ようやく避難が一段落し、落ち着き始めた城の中。
一部の人々はまだ不安のため、混乱状態でいたが、
新しい衣装で扇を振るカルディナの活躍で大人しくなった。
厚い雲がかかり、時刻も定かではないが、夜になり、
人々は安全な城の中、眠りについた。
深夜だというのにカルディナは廊下の窓から、
崩壊が進む大地、荒れ狂う空を眺めていた。
ぽつりと呟く。
「うち、チゼータに戻られへんと、ここで終わってしまうんやろうか…。」
ふと気配に振り向くと、廊下の先に、金髪の屈強な剣士が立っていた。
「眠れないのか?」
大股でゆっくり近づき、声が掛けられる。
(ラファーガ…。)
彼をザガートの下で知った。
あの頃、彼は術を掛けられていて、今とは違い、冷酷だった。
そして当時の記憶は無く、自分のことは…知らない。
「お酒でも、あればね、寝られるんやけど。
他のもんはうちの、これ、で眠らせてやれるけど、
うちは誰が眠らせてくれるんやろうね。」
カルディナは扇を振り、身をくねらせる。
露出の多い衣装、つややかな褐色の肌、妖艶な仕草、
鋭く見据える水色の瞳…ラファーガは直視できず、目を逸らした。
「…酒なら俺の部屋に何本か残っていたはずだ。必要ならやろう。」
くるりと背を向けると、カルディナの返答も聞かず、歩き始めた。
まさか本当に酒が手に入るとは思わず、カルディナは慌てて彼を追う。
「うちはカルディナ。プロフェッショナルな踊り子あーんど幻惑士や。」
カルディナが明るく自己紹介するも、振り向きもせず、速度も落とさず、
簡単に、ラファーガだ、とそっけなく答える様子に拍子抜けする。
しばらく進んだあと、ラファーガは戸を開けて自室にカルディナを招きいれる。
戸棚を開け、中のボトルを見せた。
「好きなものを持っていくといい。」
カルディナはアルコール度数の高そうな酒を二本取る。
「これ、貰うわ。」
頷いたラファーガはカルディナに帰るよう促す。
部屋から出されそうになったカルディナは慌てた。
「一人で飲めって言うわけ?」女の扱い、なってへんなあ、と説教する。
不安で眠れない、一人でいたくないっていうのに、追い出されては敵わない。
カルディナは面食らった様子のラファーガの脇をすり抜け、
戸棚からグラスを二つ出し、テーブルに置いた。
「付き合ってえな。」
にこりと笑ってカルディナは栓を抜き、酒をグラスに注ぐ。
男の部屋に居座り、酒を飲むと言う。
女の突拍子もない振る舞いに驚いたが、力づくで追い出すわけにもいかず、
ラファーガはカルディナに付き合って飲むことにした。
…にしても、この女はよくしゃべる。
しかも、独特な言葉遣いで。さらには酒に強いようだ。
自分と同じペースで飲み進みながら、絶え間なくしゃべる女に、
時々簡素な相槌を打ちつつ、…露出の多い衣装から目を逸らす。
一本目が空き、二本目の封が開けられた。
濃い肌色でも分かるほど頬が染まり、カルディナがかなり酔ってきたと分かる。
「部屋まで送ろう。」
ラファーガが提案したが、カルディナに却下された。
「プリティでビューティホーなうちを一人にするっていうん?」
かなり酔っているらしく、ラファーガにしなだれかかり、膝に乗る。
そして、絡んでくる。
「ラファーガ、ぜんぜん酔ってへんやんか。もっといき!」
グラスに注ぎ、ムリヤリ勧める。
ラファーガはカルディナに一方的に押し付けられ、グラスを呷らされる。
強い酒に一瞬、くらりと眩暈を覚える。
「なあ、こないにええ女が膝に乗ってるっちゅうのに、
何とも無いなんて…そっちのひと?」
ようやく自制しているというのに、あまりな誤解に
ラファーガは即座に否定する。
「じゃあ、わかってるんとちゃうの。」
そう妖艶に笑ってカルディナは唇を重ねる。
ラファーガの唇の反応の鈍さに、カルディナは焦れる。
「もお、こんな無骨な物、脱いでしもて。」
ラファーガの防具をつつき、催促する。
ラファーガはカルディナの積極的な態度に押されて、防具と胴衣を脱いだ。
その間にカルディナの指はラファーガのベルトに掛かる。
あせって彼女の手を取ると逆に引き寄せるようになった。
彼女が妖艶に笑んでまた唇が重なる。
その瞬間、ラファーガの中で、堰が切れた。
ラファーガは荒々しくカルディナの唇を割って舌を差し入れ彼女の舌を捕らえる。
彼女の衣装は、そのままでも彼女のつややかな肌を探るラファーガの指を妨げない。
滑らかな背、くびれた腰、華奢な肩を撫で回すうち、カルディナから熱い吐息が洩れる。
ラファーガは力の抜けたカルディナを抱え、ベッドに運び、組み敷く。
再び唇を奪い、今度は首筋を辿り、下がってゆく。
