微かに濡れた笹川のそこに唇を沿わせると、切なげな声か小さな唇から漏れた。
顔を真っ赤に高潮させ、目尻にはうっすら涙がにじんでいた。
「ん…んぅ…ぁ」
ぎこちなく小さな悲鳴をあげる彼女が愛おしくて、舌先で軽く突起を触るとさらにビクリと反応する。
「ぁっ…やま、もと…くんっ」
ああ、可愛いな、って思った。
―――笹川と付き合い始めたのは数ヶ月前。お互いが共通の友人を通して仲良くなった。
まぁ、その友人というのは同じクラスのツナなんだけども。
いつの間にか話が合うことや、好きな文房具も同じなことに気づいて、
我ながらそんなベタな共通点から、好きって感情が生まれるなんて気づかなかった。
ツナの想い人だってことは分かっていた。
ツナの態度を見れば明らかだったし、周りもそのような噂が立っていた。
しかし、ツナ以外にも笹川を想う人間なんて沢山居るわけで。
学園のアイドルと言われるほど整った顔立ちをしている笹川がもてるのは当たり前だと思った。
何か抜けているような天然なところも、以外としっかりとした意見を持っているところも、
気になり始めたら、いつの間にか気持ちが抑えられなくなっていた。
とある日の放課後、いつものメンバーでツナの家へ遊びに行った帰り、
オレと笹川と獄寺とハルが並んで歩いていたが、
時間が時間だったためにそれぞれ男子が女子を家まで送ってやることになった。
「うぜー、果てろ!アホ女、一人で帰れるだろ」
と獄寺は野次を飛ばしていたし、ハルも「結構です!」と言っていたが
二人をまーまーと宥め、獄寺にハルを送らせることにし、オレは笹川を家まで送ることにした。
そのとき、初めて二人きりになったことに気がついて急に心臓が早くなるのを感じた。
でも、この機会を逃したら、次はいつ機会がやってくるか分からない。
そのときのオレはそんなことで頭がいっぱいで、笹川に告白したらツナとの関係や、
ふられたときに笹川との今までの関係が全部崩れるかもしれない、ってことも考え付かなかった。
「な、笹川」
「うん?」
「好き、だ」
「え」
「好き」
全然言葉が出てこなかった。
好きって言うだけで言いのか、というか、いきなり何言い出してるんだ、オレ。
言い出したのは自分だったはずなのに、頭が混乱してグラグラした。
「…………うん」
笹川が困ったような表情をした。……マズイ、困らせるはずじゃなかったのに。
笹川の身長はオレよりもずっと小さくて、いつもオレを見上げている。
その大きな茶色い瞳がうっすらかげったように見えた。
「わたし、も」
好き、と消えそうな声で確かにそう言ってくれた。
それから笹川と付き合い始めた。
自分でも、マジかよ、と思った。
だってあの学園のアイドルの笹川と。それも親友のツナの想い人と。
学校ではオレたちが付き合ってること内緒にしような、って話をした。
「……うん、そうだよね。山本君、もてるもんね」
だから、そうじゃねーって、と言いたかったけれどその場は適当に笑って過ごした。
いつの間にか、オレの部活が終わる時間まで待ってくれるようになっていた。
校門の片隅に、いつも必ずこっそり見えないように立っている。
「山本くん、お疲れさま」
そう言って笑って待っててくれるから、野球にも熱心に取り組めるようになっていた。
夕暮れの時間に手を繋いで帰って、夕焼けのせいなのか、
互いの顔が赤らんでいるのを笹川は気づいていただろうか。
帰り際に触れるだけのキスをした。
「また明日」
そう言って、オレは明日も笹川に会えることを期待するんだ。
でもオレも健全な青少年。いつの間にかキスだけでは満足できなくなっていた。
いや、でも、そんな、笹川に嫌われるようなことしたくねぇ。
毎日が自分との葛藤。
しかし、そんなある日。
笹川が宿題を教えてくれるということで、オレの家に放課後来てもらった。
親父は品調べの為に家に居ない。や、別に狙ったわけじゃねーけど。
宿題をして(っていっても、ほとんど笹川に教えてもらんだけど)
