光は眠っていた。
プレセアの力を借り、無事に剣を甦らせたのだが、疲れきってしまったようだ。
気を失い、創作室からランティスに運ばれて部屋に寝かされた。
セフィーロに来てからよく見る、ノヴァの夢。
光と同じ顔をしている、その少女が何者か、光にはわからない。
この時の彼女の夢にも、やはりノヴァが出てきた。
――ここはどこだろう?
真っ暗な空間。
しかし姿見のような鏡が複数、光を囲むように置かれている。
暗いはずなのに、光には、その鏡に施された装飾まではっきりと見えた。
映る自分の姿も。
目の前の鏡にも、自分が映っている。
しかし鏡の中の自分が、口角をつり上げた――笑ったのだ。
「何…!?」
驚いて思わず後ずさりするが、右手首を突然掴まれた。
光の手首を掴んでいたのは、鏡の中から伸びた腕。
黒い、服の袖と一体になった手袋に包まれている。
この時点でようやく彼女は、その手の主がノヴァだと気づいた。
「ノヴァ…!」
振り払おうとしたが、彼女の手首を掴んだ手は解けない。
水に潜るときのような動作で、ノヴァが鏡から出てきた。
くすくす笑って言う。
「ヒカル、遊んで!」
光が睨み付けるが、その視線にノヴァは嬉しそうである。
自分を見てくれるということが、嬉しいらしい。
ふわ、と浮いて光の首に右腕を巻き付ける。
ついで、光の右腕を掴んでいた左腕も、首へと移した。
唇を掠めるように、キスをする。
呆然とする光の表情に、今度ははっきりと声に出して笑った。
強く抱きついて猫のように頬を擦り寄せる。
「ね、遊ぼ」
光が腕を解こうとしている。
「離せ!海ちゃんと風ちゃんのところに行くんだ!」
そう、彼女が折れた剣を甦らせたいと願ったのは、彼女たちと戦いたいから。
しかし、ノヴァは彼女らが嫌いだ。
大好きなヒカルが好きなものは嫌い。
「また仲間のこと、言ってる!」
子供っぽい怒りを、ノヴァが吐き出すように叫ぶ。
さっきまで光の髪を撫でていた手で、肩を掴んでいる。
その手に、強く力を込める。
痛みの余り、思わず光が声を上げた。
それをノヴァは心底可愛いものを見る目で見つめ、言った。
「ヒカル、外なんて見ないで、私とだけ遊ぼ」
優しい、可愛い口調。
反駁しようとする光の唇を、自分の唇で、今度は強く塞いだ。
キスをしたまま、華奢な肩を強く押す。
バランスを崩して光が仰向けに倒れると、その上に覆い被さった。
「何するんだ!!」
その声には少し、怒り以外のものが混じっている。
――恐怖感。
「ヒカル、怖いの?」
からかうような、楽しむようなノヴァの声。
「大丈夫、楽しいことをするんだよ」
耳元で囁くように言う。
また、猫のように擦り寄る。
制服のリボンを引っ張って解く。
「離…っ…」
光の唇に、今度は人差し指をあてて黙らせて可愛く言う。
「しーっ」
身を捩ろうとしたが、同じ体格の女の子とも思えない力で押さえられて動けない。
意を決して、魔法を唱えようとした。
「炎の…!!」
しかし、言えない。
ノヴァが光の首を絞めたのだ。
声を出すどころか、息さえ出来ない。
苦しさに、目に涙が浮かぶ。
すぐにノヴァが離れた。
身を捩って激しく咳き込む。
その背中を撫でながら、ノヴァは光の衣服を脱がしていった。
抵抗しようにも、まだ息が整わない。
涙が零れそうな瞳がノヴァを睨み付ける。
しかし、それはまたノヴァを喜ばせた。
脱がされてしまい、ブラウスは肩に引っかかっているだけ、スカートは腰にまとわりついているだけだ。
白いブラとショーツが完全に見えてしまっている。
「ヒカル、可愛い……」
大好き、と言いながら、耳をくすぐるように舐める。
「ん…っ…!」
突然のくすぐったさに驚いて、思わず声を上げそうになる。
「もっと、可愛い声聞かせて」
