷川先輩は半分あきらめて先を促す。  
「 オトコの人は…… 」  
 そう、まさか海の口から父親と教師以外の異性の話が出てくるとは、それだけでも十分インパクトがあるが、本当のインパクトはその後に控えていた。  
「 やっぱり、いつもエッチな事を考えてるんですか! 」  
「 ………………… 」  
「 部長ならわかりますよね? 」  
 海はなんの疑いもなく、期待を込めて聞いてくるが、“私にわかるわけないじゃん”これが長谷川先輩の  
偽らざる本音である。  
女子校の、それもお嬢様校のフェンシング部の部長を真面目にやってきた。  
フェンシングに、ン何年間を捧げたといってもいい。それこそ父親か教師以外の異性とまともに話した記憶がここ何年間かはない。ちなみに長谷川先輩は抜群に記憶力がよかった。  
だが可愛い後輩が、なんの疑いもなく、自分を頼れる先輩として相談しているのだ。  
 
「 も、もちろんよ 」  
 ……神様、ごめんなさい…可愛い後輩の為なんです……  
 心の中で神様に懺悔するが、神様ではなく、受話器から聞こえる後輩のほっとした声が子羊を救ってくれる。  
「 よかったぁ 先輩に相談して 」  
「 なんでも聞いて♪ 」  
 ……答えられる事、あんまりないけど……  
「 オトコの人は、エッチなんですか? 」  
「 ………………… 」  
 沈黙。いきなり答えに詰まってしまう。だがこのままではループしてしまうので、  
「 い、いつも…てわけじゃ…ない…と思うよ…… 」  
「 ……そ、それじゃあ エッチしたいときに、させてあげないと……嫌われますか? 」  
「 え!? 」  
 エッチどころか、手すら握った事の無い自分にどう答えろと?  
「 エッチさせてあげないと、嫌われますか? 」  
「 えぇっと、ほら、そういうのは段階があるから A・B・C て、やつ… 」  
 例えが、えらくクラッシックだ。  
「 段階? 」  
「 うん… 手をつなぐところから初めて、浜辺でキ、キスして…… 」  
 ティーン向けの情報誌でやっている恋愛相談の受け売り、ほとんどそのままである。結構乙女チックだ。  
「 きっと大事にしてくれる彼なら…… いきなり、その…エッチとかしないから… 」  
 長谷川先輩の答えを、海は心の中で反芻する。  
 
……手は…つないだかな?……キスは…した…いっぱい……  
 赤い顔で、そっと唇を撫でた。  
「 段階を踏むって事は、大事にしてくれてるんですよね 」  
「 うん………多分…… 」  
 世の中には、いろんな恋愛のアプローチがあるはずだが、経験ゼロの乙女チックな先輩は自信なげに答える。  
そして、可愛い後輩がキスより先に進んでるとは夢にも思わない。  
「 そっかぁ ……ありがとうございました長谷川部長! 」  
「 だから、部長はあなただって 」  
「 はい! おやすみなさい、部長! 」  
 海の悩みはどうやらどこかに吹き飛び、舞い上がっている海は勝手に電話を切ってしまった。  
しばらく長谷川先輩は受話器を眺め、“ふぅ〜”息を一つつくと、  
「 び、びびったぁ〜〜 あんな事聞くんだもん 」  
 流れてもいない汗を拭うマネをする。  
「 ふふっ でもあいかわらず可愛いやつ♪ 」  
 チカラになれたことに、満足そうに受話器を置く。後輩の背中を押したことに、彼女は気づいてなかった。  
 