胸元まで下がったと思ったらまた、カルディナは唇を奪われた。
ラファーガの手は背を探り、…こんな衣装でもずらすのではなく…外そうと試みている。
が、どういう構造か分からず、てこずっている様子。
気を悪くした風も無く、カルディナは自分の手を胸元に持っていく。
カルディナの動きに気付いたラファーガは唇を離し、彼女を見た。
カルディナは誘うように妖艶に笑む。
「ここをこうするんや。」
装飾に隠れた金具を外すと豊かな胸がぶるんとはじけた。
驚いた様子のラファーガの頭を抱えるようにしてカルディナは彼を自らの胸へ導く。
右胸はラファーガの唇が触れ、左胸は彼の手が包むように触れる。
カルディナの口から熱い吐息が洩れる。
それに煽られるようにラファーガの唇も手も動きが激しくなる。
カルディナは吐息を抑えることもなく、さらに腰をくねらせる。その動きに触発され、ラファーガは残った衣装に手を掛ける。今度は容易に彼女から剥ぎ取られた。
ラファーガの太い指がカルディナの蜜壷へと進む。
カルディナは再び唇を奪われ、舌と指で同時に責められる。
たまらなくなり、カルディナは手を伸ばし、ラファーガの物にズボンの上から触れる。
期待に違わぬ大きさと硬さにカルディナの指はなまめかしい動きを始める。
息を継ぐのにわずかに唇が離れた瞬間、カルディナはじれったそうに言う。
「ん、もう、これじゃまやわ。」
そして、ラファーガのベルトに再び手を伸ばした。
その手を取って、ラファーガが言う。
「少々、はしたないのではないか?」
初めて声を聞いたわけではないのに、男の色気を感じて、カルディナはラファーガの声に痺れた。
「でも、うちの体はまだ、満足せえへんよ?」焦れたように身をくねらせる。
それを聞いたラファーガは彼女の花弁へ唇を移す。
さらに艶を増す吐息を聞きながら、ラファーガは全て脱ぎ捨て、
カルディナの望みを叶える。
ラファーガの十分な大きさと硬さを持った物がカルディナの中に進入する。
カルディナは一瞬息を止め、背を反らした。
完全に奥まで達すると、カルディナは息をつく。が、それで済む訳がない。
続いて始まった力強い抽送にカルディナは吐息とも悲鳴ともつかない声を上げ、彼の肩を掴む。
ラファーガは大きく揺れる胸を掴むとその先端を親指で擦る。
それに反応してカルディナの締め付けが強くなる。
このまま続けてはあっという間に達してしまう。
ラファーガは動きを止め、ゆっくりと引き抜いた。
「あっん、まだ…」カルディナが抗議するのに構わず、
ラファーガは彼女の腕を取り、うつぶせにする。
彼の意図が分かったカルディナは素直に従い、彼が腰に手をやったのにあわせ、
腰を上げる。
そして二人は再び繋がった。
さっきよりも深く、強く打ち付けられ、カルディナの褐色の肌はますます熱くなっていく。
ラファーガはカルディナの滑らかな背に唇を這わす。
その瞬間、締め付けが強くなり、彼女の吐息もなお熱くなる。
ひときわ高い声と共に、カルディナが達し、倒れこみそうになるのを、
ラファーガは後ろから抱きしめる。
脈打つような締め付けに耐え切れず、ラファーガも放った。
ラファーガはこの終末に夢を見ているのだとぼんやり思った。
カルディナはこの強い腕なら、やっと望んだ眠りにつけると思った。
ラファーガが不快に鳴り響く頭を押さえつつ身を起こすと…横には昨日、一緒に酒を飲んだ女が…全裸で寝息を立てている。身を起こしたせいでシーツが腰あたりまでずれ、豊満な胸が露になっているのに気付き、慌てて胸元まで掛け直してやる。
昨日はどうだったか…一緒に酒を飲み、女が酔ってきたと思った時点で、送ろう、と提案したところまでは憶えている。その先は…魅力的な肢体に溺れたという自覚はある。そして、明らかな既成事実があったことをこの状態で徐々に思い出してきた。
無理矢理奪ったのだろうか。
いや、酒に酔った勢いで、というのは、合意以前の問題だ。謝罪は必要だろう。
女が目を覚ました。
「おはよう、ラファーガ。昨日は優しくしてくれて…おおきに。」
女は怒ってはいないようだ。しかし昨夜はかなり強引だったことも事実。
「すまない。我を忘れて…無理強いした。許して欲しい。俺に可能なことなら償いは何でもしよう。」
カルディナはラファーガの生真面目な態度に面食らい、目をぱちくりさせた。
…酒飲んだ男と女がこないなことになるなんてあたりまえやのに、このひと、謝ってるよ。こんなひと、初めてやわ。…
カルディナはふと頬が熱くなるのを自覚した。とくんと胸が鳴る。
にこりと笑むと言った。
「ほなら、今晩から、ラファーガの腕で休ませてくれる?」
雷鳴鳴り響く嵐の夜でも、このひとの腕の中なら怖ないわ。