夜も深まり、誰もが寝静まったセフィーロ城。
青白い柔らかな光をたたえた月が水晶のような城を淡く照らし、満天の星空がより一層城の美しさを引き立たせている。
そんな城内にある、とある一室。
「あっ…はっ……んんっ!」
月明かりが差しこむ薄暗い部屋で、褐色の肌の美女と金髪の屈強な男が一糸纏わぬ姿で交わっていた。
「ああっ!ラ、ラファーガ……」
「どうした?」
「やっ、ダメッ…イク……ッ!!」
男の逞しい首にしなやか両腕を絡ませ、女は背を反らせ喘ぐ。
男は女の甘美な締め付けに、声を押し殺し歯を食いしばって耐える。
「あんっ…また、うちだけイッてしもうて……」
「いいさ、何度でも好きなだけイけばいい」
「んもうっ、いけず!」
女の言葉を受け流し、男は女に口づけをする。そして再び座位のまま女を揺さぶる。
「あんっ!ちょ、ちょっと待ちいな」
「待たない」
「ああっ…やぁ…はぁっ……んんっ!」
再び女の背が仰け反った。
こうして愛し合う関係となり、どのくらい経ったのだろうか。
ラファーガは、自分に抱かれ喘いでいるカルディナを見つめ、ふと思った。
エメロード姫という柱を失い、急速に崩壊の一途を辿る混乱の中で私たちは出会った。
彼女の方は私のことを既に知っていたようだが、私は神官ザガートに心を操られていて、その間の記憶は全くない。
私にとって、あの時が初めて彼女に会ったことになる。
元々彼女はセフィーロの者ではない。チゼータ出身の踊り子兼幻惑師。幻惑師の腕を見込まれ、ザガートに金で雇われたのだ。
本来なら彼女は、貰う物を貰ったら、すぐに別の国に旅に出かけようと思っていたらしい。しかし彼女は留まった。それは何故か。
それは、崩壊の一途を辿る我が国の民のため、全身全霊で躍起になって救出活動に勤しむ私の姿に惚れたからだという。
それを聞かされ、正直、驚いた。私は当たり前のことをしただけなのだ。操られていたとはいえ、愛する国に対して何もできなかった私なりの償いだったのだ。
しかし、彼女もまた私と同じだった。
事情も知らず、金で雇われ、セフィーロに対し背徳的なことをしてしまった償いをしていたのだ。
彼女は自分の出身地ではないのにも関わらず、危険を顧みずセフィーロの為にいろいろと尽くしてくれた。
そんな彼女の姿を目の当たりにし、私は自分自身気付かぬまま、何時の間にか彼女に惹かれていたようだった。だから素直に彼女を受け入れられた。
もしエメロード姫が存命で、姫とザガートが惹かれ合っていなければ―――――
私たちは出会うこともなかっただろう。
「何…考えてるん?」
真顔になって見つめるラファーガに、カルディナは喘ぎながら訊ねた。
「いや、別に」
「嘘…いいや。何、考えてたん?」
「……お前との出会いを考えてた」
「うちとの?」
「ああ」
快楽で思わず出てしまう吐息を何とか抑えながら、ラファーガは先ほどまで考えていたことを全て話した。
「……そうやな」
ラファーガの話を聞き終え、カルディナは彼の胸に身を預けた。
「確かにザガートと姫さんのことは悲しいことやったし、魔法騎士のお嬢さん方も辛く可哀想な思いもしたしな。セフィーロも崩壊寸前のとこまでいってもうたし。でもな……」
そう言いながら、カルディナはラファーガの蒼い瞳を見据えた。
「うちはラファーガと出会えて、ほんま良かった。こんなうちだけのええ男、捕まえられたんやから」
「カルディナ……」
「ラファーガは?ラファーガはどう思ってるん?」
「私も……お前と出会えて良かった。お前を愛することが出来て幸せだと思っている」
「ほんま?」
嬉しい言葉を聞き、カルディナはパッと花咲くような笑顔を見せた。
「うちもそうや。うちもラファーガのこと、愛することが出来て幸せや」