 
 「 すげぇ…… 」  
 これが翔の、龍咲家の正門を見た第一声だった。  
とにかく造りがデカイ。芸術的な事に疎い翔でも、それがすごくセンスのいいデザインだという事はわかるが、そんな事は飛び越して、とにかくデカイ。正門というよりも、城門といった感じだ。  
敷居を跨ぐ前から、龍咲家のチカラの一端を見せつけられた気がする。  
自分が随分と場違いな所に招待されたのではと、不安になって隣を見ると、その家の一人娘、お嬢様が、  
どうしたの?と、いった顔で、翔の顔を不思議そうに見ていた。  
 ……海ちゃんて、金持ちのお嬢様だとは思ってたけど……  
 翔の想像よりも、龍咲家のレベルは一枚も二枚も、いや枚数にしたら何枚重ねたらいいのかもわからない。  
「 ディズニーランドみたいな家だね…… 」  
 その間の抜けた感想は、一応褒め言葉と受け取ってくれたようだ。  
「 ありがとう でも残念ながらミッキーは出迎えてくれないけどね♪ 」  
 そう言って柔らかく微笑む。今日の服装は、サテンのTシャツドレス、ちなみに翔はTシャツ・Gパン、  
いつも通りである。  
もうちょっとましな格好をしてくればよかったと思ったが、これだけのものを見せられた後では(まだ門を見ただけだが)どれを着て来ても同じだろう。  
「 うぅ〜〜ん、ん? 」  
 ただただハイソサエティに圧倒される一般ピープルの前に、お嬢様の震える手が差し出される。  
「 玄関まででいいから… 手、つないでもいい? 」  
「 ……よろこんで 」  
 にぎった手は緊張のためか、うっすらと汗ばんでいた。伝わってくる感触は、お嬢様のものではなく、  
龍咲 海 という、一人の普通の女の子のものだった。  
 
 海のエスコートで、ダイニングルームに通される。玄関までと言っていた手は、まだつないだままだ。  
それは全然いい。  
正直なところ、海の手を握ってないと迷子になりそうだ。かくれんぼをしたら一日逃げきれるかもしれない。  
「 それじゃ、自信作を持ってくるから、ここでまってて 」  
「 うん 」  
 ……なんかつい最近、似たような事があったような?……  
 いそいそと部屋を出ていく海の後姿を見送りながら、ソファーに腰を下ろす。  
部屋を見回すと金縛りにあいそうなので、テーブルの上にある花を見るともなしに眺めた。  
名前はわからなかったが、その綺麗な花を見てると、この家で一番可愛らしい花が、トレイにケーキを乗せて自信と不安がごちゃまぜになった顔で部屋に入ってくる。  
「 …一生懸命作ったから、おいしいと思うんだけど…まずかったら、ごめんね…… 」  
「 う、うん 」  
 食べる前から、味が美味かろうが不味かろうが、“うまい!”と言うつもりだったが、いまの海を見ていると口ではなく心がじんわりと甘くなり、抱きしめたくなってきた。  
 ……でもそんなことをしたら、ケーキを食べるまえに……  
 そんなケモノな自分を反省しながらフォークを取る。  
チョコレートケーキは少し不恰好で、でもそれが手作りの感じがでていて、なんだか嬉しくなった。  
海は向かいの席で祈るように手を組み、固唾を呑んで見守る。  
口の中に入ったケーキは、さっと溶けて、まろやかな味が広がっていく。  
 
「 うまい… 美味いよ、これ! 」  
「 ほんと 」  
「 うん 」  
「 もっと食べて! 」  
 破顔一笑。にこにこ顔で先を促す海。  
 …もぐもぐ…じぃ〜〜…もぐもぐ…じぃ〜〜…もぐもぐ…じぃ〜〜…もぐもぐ…じぃ〜〜……  
「 あのさ、海ちゃん 」  
「 なに? 」  
 にこにこ顔で微笑まれると、“注目されると食べずらいんですけど…”とも言えない。  
「 いや、静かだなぁ、と思ってさ 」  
 適当に言ったセリフだが、言って気づく、確かに静かだ。いや、静かすぎる。  
もしかしたら心のどこかで、その話題にふれたくない為、意識的に気づかないふりをしていたのかも知れない。  
だが気づいてしまった以上は、人様の家に招待されてるのだから、この事を聞かないわけにはいかないだろう。  
「 あの、ご両親は…どちらに… 」  
「 ん? パパとママ? 」  
「 はい 」  
「 二人は…今日は朝早くからお出掛け、デートなの♪ 」  
 その言葉に、身体の中でマックスぎりぎりまで張り詰めていた緊張の糸が、急激に緩んだのを感じる。  
ケーキは食べかけだったが、ふかふかのソファーに、グッタリと身を預けてしまう。  
それほどにオトコにとって女の子の両親、特に父親は恐ろしい存在だった。  
父親は娘の為だったら修羅にもなる。それを同じ男として、本能的に知ってるだけに怖さは現実味があった。  
「 パパとママは、結婚して私が生まれてからも、ず〜〜と新婚気分なの、やんなっちゃう 」  
 表情は、言葉を裏切っていた。ぜんぜんイヤそうに見えない。むしろ嬉しそうだ。  
 
