普通の女の子には死ぬまで無関係だろう仕事を、子供のころから経験してきた。
ファストフード店でのバイトやありきたりなデスクワークなんてしたこともない_きっとこれから先もすることはないだろうけど。
まあお金にキレイもキタナイもないしね。
一番手っ取り早い方法で稼ぐ。そしてひたすらブランド物を買い漁って着飾るの。
それが唯一、私のプライドを支える手段だから。
*
(おええ。ぎもぢわるい)
舌を絡めるたびに、ぐじゅぐじゅ粘っこい音がうるさく響く。
ジャッポーネの夏はどこへ行っても匂い立つような湿気で充満してて、その湿気のせいで男の体臭から息遣いからなにからなにまで必要以上に伝
わってくる。不快。
口中に生臭いにおいと味がこみ上げてきて、こんなの慣れているはずなのに毎回吐きそうになる。
好きな人のものなら平気でできるって聞いたことあるけど、本気で男に惚れたことなんてないから分からない。
とにかく早く行為を終わらせたくてソレの根元を強く吸った。
射精を促すように舌先で先端の穴をくすぐるのも忘れない。
(ほら、イきなさいよ)
上のほうからう゛う゛っ、と低いうめき声が振ってきたかと思うとソレは一際大きく膨らんで。
私の咥内で生暖かい精液を放ちながら、中年男ははあはあと荒い息を繰り返した。
射精と共に喉奥まで突っ込まれたせいで本能的に涙がこみ上げてくる。
いっそ胃の中のものをぶちまけてやろうかと思うけど、首に巻きつけられた手が邪魔してる。
飲み込みもできないし吐けもしない…咥内に溜まっていく粘液のせいで窒息しそう。
この男?
さあ、誰なのか知らない。
有名な医者なんだと本人は言ってたけど、そんなの本当かどうかなんて証明できやしないし。
もちろんこの男だって私が殺し屋なんて知りもしないのよね。
ジャッポーネに留学にでも来てる能天気な女子高生とでも思ってんのかしら?そう思っててくれなきゃ困るけど。
「ごめんね。無理に奥まで入れちゃって」
「…気にしないで(仕事だからね)」
「あんまり君が可愛いから、オジサンついいじめたくなって」
「今度会うときにはもっと可愛がってよね?(おしゃべりはいいから報酬!)」
万札を何枚かひったくるようにして受け取ると私はさっさとホテルを出た。
ああ。あっついわね…何もかも嫌になる。
焼け付くような日差しに目を細めるが、太陽は容赦なく照りつける。
(骸ちゃん…いつまでここに滞在するつもりなのかしら)
ジャッポーネに来てから見つけたお気に入りのセレクトショップに向かう途中、ファストフードの前で女子高生を見かけた。
皆同じ指定の制服を着て、きゃあきゃあとおしゃべりに興じている。
今こうしてはしゃいでいることが自分の仕事だというように何も疑うことなく。
とても安っぽい格好をしている彼女達がほんの少しだけ羨ましく思えたのは、華やかに店内を飾っているワンピースを試着するまでの間だけだった。
_終_