「そうか」
「ラファーガ、愛してるで」
「ああ、私もだ」
二人は熱く見つめ合い、唇を重ねた。
それにしても……と、ラファーガは思った。
今、自分の上で喘ぎ淫らに踊るカルディナは、本当に美しい。
淡く青白い月の光を一身に受け、舞姫はその美しさを神秘的により輝かせている。
「カルディナ」
「あっ…はぁっ…んっ…なに……?」
「綺麗だ」
ラファーガの言葉に、カルディナは一瞬動きを止めたが、直ぐに律動を再開した。
「おおきに。そんなこと…言わんでも知っとるわ」
「いいや、お前は知らない」
「なに、言うてるん?うちはこれでも自分の美貌には自信があるんやで。でもラファーガの口から『綺麗だ』なんて言うてもらえて、うち嬉しいわ」
普段彼の口から滅多に出ない自分に対しての褒め言葉を聞き、カルディナは嬉しそうに笑う。だがラファーガは首を横に振る。
「いや、そうなんだが……そうではないんだ」
「なに、どういうことやの?」
さっきの嬉しそうな顔から一変し、カルディナは彼の言葉の意味が分からずムスッとした顔をし、動きも止めてしまう。
そんな彼女を下から見上げ、ラファーガは困ったような顔を見せる。だが、ふと視界に入ったある物を見つけると、何か思い付いたのか小さく笑った。
「……なに、笑ってるん?」
「いや、私が言った『綺麗だ』という意味を知ってもらうのに、ちょうどいい物があると思ってな」
「いい物?」
「ああ」
そう言うと、ラファーガはカルディナの中に収まっていた自身を引き抜く。
引き抜いた瞬間、ラファーガの硬く反り勃ったままのペニスがカルディナの愛液を纏わせ、糸を引きながら月明かりを受けて淫靡に光る。
「あんっ!ちょっ……」
突然行為を中断されてしまい、カルディナは恨めしいそうに目で抗議する。だがラファーガはゆっくりと身を起こすと、彼女を軽々と横抱きにした。
「ちょっ…ラファーガ?」
彼の突拍子のない行動に、訳も分からず戸惑うカルディナ。
そしてカルディナを横抱きにしながら、ラファーガは窓辺へと歩んだ。
「カルディナ、見ろ」
「わあ……!」
窓辺へ行くと、二人の目の前に広がるのは、静かに輝く青白い満月と満天の星空。
見事なまでの星空と月に、二人は感嘆の声をあげる。
「綺麗やわ……」
「ああ」
あまりの美しい光景に、二人は暫し見惚れてしまう。この光景は、セフィーロが平和を取り戻した証し。
淡く優しい月の光が二人を包むように照らしている。
「カルディナ」
「なんや?」
「さっき私が言った『綺麗だ』の意味だが……」
「ああ、それどういう意味なん?」
「こういうことだ」
ラファーガはカルディナの軽く口づけをすると、窓辺側にある大きな姿見の前に座り込む。
そして胡坐をかき、中心にカルディナ座らせると、後ろから抱きかかえるようにした。
「やっ!ラ、ラファーガ……?」
「カルディナ、お前は確かに美しい。その美貌も魅惑的な肢体も。だが一番美しいのは……」
そう言うと、ラファーガはカルディナの豊満な胸の頂を無骨な指で挟み、掌で大きく揉みしだいた。
「私に抱かれ、淫らに喘ぎ乱れる姿だ」
カルディナの耳元で低く囁くラファーガ。
ラファーガは、快感を散らそうと頭を振り声を抑えようとするカルディナに、更に快感を与えようと右手を下に移動させる。
そして秘所に手を入れ、秘裂に指を絡ませた。
「ふっ…はぁ、んっ!」
カルディナの襞は熱く柔らかくラファーガの指を迎え入れる。つい先ほどまで交わっていた名残もあり、与えられる緩やかな刺激に新たな愛液を溢れさせる。
「やっ!もう…あっ……やぁ……」
彼の太い指が小刻みにクリトリスを撫であげる。同時に膣口を浅く擽り、新たな愛液を溢れさせ、わざと卑猥な水音をたたせる。
「やぁ…ラ、ラファーガ……」