「 でもいまは、……わたしも…け、結婚したら…あんなふうになりたい…かな… 」  
 結婚。海が、なにを聞いているかはわかっているが、高校生がその質問に答えられるわけがない。  
まあ、海にほうも答えを望んでいるわけではないだろうが。  
「 そっち、いってもいい? 」  
 頬を朱に染めたまま聞いてくる。  
結婚がどうのといった事には、流石に答えられないが、そんなちっぽけな願いくらいは、いつでも応えられた。  
 
「 どうぞ… 」  
 “お姫様”なんぞというキザたらしいのを通り越して、一生記憶に残りそうな恥ずかしいセリフが思い浮かんだが、流石にそれは口に出来ない。  
「 顔、真っ赤よ♪ 」  
 口にはしなくても顔に出たようだ。海にクスリッと笑われてしまった。そして隣りに座った海は、さらに翔の顔を赤くさせる。チラリッとケーキの皿に目を走らせると、はにかんでフォークを握った。  
「 はいっ ア〜〜ン♪ 」  
「 え?… 」  
「 ア〜〜ン♪ 」  
 女の子に食べさせてもらう。いまどき、甘々の少女コミックでもこんなシーンにはお目にかかれない。  
オトコだったら一度は夢見る、甘酸っぱいシュチュエーションだ。  
でもこれは、なんというか、“うれし、恥ずかし”というやつかもしれない。  
“パクッ”……すごく甘い…さっきよりずっと、アルコールは入ってないはずなのに酔いそうだ。  
「 …おいしい? 」  
「 うん… 」  
 翔の酔いが、海にも回ったのかもしれない。目がトロ〜〜ンとしてきた。  
「 …どんなふうに… 」  
 言葉では伝えられない。翔は吸い寄せられるように唇を重ねた。  
 
「 んッ… 」  
 小さな唇は、とても柔らかい。海の身体から匂い立つ、仄かな芳香を胸一杯に吸い込みながら、温かな口内に舌を這わせていく。  
「 んン〜… 」  
 口の中奥深くまで舌を侵入させ、ケーキよりも甘い、海の舌をからめとる。なすがままになった少女の  
小さな舌を吸い上げると、ときおり可愛く肩を震わせた。  
二人のキスは長かった。ゆっくりと口唇を離すと、海の舌が物欲しげに追いかけてくる。  
はしたない自分の行為に赤面した海は顔を伏せてしまうが、そんな海に翔は優しく呼びかけた。  
「 海… 」  
呼び捨てにすると、海の身体に益々歓喜のアルコールが回っていく。翔の手が長い髪を撫でると目を閉じて、くすぐったそうに首をひねる。  
海をもっともっと味わいたい翔は、もう一方の手を程よく育った胸に伸ばす。  
相変わらず、そのタッチは優しい。海の胸には、むず痒いような、くすぐったいような、じっとしていられないような、なんとも捉えどころのない感覚が、翔の手を中心に広がっていく。  
その優しすぎるタッチに、海は知らず胸を押しつける様な動きをしてしまう。  
“もっと強くさわってほしい”焦らすような翔のさわりかたに、海は恥ずかしいセリフが口から出そうになる。  
でもエッチな子だとは思われたくない。だから海の言ったセリフは……  
「 あの…わ、わたしの部屋で… 」  
“続き…”ニブい翔でも、その先は言葉にせずともわかる。  
「 きゃっ 」   
 翔はお姫様だっこで海を抱き上げると、カッコつけに失敗した緩みきった顔で海の誘いに応じた。  
「 海ちゃんの部屋まで一緒だからね♪ 」  
 海の身体は自分の口から出た言葉と、耳から滑り込んできた翔の言葉にどんどん火照っていく。  
熱くなっている顔を翔の胸にうずめると、小さな声でささやくように答えた。  
「 …うん 」  
 
