一瞬の硬直。
「ご、ごめんなさい、優兄様!」
真っ赤になって慌てて部屋の襖を閉める。
部屋の主は着替え中の獅堂優、襖を閉めたのは彼の妹・光である。
光は恥ずかしさから逃げるように、廊下を小走りに部屋へと向かった。
自室の襖を閉めて、そのまま座り込んだ。
剣道の試合を控えている彼女は、稽古を彼に頼もうとしたのだ。
それで彼の部屋に行ってみると、着替え中だった、というわけである。
上半身裸で下は下着だけという姿は、見られた方よりも見てしまった女の子にとって、より恥ずかしいものなのかもしれない。
「光ー、開けるぞー」
その声と同時に襖が開いた。
座り込んでいた光がぱっと振り向いて立ち上がった。
「優兄様!さっきはごめんなさい!え、と、その…」
だんだん声が小さくなっていき、言葉が意味を成さなくなっていった。
着ている袴を両手でぎゅっと握りしめたまま、真っ赤になって俯いてしまった。
妹が可愛くて仕方ない兄としては、何をされても許してしまう光景だった。
まして単に上半身を脱いで着替えていたところを見られただけとあっては。
「あれぐらい気にしなくていいぞ?」
頭を撫でてやりながら、そう言って光の顔をのぞき込む。
まだ赤い顔のままで、光がちらっと優の顔を見た。
「用があったんだろ?どうしたんだ?」
妹のあまりの可愛さに、表情はすっかり緩んでしまっている。