ふと目が合った瞬間に、いつもみたいに触れるだけのキスをした。
「ん…」
少しだけ、ほんの少しだけ、角度をかえて、笹川の唇を舐めてみる。
最初はビクリと顔を強張らせていた笹川も、ゆっくりと唇をあけた。
笹川もオレの応じてくれたと思い、小さな唇の口内に舌を滑り込ませた。
丁寧に歯列をなぞり、笹川の舌を絡め取るように絡ませた。
「ん…ふぅ、…んん…」
笹川の反応が可愛いくて、笹川の頭を後ろから引き寄せて、さらに深く口付けた。
「んん…!んーっん…ぅ」
今度は苦しそうに反応して、オレの胸元を小さなこぶしでどんどん叩いてきた。
そこでやっと我にかえって、唇を離した。
名残惜しそうに、唇と唇の間に垂れた糸が伝った。
「はぁ…はぁ……やまも、もと…くん」
「………わりぃ」
いくら何でも調子に乗りすぎた。今まで触れるようなキスしかしていなかったのだから。
顔を赤らめ、肩を上下させる笹川を見ていたら、正直我慢できる自信がない。
「ほんと、悪かった。ごめんな。」
オレは立ち上がって、笹川と顔をあわせないように部屋の戸の方へ顔を向けた。
「…………」
「今日はもう送ってくから」
「………わたし」
「うん、悪かったって」
頼むから嫌わないでくれ、って言いたかったけど。
「だから、ね」
「ん」
「……別に私、……ヤじゃ、ない、よ」
微かに震える笹川の小さな手が、
オレのYシャツのすそをキュッと握った。
時刻は夕方になり始めてた。辺りがぼんやりと暗くなってきて、
傾きかけた太陽の一筋が部屋のカーテンからうっすら部屋に差し込んでいた。
狭い部屋の一角のベットに笹川をゆっくり押し倒すとギシリときしんだ。
確認するように、そっと一度唇を重ねた。
唇を離し、笹川の制服のリボンをほどいて、Yシャツのボタンを一つずつはずした。
笹川は何も言わず、顔を赤らめて、オレの手の動作の行方を見ているようだった。
なんだか学校の野球部の先輩達が持ってきたエロ本の知識はまったく役立たないような感じがした。
前ボタンだけ外してみたが、現れた女の下着の外し方がよく分からなくて、
「どうするんだ?」って素直に聞いたら
笹川がやっと顔を緩めて「後ろにホックがあるよ」って笑われた。
そしたらオレも「そーな」とつられて笑ってしまった。
白い胸にはまだ幼さが残っていて、そっと手で包み込むとビクリと反応を示した。
胸の先端を口に含んで、舌を転がす。
「ぁっ………!」
「……我慢すると、逆に辛いんじゃね?」
笹川自身も自分の出した声に驚いたらしく、恥らうように手元を口で隠したが、
その手首をつかんでベットに押し付けた。今度は先端を軽く甘噛みした。
「んっ……あ…あっん」
ぎこちなく、途切れ途切れに声を漏らす。
そのまま口の動きは止めず、笹川の太股の付け根に手を触れようとさせたら
反射的に太股をきゅっと閉じようとした。でもちょっと間をあけるとおずおずと足を開いた。
指を笹川の秘部に沿わせ、突起探り出すと指のはらで軽く押した。
ビクビクと震える笹川の反応にあわせ、そこがぬめりを帯びた感じがした。
「(すげー濡れてきた…)」
それを確認した後、今度は足を左右に割ってその間に顔をうずめる。
笹川のそこに唇を沿わせると、切なげな声か小さな唇から漏れた。
顔を真っ赤に高潮させ、目尻にはうっすら涙がにじんでいた。
「ん…んぅ…ぁ」
小さな悲鳴をあげる彼女が愛おしくて、舌先で軽く突起を触るとさらにビクリと反応する。
「ぁっ…やま、もと…くんっ」
ああ、可愛いな、って思った。
そこから唇を離してちょっとだけ口元を手の甲で拭って、ズボンのベルトを緩めた。
「痛かったらごめんな」
「ん……」
オレにとっても笹川にとっても、初めて交わす行為だから。
自信があるわけではないし、笹川にとって辛いことはさせたくはない。
でもそんな感情とは裏腹に熱くなった自分自身を抑えることなんてもう出来なかった。
笹川の両足を割って抱え込み、
様子を伺いながら、ゆっくりと腰を押し進める。