「どうした?」
「お、お願い…ここじゃ……」
羞恥に耐えきれず、カルディナは振り返ってラファーガに言う。
だがラファーガは止めようとしない。
「何故?」
「だ、だって、鏡の前でなんて……」
姿見に自分の淫らな姿が全て映し出されている。
あまりの恥ずかしさにカルディナが顔を背けた瞬間、ラファーガの硬く反り返ったペニスが彼女の秘裂をツルンとなぞった。
「ふぁっ!あっ…あぁ……」
「カルディナの気持ちよさそうな顔が映っている」
「やっ!ダ、ダメぇ……」
ラファーガはそのまま腰を上下させ、わざと侵入を避け襞を捏ねまわし、指の腹でクリトリスを刺激する。
濡れた肉のぶつかり合う音が部屋中に淫らに響く。
「カルディナ、ほら」
「……へっ?」
蕩けた顔をしてなすがままにされているカルディナの両膝の下に腕を入れると、ラファーガはそのまま彼女の両脚を大きく広げた。
「……っ!!」
「お前のいやらしい所が全部見える」
ラファーガの言葉に、カルディナは視線を逸らした。
今日のラファーガはおかしい。いやに強引で大胆だ。真面目で堅物で優しい彼からはとても考えられない。
どうしてこんなことをするのだろう。
あの美しい月のせいだろうか?
「カルディナ、ちゃんと見ろ」
「あっ…ダ、ダメ…見んといてぇ!!お願……」
膣口をペニスの先端で擽られながら、カルディナは懇願する。
目の前の鏡には、こんなにも恥ずかしい自分の姿が月光を浴びて余すところなく映っている。
赤く充血しきった秘所がめいっぱい広げられ、クリトリスは恥ずかしげもなく包皮から顔を出して主張している。
そして膣口は早く彼を受け入れたいと、愛液を垂らしヒクつかせている。
そんな鏡の中の淫らな自分と目が合い、正視できずに視線を逸らせたいのだが、何故か逸らしきれない。
そんな自分を見つめる、鏡の中のラファーガの視線が熱い。
「カルディナ、欲しいか?」
ラファーガが吐息交じりに甘く囁く。
まるで自分の考えを見透かされていたようで、カルディナは更に全身を熱くする。
何時までも緩く浅い刺激に満足できない。早く彼の硬く太いモノで満たし、激しくして欲しい。でも……。
「欲しいなら欲しいと言え」
「やっ……」
「お前のココは、さっきから正直だぞ」
「あっ、あぁっ!!」
ラファーガの先端がカルディナの膣口に浅く出し挿れされる。
グチュグチュと卑猥な水音を立てながら、カルディナの膣口はラファーガを奥へ奥へと誘おうと蠢く。
もう我慢できない。
「カルディナ」
「…………」
“欲しい”と、声に出さず、瑞々しいパールピンクの唇を小さく動かす。
だがラファーガはもう一度確かめるように低く囁く。
「欲しいなら、聞こえるように言え」
「…………しぃ」
「もう一度」
「ほ、欲しい!ラファーガの―――」
水色の瞳を潤ませ、泣きそうな顔で振り向くカルディナの唇をラファーガが塞ぐ。
その瞬間、カルディナの膣内(なか)に待ち焦がれていたモノが勢いよく打ち込まれた。
「ふぅっ…んん―――――っ!!」
「っ……!」
挿れられただけで達してしまったのか、カルディナはラファーガに唇を塞がれたまま、声にならない悲鳴をあげた。
ずっと焦らされ疼いていた部分に待ちわびていたモノが打ち込まれ、カルディナの襞は戦慄く。
容赦ない締め付けに、辛うじて歯を食いしばり何とか射精を免れるラファーガ。
だがカルディナの襞は尚も小さく痙攣し、ラファーガの射精を促そうと蠢く。
「あっ、あっ、ラファーガ……やっ、はぁ……んっ!」
そのままカルディナの身体を支え、上下に激しく突き挿れると、彼女は背筋を反らせながら唄うように喘ぐ。
両脚を大きく広げたまま、鏡に結合部を見せつけるようにしているカルディナの痴態に、ラファーガの背筋が震える。