胸をまさぐりながら、首筋も耳と同じように舐める。
「ひ…ぁ…」
慣れない感覚と抵抗できないことに、光は恐怖さえ覚えながら小さく声を上げた。
ノヴァが嬉しそうな表情を浮かべ、ブラを千切った。
薄い胸の先端を指でなぞり、口に含む。
「…ん…っく…ノヴァ、だめ…」
光は床の上で頭を左右に揺り動かして、くすぐったいような痺れるような感覚に耐える。
ノヴァが細い指でショーツの上から、スリットをなぞる。
性感がまだ幼いからか、恐怖のためか、それほどは濡れていない。
しかし気にせず、ノヴァは優しくそこを撫でた。
少し経って、いったん手を離す。
「ヒカル、起きて見てみて」
手を引いて起こされた。
ノヴァが彼女らを囲むように置かれた姿見の一つを指さした。
それに映っていたものは、彼女らだ。
しかし、こちらはその鏡を見ているのに、鏡の中の彼女らは別のことをしていた。
「……………!」
何をしているのか、光には具体的にわからなかったが、雰囲気の淫靡さに言葉を失った。
一糸纏わぬ姿をした光とノヴァが、互いの性器を擦りつけていたのだ。
ノヴァが上になっていたが、光も快楽に眉を寄せて腰を浮かせていた。
鏡から目を逸らす。
すると、鏡の外のノヴァがにっこり笑った。
「ね、楽しそうでしょ」
赤くなるべきなのか青くなるべきなのか、それすらわからない。
そんな光の反応が面白いのか、ノヴァはくすくす笑う。
そっと、もう一度光のショーツに手を伸ばし、触った。
「さっきよりも濡れちゃってるね、あれを見たから?」
先程の鏡を指さす。
今にも絶頂を迎えそうな二人の姿が映っていた。
「ち、違う…!」
あまり意味は分かっていなかったが、慌てて否定した。
下着の、今度は腰の部分に手が掛かった。
脱がされることを感じて光が後ろに下がったが、逆に脱がせやすくなり、逆効果になってしまった。
今まで人に見せたことのない部分が、露わになった。
脚を閉じられないように押さえながら、ノヴァがうっとりとそれを見つめた。
上半身をばたばたと動かすが、無意味だった。
「可愛いね、ヒカル」
一番敏感な場所を指で刺激する。
「あっ…あ…っ」
堪えきれずに声を上げる。
「今の可愛いヒカルを、ランティスに見せたらどう思うかな?」
からかうように言って、ノヴァがそこに顔を近づけた。
「…!ノヴァ!」
抗議するように光が叫んだ。
ランティスの名を出したためか、そこにキスをしたためか、光にもノヴァにもわからない。
とにかく羞恥に耐えられない。
一番敏感な場所に、ノヴァは子猫がミルクを舐めるようにして舐める。
「う…ん…あっ…あ…」
強すぎる刺激から、逃げようとするが、それはノヴァを悦ばせるだけだった。
「っ、や…ああ…んっ」
声が次第に高くなる。
瞳から涙が零れた。
ノヴァはそれに構わず、恍惚とした表情で行為を続けた。
「ひぁ、あっ、あああああっ…!」
身体が震えた。
目を開けていたのか閉じていたのかわからないが、全ての光景が白く光った。
――とっても可愛い!ヒカル、大好き!
そんなノヴァの声を聞いたような気がするが、それも定かではない。
目を開くと、光はセフィーロの城の、自分の部屋に寝かされていた。
「…夢…か……」
ランティスが部屋に運んでくれたままなのだろう、制服姿だ。
ノヴァに千切られたはずのブラは、無傷で光の胸を覆っていた。
しかし、未だに身体には感覚が残っていて、彼女は自分の身体を抱きしめた。
ふと手首に目を向け、戦慄する。
鏡から出る時にノヴァが掴んでいた右手首。
そこに、くっきりと、手の形の痣が残っていた。
「現実なのか…?」
部屋に置いてある姿見が視界に入ったが、慌てて目を逸らした。
ノヴァが出てきそうで、怖かった。
彼女のこの「鏡恐怖症」は、ランティスから鏡のペンダントをもらうまで続いた――。