「っあ…あっ!」
「―――っ」
途中まで腰を押し進めたところで、初めて味わう感覚に頭がクラクラしそうになった。
「い、…っぁ……!」
笹川がオレの肩にしがみついてくる。爪の食いこみが焼けた肌に食い込むのを感じた。
その避けられない痛みを耐えている笹川に比べればどってことねーけど。
一度そこで腰を押し進めるのを止める。
初めて男を受け入れる笹川のそこが、それ以上の挿入を頑なに拒否しているようだった。
笹川が声を押し殺すように唇を噛み締めていた。
その唇にうっすら血がにじんでいるかのように見えたから
ついばむように笹川の唇を何度か軽く吸い上げた。
「んっん…ふ…」
「笹川……」
笹川が、変わりにオレの首にしがみつくように腕を回してきた。
苦しそうに顔を歪めていたけど答えるように必死に噛み付くようなキスをした。
「や、まもと、くん…」
「…ん?」
涙で濡れた瞳が妙に艶っぽくて、オレは手のひらで笹川の涙をぬぐった。
「だい、じょうぶ…だから」
途切れ途切れで息をはくような、搾り出すような声でそう言った。
「すき、山本君…すき」
必死にオレを受け入れようとしてくれた笹川が愛おしく感じて、いっそう自身が熱くなるのを感じた
先ほどより幾分か中にぬめりを感じ始めたから、またゆっくりと腰を押し進めた。
「!あっあ…っ山本くん…っ」
「っ………わりぃ、もうちょっと、我慢な?」
さっきまでずっと笹川の手首を握り締めていたから、笹川の手首に握り締めたあとが残ってしまっていた。
かわりに自分よりも一回りも二周りも小さな手に指を絡めて、快感を促すように体をゆすぶった。
「あっ…ぁっあっんっああっ」
一人で快感を得る行為とはわけが違う感覚がオレにに襲ってくる。
痛みが薄れてきたのか、笹川はオレの動きに合わせるように突き上げるたびに声を漏らした。
じゅぷじゅぷという粘着質な水っぽい音が狭いオレの部屋に、ベットのきしむ音と共に響いた。
「っァ――笹、川……ッ」
――…山本君も、こんな声出すんだ……
不思議な感覚に襲われ、ぼんやりとした意識の中、京子はそんなことを思った。
少し掠れた低い声が京子の耳に響いた。
オレは根本まで笹川の中に突き入れた。笹川のことを気遣ってやることも出来ず、体を揺らし刺激を与える。
柔らかく熱く、締め上げてくる粘膜に包まれる感覚は、到底言葉になんかできない。
「あぁっあっんっひゃっあ!」
「……っはぁ、」
「ぅあっあっああっ山本くん…っ、わたし、あっ!」
「くっ…、笹川……!」
笹川自身の限界とオレの限界がほぼ同時に襲ってきたのがわかって
いっそう強く腰を打ち込んで、笹川の手を握り締めた。
「ああっ!ぁっぁああっ」
切なげな表情をし、快楽に飲まれた笹川の締め付けに、オレも同時に上りつめた。
目の前が真っ白になるような…何も見えなくなる強烈な快楽に包まれ、
柔肉のなかの自分自身が膨張し、一気に弾けるのを感じた。
自身の欲望を放ったあと、しばらくそのまま激しい衝撃のあとの心地よい息苦しさを感じていた。
息を整え、ずるりと自身を引き抜く。ごぽりと音と立ててオレと笹川のが混じったものが溢れ出た。
笹川はぐったりしてまだ短く息をはきながら目を閉じていた。
「笹川…」
くしゃりと白いシーツに広がった笹川の髪を触るように頭をなでた。
「…ハァ、…ん…山本君…?」
まだ涙のあとが残っていたから、笹川の目の際にキスをした。
「わ、くすぐったいよ」
無邪気な笑い方なのに、昼までとは違う大人の女の色香があるような気がした。
「あのな、さっき言い忘れてちまったから」
正直さっきあまり余裕が無かった、なんて恥ずかしくて言えたもんじゃねーな、と思った。
「…?なぁに?」
紅潮した頬がひどくなまめかしいのに、
きょとんとした顔でオレを見る顔はやっぱりまだ子供っぽかった。
「笹川、オレも、すげー好き。」
日が暮れて薄暗くなった部屋の中で、
笹川の照れた笑みだけがはっきりと見えた気がした。
END.