 海の心臓はどきどきと早鐘を打っている。自分の部屋へと続く廊下はこんなに長かっただろうか?  
ここまでは、全ての手順を踏んだはずだ。そしていよいよ…   
考えるたびに、鐘の音は高く、早く鳴り響く。不安がないといえば嘘になるが、これからの事を考えると、  
海のあたまの中では水の龍が桃色に染まり、ファンファーレを奏でていた。  
それにさっきからお尻にはコッッコツッと、翔の……アレが…ノックを繰り返している。  
期待しているのは自分だけじゃない。翔の胸に顔をうずめ、イヤイヤをしてしまう。  
「 ここ? 」  
「 うん… 」  
 翔の手が、ついに海の部屋のドアノブにかかる。  
散らかってはいなかっただろうか、ベッドのシーツは可愛いやつだったか、等々しなくてもいい心配事が  
次々と浮かんでは、消えずにあたまの隅を飛び回った。  
“ガチャッ”  
 ドアが開かれると、海はさっと自分の部屋をチェックする。カーペット良し、クッション良し、  
テーブルの上良し、ベッド…………良し…。  
海のチェックが終わるのを待っていたように、翔は一直線にベッドに向かう。  
「 いい? 」  
 “ふんわり”と海をベッドに降ろすと、長くきれいな髪を撫でながら抱き寄せ、耳元でささやく。  
 この“いい”には深い言葉が込められている。その意味を正確に理解しても、海の返事は変わらない。  
「 ………うん 」  
 決意を伝えるように目を閉じて、おとがいを反らし、想い人の唇を待ち受けた。  
 ……この人とキスするのは、もう何度目だろう……  
 翔は少女の震える頬に手を添えて撫でる。静かに、そっと唇をあわせた。  
 
「 ん…… 」  
 何度キスをしても恥ずかしい。それでも海はキスを受け入れ求めようとする。  
キスに夢中になっている海の背中を翔の手が撫で上げた。海の手も、翔に抱きつくように回され、二人のキスはより深く潜る。  
「 ン……んむッ……ん…… 」  
 海の口内で迎え入れるように舌がからみ、その音が耳朶をうつ。  
息が続かなくなるまで、甘い唾液のやり取りを楽しんでから、翔は柔らかい唇を解放した。  
銀色に煌く唾液の糸がツゥ―ッと伸びて、二人の唇をつなぐ。  
「 キスも感じる? 」  
「 ……そんなこと…聞かないで…… 」  
「 でも気持ちよかったでしょ 」  
「 ………うん 」  
 翔は知ってる。海は恥ずかしくなればなるほど感じてしまう。そんなエッチな子を優しくイジメルほど  
自分が感じるのも。股間の“男性自身”はさらに硬度を増し、いきり立っている。  
翔は意地の悪い微笑みを浮かべたまま、海のスカートの中へ、こっそりと手をのばした。  
そして、なんの前触れもなく、いきなりスカートの中にその手を突っ込む。  
「 やんッ 」  
 覚悟は決めたはずなのに、乙女の恥じらいで、咄嗟に腿を閉じ、手の侵入を防ごうとするが、一歩遅かった。  
指先がぴっちりと閉ざされた太股を強引に押し割って、愛液に濡れたショーツにふれる。  
「 こんなに濡れちゃうなんて、海ちゃんはエッチだなぁ 」  
 イジワルな言葉に海の羞恥心の炎は煽られ、翔の指先にエロいヌメリをにじませた。  
 