「カルディナ……綺麗だ」
「やっ、はぁ…んっ、ふぅっ!」
「私のを奥まで咥え込んで……離そうとしない姿が映っている。なんて…いやらしい、んだ……」
「あっ、あっ、いやぁ…い、言わんといて…見んといてぇ!!」
ガクガクと下から激しく突き上げられながら、カルディナは首を左右に振る。
ラファーガが一定のリズムで腰を上下させれば、まるで彼女は唄い踊るように魅惑的な肢体を跳ね上げさせた。
青白い月光を一身に浴び、カルディナは羞恥を忘れ、強く深い快楽を貪欲に貪る。
ラファーガにされるがままにされつつも、蕩けた表情で彼の腰の動きに合わせて自らも腰を振る。
きっと自分自身では気付いていないであろう淫らすぎるその姿は、ラファーガの欲を一層煽った。
ラファーガは深く繋がっているその部分にそっと指を這わす。そして小さく震え主張しているクリトリスを優しく捏ね上げる。
「やっ!ラ、ラファ…そ、それダメ、あっ、あっ、あぁ―――――っ!!」
強すぎる快楽に、カルディナは我を忘れて恥ずかしげもなく喘ぐ。
そして肉襞が戦慄き、痛いほどラファーガを締め付け、絶頂が近いことを物語っている。
「…っ!カ、カルディナ……」
「あっ、あっ、ラファ…あっ、あぁっ」
「そんな…締め付け、るな……」
「やぁ…そんな言う、ても…はぁ、あっ、ふぁダ…ダメ、イッ、イッちゃ……」
「……っくっ!…うっ、ぁ……」
「あっ、ラ、ラファ…あっぁあっん、ふっ、はぁあ―――――ぁ……んっ!!」
カルディナのしなやかな肢体がビクビクと跳ね、強烈な甘い締め付けにラファーガの息が思わず止まる。
そして次の瞬間、カルディナの体内にラファーガの熱い白濁の波が弾けた。
716 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2010/10/03(日) 17:47:05 ID:IYZxOwU7
白いシーツに包まり、二人は寄り添いながら美しい満月を眺めていた。
透明で静かな柔らかい月の光が、二人を優しく包み込む。
「なあ、ラファーガ」
「なんだ?」
「もうあんなことせんといて……」
先ほどまで行っていた鏡の前での行為を思い出してか、カルディナは頬を染め恥ずかしそうに瞳を逸らす。
そんな彼女に、ラファーガは小さく笑う。
「ああ」
「ほんま?うち、めっちゃ恥ずかしかったんやから!いけず!」
まるで子供のように頬を膨らまし、瞳を潤ませながら可愛らしく睨み付けるカルディナ。
普段チゼータ特有の劣情を煽るような踊り子の衣装を身に纏っているのに、以外とこういう事では恥じらう。
そんな自分しか知らない彼女のギャップも、ラファーガにとっては全てが愛おしい。
「なあ、ラファーガ」
先ほどの子供っぽい表情とは打って変わり、今度は真摯な眼差しでラファーガを見つめるカルディナ。
水色の潤んだ瞳が揺れる。
「うち、ずっとラファーガの傍にいてもええ?」
彼女の言葉に、ラファーガは不意をつかれた。
自分は当然のように一生添い遂げるつもりでいた。だが考えてみれば、まだ一度もその事を彼女に伝えていなかった。
ラファーガはカルディナの身体をそっと引き寄せた。
「ああ。ずっと私の傍にいてくれ」
「ラファーガ……」
「この先、ずっと……」
グッとラファーガの引き寄せた手に力が籠り、カルディナは彼の胸の中で窒息する。
「……ええの?ほんまに?」
「ああ」
生涯お前を愛し守り抜くからと、ラファーガはカルディナを抱き締め薄紅色の髪に囁く。
愛しい恋人からの熱い愛の言葉に、カルディナは静かに涙を零す。そして涙は、月の光を受け煌めきながら零れ落ちた。
そんな恋人たちの姿を、満月は何時までも優しく照らしている。
まるで二人の行く末を祈り見守るように。