「 それは………そんなとこ、いきなりさわるから…… 」  
「 ふぅ〜〜〜ん ちょっとさわっただけなのに、こんなに濡れちゃうんだ 」  
 スカートの中に差し入れた手を蠢かせ、ショーツの薄い布地を突き上げる、自己主張の強い突起を  
親指と中指でつまむ。  
“きゅッ”  
「 ふぁッ! 」  
 閃光のような快感が腰椎から脳天へと走り抜け、海は自分でもびっくりするくらい甲高い声が出てしまう。  
「 気持ちよかった♪ 」  
 翔はショーツの上からつまんだ突起を指の腹で転がして、連続的に海へ快楽のパルスを送り込む。  
「 やッ……やんッ……やはぁッ! 」  
 どんなに抑えようとしても、切れ目なく送られてくる感覚に、海はエッチな声を堪える事ができない。  
翔と出会ってからの数週間の間に、ピンク色の刺激を覚えてしまった少女の身体は敏感すぎる部分に集中攻撃を受け、あっけなく絶頂に達してしまった。  
海は身体の両側に置いた手でシーツをつかみ、ぐうッと背筋を反り返らせると、女の子の敏感すぎる突起に  
結ばれた見えない糸を引かれたように、高々と腰を突き上げる。  
「 あ……ン……はふぁ…… 」  
 切なげなため息とともに、快感と羞恥の入り交じった不思議な陶酔感の中、崩れるように海のお尻はシーツに  
着地した。深い縦シワを刻んでいた海の眉間がふっとゆるみ、何かに耐えるようにしかめられていた顔から  
こわばりが解ける。  
それと同時に、翔の首に巻きついていた細い腕から力が抜けた。  
海はアッチの世界に往ってしまったようで、目をつぶった顔に、とろんとした表情を浮かべている。  
翔はにんまり笑うと、ぐったりとなった海のスカートをめくり上げた。  
もしかしたら勝負下着だったのかもしれない。前面にレースをあしらった黒いショーツがあらわにされる。  
そこからは大人の淫靡さよりも、少女にしか出せない、背伸びした可愛らしい色気が感じられた。  
 
愛液に濡れた股布は、ぐっしょりと恥丘に張り付き、その下にあるものの形をクッキリと浮き上がらせている。  
翔は目を細めると、そっ〜〜と、でも大胆に海のショーツをずり下げていく。  
翔の視線に晒されて、ほころびかけの秘裂は耐えかねたように透明な涙をとろりと流した。  
可憐な淡い恥毛を愛でるように撫で、涙を拭うように指先で秘裂をすうッとなぞると、  
「 んふぁ…… 」  
 羽毛のような優しいタッチに反応して、まどろんでいた海の口からも鼻にかかった声が漏れる。  
その声を聞いて翔は満足そうに再度微笑むと、虚脱している海の身体からTシャツドレスを抜き取った。  
ブラもショーツとお揃いの黒。やはり黒い下着は海なりのセックスアピールだったんだろう。  
だが翔はそんな事にはまったく気づかず、中学生の瑞々しい乳房を押さえるブラのホックをすっかり慣れた  
手つきで外した。  
“ふるん”とまろび出た乳房の頂では、桜色の乳首が欲情の度合いを表すように起立している。  
無意識に唇をぺろりと舐めると、口を“ア〜〜ン”して、ケーキよりも甘そうな果実にむしゃぶりついた。  
桜色の突起を口に含み、舌先でくすぐると、ますます硬度を増してきて、まだオンナになりきらない肢体が  
淫らにくねる。  
 
「 あッ……んッ……ああンッ… 」  
 新たな快感が、敏感すぎる少女の身体に吹き込まれていく。  
エッチなお嬢様の反応に勢いを得て、翔はさらに強く乳首を吸った。小指の先ほどの突起を中心にして、  
舌先で小さな円を描き、ときにはそれに軽く歯を立てる。  
「 ひゃうッ! 」  
 お嬢様は大変お気に召したようで、弾かれたように身を反らせた。  
翔はいったん“ちゅぽん”と音を立てて乳首から口を離すと、今度は反対の乳首に吸い付く。  
そちらも同じように舐めしゃぶり、歯を立て、さらには乳輪全体を頬ばるほど強く吸ってやる。  
何度も身体を起こそうとした海も、襲ってくる快感の波に抗う事ができず、その度に白い喉を無防備に晒した。  

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